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剥がれ萜ちた泥【狞の短線小説】

    背䞭には、誰も芋えない泥が、
    垞に僕を芆っおいた。

    十幎前、高校の廊䞋で
    友人の浩介を突き萜ずしかけたあの日。

    僕は悪びれもせず
    「知らない誰か」のせいにしお逃げたあの日。

    たずわり぀くような黒い塊が䜓に生じ、
    以来、嘘を぀くたびに粘り気を増しお、
    僕を締め付けおいる。

    浩介は足を挫き、
    倧切な詊合に出られなくなった。

    それがきっかけかは分からない。
    ただ、圌は郚掻を蟞めた。
    孊校を䌑みがちになり、成瞟も萜ちた。

    僕は知らんぷりを決め蟌んだ。
    肥倧した泥は肺の奥にたで絡み぀き、
    呌吞すらも浅くなる。

    他人の目には芋えないが、僕は猫背になり、
    足を匕きずる奇劙な男ず化しおいた。

    どんな行動も億劫で、
    たずもに人ず目を合わせるこずもできない。

    

    ある日、皿掗いをしおいるず、
    浩介が扉を開けお入っおきた。

    圌を芋た瞬間、
    背䞭の泥がぞっずするほど、ねば぀く。

    圌は泚文カりンタヌで、
    䌏せ目がちに氎を頌む。

    その顔には圓時の掻発な面圱も、
    空っぜの目に映る生気もなかった。
    たるで自分から逃げ出すしおいるように。

    翌日から、僕は浩介ず共に働くこずになった。

    傍にいる浩介の姿を芋るたび、
    泥は嫌悪感を䌎っお粘着性を増し、
    過去の痛みが甊る。

    なぜ圌はこんなにもう぀ろなのだろう。
    それは僕のせい。

    

    誰もいないバックダヌドで、
    浩介が独り蚀のように぀ぶやいた。

    「もし、あの時、俺があんなに匱くなければ。
     バスケさえ続けられおいれば」

    悔恚に塗れたその声を聞いた瞬間、
    泥は䜓組織に䟵食するほど深くねば぀いた。

    その時気づいた。

    僕の泥は、僕自身の眪悪だけでなく、
    僕の裏切りが堆積させた絶望たでをも
    吞収し続けおいたのだず。

    僕が元凶ならば、
    この泥は氞遠に掗い流されず、
    圌もたた重い圱を匕きずるだろう。

    僕の泥は、圌の諊念の色たで含み蟌み、
    僕をより深い堎所ぞず沈めおいく。

    「浩介っ」

    人気のない店の隅に圌を呌び出す。

    凍り぀くような沈黙の䞭、
    震える声を絞り出し、
    真っ盎ぐ圌の瞳を芋぀めた。

    あの頃の圌が、
    ひどく疲れた目で䞖界を芋おいたこずに、
    心から痛みを芚えた。

    「ご、ごめん。あの時のこず 」

    䞀床口に出せば、
    呌吞を忘れそうになるほど蚀葉が溢れた。
    党おを吐き出す僕の告癜に、圌は困惑する。

    「なんでそんなこず、
     お前が䞀人で抱え蟌んでたんだよ」

    「お前はただ、あそこに突っ立っおただけ。
     俺は、足は挫いたけど、
     それでバスケを蟞めたわけじゃないから」

    圌の蚀葉を聞き終えた瞬間。

    ブシャァアアア

    蜟音ず共に、たずわり぀いおいた巚倧な泥が、
    䞀瞬で也き切り、粉々になっお剥がれ萜ちる。

    重く、粘぀いた膜が剥がれた背䞭には、
    䜕トンもの重りが䞋りたかのような解攟感。

    䜓が内偎から掗い枅められたかのような
    軜さが党身を駆け巡った。

    そのあたりの軜さに、
    地面に倒れ蟌むように泣いた。

    胞の奥の黒い塊が消え倱せる。
    深々ず息を吞い蟌むず、
    䜓䞭の现胞が喜びに震える。

    「ばか 」

    圌はそう呟いた。

    

    再び、共にカフェのキッチンに立぀。

    僕の背䞭には、粘぀く泥はもう無い。
    軜やかな䜓ず心で、
    時折、浩介の暪顔に目をやる。

    圌の衚情も、どこかよく芋える。

    この剥き出しの軜やかさこそ、
    本圓の僕の姿なのだろう。
    新しい䞀歩を、ようやく螏み出せる。

    

    それ以来、浩介ず䌚うこずはなかった。


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    talesで投皿䞭

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