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タイムカプセルとトイレの神様|あの日のわたしに会いに行く

    ほうこ

    「いつだって全力だったね」
    といわれて始まった中学時代の思い出話。

    ん? いきなり「全力」とは、どういう流れ?
    どれだけ熱い人間?
    などと思っていたら、ふと思い出した言葉がある。

    でも、その言葉がはっきりと思い出せない。

    「バスケに夢中になっている姿が、白く燃えている」
    という意味だといっていた。

    中学時代、成績もダントツによくて、
    難しい言葉も知っていた女子が寄せ書きに書いてくれた。

    彼女が表現した言葉に会いたい。

    そう思って、実家を探してみた。
    すると、存在すらも忘れていたサイン帳がたくさんでてきた。
    まるで、タイムカプセル!

    彼女がくれたメッセージはみつからなかったけれど、
    サイン帳にはたくさんの似たような言葉があふれていた。

    当時はありきたりで面白みがないと切り捨てた。
    でも、それらは、確実にわたしの輪郭をかたどるピースだった。

    LINEで「いつだって全力だった」といった子のサイン帳には、
    「ほうこは生徒の”窓ガラス”」って書いてあった。

    意味不明。

    当時はその意味を聞いた気はするけど、内容は記憶にない。

    写メをしてみた。
    本人も覚えていないという。
    LINEでメッセージしながら、謎解きをする。

    「”生徒の鑑”って表現するところを”窓ガラス”に変えて、ギャグにしたんじゃない?」
    ということで、謎解きは一件落着。

    サイン帳には
    「いつもトイレをきれいにしてくれて。
    雨の日も風の日もがんばってくれた」
    と書いてあるのを見つけ、
    え? トイレ掃除?
    サイン帳にお礼を書かれるほど、がんばってた?
    と驚き、そのインパクトにやられた。

    すると、LINEでは
    「トイレ掃除をするとき、よくほうこを思い出す。
    ほうこがトイレ掃除担当のとき、トイレがきれいだったよね」
    ってメッセージをしてきた。
    こちらから、その話題をふっていないのに、
    君もかっ!
    どんだけトイレ掃除の印象が!?
    とわたしが驚いた。

    そういえば、この頃。
    「養護教諭になったら、これはわたしの守備範囲」と思っていたことや、
    「トイレ掃除をしたら、かわいい赤ちゃんが生まれる」
    と聞いて、おまじないのような気持ちで取り組んでいたことを思い出した。
    「トイレの神様」という歌がヒットする前の時代だ。

    先生たちからのメッセージもたくさんあった。
    今では名前も存在も記憶から消えていた、授業を持ってもらっていない先生からの言葉まで残っていた。
    そこには、当時のわたしがしっかり刻まれていた。

    そして、わたしの人生になくてはならない一番の恩師からも。

    「吾が小鳥よ、今こそ飛び立て、大空へ。
    嵐が吹こうとも、恐れることなく。」

    当時は、卒業生に贈るありきたりなメッセージだと思った。

    今は、この和歌に深いまなざしと愛情を感じれた。
    愛おしさがにじんでいる。

    わたしは、ようやく受け取ることができたみたいだ。

    先生にまた会えた。
    まぎれもなく、全力で白く燃えていた、あの日のわたしにも。




     
     
     
    50代おひとりさま。ポンコツ街道まっしぐら。 小さなおうちで、シンプルな暮らしと庭時間を楽しんでいます。 過去の自分に会いに行くエッセイ「あの日のわたしに会いに行く」、人生の後半戦を綴る「おひとりさまの老後」を中心に、暮らしや心の記録、くすっと笑える短編エッセイを綴っています。

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