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ネルソン流の量子力学

    EMAN

    「ネルソンの確率力学」あるいは「ネルソン流の量子力学」と呼ばれる
    シュレーディンガー方程式と等価な理論を目指して作られた理論があります。エドワード・ネルソンによって1966年に提案されました。これは量子力学の新たな解釈の提案を意図したものではなく、同じ結果を導くための計算手法のモデルであるということをネルソン自身が強調し続けてきたため、「ネルソン解釈」と呼ばれることは滅多にありません。

    量子力学の解釈としての存在感が薄いために、ボーム解釈とまとめて雑に紹介される事が多く、似たようなものだと誤解されていることがあるかも知れません。このモデルでは粒子を実在的なものだと考えますが、ボーム解釈とは全く違って、ランダムなジグザグ運動をするのだとします。これは量子力学が持つ不思議な確率的な性質は、もしかすると粒子が常にブラウン運動のように揺らいでいるために現れるのではないだろうか、という発想から生まれた考え方です。しかし揺らぎの源が何であるかという説明は特にありません。


    基本的な仮定と伊藤公式

    ネルソン流の量子力学では粒子の位置を確率過程として捉え、X(t) X(t) で表し、その微小変化が次のように表せるという前提を置きます。

    dX(t) = b(X,t) dt + σ dW(1)\mathrm{d} X(t) \ =\ b(X,t) \, \mathrm{d} t \ +\ \sigma \, \mathrm{d} W \tag{1}

    このb(X,t) b(X,t) はドリフト速度であり、平均的な移動を表します。微小な時間経過に比例して位置が変化することが表されています。

    dW \mathrm{d} W はウィーナー過程と呼ばれており、ブラウン運動のような確率的にランダムな動きを表すものとします。これは無限の速度で位置が変わることを仮定しているわけではありませんし、不連続な位置変化を仮定しているわけではありません。物理的には連続的な移動をイメージしているのですが、確率的に突如起こる変化であり、時間あたりの移動回数も分かりません。

    このような確率的に決まる位置X(t) X(t) を変数とする関数f(X(t),t) f(X(t),t) を考えます。f(X(t),t) f(X(t),t) を時間で微分すると、通常は次のような形の式が成り立つと考えたくなります。

    df(X(t),t)dt = ∂f∂t + ∂f(X(t))∂XdX(t)dt\frac{\mathrm{d} f(X(t),t)}{\mathrm{d} t} \ =\ \frac{\partial f}{\partial t} \ +\ \frac{\partial f(X(t))}{\partial X} \frac{\mathrm{d} X(t)}{\mathrm{d} t}

    ところが、今回はX(t) X(t) がランダムな動きをしますから関数が連続的だという仮定が使えず、このような式が成り立ちません。確率過程でも使えるような数学的な拡張が必要になり、次のようになります。

    df(X(t),t)dt = ∂f∂t + b(X,t) ∂f∂X + σ ∂f∂XdWdt + 12σ2 ∂2f∂X2\frac{\mathrm{d} f(X(t),t)}{\mathrm{d} t} \ =\ \frac{\partial f}{\partial t} \ +\ b(X,t) \, \frac{\partial f}{\partial X} \ +\ \sigma \, \frac{\partial f}{\partial X} \frac{\mathrm{d} W}{\mathrm{d} t} \ +\ \frac{1}{2} \sigma^2 \, \frac{\partial^2 f}{\partial X^2}

    しかしこの書き方には問題点があります。便宜的にdW/dt \mathrm{d} W/\mathrm{d} t と書いていますが、dW \mathrm{d} W は微分できない量なので、誤解を招かないように両辺にdt \mathrm{d} t を掛けて次のような形で表しておいた方が良いでしょう。

    df(X(t),t) = ∂f∂tdt + b(X,t) ∂f∂Xdt + σ ∂f∂XdW + 12σ2 ∂2f∂X2dt(2)\mathrm{d} f(X(t),t) \ =\ \frac{\partial f}{\partial t} \mathrm{d} t \ +\ b(X,t) \, \frac{\partial f}{\partial X} \mathrm{d} t \ +\ \sigma \, \frac{\partial f}{\partial X} \mathrm{d} W \ +\ \frac{1}{2} \sigma^2 \, \frac{\partial^2 f}{\partial X^2} \mathrm{d} t \tag{2}

    これは「伊藤公式」と呼ばれています。物理を考慮した応用的な公式だと思えるかも知れませんが、もっと普遍的なものであり、確率論を取り入れた確率微分方程式の理論で広く使われる数学的な公式です。まずはこの公式が成り立つ理由を説明していきましょう。

    関数f(X(t),t) f(X(t),t) の時間変化の2次までの近似は次のように表せます。

    f(X(t+dt),amp; t+dt)amp;≃ f(X(t),t) + ∂f∂tdt + ∂f∂XdXamp;  + 12∂2f∂t2dt2 + ∂f∂X∂tdXdt + 12∂2f∂X2dX2(3)\begin{aligned} f(X(t+\mathrm{d} t),&\ t+\mathrm{d} t) \\ &\simeq \ f(X(t),t) \ +\ \frac{\partial f}{\partial t} \mathrm{d} t \ +\ \frac{\partial f}{\partial X} \mathrm{d} X \\ &\ \ +\ \frac{1}{2} \frac{\partial^2 f}{\partial t^2} \mathrm{d} t^2 \ +\ \frac{\partial f}{\partial X \partial t} \mathrm{d} X \mathrm{d} t \ +\ \frac{1}{2} \frac{\partial^2 f}{\partial X^2} \mathrm{d} X^2 \tag{3} \end{aligned}

    この中のdX \mathrm{d} X のところに (1) 式を代入します。(1) 式の中にはdt \mathrm{d} t やdW \mathrm{d} W があるので、2次の微小量として、(dt)2 (\mathrm{d} t)^2 やdt dW \mathrm{d} t \, \mathrm{d} W や(dW)2 (\mathrm{d} W)^2 が現れます。dt2 \mathrm{d} t^2 を含む項はdt \mathrm{d} t に比べてはるかに小さいので落とします。しかし生き残る項もあります。dW \mathrm{d} W というのはブラウン運動のようなランダムな運動なのですが、行きつ戻りつしながら確率的に元の位置から離れて行きます。その度合いは時間に比例するのではなく、dW \mathrm{d} W は平均的にdt \sqrt{\mathrm{d}t} のオーダーであると評価されます。よってdW2 \mathrm{d} W^2 の項はdt \mathrm{d} t に書き直されて生き残ります。dWdt \mathrm{d} W \mathrm{d} t の項は(dt)3/2 (\mathrm{d} t)^{3/2} 程度だと評価されてdt \mathrm{d} t と比べれば無視できる程度だということで落とします。

    df(X(t),t) \mathrm{d} f(X(t),t) というのはf(X(t+dt), t+dt)−f(X(t),t) f(X(t+\mathrm{d} t),\ t+\mathrm{d} t) - f(X(t),t) のことですから、そのような形で (3) 式を整理すると (2) 式の伊藤公式が出来上がります。


    前進過程と後退過程

    確率過程を変数に持つ物理量f(x,t) f(x,t) を考えて行きたいのですが、もうひとつの考慮すべきことがあります。それは時間微分のときに右からの微分と左からの微分の値が一致する保証が無いことです。ランダムな動きをしているので、いたるところで滑らかではないというイメージです。通常ならばこのような状況は「微分不可能」だと考えるのですが、確率過程ではそれを避ける事はできませんので、前進微分D+ D^{\scriptscriptstyle +} と後退微分D− D^{\scriptscriptstyle -} という二種類の平均時間微分演算子を用意して次のように定義することにします。

    D+f(x,t) := lim⁡h→0E[f(X(t+h),t+h)−f(X(t),t)h∣X(t)=x](4)D^{\scriptscriptstyle +} f(x,t) \ :=\ \lim_{h \to 0} E\left[ \frac{f(X(t+h),t+h) − f(X(t),t)}{h} \Big| _{X(t)=x} \right] \tag{4}

    D−f(x,t) := lim⁡h→0E[f(X(t),t)−f(X(t−h),t−h)h∣X(t)=x](5)D^{\scriptscriptstyle -} f(x,t) \ :=\ \lim_{h \to 0} E\left[ \frac{f(X(t),t) − f(X(t-h),t-h)}{h} \Big| _{X(t)=x} \right] \tag{5}

    E[⋯ ] E[\cdots] というのは期待値を意味しており、X(t)=x X(t) = x という条件を最後に代入する形になっています。この定義には微分の結果として得られる物理量を位置x x における期待値として取得したいという思惑が含まれています。左辺の表記には少し曖昧な点がありますが、これはf(X(t),t) f(X(t),t) と表される量に対して平均微分操作を行い、その結果が(x,t) (x,t) の関数として得られると解釈してください。

    後退微分D− D^{\scriptscriptstyle -} の定義は、注目している時刻t t から少し以前の時刻を基準にして時刻t t までの傾きを見る形になっており、関数をグラフで描いて考えるところの「左からの微分」を表現していることが分かるかと思います。

    最も単純な例としてD+X D^{\scriptscriptstyle +} X というものを考えてみましょう。これはf(X,t)=X f(X,t) = X という状況ですから、先ほどの定義に当てはめるとかなり簡単になります。先ほどの定義では視認性を考慮して時刻の微小変化をh h と書いていましたが、今回はdt \mathrm{d} t と書いた方が分かりやすいでしょう。

    D+X amp;= lim⁡dt→0E[X(t+dt)−X(t)dt∣X(t)=x]amp;= lim⁡dt→0E[dXdt∣X(t)=x]amp;= lim⁡dt→0E[b(X,t)dt + σ dWdt∣X(t)=x]amp;= b(x,t)\begin{aligned} D^{\scriptscriptstyle +} X \ &=\ \lim_{\mathrm{d} t \to 0} E\left[ \frac{X(t+\mathrm{d} t) − X(t)}{\mathrm{d} t} \Big| _{X(t)=x} \right] \\ &=\ \lim_{\mathrm{d} t \to 0} E\left[ \frac{\mathrm{d} X}{\mathrm{d} t} \Big| _{X(t)=x} \right] \\ &=\ \lim_{\mathrm{d} t \to 0} E\left[ \frac{b(X,t) \mathrm{d} t \ +\ \sigma \, \mathrm{d} W}{\mathrm{d} t} \Big| _{X(t)=x} \right] \\ &=\ b(x,t) \end{aligned}

    途中で (1) 式を使いました。(2) 式の伊藤公式にf(X(t),t) f(X(t),t) がX(t) X(t) の場合を当てはめて使っても良かったのですが、このような単純な場合には (1) 式と (2) 式とは同じ結果になりますからわざわざ (2) 式を使うまでもありません。(1) 式というのは時刻t t からわずかに後の時間にどうなるかというdX \mathrm{d} X を考えているので、実は前進微分の考え方がそのまま反映された式だったと言えます。最初に説明した通り、b(x,t) b(x,t) というのは粒子の平均的な速度を表す量だということが分かります。

    では、後退微分を使ったD−X D^{\scriptscriptstyle -} X はどうなるのでしょうか。こちらは先ほども書いたようにb(x,t) b(x,t) とは異なる値が出てくる可能性があります。しかしまだそれを計算するための準備が整っていませんので、b∗ b^{\ast} と表記することにして次のように定義するにとどめておくことにします。

    b∗ := D−Xb^{\ast} \ :=\ D^{\scriptscriptstyle -} X

    この他にまだ簡単に出来ることがあります。D+f(x,t) D^{\scriptscriptstyle +} f(x,t) の定義の右辺に伊藤公式を当てはめてみます。(4) 式の分子の部分がまさに伊藤公式そのものです。dW \mathrm{d} W の平均は 0 ですから期待値を取ることでその項は消えてしまい、また、X(t) X(t) はx x で置き換えますから次のように表せます。

    D+f(x,t) = ∂f∂t + b(x,t) ∂f∂x + 12σ2 ∂2f∂x2D^{\scriptscriptstyle +} f(x,t) \ =\ \frac{\partial f}{\partial t} \ +\ b(x,t) \, \frac{\partial f}{\partial x} \ +\ \frac{1}{2} \sigma^2 \, \frac{\partial^2 f}{\partial x^2}

    ここまでは1次元で考えてきましたが、話を3次元に拡張すると、dX \mathrm{d} X の他にdY \mathrm{d} Y やdZ \mathrm{d} Z のようなものが現れます。わざわざそのような記号を増やしたり式を 3 つ並べるのも面倒なので、(1) 式をベクトルとして考え直せば良いでしょう。そうするとb b もベクトルになりますから、太字でb \boldsymbol{b} と表すことにします。関数f(x,y,z,t) f(x,y,z,t) を微分したときにはそれらについての項の数が増えるだけですので、難しい修正は必要ありません。項は増えるのですが、そのようなものはナブラを使うことで次のようにまとめて表すことが出来ます。

    D+f(x,t) = ∂f∂t + b⋅∇f + 12σ2 ∇2f(6)D^{\scriptscriptstyle +} f(\boldsymbol{x},t) \ =\ \frac{\partial f}{\partial t} \ +\ \boldsymbol{b} \cdot \nabla f \ +\ \frac{1}{2} \sigma^2 \, \nabla^2 f \tag{6}


    後退微分

    次に後退微分について考えてみましょう。これは注目している時刻に到達するまでの変化を考えるものなので、(1) 式のdX \mathrm{d} X に相当するのはX(t)−X(t−dt) X(t) - X(t-\mathrm{d} t) でしょう。(1) 式とは別の確率過程を導入したわけではないので新たな式を書きたくはないのですが、説明のためには仕方ありません。便宜的に次のように表すことにしましょう。

    X(t)−X(t−dt) = b∗(X,t)dt + σ dW∗(7)X(t) - X(t-\mathrm{d} t) \ =\ b^{\ast}(X,t) \mathrm{d} t \ +\ \sigma \, \mathrm{d} W^{\ast} \tag{7}

    b b は (1) 式とは違う値になるだろうということを見越してb∗ b^{\ast} で表しています。後で分かりますが、先ほど定義したb∗ b^{\ast} と同じものです。dW∗ \mathrm{d} W^{\ast} も (1) 式で考えている時刻とは違うので同じ動きをするわけではないということで別の記号で表しておきましたが、ランダムに振る舞う性質は変わりませんし、あまり区別する理由はありません。

    後で分かると書きましたが、今すぐにでも説明できそうです。先ほどのb∗ b^{\ast} の定義に従って計算を進めると、矛盾無く次のような結果になることが分かります。

    b∗ amp;:= D−Xamp;= lim⁡dt→0E[X(t)−X(t−dt)dt∣X(t)=x]amp;= lim⁡dt→0E[b∗(X,t)dt + σ dW∗dt∣X(t)=x]amp;= b∗(x,t)\begin{aligned} b^{\ast} \ &:=\ D^{\scriptscriptstyle -} X \\ &=\ \lim_{\mathrm{d} t \to 0} E\left[ \frac{X(t) − X(t-\mathrm{d} t)}{\mathrm{d} t} \Big| _{X(t)=x} \right] \\ &=\ \lim_{\mathrm{d} t \to 0} E\left[ \frac{b^{\ast}(X,t) \mathrm{d} t \ +\ \sigma \, \mathrm{d} W^{\ast}}{\mathrm{d} t} \Big| _{X(t)=x} \right] \\ &=\ b^{\ast}(x,t) \end{aligned}

    次にD−f(x,t) D^{\scriptscriptstyle -} f(x,t) の公式を作っておきましょう。前に伊藤公式を説明するときの準備に使った (3) 式の近似式のdt \mathrm{d} t を−dt -\mathrm{d} t に置き換えたものを考えます。前と同じ理屈が成り立ちますからdt2 \mathrm{d} t^2 やdW∗dt \mathrm{d} W^{\ast} \mathrm{d} t の項はあらかじめ落としておいて、(dW∗)2=dt (\mathrm{d} W^{\ast})^2 = \mathrm{d} t という置き換えをすると次のようになります。

    f(Xamp;(t−dt), t−dt)amp;≃ f(X(t),t) − ∂f∂tdt + ∂f∂XdX + 12σ2∂2f∂X2dt\begin{aligned} f(X&(t-\mathrm{d} t),\ t-\mathrm{d} t) \\ &\simeq \ f(X(t),t) \ -\ \frac{\partial f}{\partial t} \mathrm{d} t \ +\ \frac{\partial f}{\partial X} \mathrm{d} X \ +\ \frac{1}{2} \sigma^2 \frac{\partial^2 f}{\partial X^2} \mathrm{d} t \end{aligned}

    今回、後退微分の定義式である (5) 式に代入したいのはf(X(t),t)−f(X(t−dt), t−dt) f(X(t),t) - f(X(t-\mathrm{d} t),\ t-\mathrm{d} t) ですから、それを左辺に持ってくるように並べ直すと次のようになります。

    f(X(t),t) amp;− f(X(t−dt), t−dt)amp;≃ ∂f∂tdt − ∂f∂XdX − 12σ2∂2f∂X2dt\begin{aligned} f(X(t),t) \ &-\ f(X(t-\mathrm{d} t),\ t-\mathrm{d} t) \\ &\simeq \ \frac{\partial f}{\partial t} \mathrm{d} t \ -\ \frac{\partial f}{\partial X} \mathrm{d} X \ -\ \frac{1}{2} \sigma^2 \frac{\partial^2 f}{\partial X^2} \mathrm{d} t \end{aligned}

    少し分かりにくいのがdX \mathrm{d} X の部分です。以前はこれをdX=X(t+dt)−X(t) \mathrm{d} X = X(t+\mathrm{d} t) - X(t) だと考えていたのでした。今はdt \mathrm{d} t を−dt -\mathrm{d} t に置き換えていますから、dX \mathrm{d} X をX(t−dt)−X(t) X(t-\mathrm{d} t) - X(t) と考えなくてはなりません。つまり (7) 式の符号を変えたものがそれなので、今回のdX \mathrm{d} X には−b∗ dt−σ dW∗ -b^{\ast} \, \mathrm{d} t - \sigma \, \mathrm{d} W^{\ast} を代入すべきです。その結果、次のようになります。

    f(X(t),t) amp;− f(X(t−dt), t−dt)amp;≃ ∂f∂tdt + b∗∂f∂Xdt + σ∂f∂XdW∗ − 12σ2∂2f∂X2dt\begin{aligned} f(X(t),t) \ &-\ f(X(t-\mathrm{d} t),\ t-\mathrm{d} t) \\ &\simeq \ \frac{\partial f}{\partial t} \mathrm{d} t \ +\ b^{\ast} \frac{\partial f}{\partial X} \mathrm{d} t \ +\ \sigma \frac{\partial f}{\partial X} \mathrm{d} W^{\ast} \ -\ \frac{1}{2} \sigma^2 \frac{\partial^2 f}{\partial X^2} \mathrm{d} t \end{aligned}

    これを後退微分の定義である (5) 式に当てはめると、期待値を考えるところでdW∗ \mathrm{d} W^{\ast} は平均化されてしまって、次のようになります。

    D−f(x,t) = ∂f∂t + b∗(x,t) ∂f∂x − 12σ2 ∂2f∂x2D^{\scriptscriptstyle -} f(x,t) \ =\ \frac{\partial f}{\partial t} \ +\ b^{\ast}(x,t) \, \frac{\partial f}{\partial x} \ -\ \frac{1}{2} \sigma^2 \, \frac{\partial^2 f}{\partial x^2}

    3次元の場合には次のように書けるでしょう。

    D−f(x,t) = ∂f∂t + b∗⋅∇f − 12σ2 ∇2f(8)D^{\scriptscriptstyle -} f(\boldsymbol{x},t) \ =\ \frac{\partial f}{\partial t} \ +\ \boldsymbol{b}^{\ast} \cdot \nabla f \ -\ \frac{1}{2} \sigma^2 \, \nabla^2 f \tag{8}

    前進微分の場合の公式である (6) 式と比べると、右辺の最後の項の符号だけが変わっていることが分かります。


    フォッカー・プランク方程式

    ここまでに作ったD+f(x,t) D^{\scriptscriptstyle +} f(x,t) やD−f(x,t) D^{\scriptscriptstyle -} f(x,t) の公式は、粒子がX(t)=x X(t) = x にあるという条件下での微分を表していたのでした。今からこれらを使って、粒子が任意の分布ρ(x,t) \rho(x,t) を持つという状況でのことを考えてゆきます。まず、次のような等式が成り立つというイメージを確認していきましょう。

    ddtE[f(X(t),t)] = E[D+f(X(t),t)]\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} t} E\Big[ f(X(t),t) \Big] \ =\ E \Big[ D^{\scriptscriptstyle +} f(X(t),t) \Big]

    f(X(t),t) f(X(t),t) というのは、粒子の位置によって決まる何らかの物理量を表す量です。粒子の位置は確率によって決まるものですから、f(X(t),t) f(X(t),t) の値も確率によって決まります。その期待値がE[f(X(t),t)] E\Big[ f(X(t),t) \Big] で、それが時間的にどう変化するかを知りたいのです。それが左辺の意味するものです。右辺のD+f(X(t),t) D^{\scriptscriptstyle +} f(X(t),t) の部分は粒子がX(t)=x X(t) = x にあるという条件下での時間微分でしたが、その期待値を考えるというのは、粒子のあらゆる位置について、その確率的な重みを掛けて合計したものなので、同じ内容を意味しています。あらゆる位置での時間変化を確率を加味して合計したものは全体の時間変化になるというイメージです。厳密には時間微分と期待値の積分の順序を入れ替えていることになるのですが、f(X(t),t) f(X(t),t) 自体の性質が特殊なものではないので問題はないでしょう。期待値は粒子の存在確率ρ(x,t) \rho(x,t) を掛けて積分したものなので、上の等式は次のように書き換えられます。

    ddt∫ρf dx amp;= ∫ρ(∂f∂t + b⋅∇f + 12σ2 ∇2f)dx∴ ∫(∂ρ∂tf+ρ∂f∂t)dx amp;= ∫ρ(∂f∂t + b⋅∇f + 12σ2 ∇2f)dx∴ ∫∂ρ∂tf dx amp;= ∫ρ(b⋅∇f + 12σ2 ∇2f)dx\begin{aligned} \frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t} \int \rho f \, \mathrm{d} x \ &=\ \int \rho \left( \frac{\partial f}{\partial t} \ +\ \boldsymbol{b} \cdot \nabla f \ +\ \frac{1}{2} \sigma^2 \, \nabla^2 f \right) \mathrm{d} x \\ \therefore\ \int \left( \frac{\partial \rho}{\partial t} f + \cancel{\rho \frac{\partial f}{\partial t}} \right) \mathrm{d} x \ &=\ \int \rho \left( \cancel{\frac{\partial f}{\partial t}} \ +\ \boldsymbol{b} \cdot \nabla f \ +\ \frac{1}{2} \sigma^2 \, \nabla^2 f \right) \mathrm{d} x \\ \therefore\ \int \frac{\partial \rho}{\partial t} f \, \mathrm{d} x \ &=\ \int \rho \left( \boldsymbol{b} \cdot \nabla f \ +\ \frac{1}{2} \sigma^2 \, \nabla^2 f \right) \mathrm{d} x \end{aligned}

    右辺のそれぞれの項ではf f に対する微分が行われていますが、これを部分積分によってそれ以外の部分に対する微分に書き換えます。無限遠では粒子の存在確率ρ \rho は 0 であることを使って定数項は消えます。右辺の積分内の第1項は部分積分で符号が変わり、第2項は2回の部分積分をしますから符号は変わりません。

    ∫∂ρ∂tf dx = −∫f ∇⋅(ρ b) dx + 12σ2 ∫f ∇2ρ dx∴ ∫(∂ρ∂t+∇⋅(ρ b)−12σ2∇2ρ)f dx = 0\begin{aligned} \int \frac{\partial \rho}{\partial t} f \, \mathrm{d} x \ =\ -\int f \, \nabla \cdot ( \rho \, \boldsymbol{b}) \, \mathrm{d} x \ +\ \frac{1}{2} \sigma^2 \, \int f \, \nabla^2 \rho \, \mathrm{d} x \\ \therefore\ \int \left(\frac{\partial \rho}{\partial t} + \nabla \cdot ( \rho \, \boldsymbol{b}) - \frac{1}{2} \sigma^2 \nabla^2 \rho \right) f \, \mathrm{d} x \ =\ 0 \end{aligned}

    これが任意のf(x,t) f(x,t) について成り立つのですから、カッコ内は常に 0 であり、次の等式が成り立つと言えます。

    ∂ρ∂t = −∇⋅(ρ b) + 12σ2 ∇2ρ\frac{\partial \rho}{\partial t} \ =\ - \nabla \cdot (\rho \, \boldsymbol{b}) \ +\ \frac{1}{2} \sigma^2 \, \nabla^2 \rho

    これは「フォッカー・プランク方程式」と呼ばれています。この意味を考えてみましょう。次のようにまとめると流れの保存則の形になります。

    ∂ρ∂t = −∇⋅(ρ b−12σ2 ∇ρ)\frac{\partial \rho}{\partial t} \ =\ - \nabla \cdot \left( \rho \, \boldsymbol{b} - \frac{1}{2} \sigma^2 \, \nabla \rho \right)

    つまり、粒子の確率密度の流れj \boldsymbol{j} が次のように表されると考えられます。

    j = ρ b − 12σ2 ∇ρ\boldsymbol{j} \ =\ \rho \, \boldsymbol{b} \ -\ \frac{1}{2} \sigma^2 \, \nabla \rho

    b \boldsymbol{b} は粒子速度を表していましたからρ b \rho \, \boldsymbol{b} が平均的な流れの効果を表します。一方、∇ρ \nabla \rho は密度勾配を表していますから、こちらの項は粒子の存在確率の密度の低い方へと流れる拡散の効果を表しています。σ2/2 \sigma^2/2 はその度合いを表しているので今後は拡散係数ν \nu と表すことにしましょう。

    ν := 12σ2\nu \ :=\ \frac{1}{2} \sigma^2

    後退微分を使っても同様な方程式が作られます。計算内容は全く同じです。

    ∂ρ∂t = −∇⋅(ρ b∗) − ν ∇2ρ\frac{\partial \rho}{\partial t} \ =\ - \nabla \cdot (\rho \, \boldsymbol{b}^{\ast}) \ -\ \nu \, \nabla^2 \rho

    こちらを解釈しようとすると拡散を表す項の符号が逆なので、まるで密度が高い方へと集まるかのような非常識な現象が起こっているように思えてしまいます。後退微分は時間を逆転して見ているわけではないので、そのように考えることはできません。本当は同様な拡散が起きているはずなのですが、b \boldsymbol{b} とb∗ \boldsymbol{b}^{\ast} の差を埋め合わせるために数式の上でそうなってしまっているだけだと考えられます。j \boldsymbol{j} の方が正味の流れを意味しているので、b \boldsymbol{b} だけが本当の平均的な流れだと解釈することも出来ないのです。


    数量関係

    前進過程と後退過程のフォッカー・プランク方程式はそれぞれ次のように書けることが分かりました。

    ∂ρ∂t amp;= −∇⋅(ρb) + ν ∇2ρ∂ρ∂t amp;= −∇⋅(ρb∗) − ν ∇2ρ\begin{aligned} \frac{\partial \rho}{\partial t} \ &=\ - \nabla \cdot (\rho \boldsymbol{b}) \ +\ \nu \, \nabla^2 \rho \\ \frac{\partial \rho}{\partial t} \ &=\ - \nabla \cdot (\rho \boldsymbol{b}^{\ast}) \ -\ \nu \, \nabla^2 \rho \end{aligned}

    これらの両辺を足し合わせれば、次のようになります。

    2∂ρ∂t amp;= −∇⋅(ρb+ρb∗)∴ ∂ρ∂t amp;= −∇⋅(ρ b+b∗2)\begin{aligned} 2 \frac{\partial \rho}{\partial t} \ &=\ - \nabla \cdot (\rho \boldsymbol{b} + \rho \boldsymbol{b}^{\ast}) \\ \therefore\ \frac{\partial \rho}{\partial t} \ &=\ - \nabla \cdot \left( \rho \, \frac{\boldsymbol{b}+\boldsymbol{b}^{\ast}}{2} \right) \end{aligned}

    これは流れの保存を表す式です。それは通常、次のように書かれます。

    ∂ρ∂t = −∇⋅(ρv)(9)\frac{\partial \rho}{\partial t} \ =\ - \nabla \cdot \left( \rho \boldsymbol{v} \right) \tag{9}

    つまり、流れの速度v \boldsymbol{v} を次のように定義してやれば話がうまく繋がります。

    v := b+b∗2\boldsymbol{v} \ :=\ \frac{\boldsymbol{b} + \boldsymbol{b}^{\ast}}{2}

    b \boldsymbol{b} やb∗ \boldsymbol{b}^{\ast} がそれぞれ単独で平均的な流れの速度を表していたわけではなく、それらの平均値が平均的な流れの速度を意味していたというわけです。

    一方、二つのフォッカー・プランク方程式を両辺で引き算をすれば次のような式が出来上がります。

    amp;0 = −∇⋅(ρ(b−b∗)) + 2ν ∇2ρ∴ amp;∇⋅(ρ b−b∗2) = ν ∇2ρ(10)\begin{aligned} &0 \ =\ - \nabla \cdot \Big( \rho (\boldsymbol{b}-\boldsymbol{b}^{\ast}) \Big) \ +\ 2 \nu \, \nabla^2 \rho \\ \therefore \ &\nabla \cdot \left( \rho \, \frac{\boldsymbol{b}-\boldsymbol{b}^{\ast}}{2} \right) \ =\ \nu \, \nabla^2 \rho \tag{10} \end{aligned}

    この関係式から、すぐあとで説明する理由によって次の式が成り立つのではないかと考えられます。

    b−b∗2 = ν ∇ln⁡ρ(11)\frac{\boldsymbol{b}-\boldsymbol{b}^{\ast}}{2} \ =\ \nu \, \nabla \ln \rho \tag{11}

    なぜなら、この式を (10) 式の左辺に代入すると次のような変形ができて、同じ結果に到達できるからです。

    ∇⋅(ρ b−b∗2) amp;= ∇⋅(ρ ν∇ln⁡ρ)amp;= ν ∇⋅(ρ ∇ln⁡ρ)amp;= ν ∇⋅(ρ 1ρ∇ρ)amp;= ν ∇⋅(∇ρ)amp;= ν ∇2ρ\begin{aligned} \nabla \cdot \left( \rho \, \frac{\boldsymbol{b}-\boldsymbol{b}^{\ast}}{2} \right) \ &=\ \nabla \cdot (\rho \, \nu \nabla \ln \rho) \\ &=\ \nu \, \nabla \cdot (\rho \ \nabla \ln \rho) \\ &=\ \nu \, \nabla \cdot (\rho \ \frac{1}{\rho} \nabla \rho) \\ &=\ \nu \, \nabla \cdot (\nabla \rho) \\ &=\ \nu \, \nabla^2 \rho \end{aligned}

    しかし実は (11) 式は唯一の解ではありません。(11) 式の右辺に∇⋅A=0 \nabla \cdot \boldsymbol{A} = 0 を満たす任意のA \boldsymbol{A} を使ったA/ρ \boldsymbol{A}/\rho を足したものも (10) 式の解になるのですが、それを敢えて除外しています。最も単純な解を選ぶことで、決定できない余計な自由度が理論に入りこまないようにしています。このように選んだ意味についてはまとめのところで議論しましょう。

    こうして (11) 式によってb \boldsymbol{b} とb∗ \boldsymbol{b}^{\ast} の差こそが濃度勾配による拡散の効果を表している事が読み取れます。b \boldsymbol{b} とb∗ \boldsymbol{b}^{\ast} の値の違いは、この拡散の効果による全体の辻褄合わせのために現れていたとも言えるでしょう。そこで拡散速度u \boldsymbol{u} を次のように定義しておくことにしましょう。

    u := b−b∗2\boldsymbol{u} \ :=\ \frac{\boldsymbol{b} - \boldsymbol{b}^{\ast}}{2}

    後で使うことになりますのでこの定義のu \boldsymbol{u} を使って (11) 式を直接的に書いておきましょう。

    u = ν ∇ln⁡ρ(12)\boldsymbol{u} \ =\ \nu \, \nabla \ln \rho \tag{12}

    この式のイメージを分かりやすくするために次のように変形してみます。

    u = ν 1ρ ∇ρ∴ ρ u = ν ∇ρ\boldsymbol{u} \ =\ \nu \, \frac{1}{\rho} \, \nabla \rho \\ \therefore\ \rho \, \boldsymbol{u} \ =\ \nu \, \nabla \rho

    u \boldsymbol{u} がいかにも濃度勾配∇ρ \nabla \rho によって生じる速度であることが実感できるかと思います。マイナスが付いていた方がイメージと合いますが定義の都合でこのようになっています。


    シュレーディンガー方程式へ

    私たちはすでに

    D+X amp;= bD−X amp;= b∗\begin{aligned} D^{\scriptscriptstyle +} \boldsymbol{X} \ &=\ \boldsymbol{b} \\ D^{\scriptscriptstyle -} \boldsymbol{X} \ &=\ \boldsymbol{b}^{*} \end{aligned}

    であることを確かめていますから、b \boldsymbol{b} やb∗ \boldsymbol{b}^{\ast} を使って表していたv \boldsymbol{v} やu \boldsymbol{u} の定義を次のように書き換えることができます。

    v = D++D−2Xu = D+−D−2X\begin{aligned} \boldsymbol{v} \ =\ \frac{D^{\scriptscriptstyle +} + D^{\scriptscriptstyle -}}{2} \boldsymbol{X} \\[5pt] \boldsymbol{u} \ =\ \frac{D^{\scriptscriptstyle +} - D^{\scriptscriptstyle -}}{2} \boldsymbol{X} \end{aligned}

    また、この式の両辺どうしを足したり引いたりすることで次のような関係があることも確かめられます。

    D+X = v+uD−X = v−u\begin{aligned} D^{\scriptscriptstyle +} \boldsymbol{X} \ =\ \boldsymbol{v} + \boldsymbol{u} \\[5pt] D^{\scriptscriptstyle -} \boldsymbol{X} \ =\ \boldsymbol{v} - \boldsymbol{u} \end{aligned}

    これで速度については関係が出揃いましたが、粒子の加速度をどう考えたら良いかがまだ分かりません。2階微分が必要なのですが、D+ D^{\scriptscriptstyle +} やD− D^{\scriptscriptstyle -} の単独で表した速度の定義ではうまく行かなかったことをすでに経験しました。そこで、ニュートン力学は時間反転に対して対称であったことを考慮して、前進過程と後退過程の入れ替えに対して対称な形になるように次のように定義してみましょう。

    a := D+D−+D−D+2X\boldsymbol{a} \ :=\ \frac{D^{\scriptscriptstyle +}D^{\scriptscriptstyle -} + D^{\scriptscriptstyle -}D^{\scriptscriptstyle +}}{2} \boldsymbol{X}

    この理屈で行きますと、D+ D^{\scriptscriptstyle +} のみの2階微分とD− D^{\scriptscriptstyle -} のみの2階微分とを作って平均を考えるというのでも良いのかも知れませんが、実はそちらはうまく行きません。理由ははっきりしないけれども結果的に上手く行く方を選んだという理論的な危うさがあります。

    このa \boldsymbol{a} がどうなるかを計算してみましょう。

    a amp;= 12D+D−X + 12D−D+Xamp;= 12D+(v−u) + 12D−(v+u)amp;= 12(D+v−D+u+D−v+D−u)amp;= 12[(∂v∂t + b⋅∇v + ν ∇2v)amp;− (∂u∂t + b⋅∇u + ν ∇2u)amp;+ (∂v∂t + b∗⋅∇v − ν ∇2v)amp;+ (∂u∂t + b∗⋅∇u − ν ∇2u)]amp;= ∂v∂t + b+b∗2⋅∇v − b−b∗2⋅∇u − ν ∇2uamp;= ∂v∂t + v⋅∇v − u⋅∇u − ν ∇2u\begin{aligned} \boldsymbol{a} \ &=\ \frac{1}{2} D^{\scriptscriptstyle +}D^{\scriptscriptstyle -} \boldsymbol{X} \ +\ \frac{1}{2} D^{\scriptscriptstyle -}D^{\scriptscriptstyle +} \boldsymbol{X} \\ &=\ \frac{1}{2} D^{\scriptscriptstyle +}( \boldsymbol{v} - \boldsymbol{u}) \ +\ \frac{1}{2} D^{\scriptscriptstyle -}( \boldsymbol{v} + \boldsymbol{u}) \\ &=\ \frac{1}{2} ( D^{\scriptscriptstyle +}\boldsymbol{v} - D^{\scriptscriptstyle +}\boldsymbol{u} + D^{\scriptscriptstyle -}\boldsymbol{v} + D^{\scriptscriptstyle -}\boldsymbol{u} ) \\[5pt] &=\ \frac{1}{2} \bigg[ \left( \frac{\partial \boldsymbol{v}}{\partial t} \ +\ \boldsymbol{b} \cdot \nabla \boldsymbol{v} \ +\ \bcancel{\nu \, \nabla^2 \boldsymbol{v}} \right) \\ &\hspace{10mm}-\ \left(\cancel{\frac{\partial \boldsymbol{u}}{\partial t}} \ +\ \boldsymbol{b} \cdot \nabla \boldsymbol{u} \ +\ \nu \, \nabla^2 \boldsymbol{u} \right) \\ &\hspace{10mm}+\ \left(\frac{\partial \boldsymbol{v}}{\partial t} \ +\ \boldsymbol{b}^{\ast} \cdot \nabla \boldsymbol{v} \ -\ \bcancel{\nu \, \nabla^2 \boldsymbol{v}} \right) \\ &\hspace{10mm}+\ \left(\cancel{\frac{\partial \boldsymbol{u}}{\partial t}} \ +\ \boldsymbol{b}^{\ast} \cdot \nabla \boldsymbol{u} \ -\ \nu \, \nabla^2 \boldsymbol{u} \right) \bigg] \\[5pt] &=\ \frac{\partial \boldsymbol{v}}{\partial t} \ +\ \frac{\boldsymbol{b}+\boldsymbol{b}^{\ast}}{2} \cdot \nabla \boldsymbol{v} \ -\ \frac{\boldsymbol{b}-\boldsymbol{b}^{\ast}}{2} \cdot \nabla \boldsymbol{u} \ -\ \nu \, \nabla^2 \boldsymbol{u} \\ &=\ \frac{\partial \boldsymbol{v}}{\partial t} \ +\ \boldsymbol{v} \cdot \nabla \boldsymbol{v} \ -\ \boldsymbol{u} \cdot \nabla \boldsymbol{u} \ -\ \nu \, \nabla^2 \boldsymbol{u} \end{aligned}

    先ほど書いた「結果的にうまく行かない定義」の方を使うとこの第3項と第4項についているマイナスがどちらもプラスになります。この2つの項がこの後で「量子ポテンシャル」になりますから、それが欲しかったものとは逆符号で出てきてしまうことになります。式変形の工夫でリカバリできるようなものではありません。

    この式変形はこれまでに導出してきた公式を形式的に使っているので気付きにくいかもしれませんが、勾配∇ \nabla やラプラシアン∇2 \nabla^2 をベクトルに対して適用する形になっています。普通これらはスカラーに対して適用するものなので、こういう事態に慣れていないと困惑するかもしれません。これらは、ベクトルの各成分を使ってそれぞれ計算した結果を並べてベクトルとしたものを最終結果とするという意味で読み取ってください。次のように括弧を付けて表しておくと、ベクトルの成分ごとの式であることが分かりやすくなるでしょう。

    a = ∂v∂t + (v⋅∇)v − (u⋅∇)u − ν ∇2u\boldsymbol{a} \ =\ \frac{\partial \boldsymbol{v}}{\partial t} \ +\ (\boldsymbol{v} \cdot \nabla) \boldsymbol{v} \ -\ (\boldsymbol{u} \cdot \nabla) \boldsymbol{u} \ -\ \nu \, \nabla^2 \boldsymbol{u}

    この加速度a \boldsymbol{a} を使って古典力学の運動方程式が成り立つと考えてみましょう。

    ma = −∇Vm\boldsymbol{a} \ =\ - \nabla V

    次の式が成り立つはずです。

    m(∂v∂t + v⋅∇v − u⋅∇u − ν ∇2u) = −∇V(13)m \Big( \frac{\partial \boldsymbol{v}}{\partial t} \ +\ \boldsymbol{v} \cdot \nabla \boldsymbol{v} \ -\ \boldsymbol{u} \cdot \nabla \boldsymbol{u} \ -\ \nu \, \nabla^2 \boldsymbol{u} \Big) \ =\ -\nabla V \tag{13}

    一方、シュレーディンガー方程式の波動関数ψ(x,t) \psi(\boldsymbol{x},t) に次のような「マーデルング変換」を代入したものを考えてみます。

    ψ(x,t) = R(x,t) eiS(x,t)/ℏ(14)\psi(\boldsymbol{x},t) \ =\ R(\boldsymbol{x},t) \, e^{iS(\boldsymbol{x},t)/\hbar} \tag{14}

    これは「ボーム解釈」でも同じことをやったので、ここでは結果だけを書いておくことにします。

    (9) 式のような確率の保存の式と、次のような位相S(x,t) S(\boldsymbol{x},t) に関する方程式が得られるのでした。

    ∂S∂t + (∇S)22m + V + Q = 0(15)\frac{\partial S}{\partial t} \ +\ \frac{(\nabla S)^2}{2m} \ +\ V \ +\ Q \ =\ 0 \tag{15}

    ただしQ Q というのは「量子ポテンシャル」と呼ばれており、次のような形をしています。

    Q := −ℏ22m ∇2RR(16)Q \ :=\ -\frac{\hbar^2}{2m}\, \frac{\nabla^2 R}{R} \tag{16}

    (13) 式と (15) 式が同じであれば、古典力学的なイメージからシュレーディンガー方程式と同じ内容の方程式が得られたことになります。今のところ、あまり似ているとは言えません。近付くように手を加えてみましょう。(15) 式の両辺に∇ \nabla を作用させてやると次のように書けます。

    ∂(∇S)∂t + ∇(∇S)22m amp;= − ∇V − ∇Q∴ ∂(∇S)∂t + 2(∇S)⋅∇(∇S)2m amp;= − ∇V − ∇Q∴ ∂(∇S)∂t + (∇S)⋅∇(∇S)m amp;= − ∇V − ∇Q∴ m [∂(∇S/m)∂t + (∇S/m)⋅∇(∇S/m)] amp;= − ∇V − ∇Q\begin{aligned} \frac{\partial (\nabla S)}{\partial t} \ +\ \frac{\nabla (\nabla S)^2}{2m} \ &=\ -\ \nabla V \ -\ \nabla Q \\[5pt] \therefore\ \frac{\partial (\nabla S)}{\partial t} \ +\ \frac{2(\nabla S) \cdot \nabla(\nabla S)}{2m} \ &=\ -\ \nabla V \ -\ \nabla Q \\[5pt] \therefore\ \frac{\partial (\nabla S)}{\partial t} \ +\ \frac{(\nabla S) \cdot \nabla(\nabla S)}{m} \ &=\ -\ \nabla V \ -\ \nabla Q \\ \therefore\ m \, \left[ \frac{\partial (\nabla S/m)}{\partial t} \ +\ (\nabla S/m) \cdot \nabla(\nabla S/m) \right] \ &=\ -\ \nabla V \ -\ \nabla Q \end{aligned}

    ここで、v=∇S/m \boldsymbol{v} = \nabla S/m であると考えれば次のようになり、(13) 式との共通点が見えてきます。

    m (∂v∂t + v⋅∇v) = − ∇V − ∇Qm \, \Big( \frac{\partial \boldsymbol{v}}{\partial t} \ +\ \boldsymbol{v} \cdot \nabla \boldsymbol{v} \Big) \ =\ -\ \nabla V \ -\ \nabla Q

    あとは、次の関係が言えていれば成功だと言えるでしょう。

    m(−u⋅∇u − ν ∇2u) = ∇Q(17)m \big( -\boldsymbol{u} \cdot \nabla \boldsymbol{u} \ -\ \nu \, \nabla^2 \boldsymbol{u} \big) \ =\ \nabla Q \tag{17}


    量子ポテンシャルを導く

    (17) 式の括弧の中を整理してみます。ここではu \boldsymbol{u} だけが使われていますので、そこに (12) 式を代入することで次のように書けます。

    amp;− u⋅∇u − ν ∇2u= amp;−(ν ∇ln⁡ρ)⋅∇(ν ∇ln⁡ρ) − ν ∇2(ν ∇ln⁡ρ)= amp;−ν2[(∇ln⁡ρ)⋅∇(∇ln⁡ρ) + ∇2(∇ln⁡ρ)]= amp;−ν2[12∇(∣∇ln⁡ρ∣2) + ∇(∇2ln⁡ρ)]= amp;−ν2 ∇(12∣∇ln⁡ρ∣2 + ∇2ln⁡ρ)(18)\begin{aligned} &-\ \boldsymbol{u} \cdot \nabla \boldsymbol{u} \ -\ \nu \, \nabla^2 \boldsymbol{u} \\ =\ &-(\nu \, \nabla \ln \rho) \cdot \nabla (\nu \, \nabla \ln \rho) \ -\ \nu \, \nabla^2 (\nu \, \nabla \ln \rho) \\ =\ &-\nu^2 \Big[ (\nabla \ln \rho) \cdot \nabla (\nabla \ln \rho) \ +\ \nabla^2 (\nabla \ln \rho) \Big] \\ =\ &-\nu^2 \Big[ \frac{1}{2} \nabla( |\nabla \ln \rho|^2) \ +\ \nabla (\nabla^2 \ln \rho) \Big] \\ =\ &-\nu^2 \, \nabla \left( \frac{1}{2} |\nabla \ln \rho|^2 \ +\ \nabla^2 \ln \rho \right) \tag{18} \end{aligned}

    この途中の計算は少し分かりにくいので後から補足解説をします。こうして∇ \nabla が出てきましたので、(17) 式と (18) 式とを比較すれば、次の関係が成り立っているかどうかを確かめることが次の目標になります。

    Q = −mν2(12∣∇ln⁡ρ∣2 + ∇2ln⁡ρ)(19)Q \ =\ -m \nu^2 \left( \frac{1}{2} |\nabla \ln \rho|^2 \ +\ \nabla^2 \ln \rho \right) \tag{19}

    このカッコ内は次のように変形できます。(この計算もあとで詳しく説明します。)

    12∣∇ln⁡ρ∣2 + ∇2ln⁡ρ = −∣∇ρ∣22ρ2 + ∇2ρρ(20)\frac{1}{2} |\nabla \ln \rho|^2 \ +\ \nabla^2 \ln \rho \ =\ -\frac{|\nabla \rho|^2}{2\rho^2} \ +\ \frac{\nabla^2 \rho}{\rho} \tag{20}

    一方で、

    ∇2ρ = −14∣∇ρ∣2(ρ)3 + 12∇2ρρ(21)\nabla^2 \sqrt{\rho} \ =\ - \frac{1}{4} \frac{|\nabla \rho|^2}{(\sqrt{\rho})^3} \ +\ \frac{1}{2} \frac{\nabla^2 \rho}{\sqrt{\rho}} \tag{21}

    と計算できますので、(21) 式に2/ρ 2/\sqrt{\rho} を掛ければ (20) 式と同じになります。つまり、(19) 式は次のように書けます。

    Q = −2mν2∇2ρρQ \ =\ -2 m \nu^2 \frac{\nabla^2 \sqrt{\rho}}{\sqrt{\rho}}

    これを (16) 式のQ Q と見比べてみるとどうでしょうか。波動関数ψ(x,t) \psi(x,t) の絶対値の 2 乗が粒子の存在確率ρ \rho なのですから、(14) 式を見ると分かりますが、ρ=R2 \rho = R^2 です。つまりρ \sqrt{\rho} はR R に置き換えられます。あとは拡散係数ν \nu を次のように決めてしまえば全く同じになります。

    ν = ℏ2m\nu \ =\ \frac{\hbar}{2m}

    こうして力学的なイメージから、シュレーディンガー方程式と同じ振る舞いをする式にたどり着くことに成功しました。途中で多少、こじつけっぽい仮定が入り込んでいますが受け入れられないほどではないでしょう。


    考察

    このネルソン流の量子力学モデルの妥当性について考えていくことにしましょう。

    まず、先ほど見たばかりの、拡散係数ν \nu をシュレーディンガー方程式と合うようにℏ/2m \hbar/2m と決めたことについて考えてみましょう。これはこじつけのような気もしますが、このネルソン流の考え方は、もともとシュレーディンガー方程式が拡散方程式と似た形式になっていることにヒントを得たものなのでした。ちょうどこのような組み合わせの値が拡散係数ν \nu に対応すると考えれば、いよいよ拡散方程式の形に似てきます。ただし、拡散方程式には虚数は出てきませんし、ポテンシャルV V を含む項はありませんから完全に同じにはなりません。そこで、ポテンシャルV V に起因する外力のようなものがあるという仮定を追加して、拡散だけではなくドリフトを含む確率過程を導入して、さらにそのドリフトが独自に定義した加速度によって生じるという構造を持ち込むことで今回の結果を導いたというわけです。

    前進過程のみを導入しただけでもフォッカー・プランク方程式は導けます。しかしそれは密度ρ \rho とドリフト速度b \boldsymbol{b} の関係をゆるく縛っているだけです。もしb \boldsymbol{b} の形を仮定すればそれによってρ \rho の変化がある程度決まりますし、その場合には拡散する一方の解が得られる場合がほとんどでしょう。実際、シュレーディンガー方程式から導かれる確率分布も徐々に広がっていく傾向がありますから、この考えの方向性は合っていそうです。あとはb \boldsymbol{b} がどういう形に変化するかを決めてやれば良いのです。前進、後退の両方のフォッカー・プランク方程式と、ニュートン力学の方程式とを全て同時に満たすような方程式を組み立てようとしたらシュレーディンガー方程式と同じになるという理論構造になっています。

    ここまでの説明の手順としては、前進過程と後退過程を同時に導入しましたが、実はそれは当たり前の手順ではなく、普通の確率過程を考えるためには前進過程だけで十分なのでした。加速度を導入するときに時間の未来と過去の反転に対する対称性を持たせるために後退過程の概念が必要になったのです。しかしその考えで導入される加速度の作り方は唯一に定まるわけではなく、僅かに恣意的な部分が残ります。

    他に理論的に怪しいところと言えば、u \boldsymbol{u} を決めるときに一般解を使わずに、最も単純な解を採用した部分です。そのお陰でシュレーディンガー方程式が作れたのですからその選択は目的に合っていましたが、恣意的ではないのかとも思えます。しかしこのようにしないとρ \rho とu \boldsymbol{u} の関係を唯一に定めることができません。
    もう少し理論的な理由を用意することも出来ます。rot grad=0 \mathrm{rot} \ \mathrm{grad} = 0 であることを考えると、(12) 式から分かるようにrot u=0 \mathrm{rot} \ \boldsymbol{u} = 0 です。一般解を使ってしまうとこの条件を満たせなくなります。ベクトルu \boldsymbol{u} に渦が無いという条件を選んでいるので、(12) 式からも分かるようにln⁡ρ \ln \rho というスカラーポテンシャルが作れています。これは全空間にρ \rho の分布が定義できることを意味しています。これは物理的に意味のある設定だと言えるでしょう。さらに言えば、ρ \rho は波動関数を (14) 式で表したときのR R とρ=R2 \rho = R^2 という関係になっていましたから、これは波動関数を全空間に定めることができるという条件とも直結しているのです。

    もうひとつ恣意的に見えたのはv=∇S/m \boldsymbol{v} = \nabla S/m だという決め付けです。これも先ほどの話と似ていて、速度場v \boldsymbol{v} が渦無しであるということを言っています。そうすればS S が全空間で定まり、波動関数が定義できるのです。しかしこちらは量子力学の方の事情に合わせているというだけの話なので少し無理があるかもしれません。
    ただし、これは解析力学の方の視点から擁護できます。ボーム解釈の話でも出てきましたが、S S は作用量と同じ意味があり、古典的な粒子が選ぶ軌道は作用量が極値を取るのでした。v \boldsymbol{v} がS S の変化の最も急な方向を向いているので、その垂直方向はもっともS S の変化が無い方向です。つまり粒子の軌道を少しずらしてやった場合にS S はほとんど影響を受けないということで、古典力学の変分原理と整合しています。ネルソン流では古典力学に基づく議論をしていますので解析力学の結果を使うことに問題はなく、ここもあまり批判できないでしょう。

    このように、ネルソン流の考えには幾つかの仮定がこっそり紛れ込んでいます。しかしそれらはいかにも「もっともらしい」理由で擁護できるようにもなっています。弱点は別のところにあります。理論の非局所性です。

    量子ポテンシャルQ Q の形を見ると分かりますが、1粒子の動きを追っているはずなのに、その全空間の確率分布が粒子の動きにフィードバックされているという結果になっています。見た目は量子ポテンシャルの局所的な形だけから影響を受けているだけに見えます。しかしその量子ポテンシャルを全空間で矛盾のない形に決定しているのが「全空間の確率分布」なのです。2粒子以上を考えると、一方の粒子の動きが瞬時に他方に影響を与えるのでさらに非局所性の問題が顕著になります。


    おまけ(計算の補足)

    (18) 式の 3 行目から 4 行目への変形が分かりにくいと思うので補足しておきましょう。A=ln⁡ρ A = \ln \rho と置けば、問題の箇所は(∇A)⋅∇(∇A) (\nabla A)\cdot\nabla(\nabla A) と書けます。このような複雑な状況ではアインシュタインの縮約記法を使って機械的に変形を進めると分かりやすくなります。∂A/∂xi \partial A/\partial x_i を∂iA \partial_i A と略記し、同じ添字があるときは∑i \sum_i などが略されていると考えます。相対論では曲がった時空での微分を表すために添字の位置を上付きと下付きで区別してこのようなことを行うのですが、今回は3次元のユークリッド空間を前提としていますので区別する必要がなく、表記の複雑さを避けて全て下付きの添字にして行います。そのような記法で問題の部分を書き直すと次のようになります。

    amp;(∇A)⋅∇(∇A)= amp;∂iA ∂i(∂jA)\begin{aligned} &(\nabla A)\cdot\nabla(\nabla A) \\ =\ &\partial_i A \ \partial_i (\partial_j A) \end{aligned}

    一方、

    12∂j(∂iA)(∂iA) amp;= 12∂j(∂iA)2amp;= 122(∂iA)∂j(∂iA)amp;= (∂iA)∂j(∂iA)amp;= (∂iA)∂i(∂jA)\begin{aligned} \frac{1}{2} \partial_j(\partial_i A)(\partial_i A) \ &=\ \frac{1}{2} \partial_j(\partial_i A)^2 \\ &=\ \frac{1}{2} 2 (\partial_i A) \partial_j (\partial_i A) \\ &=\ (\partial_i A) \partial_j (\partial_i A) \\ &=\ (\partial_i A) \partial_i (\partial_j A) \end{aligned}

    は上と同じ結果になりますので等式で結べます。

    (∇A)⋅∇(∇A)=12∂j(∂iA)(∂iA)(\nabla A)\cdot\nabla(\nabla A) = \frac{1}{2} \partial_j(\partial_i A)(\partial_i A)

    この右辺をナブラで書き戻せば(1/2)∇(∇A⋅∇A) (1/2) \nabla ( \nabla A \cdot \nabla A) つまり、これを(1/2)∇∣∇A∣2 (1/2) \nabla | \nabla A |^2 と表記しており、A A も書き戻せば12∇∣∇ln⁡ρ∣2 \frac{1}{2} \nabla |\nabla \ln \rho|^2 となるわけです。


    おまけ 2

    (20) 式の変形も分かりにくいのですが、これも上と同じように縮約記法で計算してみましょう。2 つの項をそれぞれ単独で変形するのではなく、途中で両者が混じり合います。

    amp;12∣∇ln⁡ρ∣2 + ∇2ln⁡ρ= amp;12(∂iln⁡ρ)(∂iln⁡ρ) + ∂i∂iln⁡ρ= amp;12(∂iρρ)(∂iρρ) + ∂i(∂iρρ)= amp;12(∂iρρ)(∂iρρ) − 1ρ2(∂iρ)(∂iρ) + 1ρ∂i∂iρ= amp;−12(∂iρρ)(∂iρρ) + 1ρ∂i∂iρ= amp;−∣∇ρ∣22ρ2 + ∇2ρρ\begin{aligned} &\frac{1}{2} |\nabla \ln \rho|^2 \ +\ \nabla^2 \ln \rho \\ =\ &\frac{1}{2} (\partial_i \ln \rho)(\partial_i \ln \rho) \ +\ \partial_i \partial_i \ln \rho \\ =\ &\frac{1}{2} \left(\frac{\partial_i \rho}{\rho}\right)\left(\frac{\partial_i \rho}{\rho}\right) \ +\ \partial_i \left(\frac{\partial_i \rho}{\rho}\right) \\ =\ &\frac{1}{2} \left(\frac{\partial_i \rho}{\rho}\right)\left(\frac{\partial_i \rho}{\rho}\right) \ -\ \frac{1}{\rho^2} (\partial_i \rho)(\partial_i \rho) \ +\ \frac{1}{\rho} \partial_i \partial_i \rho \\ =\ &- \frac{1}{2} \left(\frac{\partial_i \rho}{\rho}\right)\left(\frac{\partial_i \rho}{\rho}\right) \ +\ \frac{1}{\rho} \partial_i \partial_i \rho \\ =\ &- \frac{|\nabla \rho|^2}{2\rho^2} \ +\ \frac{\nabla^2 \rho}{\rho} \end{aligned}

    (21) 式も同じ調子でやってみます。

    ∇2ρ amp;= ∂i∂i(ρ)12amp;= ∂i(12(ρ)−12 (∂iρ))amp;= 12(−12(ρ)−32 (∂iρ)(∂iρ) + (ρ)−12∂i(∂iρ))amp;= −14∣∇ρ∣2(ρ)3 + 12∇2ρρ\begin{aligned} \nabla^2 \sqrt{\rho} \ &=\ \partial_i \partial_i (\rho)^{\frac{1}{2}} \\ &=\ \partial_i \left( \frac{1}{2} (\rho)^{-\frac{1}{2}} \ (\partial_i \rho) \right) \\ &=\ \frac{1}{2} \left( -\frac{1}{2} (\rho)^{-\frac{3}{2}} \ (\partial_i \rho)(\partial_i \rho) \ +\ (\rho)^{-\frac{1}{2}} \partial_i (\partial_i\rho) \right) \\ &=\ - \frac{1}{4} \frac{|\nabla \rho|^2}{(\sqrt{\rho})^3} \ +\ \frac{1}{2} \frac{\nabla^2 \rho}{\sqrt{\rho}} \end{aligned}

     
     
     

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