
☕ Café Solas — season7 第3話 「また来年も…」
春の昼下がり。
昼の営業がひと段落した、休憩時間。
カフェ・ソラスには、ゆったりした時間が流れていた。
「また注文入った」
カウンターの奥で、ケンタがスマホを見ながら言う。
タクヤが顔を上げる。
「まだ続いてんのか、そのプリン」
「ビックリ!プリン・フィギュアな」
ケンタはそう言って、得意げに画面を見せた。
「しかもレビュー来てる」
アキラも少し興味を持ってのぞき込む。
ケンタが読み上げる。
「“思ったよりかわいい。机に置いてます。”」
タクヤが笑う。
「思ったよりってなんだよ」
ミユキも横から画面をのぞく。
「でもちゃんと売れてるじゃん」
ケンタは嬉しそうにうなずいた。
そのとき、店のドアベルが鳴る。
カラン♪
入ってきたのはタクヤとアイだった。
「ねえタクヤ」
席に座るなり、アイが言った。
「スノボやりたい」
タクヤは一瞬止まる。
「急にどうした」
アイはスマホを見せる。
「オリンピック見てたらさ」
「なんかやりたくなっちゃって」
タクヤは少し考える。
「俺、スキーなら滑れるけど」
「もう何年もやってないぞ」
アイは笑った。
「じゃあちょうどいいじゃん」
――数日後。
二人はゲレンデに立っていた。

春の光に照らされた雪の斜面。
けれど周りから聞こえてくるのは、ほとんど外国語だった。
「……なんかさ」
アイが周りを見渡す。
「海外みたい」
タクヤも苦笑する。
「ほんとだな」
「日本なのにな」
そして、アイのスノーボード初挑戦が始まった。
だが――
「無理!」
開始一時間もしないうちに、アイは雪の上に座り込んだ。
「立てない!」
「止まれない!」
「曲がれない!」
タクヤは少し笑いながら言う。
「最初はそんなもんだろ」
しかしアイは首を振る。
「もういい」
「温泉行こう♨️」
その日の午後。
二人はゲレンデ近くの温泉にいた。
タクヤが風呂から上がると、
食堂でアイがもうビールを飲んでいた🍺
「遅いよ」
タクヤが座ると、アイは肩を回しながら言った。
「もう全身痛い」
グラスを置いて、ため息をつく。
「スノボ、もういいや」
「こりごり」
湯上がりの食堂で、二人はビールを飲んでいた。
「でもさ」
アイが言う。
「タクヤ、さっき普通に滑ってたよね」
タクヤは少しだけ笑う。
「まぁな」
「昔やってたから」
窓の外には、まだ白い山が見えている。
「……なんか」
タクヤが言った。
「久しぶりに滑ったらさ」
「ちょっと楽しかった」
アイはグラスを置いて笑った。
「じゃあまた来る?」
タクヤは少し考えてから言う。
「まぁ、来年な」
たぶん。
来年も同じように来て、
同じように滑って、
同じように温泉に入って、
同じように飲んで帰るのだろう。
そしてまた、
カフェ・ソラスの日常に戻っていく。
春の山の一日は、
そんなふうに静かに終わった。