
ダンジョン第76階層【実録】『「証拠を見せろ!」敵陣深部への潜入と沈黙のキーマンとの極秘接触』
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01:デジタル・シャドウ・スキャン〈電脳空間の影の索敵〉
俺はとりあえず手に入れた魔法の符(名刺)に刻まれた名前、「篠田淳」を魔導板(パソコン)で検索してみた。
最強ギルド(大企業)青木工業のサイトから彼を探し出す。
『ここでオレ様が、当時の情報環境について解説するワン!』

『2000年代初頭は、個人情報の取り扱いが今よりずっと緩かった時代だワン』
『組織図や構成員(社員)の写真、名前が平気でネットの海に漂っていたんだワン』
『特に中堅クラスのギルド(製造業)などは、まだまだ無防備だったワン!』
俺は魔導鍵盤(キーボード)を叩き、スクロールしながら外郭盟約の補給陣列(調達部)をたどる。

すると、篠田淳はまだそこに在籍していた。
写真もしっかりと掲載されている。
黒縁魔導眼鏡(メガネ)をかけた、いかにも硬くて真面目そうな男だ。

この男が、伊藤統括導師(部長)の悪行を憎んでいるのか。
その真偽は定かではない。
しかし、あの含みを持たせて渡された魔法の符(名刺)である。
俺は彼の顔と名前をしっかりと脳裏に焼き付けた。
ここで俺は極度の緊張から無意識に自分の体臭を気にする痛々しいルーティンに走った。
ワキのニオイを深く嗅ぎ込み、古の魔導師の残り香(加齢臭)を魔力だと勘違いして深呼吸をした瞬間。
激しくむせ返って魔導板(パソコン)の画面に顔面を強打する。
「ぐはッ!」 鼻血を垂らしながら床で痙攣した。

『おい、おっさん!』
『ネット検索中に自分の悪臭で自爆して画面に激突するとか、ただのサイバーテロだワン!』
『一人で勝手に流血して、拠点(オフィス)の空気を腐海に変えてるワン!』
魔犬ツンのジャッジメント・サタン〈魔犬の正論〉が俺の心臓を鋭く抉る!
痛恨的…!
俺は鼻血を拭いながら我に返り、一つ目の物理刃(自分軸)を心の中で強く詠唱した!
「発動せよ……!」
デジタル・シャドウ・スキャン〈電脳空間の影の索敵(ネット検索)〉ッ!!
02:サイレント・シャドウ・ストーキング〈静かなる尾行〉
その翌日。
俺は最強ギルド(大企業)青木工業の入り口である重厚な門の前に潜み、待ち伏せを決行していた。
青木工業の定時は17時30分。
終了を知らせる熱量鍛造陣(工場)のサイレンの音が、空に重く響き渡る。
ぞろぞろと連れ立って、作業着姿の誓約の構成員(社員)たちが門をくぐっていく。

内勤勤務の者たちは庶民の戦闘服(スーツ)姿だ。
その波の中に、一人で歩く篠田淳の姿を見つけた。
俺は気配を消し、彼のあとをつけることにした。

ギルド(会社)の人間が周囲にいるうちは、万が一その接触現場を見られると今後の作戦に重大な支障をきたすかもしれない。
ある程度、彼の家の近くまで尾行し、完全に一人になった状況で声をかけた方がいい。
俺は彼の背中を追う。
魔導列車(電車)を乗り継いで、彼の最寄り駅で一緒に降りた。
改札を抜け、人影がまばらになった歩道を歩く彼の背後へ静かに忍び寄る。
ここで俺は極度の緊張をごまかすため、無駄に大げさなオーバーリアクションを取る痛々しいルーティンに走った。
「さあ、接触の時だ!」
大見得を切って華麗なターンを決めた瞬間。
足がもつれて近くの電柱に顔面から激突する。

「ごふッ!」
鈍い音を立ててその場にうずくまり、白目を剥いて痙攣する。

『おい、おっさん!』
『尾行中に電柱に激突して自爆するとか、隠密行動の才能ゼロだワン!』
『ただの不審者として通報されるレベルだワン!』
魔犬ツンの冷酷なツッコミが胸に刺さる。
痛恨的…!
俺は激痛に耐えて立ち上がり、二つ目の物理刃(自分軸)を心の中で詠唱した!
「いでよ……!」

サイレント・シャドウ・ストーキング〈静かなる尾行〉ッ!!
俺は痛む顔を抑えながら、ついに彼に声をかけた。
「篠田淳さんですよね」
俺はすかさず魔法の符(名刺)を差し出した。
「私、魔導指導学校(資格学校)の魔導師(講師)をしております。異次元おじさんと申します」
篠田は警戒の眼差しを向けた。
「君は一体何なの?」

「互助陣列(互助会)の交差陣列(取引先)の代理でまいりました」
「お仕事のことでお伺いしたいことがあります」
「お時間いただけませんか」
篠田は冷たく返す。
「それなら、職場で話を聞くよ」
「日を改めてもらえないかな」
俺は彼の耳元へと顔を寄せ、低い声で囁いた。
「御社の王都の醜聞(大スキャンダル)の話なんですよ」
衝撃的…!
その一言で、篠田の足がピタリと止まった。
彼はなんとなく、事の重大さを察したのだろう。
俺たちは、近くの魔力充填所(純喫茶)へと場所を移すことにした。
03:シークレット・ネゴシエーション〈秘密の交渉〉
純喫茶の奥の席。
コーヒーカップを前に、篠田は早口で話し始めた。
「あまり時間がないんです。手短にお願いできますか」
俺は真っ直ぐに彼を見据えて答えた。
「分かりました。結論から申し上げます」
「伊藤統括導師(部長)が個人的に因果を歪める汚濁供物(賄賂)を要求している件です」
戦慄的…!
「私はある人からあなたを紹介されました」
「あなたに会えば、伊藤統括導師(部長)のことを知っていると」
篠田の表情が微かに歪む。
「こちらにも情報の巻物(証拠)はあるんです」
「すでに互助陣列(互助会)メンバーのギルド(企業)さんから、その不可逆の命脈測儀(高級時計)の盟約の対価記録(領収書)を3枚ほどお預かりしております」
俺はテーブルの上に、そっと3枚の盟約の対価記録(領収書)の束を置いた。

「協力してもらえませんか」
俺は三つ目の物理刃(自分軸)を心の中で強く詠唱した!
「発動せよ……!」

シークレット・ネゴシエーション〈秘密の交渉(証拠の提示)〉ッ!!
篠田も現在の状況を正確に把握したようで、一言だけ短く答えた。
「……少し時間をもらえませんか」
「こちらにも準備があります」
彼は確かに、何かを握っている。
俺は一歩前進したことを確信した。
04:ダブル・エッジ・ディール〈諸刃の取引〉
しかし、篠田はここで俺にある一つの要求をしてきた。
「上層部を説得するためにその情報の巻物(証拠)もお預かりできませんか」

俺は言葉に詰まった。
確かに、彼が上層部を動かすためには物理的な証拠が必要だという理屈は一理ある。
果たして、ここで本当に篠田を信用していいのか?
ただ単に、この盟約の対価記録(領収書)が彼によってもみ消されるだけではないだろうか。
最強ギルド(大企業)にとっては、スキャンダルなどそもそも「なかったこと」にする方が楽ではないのか。
伊藤統括導師(部長)も会社にとっては、外郭陣列(下請け)のコストを下げる役割を担っている有益な駒とも考えられる。
上層部と伊藤との関係性も分からない中。
不用意に決定的な証拠を安易に渡すことは絶対にできない。
俺は四つ目の物理刃(自分軸)を心の中で高らかに詠唱した!
「いでよ……!」

ダブル・エッジ・ディール〈諸刃の取引(条件付きの同席要求)〉ッ!!
俺から篠田に対して、毅然とした態度で提案を突き返した。
「その上層部のキーマンと話す機会に、私も同席させてください」
「その時に、その方へ直接お見せします」
篠田は少し戸惑った様子を見せたが、やがて静かに答えた。
「……分かりました。調整します」

そう言って、二人は足早に別れた。
わずか5分程度の緊迫した会話である。
まだ俺は、篠田という男を完全に信用することはできない。
しかし、彼が何か強大な秘密を握っていることは間違いない。
俺が「ある方から紹介された」と伝えたことも彼には重く響いていたのだろう。
ここから一気に、最強ギルド(大企業)を取り巻く状況はめまぐるしく変わることになる。
名もなきモブの反撃の狼煙が、ついに巨大な闇の心臓部へと到達したのだ。
いざ、次なる階層へ。
【次回予告:ダンジョン第77階層】
ついに最強ギルド深部への潜入経路を確保した異次元おじさん!
篠田係長が手引きする「上層部のキーマン」との極秘面会がセッティングされる!
だが、証拠を盾にした交渉は、一歩間違えれば即座に揉み消される絶体絶命の綱渡り!
伊藤統括導師(部長)を退任へと追い込む決定的な一撃を放つことはできるのか!?
そして、裏で蠢く巨大組織のさらなる闇が牙を剥く!
次なる死闘が今、幕を開ける!
最後までお付き合いありがとうございます。
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【迷宮の深淵へようこそ】
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覚悟がある奴だけ、次のページをめくれ。
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