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ヒューマンドラマ×グルメ小説|タバスコが辛くなくて困る(3)|すじこん葱焼き

    此上緋色@小説を書く人

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    【あらすじ】

     ライターの東海林しょうじ町子まちこは40歳独身女。花より団子の食道楽くいどうらく。

     大学からの友人、芙由美ふゆみとまどかと3人で、独身を脱却するぞと宣誓するが、実は一人がまあまあ楽しかったりする。

     立ち飲み屋で楽しむビールと焼き茄子、激安スーパーで買った鶏ハツでスパークリングワイン——

     最高過ぎて、結局今日も一人飲み——?

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    すじこん葱焼き


     金曜日の夜、まどかから連絡が入り、土曜日の夜に会えないかとのこと。町子は湯船から、二つ返事でOKの返事を返した。ちなみに町子が選んだ今日のバスソルトはベルガモット×レモンのフレーバー。ベルガモットの爽やかな香りに、甘酸っぱいレモンの香りが混ざる。ヒマラヤ岩塩の発汗作用とスクラブ効果で、お肌がツルツルになるのがお気に入りだった。

     ゆったりと湯船に浸かり、明日は仲のいい友人と食事。申し分ない週末だ。町子は思いながら、少し夜更かし気味でベッドに入った。

     ***

    「町子。こっち、こっち」

     お好み焼き屋に着くと、既にまどかは席で、町子が到着するのを待っていた。赤提灯に『お好み焼き』と書かれたその店はまどかのお気に入りらしい。パステルイエローの半袖カーディガンがよく似合うまどかは、どちらかと言うと可愛い系の見た目。にも関わらず、相変わらず好みは渋かった。30まで年齢確認されていた過去が、少しだけ懐かしい。

     スタッフが水とおしぼりを運んできて、町子はグラスビール、まどかは梅酒、それにまどかお勧めのすじこん葱焼きと焼きうどんを注文する。

    「ごめんね。今回ちょっと急で」とまどかが言う。
    「ううん。全然。でも、どうかした?」
    「いや。全然悪い話とかじゃないんだけど、実はライブのチケットが余っちゃって。9月の末に、別の友達と一緒に行こうって言ってチケットとったんだけど、その子が3人目を妊娠してライブに行けなくなったの。町子の好みどうか分からないけど、どうかな?」

     そう言ってまどかがスマホに表示させる電子チケットは、今人気の男性ソロアーティストのものだ。

    「え。いや、反対にめちゃくちゃ嬉しいんだけど。私もこれ行きたかったけど、ちょうど仕事の締め切りに追われてた頃で、申し込みし損ねたの」
    「じゃあ行ってくれる?」
    「もちろん。行く行く。今回のアルバム最高だよね」

     町子とまどかがそんな話をしていると、すじこん葱焼きと焼きうどんが運ばれてくる。熱々に熱された鉄板の上、すじこん葱焼きの醤油出汁と、焼きうどんのソースがジュージューと音を立てた。すじこん葱焼きにソースとマヨネーズをかければ、ますます魅惑の香りと音が立ち昇る。すじこん葱焼きと焼きうどんの表面は、たっぷりのソースが店の照明にキラキラと反射するほどだ。そして、それぞれの上で踊る鰹節。それはまるで、今の町子とまどかの気持ちを代弁するかのよう。この光景にワクワクしない人間などいないはずもないのだ。

    「食べよ。食べよ。いただきます」とまどかが言って、コテですじこん葱焼きを半分にする。「こっち、町子のね」と言って、反対の自分の分を皿に乗せた。町子もさっそく、すじこん葱焼きを皿にとる。

    「いただきます」と言うが早いか、ハフハフフーフーしながら、すじこん葱焼きを口に入れる。表面はさっくり、中はとろとろの食感。葱はとろりとしつつ、シャキシャキという食感も僅かに残る。豊かな甘味に、僅かな辛味。そして、その葱の風味を引き立てるかのような、出汁のたっぷり染みたすじこん。フルーティーで濃厚なソースの味もまた、絶妙にマッチしている。

     町子は、そういえば子どもの頃は葱も苦手だったなあと思いながら、この何層にも折り重なる味のハーモニーを楽しんでいた。たまに挟む、ビールの苦味がまた刺さり過ぎる。

    「町子がライブ行くって言ってくれて良かった。予定に組み込むの忘れないでね」
    「わかった。間違っても締め切りは外すようにする」

     町子はそう言って、すじこん葱焼きに内心身悶えしながら、ビール片手に笑った。

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