メインコンテンツへスキップ
見出し画像

【温泉ファンタジー】Sa・Ga3 温泉の覇者 第34話 空を指す羅針盤

    ステロスのブリッジには、いつもより静かな緊張が漂っていた。

    中央モニターには、温泉羅針盤から読み取られた情報が次々と表示されている。

    円形の図形。

    見たことのない文字列。

    地図らしきもの。

    そして、その中心で小さな針がくるくると回り続けていた。

    スパロウ
    「どうだ、メカ?」

    メカ
    「温泉羅針盤、正常稼働中。」

    スパ子
    「本当に直ったのね。」

    メカ
    「直ッタノデハアリマセン。接続シタノデス。」

    スパ子
    「似たようなものでしょ。」

    メカ
    「違イマス。」

    スパ子
    「細かいわね。」

    ぺーすけはモニターを覗き込み、眼鏡を押し上げた。

    ぺーすけ
    「羅針盤というより、広域探査装置に近いですね。温泉脈、地脈反応、空間の歪みまで拾っている。」

    パー美
    「おにぃ、楽しそう〜。」

    ぺーすけ
    「当然です。未知の観測装置ですよ。」

    スパロウ
    「で、時空炉心は見つかるのか?」

    メカ
    「探索中。」

    モニター上の針が、何度か回転を止めては、また動き出す。

    青い光点がいくつも現れ、消えた。

    その中で、ひとつだけ赤い光点が強く明滅する。

    メカ
    「時空炉心ト推定サレル反応ヲ検出。」

    スパロウ
    「おおっ!」

    パー美
    「見つかったじゃ〜ん。」

    スパ子
    「場所は?」

    メカ
    「座標ヲ表示シマス。」

    モニターの地図が切り替わった。

    海。

    山。

    平野。

    雲の流れ。

    表示はどんどん拡大されていく。

    スパロウは身を乗り出した。

    スパロウ
    「どこだ?」

    メカ
    「反応地点ハ、地表ニ存在シマセン。」

    スパ子
    「地表にない?」

    メカ
    「肯定シマス。」

    パー美
    「じゃあ海?」

    メカ
    「否定シマス。」

    スパ子
    「地下?」

    メカ
    「否定シマス。」

    スパロウ
    「じゃあどこだよ。」

    ぺーすけが表示された数値を見つめた。

    ぺーすけ
    「高度が出ていますね。」

    スパ子
    「高度?」

    ぺーすけ
    「この座標、地面ではなく空中です。それも、ステロスの通常航行高度より、かなり上ですね。」

    ブリッジが一瞬、静かになった。

    スパ子
    「……空中?」

    メカ
    「肯定シマス。」

    スパロウの目が輝いた。

    スパロウ
    「空に温泉があるのか!」

    スパ子
    「なんでそうなるのよ。」

    スパロウ
    「温泉羅針盤が示してるんだぞ?」

    スパ子
    「時空炉心の反応でしょ。」

    スパロウ
    「でも温泉羅針盤だろ?」

    スパ子
    「名前に引っ張られすぎなのよ!」

    パー美
    「空の温泉、映えそう〜。」

    スパ子
    「乗らない。」

    ぺーすけ
    「ただの空中座標ではないでしょう。何らかの浮遊構造物、あるいは古代文明の制御領域が存在する可能性があります。」

    スパロウ
    「つまり、空に何かあるってことだな。」

    ぺーすけ
    「かなり雑にまとめれば、そうです。」

    メカ
    「航路設定可能。」

    スパロウ
    「よし、行こうぜ。」

    スパ子
    「軽いわねぇ。」

    スパロウ
    「最後の装置なんだろ? なら取りに行くしかない。」

    その声に、スパ子は少しだけ横目を向けた。

    太郎の表情は明るい。

    けれど、ただ新しい秘湯を見つけた時とは、少し違って見えた。

    時空炉心。

    境界航行。

    その先に何があるのか。

    スパ子は聞かなかった。

    聞きたくなかったのかもしれない。

    メカ
    「ステロス、上昇航行準備。」

    ブリッジの床が低く震えた。

    前面窓の外で、雲がゆっくり流れていく。

    ステロスは進路を変え、船首をさらに高い空へ向けた。

    スパロウ
    「天空の秘湯か……。」

    スパ子
    「まだ秘湯って決まってないからね。」

    スパロウ
    「でも、あったら入るだろ?」

    スパ子
    「空に浮いてる温泉なんて、入る前に落ちそうで嫌よ。」

    パー美
    「湯気でふわふわしてたら楽しそうじゃん。」

    ぺーすけ
    「重力制御があるなら、液体の保持も可能かもしれません。」

    スパ子
    「真面目に検討しないで。」

    メカ
    「上昇開始。」

    ステロスは雲海へ向かって進み始めた。

    ____

    しばらくすると、窓の外は白一色になった。

    雲の中に入ったのだ。

    視界は悪く、前面窓の外には何も見えない。

    ただ、白い流れが船体の周囲をすべっていく。

    船内が時々、小さく揺れた。

    スパ子
    「ねえ、揺れてない?」

    メカ
    「上昇気流ノ影響デス。」

    スパ子
    「船体は大丈夫なの?」

    メカ
    「最低限ハ問題アリマセン。」

    スパ子
    「その最低限って言い方、やめなさい。」

    メカ
    「最大限デハアリマセン。」

    スパ子
    「言い直さなくていい!」

    パー美は窓へ顔を近づけた。

    パー美
    「真っ白〜。何も見えな〜い。」

    ぺーすけ
    「雲層が厚いですね。通常の航行なら危険域です。」

    スパ子
    「通常じゃない航行だから安心ってこと?」

    ぺーすけ
    「いいえ。通常じゃないので、より判断しづらいということです。」

    スパ子
    「最悪ね。」

    スパロウだけは、雲の向こうを見つめていた。

    スパロウ
    「反応は?」

    メカ
    「上昇中。」

    スパロウ
    「近づいてるんだな。」

    メカ
    「肯定シマス。」

    温泉羅針盤の針が、激しく震え始めた。

    モニター上の赤い光点も、先ほどより強くなっている。

    何かがある。

    この雲の上に。

    地上でも、海底でも、氷の奥でもない場所に。

    スパ子は小さく息を吐いた。

    スパ子
    「今度は空、ね。」

    パー美
    「次はどこ行くんだろうね〜。」

    スパ子
    「今それ言うと、本当に変なところに行きそうだからやめて。」

    その時だった。

    ピーッ!

    ブリッジに警告音が響いた。

    スパ子
    「今度は何!?」

    メカ
    「前方ニ反応。」

    スパロウ
    「時空炉心か?」

    メカ
    「否定シマス。」

    ぺーすけ
    「別反応ですか。」

    メカ
    「敵性反応ヲ確認。複数。三体。」

    スパ子
    「三体!?」

    メカ
    「小型ノ竜種デス。ミニドラゴント推定。」

    パー美
    「ミニって言うわりに、出てくるとこわいやつ〜?」

    白い雲の向こう。

    小さな影が、いくつも横切った。

    雲の表面に、細い切れ目が走る。

    一つ。

    二つ。

    三つ。

    スパロウ
    「……なんだ?」

    影は、もう一度現れた。

    今度ははっきり見えた。

    小さな翼。

    短い尾。

    雲を裂くように、三つの影が連なって旋回している。

    メカ
    「敵性反応、接近中。」

    スパ子
    「可能性じゃなくて、絶対そうでしょ。」

    白い雲の中で、三つの影がステロスの進路上へ飛び出した。

    画像

    第33話 羅針盤の針     目次   第35話 核爆弾

     
     
     
    DERAです。 ガンダムやMSについて、好きな機体や勝手な仮説を書いていきます。 走る前から何かがズレるマラソン日記、普通なら流すところに引っかかる雑談、温泉に3分入ると強くなる男の創作ファンタジーを書いています。

    あなたへのおすすめ