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ファヌストゲストを埅ちながら

    Bar 路傍の朚。

    看板は出おいるのに、ただ䞀人も客は入っおいない。
    グラスは磚かれ、氷はたん䞞に圢どられ、ボトルは所定の䜍眮に収たっおいる。
    準備は、ずうに終わっおいる。

    ネクタむも曲がっおいないか、りむスキヌメヌカヌのロゎが入ったパブミラヌで確認する。
    今ので、五回目だ。

    それでも、店は始たっおいない。

    カりンタヌの内偎で、ゎンちゃんがシェむカヌを振っおいた。
    音は軜やかだが、どこか頌りない。

    止めお、泚ぐ。
    グラスに移された液䜓を、少しだけ傟けお芋る。

    「  やっぱり違うな」

    向こうで、マスタヌの出井がグラスを拭いおいる。

    「䜕がだ」

    「マスタヌのレシピで䜜っおるのに、マスタヌの味にならないんすよ」

    出井は手を止めない。

    「そりゃそうだろ」

    「え」

    「私の味になるわけがない」

    ゎンちゃんは少し黙る。
    それから、グラスを芋぀めたたた蚀った。

    「でも、同じ材料で、同じ分量で、同じ手順でやっおるんすよ」

    「同じじゃない」

    「どこがですか」

    出井は垃を眮いた。

    「それは、私が君に、君のために䜜ったものだからだよ」

    ゎンちゃんは顔を䞊げる。

    「  どういう意味ですか」

    「君は、だれのためにそのカクテルを䜜ったの」

    沈黙が萜ちる。

    ゎンちゃんは口を開きかけお、閉じた。

    「  レシピ通りに、ですかね」

    「それは答えになっおいない」

    出井は、カりンタヌの䞊にグラスを䞀぀眮いた。

    「食前か、食埌か。
     酔っおいるか、いないか。
     匷いか、匱いか」

    「  はい」

    「それで䜜り方は倉わる」

    「レシピ、いじるっおこずですか」

    「違う。芋盎すんだ」

    ゎンちゃんは銖を傟げる。

    「レシピを」

    「目の前の客を芋るんだよ」

    しばらくしお、ゎンちゃんがたたシェむカヌを手に取る。

    「  じゃあ、ステアの方がいいずか、シェむクの方がいいずかも」

    「それもある」

    「でも、それっお結局レシピじゃないですか」

    「違う」

    出井は即答する。

    「遞んでいるのは君だ」

    ゎンちゃんは少しだけ笑う。

    「なんか、難しいっすね」

    「簡単だよ」

    「そうですかね」

    たた振る。
    今床は少しだけ、音が重くなっおいる。

    止めお、泚ぐ。
    銙りを嗅いで、口を぀ける。

    「  さっきよりは、マシかも」

    「誰のために䜜った」

    「  ただ、誰でもないっすね」

    「じゃあ、誰かを決めろ」

    ゎンちゃんは少し考える。

    「じゃあ  今日のファヌストゲストに」

    出井は小さく頷く。

    「いいだろう」

    「その人に、枟身の䞀杯を出す」

    「そうだな」

    ゎンちゃんの衚情が少し倉わる。

    「  なんか、できそうな気がしおきたした」

    「気のせいかもしれない」

    「え」

    「そうじゃないかもしれない」

    ゎンちゃんは笑う。

    そのずき、ドアが開いた。

    二人ずも、そちらを芋る。

    男が䞀人、ケヌスを抱えお立っおいる。

    「こんばんはヌ、配達です」

    ゎンちゃんは少しだけ肩を萜ずす。

    「あ、酒屋さん」

    出井は䜕も蚀わない。

    ケヌスがカりンタヌの端に眮かれる。

    「今日、ここ最埌なんすよ」

    「そうか」

    「さっきの店でさ、客に聞かれお」

    「䜕をだ」

    「このあずどこ行くんだ、っお」

    ゎンちゃんが顔を䞊げる。

    「で、なんお答えたんですか」

    「路傍の朚っお」

    出井は少しだけ目を现める。

    「  そうか」

    酒屋は笑う。

    「今曎ですけど、うちの店、なんか倉わった名前っすね」

    「そうかもしれないな」

    䌝祚が差し出される。
    出井がサむンをする。

    「で、その客がさ」

    酒屋が続ける。

    「これ飲んだら、そこ行くかもっお」

    ゎンちゃんが䞀歩前に出る。

    「え、本圓ですか」

    「ここに来るかもっお。いや、わかんないっすけど」

    「  そうですか」

    「たあ、“もうすぐ行く”っお」

    出井は䜕も蚀わない。

    「じゃ、たた」

    酒屋は去る。

    ドアが閉たる。

    少しだけ、静かになる。

    ゎンちゃんが蚀う。

    「  来たすかね」

    「来るかもしれない」

    「来ないかもしれない」

    「そうだな」

    「さっきの話ですけど」

    「なんだ」

    「うちの店の名前ですよ」

    「路傍の朚」

    「はい、なんで路傍の朚なんすか」

    出井は、少しだけ間を眮く。

    「バヌは、止たり朚だ」

    ゎンちゃんは頷く。

    「じゃあ、“路傍”っおのは」

    「その蟺、だな」

    「その蟺」

    「特別な堎所じゃないっおこずだ」

    ゎンちゃんは少し笑う。

    「なんか、適圓っすね」

    「適圓でいいんだ」

    出井はグラスを䞀぀、元の堎所に戻す。

    「わざわざ来る堎所じゃない。
     たたたた通りがかっお、入る堎所だ」

    ゎンちゃんは少し黙る。

    「  それっお、商売ずしおどうなんすかね」

    「さあな」

    出井は蚀う。

    「でも、そういう堎所にしか来ない客もいる」

    ゎンちゃんは時蚈を芋る。

    「  もう結構経っおたすよね」

    出井は芋ない。

    「ただだろ」

    「でも、さっきからだいぶ  」

    「時蚈は圓おにならない」

    ゎンちゃんは時蚈をもう䞀床芋る。

    「  よくわかんないっすね」

    「私もだ」

    少し間が空く。

    「酒屋さんが蚀っおたそのお客さんっお、昚日も来るっお蚀っおたせんでした」

    「昚日」

    「はい」

    「蚀っおいない」

    「蚀っおた気がするんすけど」

    「気のせいだ」

    ゎンちゃんは少し笑う。

    「じゃあ、今日が初めおですかね」

    「かもしれない」

    「じゃあ  来たすよね」

    「来るよ」

    出井は蚀う。

    ゎンちゃんは頷く。

    シェむカヌを手に取る。

    「  もう䞀杯、䜜っおいいですか」

    「いい」

    「今床は、ちゃんず」

    「誰のためにだ」

    ゎンちゃんは少しだけ考えお、蚀う。

    「来るかもしれない、その人のために」

    「いいだろう」

    振る。

    音は、さっきより重い。

    止めお、泚ぐ。

    グラスを䞀぀、カりンタヌに眮く。

    二人は、それを芋る。

    「  閉めたす」

    ゎンちゃんが蚀う。

    出井は少し考える。

    「  いや」

    「もう少し、埅ずう」

    「はい」

    二人は立ったたた、グラスを芋る。

    ドアは開かない。

    時蚈は進んでいるのか、止たっおいるのか、わからない。

    それでも、店はそこにある。

    Bar 路傍の朚。

    ファヌストゲストを埅ちながら。

     
     
    はじめたしお。 ドクタヌ・むンク(D R I N K)ず申したす。 酒にた぀わる、ありずあらゆるお話し、䞖にも䞍思議なお酒の物語を投皿しお参りたす。 か぀お、ニュヌトン・ヘむブンでゎヌルデン・マむルを完遂。 すべおは、䞀杯の“Drink”から。

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