
研究テーマがない化学メーカーR&Dに足りないもの:答えは「外」にある
いい研究者は“実験が上手い人”ではない
“課題を見つけるのが上手い人”である
はじめに:R&Dにいる「暇な人」と「激務な人」の差はどこから生まれるのか
化学メーカーの研究・開発部門では二極化が起きている。
テーマがなく、何をしたらいいか分からない人
顧客対応・試験・調整で常に忙しい人
この差は“能力”ではない。
仕事の取り方、特に「顧客との距離」の差である。
この感覚は現場だけの話ではない。
研究開発では「市場ニーズとの乖離」「テーマ設定の難しさ」「社内連携不足」が広く課題として指摘されている。 [ils.tokyo]
本記事は、化学メーカーの研究・開発部門で、
「何をテーマにすべきか分からない」と感じている方、
あるいは「忙しい人とそうでない人の差は何か」と疑問に思っている方に向けて書いています。
また、顧客対応に追われている現場側の方にとっては、
「なぜ自分だけ忙しいのか」を言語化するヒントにもなるはずです。
1. 「テーマがない」は個人の問題ではない
「テーマがない=ダメな研究者」ではない。
むしろ企業側の問題として
研究テーマ設定そのものが課題
既存事業への偏重
新規領域の探索不足
が挙げられている。 [prtimes.jp], [nri.com]
つまり
👉 テーマがないのは構造問題
2.化学メーカーあるある
①「とりあえず物性測っておいて」
テーマがないときによく起きること:
既存材料の横展開検討
ひとまず物性データ取り
「とりあえず配合変えてみる」
👉 何のためか分からない実験
これはなぜ起きるか?
👉 課題が定義されていないから
化学メーカーあるある
②「営業経由のふんわり案件」
「お客様がこういうの欲しいらしいです」
「なんか耐熱高いの探してるって」
👉 粒度が粗すぎる
結果:
的外れな試作
スペック迷子
結局ボツ
化学メーカーあるある
③「評価終わってから呼ばれる」
これはかなり多い。
顧客:評価終盤で問題発生
→ バタバタしてR&Dに依頼
👉 最初から関わっていれば防げた問題
化学メーカーあるある
④「競合に全部持っていかれる」
理由はシンプル
👉 先に入り込んだ方が勝つ
評価条件を作る
スペックを握る
設計に組み込まれる
👉 後追いはほぼ勝てない
化学メーカーあるある
⑤「顧客の“要望”だけをやる」
これは危険。
例:
「耐熱200℃欲しい」 → 本当は「工程温度が高すぎる」
👉 課題を理解していない
3. なぜ大企業ほどテーマ難民が出るのか
共通構造:
内向き(研究所完結)
成功体験(既存品延長)
探索より最適化
大企業ほど内部志向になりやすく、既存領域に偏りやすい傾向は研究でも指摘されている。 [capgemini.com]
👉 結果
テーマが生まれにくくなる
4. 忙しい人は何をしているか
忙しい人の行動:
客先訪問
試験立会い
スペック調整
トラブル解析
つまり
👉 顧客の現場にいる
5. デザインインの本質
デザインインとは
👉 顧客の設計プロセスに入り込むこと
これができると:
課題が一次情報で取れる
評価条件を握れる
仕様が自社前提になる
6. 結論
テーマは
👉 社内では生まれない
👉 顧客の現場にある
だから
👉 研究者は外に出るべき
テーマを“外から持ち帰る技術”
ここからは「再現性」の話。
7. なぜ普通のヒアリングは失敗するのか
よくある失敗:
「困ってることありますか?」
「こういう材料どうですか?」
👉 これでは既存案件しか出てこない
理由:
顧客は課題を言語化できない
営業窓口は表層しか知らない
8. 正しいヒアリングの型(5ステップ)
Step1:使用シーンを分解
工程・条件・環境まで
Step2:不満を聞く
トラブル、不良、クレーム
Step3:数値で掘る
発生率、改善価値
Step4:現行回避策を確認
他社、内製、応急処置
Step5:理想状態を引き出す
もし制約なければ?
👉 これで
👉 テーマが見える
9. デザインインチェックリスト
フェーズ1
✅ 技術者と直接接続
フェーズ2
✅ 使用環境理解
フェーズ3
✅ 仮説構築
フェーズ4
✅ 評価に入り込む
👉 ここまで来ると勝ち
10. 実務テンプレ(そのまま使える)
初回訪問:
用途整理(5分)
不満ヒアリング(15分)
数値確認(10分)
回避策(10分)
次アクション(10分)
👉 「案件化できる訪問」になる
最終まとめ
研究開発の問題は
👉 テーマがないことではない
👉 顧客と繋がっていないこと
一言で
テーマは机の上で“考えるもの”ではなく
顧客とのコミュニケーションの中で“見つけるもの”
営業部門等を通じて、顧客とのコミュニケーションの場を作れるよう積極的に働きかける姿勢が必要になる。