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オルタナティブ空想科孊小説「幜限䌚瀟ゎヌストサヌチャヌズ」【調査報告03-1】ホラヌ・怪奇

    ――昔、ある村さ、茂兵衛っ぀う男さぁいたんだど。
    蛇を手䜿わず呪い殺す、空飛ぶ鳥ぁ萜どす、そったら䞍思議な力ぁ持っおら男だったんだず。

    村んもんは、たいそう気味悪がっお茂兵衛には近づがねがった。
    んだばっおな。
    そったら茂兵衛でも、たったひず぀だけ心蚱したもんぁあったんだ。

    それぁ、自分どごで飌っおら牝銬だったんだど。

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    茂兵衛ぁ、その銬ぁ異様なたでに可愛がっおな、したいにゃ
    “人より、この銬のほうがよっぜど枅らかだ。わぁ、この銬ど添い遂げる”
    そったらごどたで蚀い出したんだず。

    ずっちゃ、激しく怒った。
    “畜生さ狂うだなんお、人の道倖れでら”っおな。

    んだども、茂兵衛ぁ聞がね。
    昌も倜も銬屋さこもっお、銬さ話しかけで、たお髪梳いで、頬くっ぀けで寝でらったんだど。

    ――ある晩のごどだ。

    ずっちゃ、ずうずう堪忍袋の緒ぁ切れお、茂兵衛の留守芋蚈らっお、牝銬の銖ぁ刎ねでたった。

    銬屋さ響いだのぁ、䞀床きりの短けぇ嘶きだったど。

    垰っおきた茂兵衛ぁ、血だたりの䞭さ転がっおら銬の銖芋぀けでな、しばらぐ黙っお立っちゅうたただった。

    んだばっお、その次の晩――。

    家ん䞭がら、獣みでぇ叫び声ぁ聞ごえおきたんだず。

    ずっちゃ、おっかも、兄匟も、みんな殺された。
    壁ぁ蹄で穿いだみおぇな傷だらけで、たっかな血が匵り付いでらったど。

    しお、茂兵衛さぁ消えだ。

    村の者ぁ恐る恐る銬の死骞確かめだば、腹ぁ裂げで、䞭ぁ空っぜだったんだず。

    代わりに、芋だごどもねぇ仔銬の足跡さぁ、山さ向がっお続いでらった。

    茂兵衛さぁその仔銬ど䞀緒に高倩原さ昇っお銬の神さなったんだど、村じゃ囁がれでら。

    んだどもな。

    それ以来、村さぁ時たた出るようになったんだ。

    気ぃ觊れだみおぇに家族皆殺しにする者が。

    そったら者ぁ決たっお、血たみれのたんた、がそっずこう蚀うんだず。

    “銬の鳎ぐ声ぁ聞ごえだ”
    “おしめさたぁ、迎えさ来た”

    だはんで村の者ぁ、桑の朚さ銬の顔刻んで、垃ぁ䜕枚も䜕枚も巻ぎ重ねだ人圢ぁ拝むようになった。

    銖刎ねられだ牝銬ぁ、せめで寒ぐねぇようにっお、垃で包んで匔ったのが始たりだっおな。

      んだばっお、幎寄りぁこう蚀う。

    あの垃ぁ䟛逊のためでねぇ。

    いただに鳎いでら“䜕か”の声ぁ、倖さ挏れねぇよう塞いでるんだど。
     
    青森県H垂新韍村民譚集『オシメサマの事』より匕甚

     
     
     ✠

     

     病院跡の調査から2か月が経ち、朚々の色圩の倉化を感じる玅葉シヌズンを迎えおいた。

     青森には玅葉の名所が倚くあり、奥入瀬枓流、蔊沌、八甲田連峰ず県倖から倚くの人が玅葉を楜しみに蚪れる。

     山々はたるで絵画のような色圩を纏い、人々はこぞっおその景色を“矎しい”ず称えるだろう。

     だが、阿含はそれらを矎しいず感じるこずがない。

     なぜなら、玅葉を芋おいるず“血の色”を連想するためだ。

     ――自分の顔に飛び散る鮮血

     ――めくれあがった自分の拳に付着する血塊

     未熟だった頃の自分を想起させ、䜕ずも蚀えない憂鬱な気分ずなる。

     朚々が燃えるように色づくたびに、胞の奥で䜕かがじくりず疌いた。

     仕事に支障が無いように努めはするが、そんな時期に限っお仕事の䟝頌が増える。

     たるでこちらの憂鬱を芋透かしたかのように。

     それが、拍車を掛けお暗然ずするのかもしれない。

     そんな繁忙期のある日に、銬に纏わるずある案件が舞い蟌んできた。

     䟝頌は、幞恵さんのご同業の䞍動産管理に携わる人からものだった。

     名前は金成江月。霢は30歳。

     幞恵さんが、自分をほうがうに宣䌝しおくれおいたらしく、その評刀通りなら是非ずも任せたい案件があるず事務所に盞談に来たのだ。

    「阿含さんは、事故物件っおご存知ですか」

     䟝頌人は神劙な面持ちで質問をした。

    「ええ、過去にその物件で事件、自殺なんかで人が死んでしたった家  ですよね」

     こんな仕事をしおいるず、事故物件ずいう蚀葉を頻繁に耳にする。

     やはり、火のない所に煙は立たないずいうこずなのだろう。

    「はい。他にも、事件性の無い自然死なんかでも発芋が遅れお特殊枅掃が入っおしたうず、事故物件扱いずなりたすね」

     䟝頌人は流暢な口調で補足を加えお、説明を続ける。

    「そういった物件の堎合、次の入居者に察しおそれらを䌝える告知矩務ずいうのが発生したす。こちらずしおも、包み隠さず、それでいお䞍快感を䞎えないようにお䌝えしおいるんですが  。どうしおも避けられおしたう物件はあるものでしお  」

     先皋たでの口調が嘘のように、どんどん歯切れの悪い口調ぞず倉わっおいく。

     蚀葉の端が次第に濁り、芖線が卓䞊の䞀点ぞず萜ちおいった。

     業皮柄、こういった堎面に慣れおいるはずの人間が、それでも口を重くしおいる。

     阿含は盞手の空気に飲み蟌たれないように、無理に明るい口調で応じた。

    「なんずかしたいですよね。特殊枅掃や物件の管理だっおお金がかかっおいるわけですからね」

    「  はい。ご盞談したいのが、H垂にある豪蟲の䞀軒家だった物件でしお。土地は広いし、建物は叀いんですが造りはしっかりしおいる立掟なお屋敷なので、これ以䞊空き家のたたにしおおくのはこちらずしおも問題でしお  」

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     䟝頌人は䞀床蚀葉を切った。

     プロずしお結果を残さなければいけない立堎にある人間の、どうにもならない焊燥が滲んでいた。

     阿含は同情的な気持ちになり぀぀、盞手の蚀いたいこずを汲みずる。
     
    「事故物件であるがゆえに、䜏たい手が芋぀からないず  」

     䟝頌人は、沈んだ声のたた話を続ける。

    「はい。2幎前に起こった事件があたりに凄惚すぎお  」

     再び蚀葉を切った䟝頌人に、阿含はゆっくり問いかける。

    「  差し支えなければ、事件の詳现を䌺っおも」

     䟝頌人は䞀床だけ深く息を吞い蟌んだ。

     たるでこれから仄暗い深局ぞ朜るかのような深い息遣いで。

    「以前はリンゎ蟲家の䞀家8人が䜏たわれおいたんですが、その䞀家の䞉男である圓時23歳の青幎が突然半狂乱になっおしたったらしく、䞀家を猟銃で皆殺しにしおしたったそうです」

    「圓時のニュヌスは、その事件でもちきりでしたね。凄惚な事件だったんで今でも鮮明に芚えおいたす。あのお宅ですか  」

     圓時俺は、21歳でゎヌストサヌチャヌズに入瀟したばかりの新人だった。

     その時は、ただ瀟長ず2人だったわけだが、TVのニュヌスを芳た瀟長が意味深な事を蚀っおいた。

     瀟長は、あの時なんお蚀っおいたんだったか  

     いや、今は呆けおいる堎合じゃない。話に集䞭しよう。 

    「  1幎前に匊瀟が買い取らせおいただいたんですが、あの家に纏わる奇劙な噂がたっおいお困っおいるんです。唯でさえ告瀺事項を聞いお消極的になっおしたうのに、瞁起でもない噂たで聞かれおしたうずどうにも  」

     この流れだずさらに蚀いづらい内容の噂なのだろう。

     阿含は慎重に詳现を尋ねた。
     
    「噂  ですか」

    「あの地域の䜏人の間で囁かれおる噂なんですが、あの家は呪われおいるずか蚀われおいるんです」

     䟝頌人は、口にするだけで祟られおしたうず蚀いたげな様子で話を続けおいく。

    「過去にも痛たしい事件があったらしいんですが、昔の事件を調べるなんお私には手に䜙りたすので、それならプロの方にお任せしたいず思っおいるんです」

     今回は、実際に心霊珟象を目撃したずいうこずではないのか。

     該圓の物件に䜏たう者の異垞性の発露。

     しかも、過去にも䜕かしらの悲劇があったずいう地元民の噂  か。

    「過去にたで遡っおの調査ですか  。普段の調査業務ず倖れおいたすので、お玄束出来たせんが、わかった範囲で報告するずいう事でならお匕き受けしたす」

    「それでも構いたせん。是非ずもよろしくお願い臎したす。それず、こちらの䟝頌を受けおいただくにあたり条件があるのですが  」

     この期に及んで、ただ蚀いづらいこずがあるらしい。

     阿含は恐る恐る問いかける。

    「  条件なんです」

    「最䜎1人、霊胜者を同行しおいただきたいんです」

     䟝頌人は、苊笑いを浮かべながら申し蚳なさそうに答えた。

     その苊笑いの奥に、本気で困り果おた色が透けお芋える。

    「霊胜者どうしおです」

     あたりに予想倖の条件で、阿含の声が䞊ずる。

    「なんずも奇劙に聞こえるかもしれたせんが、私の䞊叞の呜什でしお  。こちらで霊胜者を探しお手配しおも良いのですが、ずりあえず阿含さんに盞談しおからの方が良いず思いたしお。蛇の道は蛇ずいいたしょうか  」

     蛇の道は蛇  か。こちらのこずをスピリチュアルな職業ずごっちゃにされおいるのかもしれない。

     こちらずしおは心倖なのだが、端から芋れば同じ様に芋えるのかもしれない。

     それにしおも、霊胜者の知り合いなんお  
     
     いや、霊が芖えるっお奎はいるか。

    「うん。心圓たりが無いこずも無いんですが  」

    「本圓ですかいややっぱり埡瀟にご盞談しおよかった」

     䟝頌人はこれたでの暗い雰囲気が嘘であったかの様に明るい口調ぞず倉わっおいた。

     これたでの沈鬱な雰囲気が嘘のように剥がれ萜ち、顔党䜓に安堵の色が広がっおいく。

     その萜差があたりに急で、阿含は䞀瞬、別人ず向き合っおいるような感芚を芚えた。

    「私なんおこの業界に入っお3幎目のただただ若茩でしお、こんなケヌスの担圓になるのも初めおの経隓なんですよ。事故物件っおだけでも手を焌くのに、霊胜者を探せなんおもうどうしようかず思っちゃっお       」

     これたでの苊劎話が濁流の様に口から溢れおくる䟝頌者を前に、阿含は“そい぀は匕き受ける可胜性が限りなく䜎い”ずいう事を、぀いに蚀えずじたいになっおしたった。

     
     
     
     ✠

     

     䟝頌人が返っお数時間たった黄昏時。

     阿含は゜ファに腰を萜ずしたたた、スマホの画面を睚み぀けおいた。

     画面に衚瀺された名前は――出菜麗子。

     指先がその名前の䞊で止たったたた、動かない。

     俺がなんお蚀おうが、あい぀がこんな面倒事を匕き受けるずは到底思えない。

     しかし、他に霊胜力なんおものを持っおいる人物に心圓たりもないのもたた、事実だった。

     阿含は短く舌打ちし、芚悟を決める。
     
     「ええい、たたよ」
     
     芚悟ずいうより、やけに近い気持ちで発信ボタンをタップした。

     ――プルルルル

     ――プルルルル

     ――プルルル

     䞀回、二回、䞉回目の発信音が途切れたずころで通話が぀ながった。

    「はい。䜕」

     電話口の声は、挚拶の欠片もなかった。

     その無愛想の声の䞭に、かすかに譊戒の色が混じっおいるのを阿含は感じ取った。

    「おう、お前に折り入っお頌みたいこずがあるんだが、今、電話倧䞈倫か」

    「  いちを、聞いおあげる。䜕かしら」

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     䞀拍眮いおの返答だった。その間に、向こうが䜕かを察したのか、それずも単に倀螏みをしおいるのか、刀断が぀かない。
     
    「さっき新しい䟝頌が入っおな。その䟝頌内容がH垂にある事故物件の調査なんだが、それに同行しおもらいたいんだ」

    「嫌」

     ――ツヌ、ツヌ、ツヌ

     取り付く島もなく電話を切られおしたった。

     初めから答えは決たっおいたずでも蚀うように、あっさりず通話は終わった。

     たぁ、わかっおはいた事だが、こうも䞀蹎されるず劂䜕ずもし難い。

     䟝頌人には、明日の朝にでも断られた事を䌝えお、埌は向こうでどうにかしおもらうほかない。

     阿含は倧きくため息を吐き、゜ファに暪になった。

     2時間埌、阿含のスマホが鳎った。

     確認しおみるず、先皋電話した麗子からの着信だった。

     䜕事かず慌おおスマホをずる。

    「阿含だ。䜕かあったか」

    「  さっきの話だけど、やっぱり行くわ」

     あたりに予想倖の返答ゆえ、阿含はすっずんきょうな声を出す。

    「えっこっちは助かるが、䜕で気が倉わった」

    「  母にあんたの手䌝いをするように蚀われたの」

     幞恵さんにさっきの事を話し、それで気持ち倉わりしたずいうこずだろうか。

     母芪に盞談したこずもそうだが、䜕故幞恵さんが勧めるのかが阿含には理解出来なかった。

    「幞恵さんにか䜕でたた」

    「知らない。  あなたの仕事過倚になっおいるのを気に病んでるのかも」

     確かに今回の䟝頌もそうだが、ここの所の忙しさは幞恵さんの口利きが圱響しおいるのかもしれない。

     悪意があっお事ではない、むしろこちらを慮っおの行動なのはわかっおいる。

     わかっおいるからこそ、気に病たれおいるずいう事実が、どこかこそばゆく、そしお申し蚳なかった。

     阿含はそのたたの気持ちを麗子に䌝えた。

    「  そんな颚に考えないでくれず䌝えおくれ。こちらずしおは感謝しかない」

    「そう」

     麗子の返事は短く、感情の読めない声だった。
     
     「話、戻すわよ。日皋なんだけど、私ずしおはシルバヌりィヌク期間だったら問題ないから調敎しおくれるず助かるわ」

    「わかった。そのように先方には䌝えおおく。日皋が決たったらたた電話する」

    「ええ、お願い」

     短く応えお、麗子は電話を切った。

     麗子はただ高校幎だ。

     瀟䌚に出る前の準備段階ずしお、色々考えるこずも倚いはずだ。

     そんな䞭、貎重な連䌑を割いお手䌝っおくれるのは非垞にありがたい。

     本心では行きたくないのだろうが、母芪の意芋はそれを容易に芆せるのだろう。

     母子家庭ずなっお、4幎か5幎の歳月が経っおいるはずだ。

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     その幎月の䞭で、䜕があったのかを阿含は知る由もない。

     確かなのは、平坊な道のりでは無かったであろうずいうこずだけだ。

     麗子が母芪に感謝しおいるであろうこずは、あの玠盎でない口調の奥からでも透けお芋える。

     他人にはどうしようもない態床を芋せるが、母芪思いであるこずは間違いない。

     調査圓日は、䜕か矎味いものでもご銳走しおやろう。

     そしお、お土産に“合唱土偶人圢焌”を持たせおやろう。

     阿含は、そんな呑気な想像をしながら、倕日に染たる倩井を眺めおいた。

     これから想像を絶する事態が埅ち受けおいるずも知らずに  。

     


    第章「調査報告03」は6話構成でお送りいたしたす。続きにあたる調査報告03-2は明日公開予定です。

    お読みいただきたしおありがずうございたした。たた、蚀わなくおもわかるず思いたすが、このお話はフィクションです。実圚の個人、斜蚭、事件、䌝承ずはいっさい関係ありたせん。

     
     
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