
知られたくなかった足跡|あの日のわたしに会いに行く
「中学の作文を読んで、友達になりたいと思っていた」
高校に入学したとき、他校から来た同級生にそう告白されたことがある。
市で入賞し、その文集に載っていたのを読んで、記憶に残っていたらしい。 それを聞いて、文集を広げてみたら、その彼女も掲載されていた。
彼女の作文の方が、よっぽど素敵だと思った。
わたしが、そのとき書いた作文。
題材は、転校してきてクラスに馴染めず、保健室に逃げ込んでいた男子と体調不良でよく保健室にいたわたしが交流していた話。
その彼は、数か月ですぐに転校していった。
クラスに受け入れてやれなくて、心苦しかったということを書いた記憶がある。
だから、クラスメイトには読まれたくなかったのに、代表に選ばれてしまうという皮肉。
クラス担任も、彼とわたしが友人になっていたことを作文を見て知った。
そのとき心にあったものを正直に書いただけだった。
誰にも知られたくはなかった。
国語の先生だけにとどめていて欲しかった。
いい人ぶっているとか思われると恥ずかしい。
その男子と付き合っていたとか、勘違いされるのも勘弁。
でも、まわりの感想はそうではなかったらしい。
照れくさかったけれど、世界は優しかった。
わたしが残した足跡。
誰かがわたしに残していった足跡。