
リハビリはゲーム感覚で!18:カウントダウン《脳梗塞(脳卒中)の“前向き”闘病記 小説風 第三部開始》
第一話はこちらからご覧ください
はじめに
ある朝、突然倒れた和泉大輝(45歳・会社員)。
診断は、脳幹部の梗塞。
体は動かず、声も出ず、世界は一変した。
時は刻一刻と進み、容赦なく迫るタイムリミット。
動かない体に問いかけ、挑み続ける日々が始まった。
「果たして、自分はどこまで取り戻せるのか」
家族の想いが、彼を支え続ける。
次々と立ちはだかる試練。
そして、その先に待ち受ける“新たな現実”。
第三部――
物語は、さらに深く、さらに熱く動き出す。
希望と絶望が交錯する、その瞬間を見届けてほしい。
本作は、実際の経験をもとにしています。
※本編には、病気、身体の麻痺、生命への不安などセンシティブな描写が含まれます。
心身に負担を感じる可能性のある方は、無理のない範囲でお読みください。
🧠この話には、別記事で医学的見地からの解説があります。物語とあわせて読むことで、脳梗塞の理解がより深まります。ぜひご確認ください。
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脳卒中の経験や知識を分かち合う場を広げています
それでは、本編をどうぞ。
第三部 希望か終焉か ― 七日間の挑戦と門出の春
止まっていたはずのものが、
かすかに震え、動き出す
それが希望なのか、幻なのかは分からない
春は約束されたものではない
芽吹くかどうかも分からない
けれど、待つだけでは訪れない
七日間のカウントダウン
これは、急性期病院での最後の挑戦の記録――
第18話 「カウントダウン」
2025年3月11日
「脳梗塞のリハビリは、発症から3ヶ月が勝負です。今の動きが未来を決めますよ」
理学療法士の森田さんの言葉が、やけに重く響いた。
3ヶ月・・・
でも実際は、”今のこの瞬間を逃すな”という意味だろうと理解した。
午前のリハビリでは、森田さんと笹木さんに支えられて、ベッドから立ち上がった。
体が大きく揺れる。
右足はなんとか自分で動かせるが、左足は完全に人の手に任せるしかない。
それでも、7歩8歩・・・合計でほんの50cmほど歩けた。
支えられていると分かっていても、前に進めたことは確かに嬉しい。
けれど同時に、左半身が人の力なしでは一切動かない現実に、ため息が漏れた。

リハビリ後、点滴のチューブに隠れて見えなかった左手を、看護師に上へ出してもらった。
その左手をぼんやり見つめつつ考える。
右半身は少しずつ反応してきているのに、左半身は依然として重い。
特に左手は、動かそうとしても、本当に全くピクリとも動かない。
(発症からの数か月が勝負やというんやったら、回復期病院に転院するまでにわずかにでも動かせるようにならなあかんのやないか?
このままピクリともせんかったら、転院先でも”左手のリハビリはやっても意味がない”って思われてしまいそうや)
そして、昨日もらった、三姉妹が書いてくれた色紙を思い出す。
色紙はなんと1人1枚ずつあった。
長女・夏菜カナの色紙は、小さな文字でびっしりと埋め尽くされていた。
「大学に入学した」「友達もできた」
近況報告が丁寧に並んでいて、余白には家族全員の似顔絵まで描かれている。
そして最後には、「転院したら毎日面会できるから、一緒にリハビリしよう。パパの家事は三姉妹で分担してるから安心して」と書かれていた。
次女・流菜ルナは、きれいで読みやすい字。
冒頭がなぜか「にーはお」で始まっていて、思わず笑ってしまった。
「パパの家事をやってみて、初めて大変さが分かった」
「電話でパパの声を聞くたびに、良くなっていてすごいと思う」
「帰ってくるのを家族みんなで待ってる」
素直な言葉が並んでいて、俺の心にまっすぐ飛び込んでくる。
三女・心菜ミナの色紙は、しっかりとした字で書かれていた。
「いちばん苦しい時期だと思うけど、リハビリ頑張って」
「家事はみんなでやってるよ」
「退院した後も、これまでのパパの家事は分担して楽にするからね」
そして最後に、「中学に向けて予習してるよ」と、未来への前向きな言葉が添えられていた。
みんなの想いがとてもよく伝わってきた嬉しい3枚。
俺は声も出せずに、ただ指で文字をなぞった。
ありがたい・・・
会えない代わりに、こうして言葉を届けてくれることが。
俺の代わりに家事を分担して、家を守ってくれていることが。
そして何より、自宅にいなくても"家族はつながってる"と思わせてくれることが。
胸がいっぱいになり、字がにじんで見えた。
気がつけば、
涙が頬を伝っていた。
「これ、見えるところに置いておきましょうね」
と看護師が壁に貼ってくれた。

丁寧に貼られた色紙を眺めていると、入院前の暮らしが思い起こされる。
夕食後の食器洗い、ゴミ出し、コウの散歩・・・
さらに記憶がよみがえる。
小さかった頃の娘たちを、両手で抱き上げては笑わせたこと。
買い物や旅行では、両手いっぱいに荷物を持って「パパ、すごい!」とからかわれたこと。
そんな思い出の1つひとつに、当たり前のように両手はあった。
右半身が少しずつ動いてきても、それだけでは足りない。
(やっぱり左手も取り戻さんと、“家族の日常”には戻られへん)

そのとき、スマホに着信があった。花菜からだ。
「大輝、転院の日が決まったよ。19日だって」
19日・・・今日と転院の日を除けば、あと7日しかない。
(この7日間で、必ず左手を動かす。
諦めてしまったら、本当に終わってまう
・・・やるしかないな)
その瞬間、頭の中に浮かんだ。
―― ミッション発令 ――
【封印された左手を仲間にせよ!】
クリア条件:
3/12~3/18の7日間で以下を達成
・左手でグーパーできるようにする
・左腕の肘から先を動かせるようにする
・左肩を動かし、バンザイができるようにする
報酬:
・家族との日常を取り戻す
―― タイムリミット発動 ――
【残り7ターン】
(残り7日。カウントは止まらへん。
左手を、なにがなんでも取り戻して、家族との日常を取り戻したる!)

【ステータス:2025年3月11日】
• 首:LV4(左右には動く/上下はまだ。安定感UP)
• 右手:LV3(指のグーパーが可能。肩の高さまで持ち上がる)
• 左手:LV0(反応なし)
• 右足:LV2(体重を少し支えられる)
• 左足:LV0(反応なし)
【スキル】
• 見る:LV7(LINEを苦も無く読めている。疲れやすい)
• 聞く:LV10(正常)
• 話す:LV5(会話がスムーズにできるようになった。疲れやすい)
• メール:LV3(スマホ固定時、短文なら1分で返信できる)
• 車いす:LV1(30分座れる)
【その他状態】
• ヨダレ:あり
その頃の花菜
最近じゃ、夜も日中も眠れるようになってきてるよ
まだなんかぼーっとするけど……
大輝転院決まったね
19日まで1週間くらい
発症から3ヶ月が大切ってよく書いてあって
今は2週間すぎた
だから、2ヶ月半もない
やれることは全てやり尽くしたい
あとは大輝の回復力を信じなきゃ
2ヶ月以上もあるんだと思おう
出来ることは限られてるけど
そこで出来ることを精一杯して
支えてくれたみんなに感謝の言葉を伝え続けてね
どれだけ良くなってるのか
次会うのが楽しみだよ
がんばろね
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