
ぼくがしっぽで伝えたかったこと 第1章 初めて見た世界

ぼくが最初に感じたのは、あたたかさだった。
ふわふわしたぬくもりに包まれて、優しい匂いがしていた。
目はまだ見えなかったけれど、その場所が安心できるところだと分かった。
お母さんの心臓の音。
兄弟たちの小さな寝息。
ぼくは、その真ん中で眠っていた。
お腹がすけば、お母さんのところへ行った。
寂しくなれば、兄弟たちにくっついた。
世界はまだ小さかった。
でも、その小さな世界は、愛で満ちていた。
やがて目が開いた。
初めて見た世界は、ぼんやりとしていたけれど、優しかった。
兄弟たちがじゃれ合い、転びながら走っている。
お母さんはそんなぼくらを見つめていた。
毎日が楽しかった。
遊んで、眠って、甘えて。
それだけで幸せだった。
でも、ある日から人間たちがぼくらを見に来るようになった。
抱き上げられて、頭を撫でられる。
優しい人もいた。
怖い人もいた。
ぼくにはまだ分からなかった。
これから何が起こるのかなんて。
でも、ひとつだけ感じていた。
ぼくらはいつか、この場所を離れる。
兄弟たちと離れる日が来る。
お母さんとも離れる日が来る。
まだ小さなぼくでも、それだけは分かっていた。
そして、その日は突然やってきた。