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「十六時間勤務のアットホームな職場です」


     うちはね、週七勤務で、一日十六時間労働っていう勤務形態でやってます。労働基準法ですか、大丈夫ですよ、気にしてませんから。この勤務形態はこれから主流になると思いますよ。うちの社長がね、ある日気付いたんですよ。
    「家に帰るのって、時間の無駄じゃね?」ってね。
     会社に住んでいれば、ずっと仕事できるじゃん、ってね。

     もちろん睡眠は大事ですよ。寝る時間を削ってはいい働きはできません。うちの会社では必ず一日六時間寝るよう義務付けています。寝て働くだけでは人間は壊れてしまいます。飯、風呂、トイレ、恋愛、リラックスタイム、などに一日の内合計二時間は割いていいことにもなっています。

     心配しないでください。社内食堂、社内温泉、社内ベッドと、のんびりできる設備は充実しています。ここだけの話、社内恋愛も多いんですよ。家族持ちでもうちで働き始めると、大抵独身に戻ってしまいますからね。社内教会で式もあげられます。保育園と学校、大学まで社内に作りましたからね。

     週七勤務はおかしいだろって? そうですね、それは言い過ぎでした。実際は土日祝日しっかり休みとなっています。家で過ごす日です。でもうちの場合、家ってつまり会社ですよね。会社にいると自然と仕事をしますよね。家にいたらごろごろする。家族と過ごす。会社にいたら仕事をする。家族同様の同僚と過ごす。同じことですよね。

     給料はもちろん他の会社より大分いいですよ。一日十六時間分の給料はきちんと払います。ただし退職金には期待しない方がいいかもしれません。うちの会社で定年まで勤めあげた人は今のところ一人もいないんですよね、不思議なことに。たいていある日ぽっくりと逝ってしまうんです。どうしてでしょうね。

     上昇志向のある、出世したいって人にもうちは向いてますね。先ほど話に出た社長も若くして亡くなったので、今は七代目だったかな。大体半年に一回のペースで社長は変わってますね。ええ、皆さん亡くなりました。

     やめときますって? 残念だなあ。そろそろ私もぽっくり逝きそうだから、後釜を確保しておこうと思ったんですけどね。「では失礼します」ってそんな慌てて逃げるように出ていこうとしなくてもいいじゃないですか。どうせ出口なんてないんだから。

     こちらの姉妹編のようなものです。


     
     
     
    ドロベ・ゴロウ。二児の父。脳脊髄液減少症。何かしら書いてます。旧名「名無しさ」「村野」「楢山孝介」「新都社モラトリアム新書」「山下チンイツ」など。「みんなのフォトギャラリー」で画像を使用していただいた記事にスキをつけることがあります。見知らぬ人からのスキだと怖がらないでください。

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