
母、Appleに狙われる。〜90歳、詐欺メールとの攻防戦〜
最近、本当に詐欺メールが多い。
「口座がロックされました」
「iCloudの支払いに失敗しました」
「セキュリティ確認が必要です」
毎日毎日、人の不安を煽るメールが届く。
若い人でも引っかかる時代だ。
まして90歳を超え、一人暮らしで頑張っている母にはかなり危険である。
ある日、ついに“その時”がやってきた。
最近、詐欺メールが本当に多い。
銀行、Apple、Yahoo、宅配業者、クレジットカード会社。
ありとあらゆるものになりすまして、
「口座がロックされました」
「不正アクセスを検知しました」
「支払いに失敗しました」
などと不安を煽って個人情報を抜き取ろうとしてくる。
ほんま迷惑である。
うちの母は90歳を過ぎ、一人暮らしをしている。
一応ネット通販もできるし、パソコンの設定も自分でサポートセンターへ電話して何とかしている。
だが最近はかなり心配になってきた。
以前、突然母から電話がかかってきた。
「パソコンが大変なことになった!」
聞けば、ネット閲覧中に突然画面が真っ暗になり、大音量の警告音。
『ウイルス感染の可能性があります!』
『今すぐサポートに電話してください!』
という画面が出て、操作もできなくなったらしい。
幸い、画面に出た番号ではなく私に電話してきた。
ただ、本人も動揺していて説明が要領を得ない。
「なんか真っ黒で!」
「ピーピー鳴って!」
「動かへんの!」
こちらも最初は状況がわからない。
しかし、
「パソコン 真っ暗 警告音」
で検索したら即座に出てきた。
サポート詐欺である。
とりあえず強制終了を指示。
無事復旧したが、母は大音量のアラームにかなり精神的ダメージを受けたらしく、その日はもうパソコンを開かなかったらしい。
まあそら怖い。
機械に強い人でも、突然あんな音鳴ったらビビる。
その後、
「ともかく変な画面で電話番号が出ても絶対かけたらあかん」
「個人情報を入力したらあかん」
と念押ししておいた。
……が。
しばらくして、また電話がかかってきた。
「Appleから支払いできへんってメールが何回も来るんやけど」
嫌な予感しかしない。
「確認しようと思ってパスワード入れたけど、うまくいかへんねん」
「えっ」
「パスワード入れたん!?」
心臓に悪い。
メールをスクショして送ってと言ったが、
「スクショって何?」
状態。
そこで、普段テレビ電話用に持たせていたiPadを召喚。
メール画面をiPadのカメラで映してもらった。
ぱっと見、本物っぽい。
送り主は
“Apple Service”
ロゴもそれっぽい。
しかし横で見ていた妻が即答した。
「それ、詐欺メール」
早い。
プロ野球の審判ぐらい早い。
試しに送信元アドレスをタップすると、出てきたのはAppleとは一切関係ない謎アドレス。
詐欺グループも日々努力を重ねているらしい。
その努力、別方向に使えんのか。
Appleアカウントを乗っ取られたら大変である。
慌てて母に、
「何した!?」
「どこ押した!?」
と聞くのだが、途中から取り調べみたいになってしまった。
母も狼狽してしまい、
「わからへん」
「覚えてへん」
「なんか出たから……」
と混乱。
こちらも途中から、
“高齢の親にITトラブルを説明してもらうこと”
そのものが無理ゲーであることに気づき始めた。
結局よくよく確認すると、詐欺メールに反応したわけではなく、
「カードの利用明細を確認しようとしてログインできなかった」
という話らしかった。
さらに調べると、カード会社側がサービス統合を行い、パスワード仕様が変わっていたらしい。
しかし説明を読んでも、
「多い桁は無視されます」
などと書いてあり、結局なぜログインできなかったのかよくわからない。
もう何が何だかである。
「まさか何かやらかしたのでは」
という疑念だけがこちらに残る。
後日再確認すると、ちゃんとAppleの支払いは引き落とされており、不正請求もなかった。
とりあえず一安心。
しかし問題はそこではない。
妻が詐欺メールの見分け方を、写真付きメッセージで半日かけて丁寧に教えていたのだが、途中で返信が止まった。
疲れたのか。
怒ったのか。
ふてくされたのか。
たぶん全部である。
結論。
こういうのは、横について一緒にやらないと無理。
高齢者に
「怪しいメールを見分けて」
「URLを確認して」
「送信元アドレス見て」
というのは、かなりハードルが高い。
最近はAIで文章も自然になり、本物そっくりの詐欺メールも増えている。
昔の詐欺メールは、
「アナタノ口座ガ凍結サレマシタ」
みたいな怪しい日本語だった。
しかし最近は違う。
AIが自然な日本語を書き、
本物そっくりのデザインを作り、
さらには名前入りでメールを送ってくる。
正直、若い人でも危ない。
だから最近は母に、
「支払いとかアカウントとか言うメールは、ほぼ100%詐欺と思ってええ」
「来たら触らず電話して」
とお願いしている。
さらに、
「変なのに引っかかったら、何回も狙われるし、最後はバール持った高校生が来るかもしれんで」
と、やや盛って脅しておいた。
あと、AI時代の対策として我が家で考えたのは、
・メールのリンクは絶対押さない
・確認は公式アプリからだけ
・“急げ”“停止する”はまず疑う
・困ったら家族に電話
・高齢者には“自分で解決しようと頑張りすぎない”ルールを作る
ことである。
あと意外と大事なのが、
「叱らない」
こと。
こっちはつい、
「なんで押したん!」
「なんで入力したん!」
と言ってしまう。
しかし怒られると思うと、次から隠す。
そうなるともっと危ない。
なので最近は、
“まず申告したらセーフ”
という空気を作るようにしている。
……とはいえ、
「パスワード入れた」
と聞いた瞬間のこちらの寿命は確実に縮む。
しかし、本当に日本も変わった。
昔は、
「知らない人について行ったらあかん」
だった。
今は、
「知らないメールを開いたらあかん」
である。
しかも敵は、家の中のスマホにまで入ってくる。
便利になったのか、不便になったのか。
最近ちょっと考えてしまう。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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