社内コンペ(I❤️ホームセンター)
前回のあらすじ
主任から突然、社内コンペへの参加を告げられた私たちFCSのメンバー。
どうやらホームセンターのテーマソングを作るらしい。
そして今日。
また4人は事務所に集められた。
社内コンペ
長渕主任が一枚の紙を持って立っている。
「今回の社内コンペは、店舗イメージソングを作って応募じゃ。曲は自由。お客様を呼び込めるモノを持って来いって事じゃな」
愛が手を挙げる。
「ドンドンドンド○キーみたいなヤツっすか?」
「そうじゃな。募集要項を読むぞ」
主任が紙に目を落とす。
「一、店舗でお客様がワクワクするような曲」
「一、曲を聞いたらお店を思い出す」
「一、誰でも口ずさめる」
はるかが言った。
「ドンドンドンみたいな曲ですね」
「社長が深夜の買い物中にインスパイアされたそうじゃ」
「社長、絶対ドン○行ってるじゃん」
もう隠す気ないじゃん。
長渕主任は気にせず話を続ける。
「隣の義男のお店の若造も出るらしいから、負けるんじゃないぞ」
「吉田さんの店の子達、ゴリゴリのヒップホップだから勝負にならないでしょ」
「向こうも『あいつらパンクスだから相手じゃない』って言ってそうだけどね」
ともが笑う。
まあ、ジャンルが違いすぎる。
そもそも何をもって勝ち負けを決めるんだろう。
「とゆーわけで」
主任が一枚の紙を取り出した。
「絶対負けられないお前らの為に、作詞して来た」
「!?」
聞いてない。
I❤️ホームセンター
渡されたA4用紙を読む4人。
タイトルは、
『I 🩷 ホームセンター』

「……これを歌うんすか?」
「当然じゃ」
「日本語なんですね」
愛が言った。
「誰でも口ずさめる曲じゃからな」
「私たちの曲、だいたい何言ってるかわからないですもんね」
はるかが言う。
「そういうことじゃ」
そこは自覚してたんだ。
4人で歌詞を読む。
『ホームセンターに行こう♪
素敵な出会いが待っているー♪』
「ダサっ」
思わず声に出た。
「『欲しいものが無くても、歩いてるだけで楽しいんだ』ってのも、なかなか来るものがありますよね」
はるかが真顔で言う。
「『作りたいものがあるなら、とりあえずここに来ればいい。わからない事があっても、なんとかなるような気がするよ』って、可愛くない?」
ともは結構気に入ってる。
「逆にエモいっすね」
愛まで乗っかってきた。
「今回は社長も聞くからな。分かりやすい曲がええと思ったんじゃが……少しナウ過ぎたかのう」
「ナウい!?」
4人の声が揃った。
「分かりやすい曲にする為に、重田は英語の早口禁止じゃ」
「……ノーパンクス」
「高木は指弾き禁止じゃ」
「……ノースラップ」
「佐藤はツインペダル禁止じゃ」
「はぁーい」
ともだけ軽い。
「金目はピコピコ禁止じゃ」
「……ノーEDM」
終わった。
私たちの個性が全部なくなった。
犬のポスター
「歌詞だけじゃとイメージが付かないと思ってな。伊藤に頼んでポスターも作ってもらったんじゃ」
※伊藤あみ(26)
うちのホームセンターでバイト中のイラストレーター。
店内のPOPを作っている。
長渕主任がポスターを広げる。
デッカく書かれた、
『I ❤️ ホームセンター』
そして中央には、
カートを押す犬。

……。
なぜ、犬?
「細部まですごいこだわりを見せたからな。いい出来じゃろ。伊藤には歌詞カードも作ってもらったからな」
愛が辺りを見回す。
「そういえば今日、あみさん居ませんね」
「具合悪いって、さっき早退したよ」
ともが言った。
「なんか『私はすごいモノを生み出してしまった』とか、ブツブツ言ってましたけど」
はるかが言う。
もう一度ポスターを見る。
情報量の多い背景
カートを押す犬。
『なんでも揃うワン』
また、あみちゃん長渕主任にこだわり詰め込まれたんだな。
「絶対、コレのせいじゃん」
そんなこんなで、
社内コンペ用
『I ❤️ ホームセンター』
は完成した。
頑張れ!
戦う!販売員!
主任に内緒でこっちも作ってみたよ⭐︎
