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ヒューマンドラマ×グルメ小説|タバスコが辛くなくて困る(4)|バナナチョコレートパフェとブラックコーヒー

    此上緋色@小説を書く人

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    【あらすじ】

     ライターの東海林しょうじ町子まちこは40歳独身女。花より団子の食道楽くいどうらく。

     大学からの友人、芙由美ふゆみとまどかと3人で、独身を脱却するぞと宣誓するが、実は一人がまあまあ楽しかったりする。

     立ち飲み屋で楽しむビールと焼き茄子、激安スーパーで買った鶏ハツでスパークリングワイン——

     最高過ぎて、結局今日も一人飲み——?

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    バナナチョコレートパフェとブラックコーヒー


    「砂浜で花火しちゃいけないんだよ」

     昼下がりのファミレスのボックス席。
     お隣の同性カップルの娘である小鈴こすずちゃん、8歳は言った。町子の前にある、小鈴ちゃんとお揃いのバナナチョコレートパフェ。小鈴ちゃんは口の周りをチョコレートだらけにしながら、美味しそうにパフェを頬張る。買い物ではしゃぎ疲れた身体に、その甘味はさぞや沁みるだろうと思いながら、町子はその光景を見ていた。

     町子にとっては物凄く久しぶりのパフェ。最初はあまり気乗りしないチョイスだったが、食べてみると案外悪くなかった。まったりと濃厚なバナナに、ひんやり冷たいチョコレートアイス。角切りにされたガトーショコラも甘すぎず、カカオの芳醇な香りが鼻腔を抜ける。とろりと艶のあるビターチョコレートのソースがアイスとバナナに絡んで、絶妙なハーモニーを奏でていた。

     その名の通り、まさにパーフェクトなデザート。町子は最近のファミレスのクオリティーに感心しながら、四十路女には辛い、冷えすぎた店内でブラックコーヒーのホットを飲んだ。甘くなった口の中に、心地よい苦味が広がる。なんて贅沢な組み合わせだろう——

    「町ちゃん。聞いてる?」と小鈴ちゃんは言う。

     今どきはちょっと古風な名前が流行っているらしい。金子みすゞの可愛い詩が聞こえてきそうだな、と思いながら、町子は小鈴ちゃんが美味しそうにパフェを食べる様子を見ていた。

    「え? ごめん。ぼーっとしてた。何て?」と町子が言う。
    「だぁーかぁーらぁー。砂浜で花火しちゃいけないの。洋ちゃんパパが言ってたもん」

     洋ちゃんパパ、というのは小鈴ちゃんの養親で、町子のお隣さんのこと。本名は寺前てらまえ洋介ようすけ。もう一人のお隣さんは寺前てらまえ保たもつ。2人は養子縁組をしていて、どちらも町子と同い年だ。町子とお隣さんカップルとは年齢が同じということもあり、何かとやりとりがある。今度、町子の実家のある田舎で、一緒に遊ぼうという計画が持ち上がっていた。海が近いので、『海で遊ぼう』が今回のテーマだ。

    「それがね、うちの田舎じゃ砂浜で花火できるのよ。もちろん、花火したあと、ちゃんとお片付けすればだけど」
    「ええー。本当に? 小鈴、花火できない砂浜しか知らない」と小鈴ちゃんは言う。

     町子も、最近は花火の出来ない海、砂浜が増えたのは知っていた。町子が20歳やそこらの頃は、『友達と海に遊びに行く』といえば海水浴と夜の花火がセットだったものだが、最近はもちろんそんな常識はない。むしろ、浜辺で花火なんて非常識極まりない、というのが最近の常識だろう。

    「それに、小鈴、砂浜で花火より、砂浜でシーグラス探しがいい」と小鈴ちゃんが言う。
    「シーグラス探し?」
    「洋ちゃんパパが調べてくれたの。町ちゃんの古いおうちがある海で、シーグラス拾いが出来るって。洋ちゃんパパが、夏休みの工作の『シーグラスのイヤリング作り』手伝ってくれるって言ってた」

     小鈴ちゃんは言って、瞳をキラキラさせる。
     町子は、先週買ったシー陶器の金継ぎピアスを思い浮かべながら、最近の小学生は洒落てるなあと思う。町子が小学生の頃は、紙粘土で作った『お菓子の家貯金箱』が最先端だった。

    「小鈴ちゃんはお洒落だなあ」
    「シーグラス探し、駄目?」
    「ううん。いいよ。楽しそう。砂浜でシーグラス探ししよう」
    「やったあ! じゃあ決まりね!」とチョコレートだらけの口のまま、小鈴ちゃんが言う。こういうところは8歳だ。
    「楽しみだね。町ちゃん」
    「うん。楽しみ」

     町子はそう言って、バナナチョコレートパフェの底の、溶けたアイスとチョコレートソースが絡んだパフを食べる。たまにはこんな甘過ぎる休日も悪くないな、と思いながら。

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