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(お題ss)風船が運ぶ幸せ

 風船が、青い風に乗ってふわりと飛んできた。
偶然なのか、必然なのか、僕には分からないが、目の前にそっと落ちる。
僕は、たんぽぽのような明るい黄色に惹かれて、地面に伸びた緑色の紐を手に取った。

 風船の中の空気はゆるゆると抜けていき、すっかりしぼんでしまう。
地球の重力に引っ張られ、しぼんだ黄色は涙のようにポツリと地面に落ちる。
 何かが地面に当たる小さな音がした。
いつの間にか、紐は抜けて風船だけが残っている。

 残された黄色の風船は楕円の形になっている。
僕は風船をそっと手に取り、裏返す。
中には、小さな銀色のスプーンが入っていた。
皿を太陽に透かすと、キラリと輝く。
春の優しい光を凝縮しているように感じた。

 僕は光に惹かれるように、スプーンをくるりと回す。
スプーンの裏の柄には、手紙が丁寧に巻かれていた。
 『僕のため』に書かれたという予感がして、小さな手紙をゆっくりと広げる。
そこには、小さなラベルに一行の活字が刻まれていた。

 「あなたを探していました」
読んだ僕は優しい顔をする。
きっと、無邪気な子どものいたずらだろう──。
 何となく、今日の一日に幸せを感じた。
チクタクと数える音がそよ風に乗って、くすぐるように耳へ届く。

 夏の風に夕立のような破裂音が響いて、鳥が飛び去った。
太陽は流れる血を、じりじりと照らす。
スプーンはもう、ない。
風船がニュースになるのは、もう少し先。

 今はまだ、夏しか知らない。
夏の終わりは、まだこない。

このお題に、この掌編。
精神的な捻れを感じました。
お題、ありがとうございます!

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