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【短編小説】『黒い羊と無菌狂』3

    ⇒【第2話:リアル人狼鬼ごっこ】からの続き

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    【第3話:異変の始まり】


    <公園:中央ステージ>

    リーリヤ
    『ここで人狼と村人の配役を決めてもらいましょー!スタッフさんお願いします!』

    MC・リーリヤさんの合図とともに、ステージ両袖からスタッフさんが3名ずつ登場した。

    1人1人がハンドドライヤーのような器具を持っていた。

    ミオネ
    「いよいよね…私が人狼だったらどうしよう…?」

    舞台袖から合図が送られると、

    リーリヤ
    『皆さん!”リアル人狼鬼ごっこ”のスタートです!人狼に選ばれた方は、がんばって逃げ切ってくださいねー!』

    リーリヤさんの声を合図に、ステージのスタッフさんたちがハンドドライヤーを観客に向けた。

    すると、観客はステージにダイブする勢いで、我先に前方へ駆け出した。

    ミオネ
    「え?え?!どういうこと?!どうやって人狼を決めるの?マユ…?」

    マユ
    『早く!早く前に行かせて!』

    ミオネ
    「ちょッ…!マユ…?!」

    マユたちもステージ前方へ駆けていった。

    リーリヤ
    『発射まで3!2!1…ゼロ----!!』

    プシュー!!

    スタッフさんのハンドドライヤーから、紫色のスモークが勢いよく吹き出した。

    ミオネ
    「あれは入口で浴びたスモークと同じ…?いいえ…もっと強い…?」

    大量のスモークが広範囲に広がり、ステージと観客を覆い始めた。

    ミオネ
    「ゴホッ!ゴホッ!ちょっと強すぎ…。」

    本社の人も、入口のスタッフさんも「無害」と言ったが、私の直感は危険を知らせていた。

    ミオネ
    「ねぇマユ!これ浴びたら危ないよ?スモークの外に出ようよ?!」

    まだ手の届く距離にいるマユの手を引いたが、

    マユ
    『離してよ!いま人狼があぶり出されるの!邪魔しないで!』

    バシッ!

    ミオネ
    「きゃあッ!」

    ドスン!

    興奮したマユは私の手を振り払い、私を後ろへ突き飛ばした。

    ミオネ
    (マユがあんなに攻撃的に…?それに”あぶり出される”って…どういうこと…?)」

    「待ってマユ!どうしたの?!前に行っちゃダメ!」

    私の声もむなしく、マユたちはスモークの中へ消えていった。


    ミオネ
    「痛ッ…もう少しで…スモークの外…!」

    私は背中の痛みをこらえながら、スモークが届かない後方へ這い出た。

    ステージも観客もすでにスモークで覆われ、誰の姿も見えなくなっていた。

    『ワァァァァァ!!!!』

    ミオネ
    「スモークの中は興奮の渦ね…マユたち、ぶつかってケガしてなければいいけど…。」

    チカッ、チカッ、

    ミオネ
    「…気のせい…?紅い…光が…?」

    スモークの中に、レーザーポインターの”紅い閃光”がいくつも見えた。

    本社で私にまとわり付いてきた光と同じだ。

    『ワァァァァ!!!』

    『ワァァァ!!』

    『…ァァ…!』

    …これも気のせい?

    紅い閃光が走るたびに、観客の大歓声が次第に小さくなっていくような…?

    チカッ、チカッ、

    シュン!シュン!

    今度は、紅い閃光の軌道が半円を描いた。

    何度も、速く、鋭く、まるで何かを斬るように。

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    ◇◇

    ミオネ
    「マユたち…大丈夫かな…?」

    ステージを覆っていたスモークが晴れてきた。

    あんなに騒がしかった観客は全員、黙って立ち尽くしていた。

    私は大きな木の陰に隠れ、背中をさすりながら客席の様子を見てみると、

    ミオネ
    「…人が…減ってる…?」

    満席だったはずの観客席は、紅い弧を描いた場所に空間ができていた。

    どういうこと?

    スモークで何も見えない中、多くの人が客席から退場したの?

    そういえば、マユたちも見当たらない。

    ステージ中央の最前列あたりに走って行ったはずなのに。

    まだ多くの人が残っているから、隠れて見えないだけ?


    ザワザワ…ザワザワ…

    黙って立っていた人たちが、再び騒ぎ始めた。

    彼らの目はどこか焦点が合っておらず、白目は血走っているように見えた。

    リーリヤ
    『村人の皆さん!人狼狩りの始まりです!今日を楽しんでくださいねー!』

    マイク越しに透き通った声が響いた。

    ミオネ
    「村人?配役なんていつ決まったの…?」

    『オォォォォォ!!!』

    リーリヤさんの声を合図に、観客たちが突然、雄叫びをあげた。

    ミオネ
    「あの人たち…さっきまでと雰囲気が全然違う…?」

    『人狼ドコダ?』

    『サガセ!サガセ!』

    『ヨウセイシャ ヲ 捕ラエロ!』

    『ケンサ ヲ 受ケテナイヤツ ヲ 引キズリ出セ!』

    ミオネ
    「…え…?何て言ったの…?聞き取れないよ…。」

    突然カタコトになった彼らは、意気込んで会場の各地へ散っていった。

    私の頭の中は、すでにパニックだった。

    突然のスモークと、紅い閃光。

    それを浴びた観客たちは、まるで知能を失い、狂気に堕ちたよう。

    配役もルールもわからないまま、リアル人狼ゲームがスタート。

    1つだけ直感的にわかるのは、今の彼らに見つかったら危険だということ。

    ミオネ
    「この会場は危ない…!何とか身を隠しながら…マユたちを探さなきゃ!」

    さっきの転倒で全身が痛いが、そんなことを言っている場合じゃない。

    1人でも幼馴染を見つけて、一緒に会場から逃げよう。


    ?
    『うふふ…逃がさないよ…人狼め…!!』


    公園内を漂う紫色のスモークが、少しずつ濃くなってきた。

    私は足を引きずりながらステージを後にした。

    ステージの陰からの、私への鋭い視線に気づかないまま。


    ⇒【第4話:紅い人狼狩り】に続く


    【本作のオープニングアニメ】



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