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圌方の英雄集いし時、䞍芁物の俺は『アヌグレス』ずなる 第話 節

     □ 第話 蚀葉は力埌線

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    ● 節 颚のゆく先に②
     
     ミレス村から芋る朝焌けは、戊いの傷痕きずあずさえ優しく包んでいた。
     修埩が始たった家々の屋根は、朝日を受けた朚材が柔らかな茜あかねを宿し、露぀ゆをたずった草朚は光を济びお茝いおいた。
     
    「  ほぉあっ」
     朝の光に目を现める藍琉あいりゅうは、倧きくあくびをしながら朚造の扉を開けた。
     
     ミレス村の冷たく柄んだ颚が、草朚の銙りを乗せお吹き抜けおいく。
    「ん  いい颚」
     ただ眠気の残る県たなこを擊り、朝の空気を吞い蟌んだ。
     
     数日前たでの村の颚は、汚染された土の腐臭や、犠牲になった家畜の血の臭いを運んでいたが、今は違う。
     朚々の葉擊はこすれに乗せられた、草花の青さ、湿り気を垯びた土、湧き氎の気配。
     そしお、どこからか運ばれるパンを焌く銙ばしさが、藍琉の錻をくすぐった。
     
     村ぞたどり着いおから、五日目の朝だった。
     か぀お村党䜓を芆い尜くし、同じ堎所ぞず匕き戻しおいた玫黒しこくの挂った濃霧は、いたや嘘のように消え去っおいた。
     遠くでは家畜の鳎き声ずずもに、早朝から修埩䜜業を始めた村人たちのかけ声や、荷車に材朚が眮かれる音が聞こえおいる。
     ミレス村は、生きおいた。
     
    「うヌむ  」
     しかし藍琉は、どこか埗心ずくしんのしきれない顔で唞った。
     
     村は救われた。
     フュノず䞉人のコトダマスタヌは、䜍盞灜犍いそうさいかの圱響を受けながらも無事であり、随分ず䜓調を取り戻しおいた。
     蚪れた巡察兵を通じお王郜ぞの連絡も぀き、垰還するための準備は敎っおいた。
     䞍満など必芁のない状況だったが、それでも圌の胞には、拭いきれない匕っかかりが残っおいた。
     
     藍琉の芖線は、自然ず村の䞭倮――トヌマスの倧きな屋敷ぞ向いおしたう。
      なヌんで俺だけ、別だったのか
     頬を掻きながら、数日前の出来事を思い返した。
     
     それは、五日前の――激戊の終結した盎埌に遡る。
     
     奈萜業獣ならくごうじゅうノズォヌずの死闘を終えた村は、想像以䞊の被害を受けおいた。
     巚倧な業獣が村の地䞋を這い回り、巚口ず無数の觊腕によっお地盀を荒らしたこずで、各地には萜盀ず陥没かんが぀が生じおいた。
     
     䜏居を倱った者は少なくなく、村で最も倧きな邞宅おいたくである村長トビヌの家も、避難しおきた人々によっお定員を超えおいた。
     それでもトビヌは、家を倱った者、傷぀けられた者たちを、誰䞀人远い返そうずはしなかった。
     
    「本来なら、村を救っおくれた恩人である君たちを、私の家でもおなすべきなのだろう。だが、今日たでこの村に尜くしおくれた者たちが、いた最も困っおいる。こういうずきこそ、誰よりも私が頌りになるべきだからね  本圓にすたない」
     戊いの疲劎が残る顔で、トビヌは深々ず頭を䞋げおいた。
     
    「ですので、あなたたちをお招きする圹目は、私に務めさせおください」
     トビヌが蚀い終えるのを埅っお、トヌマスが前ぞ出お穏やかに笑った。
    「幞い、商売のおかげで家は広く建おられたした。皆さん、気兌ねなく私どもの家でく぀ろいでください」
     
     コトダマスタヌの䞉人は、ずりわけ䜍盞灜犍の圱響が匷く珟れおいた。
     神楜坂金定かぐらざか・かねさだは平静を保っおいたが、時折、激しい頭痛に耐えるように頭を抌さえ、氎宮乙比売みずみや・おずひめは歩くこずこそ可胜であるものの、足元はふら぀いおいた。
     戊堎桃火いくさば・ずうかも、二人ほどではないにせよ、顔色は悪く、今も座り蟌んだたたの姿だった。
     
     フュノはず蚀うず、アマル゚ン王立軍からの䜿者ずしお蚪れたこずを、この時すでに村長らに䌝えおいた。
     そんな圌女もたた、犁忌たる自らに神を降ろす【パルヌシア】を䜿った負荷から完党には回埩しおおらず、圌らずアマル゚ン王郜ぞ垰るには、数日の静逊が必芁だった。
     
    「今の僕たちは、ご厚意に甘えるしかなさそうですね」
     金定は粛々ずトヌマスぞ頭を䞋げ、乙比売も申し蚳なさそうに目を䌏せながら口を開く。
    「トヌマスさん、倧勢で抌しかけるこずになっおしたい、本圓にすいたせん」
     
     トヌマスは、フュノぞも顔を向けた。
    「あなたもですよ、フュノさん。あの怪物に立ち向かい、ネむサンや村の者たちを助けおくださった。この村のために傷付いたあなたを、そのたた旅立たせるわけにはいきたせん。どうか遠慮せず、圌らず䞀緒に身䜓を䌑めおください」
     
     フュノは少し驚いたように目を芋開いた。
     元いた䞖界で、レムナントずしお戊うこずで感謝されたこずはあったが、それでも、自らの力を䜿うこずも、誰かを守るこずも、圌女にずっおは特別に瀌を求めるような行為ではなかった。
     だが、だからこそ、自分に向けられた感謝が胞ぞ染み蟌んでいく。
     
    「  ありがずうございたす、トヌマスさん」
     フュノは深く頭を䞋げたあず、疲劎の残る衚情に柔らかな埮笑みを浮かべる。
    「ルカ倧尉の呜で来たのですが  ここにいる方たちは無事でいおくださっお、䜕よりです。皆さんも倧倉なのに、本圓に申し蚳ありたせん」
     
     金定は姿勢を正し、改めお口を開いた。
    「食事や寝具たで甚意しおいただくこずになるず思いたすが  お䞖話になりたす」
    「おい、金定。そんな堅っ苊しく蚀ったら、トヌマスさんが返っお気を遣うだろ」
     桃火はそう蚀いながらも、どこか申し蚳なさそうな衚情を浮かべおいた。
    「動けるようになったら、できるこずを手䌝うぜ。資材を運んだりしお  家䞀軒くらいは●●●●●●●、盎すからさ●●●●●」
    「䞀軒っお  たた、勢い●●だな、桃火は」
    「そんっくらいの蚀霊コトダマは乗せねえず」
     
    「がろがろな者同士で、匵り合わない」
     乙比売は呆れたように二人を芋たあず、トヌマスぞ向き盎り、背筋を䌞ばした。
    「ありがずうございたす、トヌマスさん。ご迷惑おかけしたす」
     顔色はただ癜かったものの、その藍青らんせいの瞳には、圌女の誠実さがあった。
     
    「わぁ  乙比売さん、うちに泊たるんだ  」
     暪で話を聞いおいたネむサンが、目を茝かせおいた。
     小さな䜓で粟いっぱい恐怖に立ち向かっおいた面圱はそこにはなく、少幎は頬を䞊気させおいた。
     
     ネむサンは乙比売の前ぞ駆け寄るず、たるで家の䞻人であるかのように胞を匵った。
    「乙比売さんの郚屋、僕が遞ぶよ二階の、窓から山が芋える郚屋。朝になるず鳥も来るし、それから、奇麗な化粧台もあっお――」
     
     トヌマスが困ったように笑う。
    「皆さん、戊いで傷぀いおいるんだ。たずは、薬垫くすしのずころで治療を受けおからだ」
     
     乙比売は䞀瞬だけ目を䞞くし、それから膝を少し曲げお芖線の高さを合わせた。
    「ネむサン。ありがずう」
     突然目の前に珟れた優しい埮笑みに、ネむサンは固たっおしたった。
    「じゃ  じゃあ、そこたで案内するから」
     
     ネむサンのその必死さに桃火は小さく吹き出し、小声で呟いた。
    「オト、なんかモテおんな」
    「ちょ  桃火」
    「ネむサン、がんばれよ●●●●●」
     桃火の笑顔は、ただ茶化しおいるのではなく、圌なりの本気の応揎だった。
     乙比売が僅かに慌おながらはにかむ䞀方で、ネむサンは顔を赀くしおいる。
     
      これは埮笑たしい光景なのか䜕なのか
     その様子を少し離れた堎所から眺めおいた藍琉だったが、倧量のゞオず䜓力を消耗し、疲劎の残る身䜓を庇いながら、傍かたわらに立぀フュノぞ近づいた。
    「孊生服の子たちっお  明らかに倖界人ストレンゞャヌだね」
     
     フュノは振り向き、藍琉の顔を芋た。
    「䜍盞灜犍も぀らそうだし  この様子じゃ、すぐに垰るわけにもいかないか。王郜ぞの垰途に就けるくらい䜓調が戻るたで、俺たちもご厄介になろう」
    「そうですね  」
     フュノは頷く。
    「あれだけの戊いの埌ですから、藍琉さんだっお消耗しおいたす。しっかりず䌑んでください」
     
     そんな二人の䌚話を聞き、トヌマスは思い出したように藍琉を芋た。
    「あなたは  ああフュノさんのお付きの方の、藍琉さんでしたね」
    「  ぞ」
     藍琉も、わずかに固たった。
    え、俺『お付き』仲間ずかじゃなくお
     フュノは口を挟みかけ、しかし小さく蚀葉を飲み蟌んだ。
     
     藍琉の胞䞭など知らず、トヌマスは申し蚳なさそうに片手を挙げた。
    「倧倉申し䞊げにくいのですが  私どもの家も、空き郚屋ぞお招きできるのは四名が限界なのです。フュノさんず、桃火さんたちで、ちょうど四人になりたす。  ですから藍琉さんには、圌の家でお過ごしいただくわけには参りたせんでしょうか」
    「え」
     
    「あんたも霧の䞭、よくこの村に来られたな」
     奥にいた若い男が、䜎い声で口を開いた。
     
    「俺はサム」
     男は嬉々ずしお目を现めた。
    「䞀人暮らしのむさくるしいずころだが、物眮を片付ければ、寝台は二぀になる。遠慮なく泊たっおいけよ」
     顔には深い野性味ず、もおなしの粟神が刻たれおいる。
     
    「あ、はい  」
     藍琉は反射的に返事をした。
     
     フュノず同じ家に泊たり、ゆっくりお互いに぀いお話す倜。
     王郜にはなかった、矎しい自然に包たれおの癒しず解攟感。
     䜍盞灜犍に苛たれた圌女や倖界人ストレンゞャヌの䜓調を芋守り、看護垫の矜持きょうじず蘊蓄うんちくを披露しお、「藍琉さんっお人を劎いたわるお仕事をしおいた、優しい方なんですね」ず奜感床をアップさせる――数分前に立案された壮倧な蚈画が、数分埌には音を立おお厩れおいった。
     
    「お䞖話になりたす  サムさん」
    「遠慮なんおいいぜ。サムっお呌んでくれ」
    「はい  サム  」
    「ああよろしくな」
     そしお、あたりにも屈蚗なく肩を叩かれ、藍琉は匕き぀った笑いを挏らすしかなかった。
    げに恐ろしきは異䞖界なり  
     
     こうしおフュノたちはトヌマス邞に身を寄せ、藍琉は村の倖れにあるサムの家で寝起きするこずずなったのである。
     もっずも、実際に過ごしおみれば、サムずの数日間は悪いものではなく――圌は芋かけに反しお料理が䞊手く、この地方に䌝わる玠朎なおいしさの手料理でもおなし、居心地の良さを䞎えおくれた。
     
    「ぞえ。倜䞭もずっず倧勢を看病する仕事をしおたのか」
    「たあ仮眠はしおたしたけどね。でも、急倉があっお、党然䌑めないたた朝を迎えるこずもありたした。そのたた看取みずりになるずきも  」
    「だからか」
    「  ぞ」
    「だから藍琉は、フュノが戊いで苊しくなっおも助けられるように、付き人をしおるんだな」
    「    」
    「ほら、ミレス䌝統料理、川魚の『岩火いわび焌き』だ。食べおくれ」
      そういうフュノずの関わり方  か
     
     気が぀けば藍琉は、サムず腹を割っお話すようになっおいた。
     フュノず別の宿泊先になったこずぞの䞍満は消えおいなかったものの、少なくずも、それが顔に出ればサムに申し蚳ないず思うくらいには、満ちた時間を過ごせおいた。
     
     それでもやはり、この村でフュノず過ごせたはずの時間を倱った無念は拭えなかったが――
     
     たた、サムの話では、村では少し前から色ずりどりの光を攟぀結晶䜓の塊が芋぀かっおいたらしい。
     それを、近く来村予定だった『りォヌデンロヌド巡察隊』ぞ芋せようずしおいた矢先に、濃霧の怪異に包たれたずいう。
     
     藍琉はサムず結晶の塊を調べに行ったが、確かにあったはずのそれは、応然ず姿を消しおいた。
     
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    ⇚お読みいただきありがずうございたす。
     この物語が少しでも心に残りたしたら、
     「スキ」を抌しお応揎いただけるず、ずおも励みになりたす。りたす。
     
     次回、『颚のゆく先に③』にご期埅ください。
     https://note.com/fancy_fish5502/n/nff889d2c579f

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