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『連休、ゆっくりできた?』と聞かれるのが、少しだけ苦手になった|52歳

「連休、ゆっくりできた?」

そう聞かれたら、
たぶん私は少しだけ答えに困る。

休みだったかと聞かれれば、休みだった。

では、休めたのか。

そう聞かれると、
少し話が変わってくる。

シルバーウィークは、いつもの生活だった

世間はシルバーウィークだった。

テレビをつければ観光地が映り、
道路の渋滞情報が流れていた。

けれど我が家は、ほとんどいつも通りだった。

父と母のことがある。

食事を気にして、
薬を気にして、
体調を見て、
その日の予定を考える。

連休だからといって、
介護まで休みになるわけではない。

しかも今年は台風と雨。

ようやく晴れた火曜日は、
妻が仕事だった。

気がつけば、
「休みらしいこと」をほとんどしないまま、
連休の最終日になっていた。

まあ、こんなもんだろう。

最近はそう思うことにも、
ずいぶん慣れた。

それでも、少しだけ時間を作った

昨日の水曜日。

どうにか数時間だけ時間を作ることにした。

父と母には、
二人で家にいてもらう。

もちろん、
完全に何も考えず出かけられるわけではない。

外からカメラで様子を確認できるようにして、
何かあればすぐ戻れる距離。

時間も長くは取らない。

そんな条件をいくつもつけて、
妻と娘と私の三人でランチに出かけた。

久しぶりだった。

大げさなものではない。

旅行に行ったわけでもなければ、
遠くへ出かけたわけでもない。

ただ三人で、
昼飯を食べに行っただけだ。

それでも店の席に座って、
妻と娘が目の前にいるのを見た時、

「ああ、三人だけだな」

と思った。

そのことが、
思っていたより少し嬉しかった。

昔は、こんな準備はいらなかった

考えてみれば、
昔は家族で飯を食べに行くのに
こんな準備はいらなかった。

「どこ行く?」

それだけだった。

店を決めて、
車に乗って、
帰りたくなったら帰る。

何時までに戻らなければ、とか。

家の中は大丈夫だろうか、とか。

そんなことは考えなかった。

今は違う。

出かける前に父と母の様子を見る。

食事は大丈夫か。

トイレは大丈夫か。

何かあったら、
すぐ帰れる場所か。

スマホを時々見て、
カメラを確認する。

たった数時間のランチなのに、
いくつもの条件がつく。

自由というのは、
いつの間にかこうやって
小さくなっていくのかもしれない。

でも昨日、
少し違うことも思った。

小さくなったからといって、
なくなったわけではない。

たった数時間でも

二時間か三時間だったと思う。

それでも、
妻と娘と私の三人で飯を食べた。

くだらない話もした。

普通に食べた。

普通に帰ってきた。

ただそれだけだった。

でも今年のシルバーウィークを思い返した時、
たぶん私が一番覚えているのは
この数時間なのだと思う。

連休を満喫したとは言えない。

ゆっくり休んだとも言えない。

それでも、

「何もなかった」

ではなかった。

それで十分なのかもしれない。

そして現実は、きれいには終わらない

そんなことを思いながら、
夜になった。

歯を磨き、
いつものようにフロスを使っていた。

すると突然、

ポロッ。

歯の詰め物が取れた。

「あ。」

せっかく少しだけ
いい一日だったのに。

最後はこれである。

ただ幸いなことに、
金曜日はちょうど歯医者の定期健診だった。

こういうところだけ、
人生は妙に帳尻を合わせてくる。

シルバーウィークが終わった。

今日からまた、
いつもの生活が始まる。

「連休、ゆっくりできた?」

そう聞かれたら、
やっぱり少し答えに困る。

でも、

妻と娘と三人で、
久しぶりに飯を食った。

今年はそれでいい。

休めたかどうかは分からない。

それでも、
自分たちの時間を少しだけ取り戻せた。

たった数時間でも。

それはちゃんと、
私の休日だった。

休みだった日と、休めた日は、たぶん同じではない。それでも、残った時間までなくす必要はない。

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