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【温泉ファンタジー】Sa・Ga3 温泉の覇者 第36話 モンスターの肉

    角を曲がった瞬間、白い霧の向こうから爪が飛び出した。

    スパロウは反射的にカトラスを構える。

    ギンッ!

    金属音が通路に響いた。

    スパロウ
    「重っ!」

    白い霧の奥から、小型竜が顔を出していた。

    ミニドラゴン。

    そう呼ばれてはいたが、目の前にいるそれは、人間よりずっと大きい。

    細長い首。

    硬そうな鱗。

    短い翼。

    鋭い爪。

    全身が通路へ入り込んでいるわけではない。

    右舷の破れた整備ハッチから、頭と前脚、胴体の半分ほどを無理やりねじ込んでいる。

    外にはまだ尾と翼の一部が残っているらしく、穴の向こうには白い雲が流れていた。

    スパ子
    「思ったより入り込んでる!」

    ぺーすけ
    「全身は入っていません。未修復箇所から、身体の一部を差し込んでいる状態ですね。」

    パー美
    「じゃあ押し返せばいいんじゃな〜い?」

    スパ子
    「船ごと壊さないでよ!」

    ミニドラゴンが首を伸ばした。

    鋭いくちばしのような口先が、スパロウの肩を狙う。

    スパロウは身をひねり、カトラスで横から斬りつけた。

    刃が鱗をこすり、火花が散る。

    スパロウ
    「硬ぇな!」

    スパ子は横へ回り込み、苦無を投げた。

    苦無は首元に刺さったが、浅い。

    ミニドラゴンが怒ったように鳴いた。

    甲高い声が、狭い通路に反響する。

    スパ子
    「うるさっ!」

    パー美
    「ちょっと黙ってて〜。」

    パー美が片手を上げた。

    ミニドラゴンの頭が、見えない力に押さえつけられる。

    ゴンッ!

    床へぶつかった。

    ぺーすけ
    「船体への衝撃を考えてください!」

    パー美
    「加減したよ〜。」

    その直後、通路のスピーカーからメカの声が響いた。

    メカ
    『右舷整備通路、損傷拡大。』

    スパ子
    「今のは元からでしょ!」

    メカ
    『現在進行形デス。』

    スパ子
    「細かい!」

    ミニドラゴンが暴れた。

    爪が床をえぐり、翼の端が壁にぶつかる。

    外装の穴から、冷たい風と白い雲が吹き込んだ。

    パー美
    「雲、めっちゃ入ってきてる〜。」

    スパ子
    「実況しなくていい!」

    ぺーすけ
    「長引かせると、船体側の損傷が増えますね。」

    スパロウ
    「なら、押し返して斬る!」

    スパ子
    「雑だけど、それしかないわね!」

    ミニドラゴンが再び首を振る。

    鋭い爪が、スパロウの足元を狙った。

    スパロウは後ろへ跳び、すぐに踏み込む。

    爪。

    牙。

    尾。

    通路いっぱいに暴れる小型竜を相手に、動ける範囲は狭い。

    スパ子は壁を蹴り、横から苦無を投げる。

    ぺーすけが念動力で爪の動きを止める。

    パー美が頭を押さえる。

    スパロウが前に出る。

    いつものように広い戦場ではない。

    船内。

    狭い通路。

    壊れかけの壁。

    外には雲。

    一歩間違えれば、敵よりステロスの方が先に壊れそうだった。

    スパ子
    「太郎、奥まで入らせないで!」

    スパロウ
    「わかってる!」

    ミニドラゴンが大きく口を開いた。

    喉の奥で、青白い光がちらつく。

    ぺーすけ
    「何か吐きます!」

    スパ子
    「最悪!」

    スパロウは迷わず前へ出た。

    吐き出される寸前、カトラスの柄でミニドラゴンの顎を下から叩き上げる。

    ガンッ!

    光が逸れた。

    次の瞬間、白い冷気のような息が天井へ吹き上がる。

    天井の配管が凍りつき、パキパキと嫌な音を立てた。

    メカ
    『冷却配管、凍結。』

    スパ子
    「今の敵のせいよね!?」

    メカ
    『肯定シマス。』

    スパ子
    「ならよし!」

    ぺーすけ
    「よくありません。」

    ミニドラゴンが体勢を崩した。

    ほんの一瞬。

    それを見逃さず、パー美が指を振る。

    パー美
    「押し戻すよ〜。」

    見えない力が、ミニドラゴンの胴体を外へ押した。

    だが、敵も必死に爪を立てて抵抗する。

    床が削れる。

    壁が鳴る。

    外装の穴がさらに広がりそうになる。

    ぺーすけ
    「パー美、力任せにやるな!」

    パー美
    「じゃあ、おにぃもやってよ〜!」

    ぺーすけ
    「やっています!」

    二人の念動力が重なった。

    ミニドラゴンの身体が、少しずつ外へ押し返されていく。

    爪が床から外れた。

    スパロウ
    「今だ!」

    スパ子
    「太郎!」

    スパ子の苦無が、ミニドラゴンの目の前をかすめた。

    ほんの一瞬、敵の視線がそちらへ向く。

    その隙に、スパロウが踏み込んだ。

    カトラスが、首元の鱗の隙間へ入る。

    スパロウ
    「おおおおっ!」

    一閃。

    硬い鱗を裂き、刃が深く通った。

    ミニドラゴンが大きく震える。

    甲高い声が、通路に響いた。

    ぺーすけ
    「押し出します!」

    パー美
    「ほい!」

    念動力が一気に弾けた。

    ミニドラゴンの身体が、外装の穴からずるりと押し出される。

    だが、完全には落ちなかった。

    首元を斬られた小型竜は、半分船内に残ったまま、ぐったりと動かなくなった。

    スパロウ
    「……倒したな。」

    スパ子
    「船の中はめちゃくちゃだけどね。」

    パー美
    「でも落ちなかったじゃん。」

    ぺーすけ
    「落ちなかったことを成果にする状況が、すでに危険です。」

    スパ子
    「本当にね。」

    その時、通路のスピーカーが鳴った。

    ブリッジにいるメカからの艦内アナウンスだった。

    メカ
    『モンスターノ肉ガ落チテイル。食ベマスカ?』

    スパ子
    「食べないわよ!!」

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    スパロウ
    「食えるのか?」

    スパ子
    「食べる方向で考えるな!」

    パー美
    「焼いたらいけるんじゃな〜い?」

    スパ子
    「いけない!」

    ぺーすけ
    「正体不明の生体組織を摂取するのは危険です。」

    スパ子
    「真面目に止めてくれてありがとう!」

    スパロウは、倒れたミニドラゴンを見下ろした。

    スパロウ
    「でも、肉って言われると……。」

    スパ子
    「言われても考えない!」

    メカ
    『食ベナイ、ヲ選択。』

    スパ子
    「選択式にしないで!」

    メカ
    『了解。艦内、清掃モードニ入リマス。』

    天井の隙間が開いた。

    そこから、細い清掃アームが何本も伸びてくる。

    ブラシ。

    吸引口。

    金属製の小さなハサミ。

    そして、なぜか泡。

    清掃アームはミニドラゴンの残骸をつかみ、床の破片を吸い込み、壁についた汚れをこすり始めた。

    スパロウ
    「清掃機能は生きてるんだな。」

    スパ子
    「武器はないのに?」

    メカ
    『清潔ナ船内環境ハ重要デス。』

    スパ子
    「言ってることだけは正しいのが腹立つわ。」

    清掃アームが、ミニドラゴンの尾をずるずると奥へ引きずっていく。

    パー美
    「持ってかれた〜。」

    ぺーすけ
    「どこへ運んでいるのでしょうか。」

    メカ
    『処理区画デス。』

    スパ子
    「食堂じゃないでしょうね?」

    メカ
    『否定シマス。現在、食堂機能ハ停止中デス。』

    スパ子
    「そういう問題じゃない!」

    その時、また別の警告音が鳴った。

    スパ子
    「まだ何かあるの!?」

    メカ
    『外部敵性反応、二。』

    パー美
    「あ、残りの二体?」

    通路の隙間から、外の雲が見えた。

    白い流れの向こうで、二つの影が旋回している。

    だが、こちらへ突っ込んではこない。

    ぺーすけ
    「一体を失って、様子を見ているようですね。」

    スパロウ
    「来るなら来い!」

    スパ子
    「来なくていい!」

    数秒後。

    メカ
    『外部敵性反応、離脱ヲ確認。』

    スパ子
    「助かった……。」

    パー美
    「仲間が肉になったから逃げたのかな〜。」

    スパ子
    「言い方!」

    ぺーすけ
    「肉にはなっていません。清掃アームに回収されただけです。」

    スパ子
    「そこも真面目に訂正しなくていい!」

    警報音がようやく止まった。

    通路には、清掃アームの動く音だけが残った。

    白い霧は少しずつ薄くなっている。

    メカ
    『右舷整備通路、応急封鎖ヲ開始シマス。』

    壁の破れた部分に、薄い金属板のようなものが展開されていく。

    完全な修理ではない。

    ただ、雲と風が吹き込む量は減っていった。

    スパ子
    「応急ってところが不安ね。」

    メカ
    『復旧率52パーセントデス。』

    スパ子
    「もう聞いたわよ!」

    スパロウは、応急封鎖された外装の向こうを見た。

    その先には、まだ白い雲が流れている。

    ステロスは雲海の中を進み続けていた。

    時空炉心の反応は、このさらに上にある。

    空に何が待っているのかは、まだ見えない。

    ただ、ここまで来て引き返すという選択肢だけは、誰の顔にも浮かんでいなかった。

    第35話 核爆弾   目次   第37話 雲の上の大陸

     
     
    DERAです。 ガンダムやMSについて、好きな機体や勝手な仮説を書いていきます。 走る前から何かがズレるマラソン日記、普通なら流すところに引っかかる雑談、温泉に3分入ると強くなる男の創作ファンタジーを書いています。

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