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【温泉ファンタジー】魔界湯士Sa・Ga 第3話 鳥居の先へ

    翌朝。
    山には薄い霧が流れていた。
    焚火の跡へ土をかけながら、スパロウが大きく伸びをする。
    「よーし! 今日こそ魔界秘湯だ!」
    「朝から元気ねぇ……。」
    スパ子は呆れながら荷物をまとめる。
    ちなみに荷物の大半は、またしてもパレオのどこかへ吸い込まれていった。
    見なかったことにする。
    山道を進むにつれ、空気が変わり始めた。
    風が弱い。
    鳥の声もしない。
    妙に静かだった。
    やがて。
    霧の奥に、巨大な鳥居が現れる。
    古びている。
    だが、崩れてはいない。
    まるで今も、誰かが手入れしているようだった。
    スパロウは立ち止まる。
    「……ここか。」
    スパ子も鳥居を見上げる。
    「なんか、嫌な感じするわね。」
    近づくだけで分かる。
    空気が違う。
    山の冷たさとは別の、まとわりつくような湿気。
    そして、鳥居の向こうだけ霧が異様に濃い。
    スパロウはニヤリと笑った。
    「秘湯っぽいじゃねぇか。」
    「その感覚ほんと分かんない……。」
    一歩。
    鳥居をくぐる。
    その瞬間、空気が変わった。
    まるで、世界そのものが入れ替わったように。
    音が遠い。
    距離感が曖昧になる。
    霧の奥からは、微かに湯の流れる音が聞こえていた。
    スパ子が小さく眉をひそめる。
    「……なんか気持ち悪いわね。」
    「秘湯の気配がする!」
    「便利な鼻してるわね、あんた……。」
    山道は続いている。
    景色も大きくは変わらない。
    木々。
    岩場。
    霧。
    だが、何かがおかしかった。
    近くに見えた岩へ辿り着くまで妙に時間がかかる。
    逆に遠くの木が、気づけばすぐ横に立っている。
    霧のせい___だけではない。
    スパ子は周囲を警戒しながら歩いていた。

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    「ねえ、太郎。」
    「ん?」
    「さっきから景色、変じゃない?」
    スパロウは辺りを見回す。
    「そうか?」
    「……こういう時だけ鈍いわね。」
    山全体が静かだった。
    風が弱い。
    鳥の声もしない。
    聞こえるのは、自分たちの足音と、どこか遠くで湯が流れるような音だけ。
    その時だった。
    ふわり、と風が流れる。
    微かに湯の匂いが混じっていた。
    スパロウの表情が変わる。
    「温泉だ!」
    「ちょ、待ちなさい!」
    止めるより早い。
    スパロウは霧の奥へ駆け出していた。
    「秘湯ぉぉぉぉっ!!」
    「ほんと元気ねあいつ!?」
    スパ子も慌てて後を追う。
    霧を抜けた先。
    そこには温泉があった。
    白い湯気。
    透き通る湯。
    岩場に囲まれた天然温泉。
    そして。
    女性たちが入浴していた。
    「……は?」
    スパ子が固まる。
    胸元を隠す者。
    慌てて湯へ沈む者。
    妙に露出度が高い。
    そして。
    「キャー!!」
    悲鳴が響いた。
    スパロウは目を見開く。
    「秘湯だぁぁぁっ!!」
    「そっち!?」
    ゴッ。
    「いっっっっ!?」
    何もない空間へ顔面から激突した。
    スパロウはその場へひっくり返る。
    「太郎!?」
    スパ子が駆け寄る。
    目の前には何もない。
    なのに、触ると硬い。
    見えない壁。
    「なんだこれ……?」
    その瞬間。
    ふっ。
    湯気が揺れた。
    温泉が霞む。
    女性たちの姿が崩れる。
    輪郭が溶ける。
    景色そのものが、霧へ溶け込むように消えていく。
    そして。
    そこには、ただの岩場しか残っていなかった。
    沈黙。
    スパ子が小さく呟く。
    「……幻覚?」
    スパロウは鼻を押さえながら立ち上がる。
    「秘湯が消えた……。」
    「そこじゃないでしょ。」
    スパ子は周囲を見回す。
    霧が深い。
    静かすぎる。
    鳥の声もしない。
    「この山、何かおかしいわ。」
    その時だった。
    ゴゴ……。
    低い音が響く。
    地面が、わずかに震えた。
    スパロウが顔を上げる。
    霧の奥。
    巨大な影が、ゆっくりと動いた。
    「……なんだ、ありゃ。」
    それは、山そのものが歩いてくるような圧だった。

    第2話 焚火と秘湯の噂   目次    第4話 魔界の守り神

     
     
     
    DERAです。 ガンダムやMSについて、好きな機体や勝手な仮説を書いていきます。 走る前から何かがズレるマラソン日記、普通なら流すところに引っかかる雑談、温泉に3分入ると強くなる男の創作ファンタジーを書いています。

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