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☕ Café Solas(カフェ・ソラス) Season7 第2話  「アイの小さな計画」

    午後のCafé Solasは、静かだった。

    窓から差し込む光がカウンターに落ちて、コーヒーカップの縁を柔らかく照らしている。

    タクヤはいつもの席でノートパソコンを開き、何かの編集作業をしていた。
    その向かいで、アイがスケッチブックを広げている。

    ケンタはカウンターの奥でプリンを冷蔵庫に並べながら言った。

    「最近さ、タクヤの動画、再生数いいらしいじゃん」

    タクヤは目を上げずに答える。

    「まあ、ぼちぼち」

    「ぼちぼちって顔じゃねぇぞ」

    ケンタが笑う。

    そのとき、アイが鉛筆を止めた。

    「ねえ」

    タクヤが顔を上げる。

    「ん?」

    アイは少しだけ考えるように空を見てから言った。

    「民泊、やろうよ」

    カウンターの奥で、ケンタの手が止まった。

    「……は?」

    アキラはコーヒーを淹れながら、静かに聞いている。

    タクヤも一瞬だけ黙った。

    「民泊?」

    アイはうなずく。

    「駅の向こうに、古いアパートあるでしょ」

    「ああ」

    「この前、空き部屋の張り紙出てた」

    ケンタが笑う。

    「お前、見てたのかよ」

    「うん」

    アイはスケッチブックを閉じた。

    「旅してる人ってさ」

    少しだけ言葉を探す。

    「なんか、いいじゃん」

    タクヤは苦笑する。

    「抽象的だな」

    アイは肩をすくめた。

    「だって、旅って人生の途中でしょ」

    アキラがカップを置いた。

    「……途中」

    アイは続ける。

    「迷ってる人とか」

    「ちょっと休みたい人とか」

    「そういう人、来る気がする」

    ケンタが腕を組む。

    「で、タクヤは?」

    タクヤは少し考えてから言った。

    「……面白いかも」

    ケンタが吹き出した。

    「早いな!」

    タクヤは笑う。

    「いや、動画にもなるし」

    「それに」

    少しだけ窓の外を見る。

    「人の話、聞けるだろ」

    アキラが静かにうなずいた。

    「Solasっぽいな」

    アイが嬉しそうに言う。

    「でしょ?」

    ケンタがからかうように言った。

    「お前ら、なんか新婚みたいなこと始めるな」

    アイは少し笑った。

    「まだだよ」

    タクヤが咳払いする。

    ケンタがニヤニヤする。

    「まだ、って言ったな」

    アイは窓の外を見ながら言った。

    「でもさ」

    「いつか、そうなるかもね」

    店の中に少しだけ沈黙が落ちた。

    アキラがコーヒーを差し出す。

    「そのときは」

    「ここで祝うか」

    ケンタが笑う。

    「プリン山盛りでな」

    アイはカップを持ち上げた。

    「いいね、それ」

    タクヤもカップを取る。

    窓の外では、春の風が静かに通り過ぎていった。

    新しいことが始まるときは、
    いつもこんなふうに、
    何気ない会話の中から生まれる。

    Café Solasの午後は、今日もゆっくり流れている。

     
     

    和人

     
     
    和人 52歳。 放送大学で学びながら、 小説『Café Solas』を執筆中。 就職氷河期世代として、 仕事・学び直し・健康・老後について考えています。 50代のリアルな日常と、 学び直しの記録を発信しています。 小説とエッセイを中心に更新中。

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