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☕ Café Solas ― Season 6 Episode 5 —2025年大晦日編


    店の奥で、鍋が小さく音を立てていた。

    「……ほんとに、そばなんだ」

    タクヤが覗き込む。

    「年越しには、これでしょ」

    ケンタはエプロン姿のまま、
    少し得意げに答えた。

    「営業中のカフェで、
    年越しそば出てくるとは思わなかった」

    「裏メニューだからね」

    アキラは、器を並べながら言う。

    「“年を越す準備”用」


    時計は23時を少し回ったところ。

    店内は静かだが、
    完全に閉じる気配はない。

    「元旦もやるんだよね?」

    ミユキが確認する。

    「うん。
    朝は少し遅めだけど、開ける」

    「正気?」

    「慣れてる」

    タクヤが肩をすくめる。

    「この店、
    “休まない理由”だけは一流だな」


    23時45分。

    ドアベルが、続けて鳴った。

    「こんばんは……間に合った?」

    アイだった。

    続いて、サチ。

    「ギリギリ、ですね」

    「狙ってたでしょ」

    ミユキが笑う。

    「年越し前に、
    全員そろうのが大事かなって」

    アキラは、何も言わずに器を追加した。


    カウンターに並んだ年越しそば。

    派手さはない。
    でも、湯気はしっかり立っている。

    「いただきます」

    誰かが言って、
    全員が続いた。

    「……あ」

    ケンタが箸を止める。

    「ちゃんと、年越しそば食べてるとさ」

    「うん?」

    「今年が終わる実感、
    ちゃんと来るんだな」

    サチが頷く。

    「区切り、ですね」

    「でも、終わりすぎない」

    アイが言った。

    「このあと、初詣行くんでしょう?」

    ミユキが立ち上がる。

    「行こ。
    近所の、小さいところでいいから」


    23時58分。

    店の灯りを少し落とし、
    全員で外に出る。

    看板は、そのまま。

    「営業中」

    誰も数を数えない。
    鐘の音だけが、遠くで鳴った。

    「……あけましておめでとう」

    自然と、誰かが言った。


    初詣は、本当に小さな神社だった。

    並ぶ人も少ない。
    でも、静かで、空気が澄んでいる。

    それぞれ、短く手を合わせる。

    長い願いは、ない。

    「今年も、ここに来られますように」

    それくらい。


    店に戻ると、
    灯りは変わらず迎えてくれた。

    「さて」

    アキラが言う。

    「元旦の準備、するか」

    「もう?」

    「もう、今年だから」

    ミユキが笑った。

    「じゃあさ」

    全員にコーヒーが配られる。

    「これ、
    今年最初の一杯だね」

    誰も反論しなかった。

    Café Solasは、
    年を越しても、
    “日常の途中”にあった。

    つづく — お正月編へ

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    和人

     
     
    和人 52歳。 放送大学で学びながら、 小説『Café Solas』を執筆中。 就職氷河期世代として、 仕事・学び直し・健康・老後について考えています。 50代のリアルな日常と、 学び直しの記録を発信しています。 小説とエッセイを中心に更新中。

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