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ぼくがしっぽで伝えたかったこと 第2章 あなたに出会った日


    その人は、優しい匂いがした。

    ぼくの前にしゃがんで、ゆっくりと手を伸ばした。

    「この子にする?」


    声はやわらかかった。

    ぼくはその手をくんくんと嗅いだ。

    怖くなかった。

    むしろ、安心した。

    その手はあたたかかった。

    だからぼくは、その手をぺろっと舐めた。

    その瞬間、その人は笑った。

    「この子だね」

    その笑顔を見たとき、ぼくはなんだか嬉しかった。

    理由なんて分からない。

    でも、

    “この人についていきたい”

    そう思った。

    お母さんや兄弟と離れるのは寂しかった。

    車の中で不安になって、何度も鳴いた。

    すると、その人はずっと撫でてくれた。

    「大丈夫だよ」

    その言葉の意味は分からなかったけれど、その声を聞くと落ち着いた。

    やがて、新しい家に着いた。

    知らない匂い。

    知らない場所。

    でも、その人がいた。

    だから怖くなかった。

    小さなベッドも、ぼくのお皿も、おもちゃも用意されていた。

    ぼくのために。

    ぼくを待っていてくれたんだ。

    そのとき初めて、

    ぼくには家族ができた

    そう感じた。

    その夜、少しだけ寂しくて鳴いた。

    すると、その人は眠そうな顔で起きてきて、ぼくを抱っこしてくれた。

    あたたかかった。

    安心した。

    ぼくはその腕の中で眠った。

    その日から、ぼくの世界の中心はあなたになった。


    #創作大賞2026
    #恋愛小説部門

     
     
    眠れない夜に、 優しい涙を流したいあなたへ。 心が少し軽くなる、 温かくて優しい物語を書いています。 読んだあと、 少しだけ明日がやさしくなるような物語を届けたい。 そんな夜に、また読みに来てもらえたら嬉しいです。

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