【3つのお題に…第63回】『空送都市』【ファンタジー】
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ようこそ、皆さま!セイウチです。
波打ち際で拾い上げたガラス瓶の中に、小さく丸められた羊皮紙が入っていました。
今回届いたのは、はるか上空——雲よりも高く、巨大な鯨の背の上で暮らす人々のお話です。
アナタの淹れたてのコーヒーが冷めないうちに、小さな物語の旅へとお連れしますね。
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空を泳ぐ巨大な鯨。
その雄大な背の上には、風と雲を分け合って生きる二つの種族と、一つの都市があった。
この街の物流は、対極的な二大企業によって支えられている。
一つは鳥人(バーダ)族が営む「バーダライン」。
モットーは「安心、丁寧」。
羽ばたきはどこまでも優しく荷物は無傷で届くが、長距離輸送には弱く、到着までに数日を要するのが玉にキズだ。
対するは竜人(ドラーク)族の「ドラグスター社」。
モットーは「スピード最優先」。
バーダラインが数日かける距離をわずか数時間で走破する驚異の足を持つ。
ただし、中身の無事は保証外。
ブレスの余熱で梱包がだいたい焦げているのもご愛嬌——とは到底言えないが、市民はこの極端な二択をうまく使い分けていた。

「どけどけ、配達だーッ!」
ドラグスター社の新人ドライバーは、今日も街の目抜き通りを猛スピードで爆走していた。
風切り音とともに路地をすり抜け、歩行者の悲鳴を置き去りにして近道を突き進む。
一分一秒でも遅れれば、あの雷のような上司のお説教が待っているのだ。
連日「遅配のワースト記録」を打ち立てている身としては、何が何でも予定時間を死守しなければならなかった。
「お届け物です! 押印お願いしまーす! あと梱包焦がしてすみません!」
マニュアル通りの謝罪を早口で捲し立て、受領印を奪うように受け取ると、新人は返事も待たずに再び空へと飛び立った。
休む暇などない。
すぐさま本社へ戻らなければ怒声の嵐が待っている。
エンジン全開、いや、翼を限界まで広げて加速する。
雲を突き抜け、最高速度に達したその瞬間——目の前の霧が晴れ、一羽のバーダライン配達員がのんびりと羽ばたいている姿が視界に飛び込んできた。丁寧な配送の最中だったのだろう。
「あっ、危な——ッ!?」
翼を逆立てて必死に減速を試みるも、竜の推進力はすぐには止まらない。
凄まじい衝撃音とともに両者は上空で激突した。
空いっぱいに、バーダの白い羽根が舞い散っていく。
同じ頃。
遥か地上では、小さな人族(ヒューム)の子供が空を見上げていた。
青空からひらひらと降り注ぐ、光を弾く美しい数多の羽根。

「お母さん見て! 天使の落とし物だ!」
子供は大はしゃぎでそれを追いかけ、空中での大惨事など知る由もない街は、今日も平和な午後の光に包まれていた。
(了)
※この物語はフィクションです。
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最後まで読んでいただきありがとうございます!
やっぱり、ファンタジーはいいですよねぇ♪
【片桐 みかん】さん、素敵な企画をありがとうございます!
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