メインコンテンツへスキップ
見出し画像

【温泉ファンタジー】Sa・Ga3 温泉の覇者 第21話 南極へ

    海底火山遺跡を脱出してから、数日が経っていた。

    ステロスは空の上を静かに進んでいる。海底で地脈機関を取り戻したおかげで航行は安定し、船内のあちこちでは自動修復が少しずつ進んでいた。壁の傷がふさがり、消えていた照明が戻り、通路の奥では時々、古い機械が思い出したように低い音を立てる。

    それでも、完全復旧にはまだ遠い。

    ブリッジ中央のモニターには、ステロスの内部図面が映し出されていた。赤く点滅する未復旧箇所の中に、一つだけ強く光る項目がある。

    メカ
    「次期復旧候補ヲ確認。温泉羅針盤デス。」

    スパロウが顔を上げる。

    スパロウ
    「温泉羅針盤?」

    メカ
    「肯定シマス。航路選定、秘湯反応探知、温泉脈追跡ニ関連スル中核装置デス。」

    スパ子は眉を寄せた。

    スパ子
    「名前だけ聞くと、すごいのかふざけてるのかわからないわね。」

    メカ
    「重要装置デス。」

    スパ子
    「そこは真面目なのね。」

    モニターの地図が切り替わった。青い海の南に、白く塗りつぶされた大陸が表示される。その端に、小さな光点が点滅していた。

    ぺーすけが眼鏡を押し上げる。

    ぺーすけ
    「反応地点は、かなり南ですね。」

    メカ
    「南極圏デス。」

    しばらく、ブリッジが静かになった。

    スパ子は地図を見つめたまま、ゆっくりと言った。

    スパ子
    「……南極?」

    メカ
    「肯定シマス。」

    パー美がぱちぱちと瞬きをした。

    パー美
    「南極って、あの寒いやつ?」

    スパ子
    「他にどんな南極があるのよ。」

    スパロウだけは楽しそうだった。

    スパロウ
    「いいじゃねぇか。世界の果てって感じがするな!」

    スパ子
    「世界の果てに行く前に、まず服をどうにかしなさい。」

    スパ子はスパロウのいつもの格好を見た。赤いバンダナ、開け気味のジャケット、動きやすそうな服。南国の遺跡ならまだしも、南極に行く格好ではない。

    スパロウは胸を張った。

    スパロウ
    「気合いでいけるだろ。」

    スパ子
    「凍るわよ。」

    スパロウ
    「少し寒いくらいなら平気だ。」

    スパ子
    「南極を少し寒いで済ませないで。」

    ぺーすけはすでに気象情報を確認していた。

    ぺーすけ
    「通常装備での活動は危険です。風速次第では、短時間でも行動不能になります。」

    パー美が両手を上げる。

    パー美
    「じゃあ買い物だね〜。」

    スパ子はため息をついた。

    スパ子
    「まあ、そうなるわね。」

    メカが航路を表示した。南極へ向かう航路から少し外れた、灰色の海に面した寒冷地の港町が示される。

    メカ
    「南方寒冷地ノ港町ヲ確認。防寒装備ノ調達ガ可能ト推定サレマス。」

    スパロウは即座にうなずいた。

    スパロウ
    「よし、そこに寄ってから南極だ。」

    スパ子
    「珍しく話が早いわね。」

    スパロウ
    「寒いなら着込む。当たり前だろ。」

    スパ子
    「さっき気合いでいけるって言ってたでしょ。」

    スパロウ
    「気合いにも限度がある。」

    スパ子
    「そこはわかるのね。」

    ステロスは進路を変え、南方の補給港へ向かった。

    港町は、風の強い場所だった。空は低く曇り、海は鉛色に揺れている。建物はどれも背が低く、扉は厚く、道行く人々は首元までしっかり着込んでいた。漁に出る者や山へ入る者のためか、通りには防寒具や燃料、工具を扱う店が並んでいる。

    一行は必要な装備を手早く揃えた。

    最初に着替えを終えたのは、ぺーすけだった。

    黒いコサック帽、黒いロングコート、黒い手袋、黒い防寒パンツ、黒いブーツ。上から下まで見事に黒で揃っている。寒冷地調査員というより、寒冷地に出張してきた怪しい研究者だった。

    パー美がじっと見た。

    パー美
    「おにぃ、黒すぎ〜。」

    ぺーすけ
    「機能性を優先しました。」

    パー美
    「それ、南極じゃなくても言ってそう。」

    ぺーすけ
    「場所に関係なく、機能性は重要です。」

    ぺーすけは少しも揺らがなかった。

    次に出てきたパー美は、ショート丈の白いダウンジャケットを羽織り、ミニスカートに厚手のルーズソックス、もこもこのブーツを合わせていた。首元には明るい色のマフラーを巻いているが、全体としては相変わらずギャルだった。

    スパ子は目を細める。

    スパ子
    「寒冷地装備よね?」

    パー美
    「そうだよ〜。ちゃんとあったかいやつ。」

    スパ子
    「足、出てるけど。」

    パー美
    「ここは譲れないかな〜。」

    スパ子
    「南極に譲らせなさいよ。」

    パー美は自信満々に笑った。

    パー美
    「だいじょぶ。寒かったら念動バリア張るし。」

    スパ子
    「ズルくない?!」

    パー美
    「便利っしょ~?」

    スパ子
    「私にも張りなさいよ!」

    パー美
    「いいけど、加減効かないよ?」

    スパ子
    「・・・やめとくわ。」

    スパロウは、オレンジと黒の厚手のジャケットを選んでいた。赤いバンダナはそのまま、黒いマフラーを雑に巻き、防寒用の手袋とブーツも身につけている。だが、ジャケットの前は少し開いていた。

    スパ子はすぐに指摘した。

    スパ子
    「閉めなさい。」

    スパロウ
    「動きにくい。」

    スパ子
    「南極では動きやすさより保温よ。」

    スパロウ
    「寒くなったら閉める。」

    スパ子
    「着く前から負けてるわよ。」

    スパロウは笑ってごまかした。

    最後にスパ子が戻ってきた。

    麦わら帽子はいつも通りで、白いリボンが冷たい風に揺れている。白い防寒ケープを羽織り、下は動きやすい防寒服に替えていた。足元はしっかりしたブーツで、青いパレオは肩に掛けられている。

    画像

    パー美がにやっと笑った。

    パー美
    「スパ子ちゃん、南極でもリゾート感ある〜。」

    スパ子
    「ないわよ。」

    パー美
    「あるよ〜。麦わら帽子と青い布で、だいぶあるよ〜。」

    スパ子
    「これはこれでいいの。」

    スパ子はそれ以上言わなかった。パー美も、そこを深追いしなかった。

    メカだけは、普段とほとんど変わらない姿で履帯を鳴らしていた。

    メカ
    「本機ニ防寒装備ハ不要デス。」

    パー美がメカを覗き込む。

    パー美
    「でも寒そうじゃない?」

    メカ
    「寒サヲ感ジル機能ハアリマセン。」

    パー美
    「かわいげないな〜。」

    メカ
    「可愛ゲハ基本機能ニ含マレマセン。」

    パー美
    「だから付け足したくなるんだよね〜。」

    メカは一歩下がった。

    メカ
    「不要ナ改造ヲ拒否シマス。」

    スパ子は軽く笑い、店の外へ出た。

    冷たい風が頬を撫でる。まだ南極ではない。それでも、空気はすでに十分冷たかった。

    スパロウが港の先に停泊しているステロスを見上げた。

    スパロウ
    「準備はできたな。」

    ぺーすけがうなずく。

    ぺーすけ
    「最低限は。」

    パー美がマフラーを直しながら言った。

    パー美
    「南極コーデ、完成〜。」

    スパ子は麦わら帽子のつばを押さえ、肩に掛けた青いパレオを軽く直した。

    スパ子
    「遊びに行くんじゃないのよ。」

    パー美
    「わかってるって。」

    スパロウは白い息を吐くように笑った。

    スパロウ
    「温泉羅針盤を取りに行くぞ。」

    メカが先導するように履帯を回した。

    メカ
    「目的地、南極圏。ステロス、発進準備完了。」

    一行は補給港を後にした。

    灰色の海を越えた先で、白い大陸が静かに待っていた。


    画像

    第20.5話 おまけ 消失   目次   第22話 白い大陸

     
     
     
    DERAです。 ガンダムやMSについて、好きな機体や勝手な仮説を書いていきます。 走る前から何かがズレるマラソン日記、普通なら流すところに引っかかる雑談、温泉に3分入ると強くなる男の創作ファンタジーを書いています。

    あなたへのおすすめ