
本田圭佑、愛されすぎ問題
サッカーW杯に日本が、いや、世界が熱狂している。
この熱狂を支えているのは、史上最強とも言われる日本代表の活躍だけではない。
もう一つ、忘れてはいけない存在がいる。
そう、解説者 本田圭佑である。
思えば、前回ワールドカップからすでに完成されていた。
「(アディショナルタイムが)ななふぅん?」
「(スペイン戦で泣く日本サポーターを見て)ちょ、まだ泣くの早いて!」
「(ドイツ戦でアナウンサーが久保選手を『本田』と言い間違えて)試合出ましょか?」
もはや解説なのか分からない。
そして今回、NHKの解説に抜擢された本田はさらに進化していた。
「(今大会から導入された給水休憩を見て)え?これなんですか?」
「(チュニジア戦で得点ラッシュになり)イケイケドンドンやて!」
「(長友選手出場時)え?マジで?ユウトより俺の方が緊張してるかもしれへん」
いつしか、本田が解説するたびに発言は「本田語録」としてまとめられ、ネットでは愛されるネタになった。
さらにはNHKですら名言集のような動画を公開する始末である。
いや、本田愛されすぎやろ。
しかし、この本田語録の影響力は日本国内だけではなかった。
オランダ戦で、相手の11番ガクポに対して本田はこう言った。
「なんなん、この11番。マジほんま、うざいわ~」
「めっちゃうざい、こいつほんま」
もちろん、本田が言いたかったのは「それだけ脅威になる選手」という意味だ。
裏を返せば、最大級のリスペクトである。
しかし、これを海外メディアが取り上げた。
「有名な解説者が試合をまるでサーカスのように変えてしまった」
そんな趣旨の反応まで出た。
まあ、無理もない。
日本では「本田さん、また言ってるよ(笑)」で済むが、冷静に考えると、サッカー界のスター選手だった人物が全国放送で相手選手を「うざい」と表現しているのだ。
海外から見れば、確かに驚くだろう。
例えば、オランダの有名解説者が日本代表選手に向かって「久保うざい」と言っていたら、日本人だって耳を疑うはずだ。
そもそも、本田はサッカー解説だけをしているわけではない。
ハイドレーションブレークの説明をしたり、オフサイドの話をしたりする場面では、むしろ視聴者と同じ目線で疑問を口にしている。
普通の解説者なら「知識を与える先生」になる。
しかし本田は、時々「一緒に試合を見ている関西弁のお兄さん」になる。
だからこそ、日本の視聴者は彼を受け入れているのかもしれない。
では、なぜそこまで本田は愛されるのか。
元日本代表としての実績があるから。
スター選手だったから。
もちろん、それもある。
しかし、それだけでは説明できない気がする。
筆者が思うに、そこには日本人が子供の頃から見てきた文化的な刷り込みが関係している。
日本の漫画やアニメには、ある特徴的なキャラクターが存在する。
関西弁を話す陽キャだ。
そして、なぜか重要な場面に必ず登場する。
例えば『名探偵コナン』なら服部平次。
『はじめの一歩』なら千堂武士。
主人公を助けたり、時には最大のライバルとして立ちはだかったりする。
薬でコナンから新一の姿に戻る時には服部が傍にいることが多いし、
一歩が新人王や日本王座をかけて戦った相手は千堂だ。
物語を動かす重要人物なのだ。
そう。
日本人の中には、無意識に「関西弁で、熱くて、面白くて、でも実力がある人物」を好意的に受け入れる土壌があるのではないか。
だからこそ、W杯という国民的イベントの舞台で、本田圭佑は自然に受け入れられた。
いや、むしろ求められた。
我々は4年に一度の祭典で、無意識に「関西弁の陽キャ」を待っていたのかもしれない。
……と解説者本田圭佑を解説してみた。