
Discovering the Real D.C. (Part 2)
Washington, D.C.旅行の第2弾です。前回は連邦議会、合衆国最高裁判所、ホワイトハウスを見学した感想を書きました。今回は、D.C.観光のもう一つの目玉である、スミソニアン博物館を見学した感想を書きたいと思います。前回の記事をまだご覧になっていない方は↓から。
まずは基本情報から。スミソニアン博物館群を運営するスミソニアン協会(Smithsonian Institution)は、ワシントンD.C.にある世界的に有名な博物館・研究機関の集合体です。英国人科学者であるジェームズ・スミソンが全財産を寄付して、スミソニアンの設立に大きく貢献しました。ワシントンD.C.内に17の博物館、ギャラリー、動物園等を持っており、合計で1億5000万点以上の展示物・芸術作品・標本があります。入館はすべて無料です。
What is the Smithsonian Institution?
Collectively called the Smithsonian Institution, the world-renowned museum and research complex consists of 17 museums and galleries in Washington, DC, including the National Zoo. From the origins of man at the Natural History Museum to the future of space travel at the Air and Space Museum (and its even bigger sister facility, the Udvar-Hazy Center), Smithsonian museums are a guide to the most fascinating aspects of our world. The museum collection contains more than 150 million objects, works of art and specimens altogether. And the best part: you won’t have to pay a penny to experience it as admission is free at every location.
無料とはいえ、すべてを見て回ることは到底不可能だったので、特に有名な国立航空宇宙博物館(The National Air and Space Museum)と、国立自然史博物館(The National Museum of Natural History)を見てきました。
①国立航空宇宙博物館(The National Air and Space Museum)
まずは国立航空宇宙博物館へ向かいました。航空や宇宙に関する様々な資料が展示されています。上記のとおり、スミソニアン博物館群の博物館はすべて無料なのですが、人気の博物館は事前にオンライン予約(フリーパスの取得)を求められる場合があります。(2025年9月時点では)国立航空宇宙博物館もその一つなので注意が必要です。以下のウェブサイトから取得できます。
博物館に入ると、館内いっぱいに実際の航空機、ロケット、エンジン等が展示されていて、迫力満点でした。展示はおおまかには航空エリアと宇宙エリアの2つに分かれています。
☞航空エリア
航空エリアでは、ライト兄弟の飛行実験から現在のジャンボジェット機に至るまでの飛行機の歴史が詳細に解説されています。

細かく展示を見ていくといくら時間があっても足りないので、何か自分の中でテーマを決めて展示を見るとよいかもしれません。自分は、飛行機が飛ぶ仕組みに興味があったので、「飛行機はなぜ飛ぶのか」をテーマに展示を見ることにしました。ライト兄弟の時代も、そして現代の飛行機も、飛行機を飛ばすための基本的なアイデアは変わっていないといいます。まず、翼の迎え角という角度を調整し、中心圧(Center of Pressure)の位置を変化させます。そうすると、重力とのモーメントのつりあいが変化します。モーメントのつりあいの変化に応じて、機体が上を向いたり、下を向いたりします。これによって、機体の上昇や下降をコントロールしているのです。もちろん、これは非常におおざっぱな説明であり、飛行機が飛ぶ原理を正確に理解したいのであれば「ベルヌーイの定理」等の物理法則からの説明が必要となりますが、直感的な理解には役に立つと思います。現在のジャンボジェット機において、中心圧(Center of Pressure)と重力の位置関係を変化させる役割を担っているのは、水平尾翼(Horizontal Stabilizer)に付いている昇降舵(Elevator)なんだそうです。意外にも、しっぽにあるあの小さな翼が、飛行機が空を飛ぶために非常に重要な役目を持っているんですね。

☞宇宙エリア
宇宙エリアでは、アポロ11号の月面着陸を筆頭とした人類の宇宙探査の歴史や、これからの宇宙開発の展望、銀河系や太陽系に関する最新の研究成果が紹介されていました。

特に「他の惑星にどうやって住居を建設するか」という展示が印象的でした。地球から資材を運ぶのは非現実的なため、3Dプリンターを使って現地の素材(月や火星であればレゴリス等)で建設するというアイデアが紹介されていました。ハワイの玄武岩が月や火星の岩石と成分的に近く、そこで実証実験が行われているそうです。

ちなみに、宇宙旅行の紹介もありました。現在、一般人向けに実施されている宇宙旅行は、ロケットで大気圏を突破して宇宙空間に入り、無重力状態を数分間体験した後に、再び大気圏を突破して地上に帰ってくる、という比較的短いものです。それでも、誰でも行けるわけではないですし、費用も桁違いにかかります。2年くらい前ですが、株式会社INAMI Space Laboratoryの代表として宇宙ビジネスを展開されている稲波紀明さんの講演を聴いたことがあります。稲波さんはヴァージン・ギャラクティック社が実施した宇宙旅行に見事当選し、日本人サラリーマンとしては初の宇宙旅行を経験された方ですが、たった数十分間の宇宙旅行でも費用は数千万円くらいかかったというお話だったと記憶しています。もっとも、スペースX社が再利用型ロケットの開発に成功するなど、着実に宇宙旅行のコストは下がってきていますね。僕が生きているうちに、一般人でも手が届くくらい宇宙旅行が身近なものになるといいなと思います。稲波さんは、「よくわかる宇宙ビジネス 日本初サラリーマン宇宙旅行者からの提言」という本も出されていて、そこに詳細な体験談が紹介されているので、興味がある方はぜひ読んでみてください。
国立航空宇宙博物館は現在改装中という話も聞いており、どうやら本来よりも少ない展示量だったみたいですが、それでも十分すぎるくらい楽しめました。特に宇宙分野に関しては、NASAを有するアメリカはやはり圧倒的に技術が進んでいるので、かなり見応えがありましたね。スミソニアン博物館群の中でも特に人気というのも頷けます。
②国立自然史博物館(The National Museum of Natural History)
次に訪れたのは国立自然史博物館(The National Museum of Natural History)です。こちらは、国立航空宇宙博物館のように事前予約をする必要はなく、すんなり入ることができました。その名の通り「自然史」をテーマにした博物館であり、恐竜等の古代生物の化石を展示しているエリア、近現代生物の剥製や標本を展示しているエリア、人類史を紹介しているエリアなど幅広いです。

☞人類史エリア
人類史のエリアがなかなか面白くて、最古の人類といわれる「ルーシー」から始まり、火の使用、道具の製造、人体や脳の発達の過程まで、人類の歴史を事細かく追うことができて面白いです。歴史を遡ると、人類の脳の発達が最も早く進んだ時期は、大規模な気候変動が起こった時期と重なるらしいです。変化の多い不安定な環境の中でこそ、人類は脳を大きく発達させ、社会性を強めて周囲と協力することで、困難を乗り越えてきたんですね。

☞古代史エリア
古代史エリアには、大迫力のティラノサウルスの化石、映画「ジュラシックワールド」で活躍していたモササウルスの化石、こちらも映画で有名になったメガロドンの口の化石等、見応え満点でした。


☞恐竜はなぜ絶滅したのか?
館内がとても広いので、こちらも何か一つテーマを決めて展示を見るのもよいかもしれないです。僕が決めたテーマは、「恐竜はなぜ絶滅したのか?」です。恐竜が絶滅した原因は諸説ありますが、展示によれば、多くの科学者が、6600万年前に現在のメキシコ付近に衝突した隕石が恐竜の大量絶滅の原因と位置付けているらしいです。隕石の衝突自体が原因というよりかは、それによって引き起こされる大規模な津波、森林火災、干ばつ、気候変動によって、大量絶滅が引き起こされました。この隕石が衝突する前も、インド付近の大規模な火山活動(デカン・トラップ)によって気候変動が度々起こっていましたが、これが大量絶滅の直接のトリガーになったわけではないとのこと(ただ、複合的要因となったという説もあり)。また、恐竜が鳥に進化したという説もありますが(映画「ジュラシックパーク」のグラント博士がこの説の論者でしたね)、隕石衝突による環境の変化を生き抜いた一部の鳥類型恐竜は鳥に進化したというだけで、恐竜が地球上からいなくなった直接の原因ではないらしいです。

恐竜の絶滅後は、生態系の激変を生き延びた小さな哺乳類が、新たに地球の支配者となりました。何かの本で読んだことがありますが、自然界では「適応放散」という現象が起こります。生態系におけるある特定の地位に空席(ニッチ)ができると、そのニッチを埋めるように他の生物が進化する、というものです。例えば、ガラパゴス諸島では長らく大型の陸生・海洋草食動物がいなかったため、そのニッチを埋めるようにカメやイグアナが大型に進化しました。また、オーストラリアでは大型の胎盤型哺乳類がいなかったため、これに代わるように有袋類が進化して、大型の陸上草食生物というポジションをカンガルーなどが、大型の陸上肉食動物というポジションをフクロオオカミなどが埋めるようになりました。(ただし、フクロオオカミは絶滅し、現在ではタスマニアデビルなどがそのニッチを埋めるようになりました)。これと同じように、恐竜が絶滅した後、大型の陸上生物や海洋生物がいなくなり、生態系に多くのニッチができたので、適応放散によって、哺乳類がそれらのニッチを埋めるように巨大に進化していった、ということだと思います。自然って面白いですよね。
国立自然史博物館はとにかく建物が巨大で、地下から2階まであり、ギフトショップやカフェテリア等もありました。事細かく展示を見るのもいいですし、カフェで休憩したりお土産を探したりしながら、自分のペースで興味のある展示をつまみ食いするのも良いと思います。D.C.を訪れた際には行かなければ損だと思います!
時間の都合上、今回は上記の二つの博物館しか訪れることができませんでしたが、それでも、「これで無料は贅沢すぎる」と感じるほどの充実ぶりでした。スミソニアン博物館群、おそるべしです!