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☕ Café Solas ― Season 6 Episode 1 祖父のカフェ

    朝のCafé Solas。

    吐く息が、少し白い。

    扉を開けると、いつもの匂いに混じって、
    少しだけ違う空気が流れ込んでくる。

    アキラは一瞬だけ立ち止まる。

    「……静かだな」

    カウンターの奥では、タクヤがミルを触っている。

    「朝イチ、少なかったな」
    「こういう日もある」

    アキラは棚の引き出しを整理しながら、
    ふと手を止める。

    一枚の写真が、指の間から落ちた。

    「ん?」

    拾い上げる。

    少し色褪せた写真。

    小さな店と、
    その前に立つ男。

    「……祖父ちゃんの店だ」

    タクヤが顔を上げる。

    「カフェやってたん?」
    「ああ、昔な」

    写真を眺めたまま、
    少しだけ考える。

    「たいした店じゃなかったよ」

    「へえ」

    「広くもないし、オシャレでもない」

    タクヤは何も言わない。

    「でも、いつも誰かいた」

    (ドアベル)

    「おはよーっす」

    ケンタが入ってくる。

    「なんか静かじゃね?」

    「今ちょうど、思い出話してた」

    「珍し」

    ケンタが写真を覗く。

    「これ?」

    「そう」

    三人で、少しだけその写真を見る。

    「店、もうないの?」

    「ないな」

    アキラはカップを取り出す。

    「なんか残ってる感じはあるけど」

    「どこに?」

    「さあな」

    お湯を落とす。

    ゆっくりと、香りが広がる。

    「味は?」

    ケンタが聞く。

    「覚えてない」

    「おい」

    「でも――」

    少しだけ間を置く。

    「こういう匂いだった気がする」

    タクヤが小さく頷く。

    ケンタは何も言わない。

    (少しの静けさ)

    外の音が、少しずつ増えていく。

    アキラはカップを差し出す。

    「ほら」

    二人が受け取る。

    湯気が、ゆっくり上に上がる。

    ケンタが一口飲む。

    「……まあ、悪くない」

    「それでいい」

    タクヤが笑う。

    朝のCafé Solas。

    特別なことは、何も起きていない。

    それでも、
    扉は今日も開いている。



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    和人

     
     
    和人 52歳。 放送大学で学びながら、 小説『Café Solas』を執筆中。 就職氷河期世代として、 仕事・学び直し・健康・老後について考えています。 50代のリアルな日常と、 学び直しの記録を発信しています。 小説とエッセイを中心に更新中。

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