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ヒューマンドラマ小説|サンクチュアリが見えたら(21)|シマシマがゆえに

    【この小説は1頁につき、おおよそ3分で読めます】

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     田舎の古民家シェアハウス『サンクチュアリ』。
     住人は老若男女6人と猫が一匹。

     住人の一人、雨宮あめみや茉莉花まりかは40代シングルマザー。小学生の男の子が一人いる。茉莉花は、ある日サンクチュアリへの帰宅途中で男性と揉めていた50代の元モデルの女性、夏見なつみ紫ゆかりをサンクチュアリに誘う。

     茉莉花もまた、そうしてサンクチュアリに迎えられた一人だった——

     茉莉花をサンクチュアリに誘った野路菊のじぎくさくらは、過去に不倫経験のある70代女性。その他、神野じんの宗四郎そうしろうは30代の同性愛者の男性、木南きなみ悠はるかはお金のない現役大学生。

     仕事、恋愛、家族——

     これは、それぞれがそれぞれに、生き方に悩みながらも、少しずつその答えを見つけていく物語。


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    (1)はこちら

    シマシマがゆえに


    「ええ? そーお? まあ紫さんがいいなら、こちらとしてはそりゃ大歓迎だけど……」

     麗子は言って、壁に付けてあった、折り畳みチェアを持ってきて正面に腰掛ける。

    「麗子さん、お願いします」と紫が言う。

    「俺からも宜しく頼むよ。紫は島の生活にも不慣れだから、ママが見ててくれるなら安心だし」
    「もう。仕方ないわねえ。宗四郎には借りもあるし、そう言われたら断れないじゃない」

     麗子はそう言って、グラスに少し残っていたビールを飲み干した。

    「サンキュ! さすが、俺の信頼するママ!」
    「もう。調子いいんだから。その代わり、またちょこちょこ店に顔出してよね」
    「もちろん。約束するよ」

     宗四郎は言って、さらに「ママ、何か食べるもの出してよ」と言う。麗子が「ええ。何もないわよ」と言いながら、冷奴と枝豆を出してくれる。

    「ありがとうございます。麗子さん」
    「お礼を言うのはこちらよ。紫さん、これから宜しくね」
    「お世話になります。宜しくお願いします」

     紫が言って、空いた麗子のグラスにビールを注いだ。きめ細かな泡が、グラスいっぱいにシュワシュワと弾ける。

    「じゃあ、紫の入職祝いに。乾杯」
    「乾杯」

     再び、3人でグラスをくっつける。
     新たな門出は、いつもより高く、澄んだ音がした。


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    「ただいま。お待たせ〜」

     宗四郎と紫がサンクチュアリに戻ると、時計の針はちょうど夜の7時を指していた。葉と志麻さんが、我先にと2人を出迎える。

    「遅くなってごめんね」と紫が葉の頭を撫でると、葉が「おかえり。オムライス出来てるよ」と言う。

    「そっか。楽しみ。私もオムライス大好きなの」
    「僕と一緒だね!」

     ニャーンと紫の足元に擦り寄る志麻さんを抱き上げながら葉が言い、「おい。シマシマ。俺にも挨拶は?」と宗四郎が言う。その様子は、少し拗ねているようにも見える。

    「宗四郎が志麻さんのことちゃんと呼んであげないからだよ。いつもシマシマとか、しまごんとか呼ぶんだから」
    「なんだよ。シマシマはシマシマだろうよ。全く。いつも餌やってるのは俺なのに、茉莉花や葉にばかり懐きやがって」
    「志麻さんは、紫のことも好きみたいだよ?」
    「うるせえ」

     宗四郎は言って、さっさと居間に向かう。

    「紫のお仕事の話、上手くいかなかったの?」と葉。

    「ううん。上手くいった。明後日から来てくれって」
    「わあ! 紫、良かったね。でも、それならどうして、宗四郎は怒ってるの?」
    「怒ってるんじゃないのよ。たぶんちょっとヤキモチかな?」
    「そっか! 宗四郎はヘソマガリだからね!」

     葉が言って笑う。宗四郎の愛は、葉にも志麻さんにも、少し伝わりづらいらしい。

     報われないやつ、と思いながら、紫は葉に続いて居間に入った。

    「わあ。美味しそう」

     ちゃぶ台の上には既に、6人分のオムライスが準備されていた。トマトの乗ったグリーンサラダと、野菜スープもある。

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    【1174文字(あらすじ、その他除く本文のみ)】

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