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急性期の裏側、全部話します【ネタバレあり/夫婦トーク】

    ※この話にはネタバレが含まれます。
    本編をまだ読まれてない方は、是非、先に本編をご覧ください。

    大輝
    「改めまして……
     第三部まで読んでくれたみなさん、ありがとうございます。
     こんな濃い入院生活、ようつき合ってくれはったわ。」


    花菜
    「本当にありがとうございます。
     ここまで読んでくださった方は、
     相当根気強い方だと思います!」


    大輝
    「今日は急性期病院編が完結したので、
     二人でゆっくり、あの頃の話を振り返りたいと思います。」


    花菜
    「いえーい、ぱふぱふー。」

    夢の世界の住人というのも悪くない?

    大輝
    「ほなまずは、第一部の話からいこか。」


    花菜
    「うん。
     あの時いつも夢見てる感じって言ってたね。
     でも夢じゃなくて、現実っぽいとか。

     あ、意識はあるけど、
     ふわふわ夢を見てる感じって言ってたか!」


    大輝
    「言うてた、言うてた。
     マジ現実ぽかったもん。」


    花菜
    「面会とか保険金とか、
     夢のまた夢の話なのにね。

     変だと思わなかった?」


    大輝
    「それが、思わんかったんよなぁ。
     普通の夢とは全然違うクオリティで、
     違和感ゼロやったしな。」


    花菜
    「そうなんだね。

     私は、起業の夢を見たって教えてもらった時、
     すごくうれしかったよ。

     まだこの人人生、諦めてないんだ!って、
     大輝のこと、頼もしく思えた。」


    大輝
    「あれな……
     実は今も、内容をはっきり覚えてる。」


    花菜
    「はっきりなんだ。」


    大輝
    「事業の仕組みも、流れも、
     “これ、普通に成立するやろ”ってレベル。
     正直、今でもアイデアとしてオモロイと思ってる。」


    花菜
    「えー、
     じゃあやってよー。」


    大輝
    「オモロイけど、あんまり儲からなさそうやねんなー。」


    花菜
    「そーなんだ。じゃあやだ。
     おもしろくて儲かるのがいい。」


    大輝
    「がんばります。」



    花菜
    「他にはどんな夢見てたっけ。」


    大輝
    「なぜか花菜と老夫婦になって、
     普通に穏やかに暮らしてる夢。」


    花菜
    「あはは、
     老後ですな。」


    大輝
    「せやろ。
     “生き延びた先”を、先に見せられてる感じやった。」


    花菜
    「他には?」


    大輝
    「知ってる人から知らん人までめっちゃたくさんの人が来て、
     順番に俺の体に手を当てていく夢。」


    花菜
    「手当かね。」


    大輝
    「そう。
     “生かされてる”って感覚、今も覚えてる。」


    花菜
    「わたしが主演女優になった映画の夢もあったよね。
     だからお金のことは大丈夫!って
     わたしが言ったとか。」


    大輝
    「そうそう。
     花菜、長澤まさみとダブル主演やったで。

     他にも、丸一本、全然知らん映画を観る夢とかな。」


    花菜
    「そんなのもあったんだ。
     昔見た映画を思い出してとかじゃなくて?」


    大輝
    「それがちゃうねん。
     ストーリーもラストも覚えてるから調べてみたけど、
     そんな映画、どこにもなかった。」


    花菜
    「楽しい夢を、たくさん見ましたね。」


    大輝
    「夢の世界の住人やったな。

     第一部ってな、
     今思うと——

     現実に思える夢で、
     生きる理由を脳が必死に作ってた時間やったんやと思う。」


    花菜
    「うん。
     その時間があってよかった。」
    大輝
    「ほう。そのこころは?」
    花菜
    「空白の1週間を乗り越えれたかなって。
     わたしがいなくてもさ。」
    大輝
    「ほんまやな!花菜もおらんくて、夢も希望もなければ、
     生きていけなかったわ。
     夢の世界の住人なっててよかったーー。」
    花菜
    「無事にこちらの世界へようこそ。
     おかえりなさいませ。」


    それは倒した人だけが言えるセリフ

    大輝
    「ほな次は——第二部いこか。」


    花菜
    「第二部のアイキャッチ、可愛すぎる。
     わたしたち、こどもになったね。」


    大輝
    「せやせや。
     挿絵は一気にポップになった。
     内容もボスが出てきて、ステータスが表示されて、
     大分ゲームぽくなったしな。」


    花菜
    「タイトル、
     『リハビリはゲーム感覚で』
     だもんね。」


    大輝
    「そやねんけど、
     実は一般的に使われてるゲーム感覚とはちゃうねんよな。
     俺が書いてるのはゲーム感覚というより、
     もはやゲームやし。

     でも実際リハビリって、やればやるほど確実に成果あるから、
     めっちゃゲームっぽいんやで?

     手とかも毎日、着々と良くなってたし。

     ……声は、
     ちょっとアレやったけど。」


    花菜
    「うふふふふ。」


    大輝
    「当時、そんなにも話せてなかったとはな。
     全然、気づいてなかったわ。
     俺の中では、もうかなーり話せて、

     “よし、魔王、撃破!”
     くらいの達成感やったのに。」


    花菜
    「読み返してみてよ。
     第二部全体での大輝、『おぉー』と『あいうえお』
     だけだから。」


    大輝
    「なんとビックリやんな。
     読者の皆さんも気づいてくれてたやろかね。」


    花菜
    「最終話はなぜかたくさんのセリフがあったね。」


    大輝
    「俺の中では、
     “めっちゃ喋れた!”って思ってた日やねん。」


    花菜
    「わたしが書いたサイドストーリー
     『ただ、つながっていたかっただけ』が真実です!」


    大輝
    「うん。結局、ほとんど話してへん、
     というね。」


    花菜
    「そ!」


    大輝
    「俺の中ではな、あの会った日、
     『こんなに左手が動くようになったんやで!』
     って、
     ちゃんと伝えてるつもりやってん。」


    花菜
    「あの時飯塚さんに、
     『和泉さん、だいぶ右手が動くようになったんですよ』
     って言ってもらえてから、大輝はゆっくり指先を動かして、
     ……『ほら』って顔して喜んでた。」


    大輝
    「それだけかい。」


    花菜
    「うん、でも言葉じゃなくて、表情と動きね。」
    大輝
    「それでも、意思疎通はできてたと思ってたんよ。
     毎日2時間くらい電話してたんやし。」


    花菜
    「うん、そだね。」


    大輝
    「そやんな!
     あれは、俺が頑張って——」

    花菜
    「頑張ってたね。
     声を毎日、必死で出してたもんね。
     もうクタクタだとか言ってさ。

     実はわたしも、
     電話の途中からいつも頭ががんがんしてて。
     ずっと集中して聞き取らないと分からないから、
     まあまあ大変だったのよ。」


    大輝
    「それでも、
     毎日、長い時間電話してくれてたんやね。」


    花菜
    「はい、頑張りました。」


    大輝
    「……なんで?」


    花菜
    「ただ、
     つながっていたかっただけだよ。」


    大輝
    「サイドストーリーのタイトルやん。誰が上手いこと言えと。」


    花菜
    「ちなみに、
     聞き取れるけど、聞き取りづらいところはね、
     リハビリのために、
     わざと“もう1回”って言ってました。」


    大輝
    「……マジか。」


    花菜
    「うん。」


    大輝
    「よー考えたら、リハビリの笹木さんとかと話してる時も、
     通じてへんのかなってこと多かったわ。」
    花菜
    「そうかもね。
     大輝が質問してるのに違うことを言われて、
     しゅんってなってる動画もあるもんね。」
    大輝
    「そうそう。なんか思い出してきたけど、そういうこと結構あった。
     自主トレどうやったらいいか聞いたのに、
     『しんどいなら、無理しなくていいですよー』と返ってくるとかね。
     ちゃうねんちゃうねん、やりたくないんやなくて、
     やりたいからどうやればいいかを教えて欲しいねん!的なね。」
    花菜
    「そーゆう時どうしてたの?」
    大輝
    「しゃあないから、自分で考えて自主トレやった。
     リハビリでやったことの復習とかね。」
    花菜
    「ちゃんと伝わるまで諦めないでよー。」
    大輝
    「その通りやな。
     けどそん時は、二回目伝えようにも、
     その頃には相手はもういないことも多かったねん。」
    花菜
    「あら、そーなんだね…」


    大輝
    「……今なら分かるわ。」


    花菜
    「ん?」


    大輝
    「俺が“話せてるつもり”やった言葉をな、
     毎日、花菜がちゃんと受け止めてくれたから、
     ここまで来れたんやと思う。」


    花菜
    「ふむふむ。」


    大輝
    「それやのに俺、
     一人で勝手に“倒した気”になってたんやな。」


    花菜
    「うん、
     それで良かったと思うよ。

     こうしてる今も完全には倒せてないけどね。」
    大輝
    「魔王よ……
     オレには、あなたが最大の強敵(とも)だった……。」


    花菜
    「なんのこと?アニメか何か?」
    大輝
    「知らんのかい!勉強足りてへんで!」


    夢オチでなくて良かった

    大輝
    「ほな、最後に第三部やな。」


    花菜
    「第三部は、左手のお話だね。」


    大輝
    「せや。
     7日間のカウントダウン形式で、左手が動くまでの話やね。」


    花菜
    「自称、1日15時間リハビリしてますの人。」


    大輝
    「冗談抜きで、それくらいやってた気するで。
     寝ても覚めてもなんかやってたもん」


    花菜
    「でも途中で……」


    大輝
    「……来たな。」


    花菜
    「うん。4日目!」


    大輝
    「あの日は、今思い返しても分かりやすい。
     普通に弱音を吐いてた。」


    花菜
    「『左手、動かなくてもいいかな?』ってね。
     病気になってからまだ半月しか経ってなくて、
     リハビリもこれからなのに。
     何言ってんだろ、って思ったもん。」


    大輝
    「言うてたなぁ。
     右手と口が動けば、まぁまぁできるしって、
     自分に言い聞かせてた。」


    花菜
    「諦めたって割に復活も早くてよかった。」


    大輝
    「やかましい。」


    花菜
    「あとは、痛い痛い事件。」


    大輝
    「偽痛風な。」


    花菜
    「そんなに痛いの?
     痛風は痛いって聞くけど、偽がついてるよ?」


    大輝
    「めっちゃ痛いで。尿管結石より痛い。
     多分、出産より痛い。」


    花菜
    「それは嘘!
     尿管結石が世界で1番死ぬほど痛いって、いつも言ってたじゃん。」


    大輝
    「偽痛風は、宇宙で1番死ぬほど痛い。」


    花菜
    「長男なんだから、
     ちょっとくらい痛いのは
     我慢してください。」


    大輝
    「炭治郎は知ってるんか!
     ほんで、全然ちょっとの痛みやなかったしな。」


    花菜
    「それでも、
     最後は支えられながら歩けるようになったし、
     左手も動くようになったね。

     初めて動いた時、どう思った?」


    大輝
    「“気のせいちゃうよな?”って、何回も自分に聞き直した。

     なんていっても、
     第一部では、ずっと都合のいい夢ばかり見てた男やしな。
     夢オチの可能性がある。」


    花菜
    「その時電話してたから証人いますけど……。

     じゃあ、動くって分かってからは?」


    大輝
    「そらもう自信満々よ。
     両手両足動くし、スマホも触れる。
     回復期病院に転院するのに、何も不安はなかったわ。」


    花菜
    「うん、
     楽しみにしてたもんね。
     それが、まさかあんなことになるなんてね。」


    大輝
    「うん、
     病室がピエロの仮面をつけた凶悪犯に占拠された時は、
     マジびびったわ。」


    花菜
    「え?そんなこと起こったっけ?

     あ、お得意の冗談ね!さらっと言うんだね。」


    大輝
    「あははは。
     そんな大事件は起きませんが、
     夫婦の事件は色々起こりますので、第四部もぜひお楽しみに。」

    ありがとう


    花菜
    「これで本編を大体振り返れたね。
     最後に何か言いたいことはある?」

    大輝
    「ありがとう、を伝えたい。」


    花菜
    「え、わたし?
     めちゃ顔真剣じゃん笑」


    大輝
    「うん、花菜に。
     普通こんな全身動かんくなったら、
     生活とか子供のこととか心配でたまらんやろうに、
     この頃、全然そんな素振り見せへんかったやん。
     俺も自分のことばっかりで、花菜のこと全く気づかえなかったしな。

     こうやって、読み返してみると、
     ホンマありがたすぎるなって。

     せやから、改めて、
     花菜、ありがとう。」


    花菜
    「あぁ、はーい。いいですよー。
     では、これからは目一杯、
     入院前みたいに甘えさせてもらいます。」


    大輝
    「任しとけー!
     俺は、甘やかすのは得意や!」


    花菜
    「わたしは、甘えるのが得意!」


    亀仙人を知らなくても、話は続きます

    大輝
    「というわけで。
     なんとなく甘々になったところで、
     この座談会も終わりの時間となりました。」


    花菜
    「なんだかこうやって後書きみたいなの書くと、
     もう最終回みたいだね。」


    大輝
    「最終回じゃないぞよ。
     もうちっとだけ続くんじゃ。」


    花菜
    「急にキャラ変わってる気がするけど……」


    大輝
    「よしよし。分からないならええんよ。」


    花菜
    「ん、これが甘やかし?
     思ってたのとなんか違うー。」


    大輝
    「では、皆さん。
     ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

     第四部は絶賛構想中ですので、
     ぜひ、また第四部でお会いしましょう!」
    花菜・大輝
    「ありがとうございました。」
    本編の続き(第四部)を読む


     
     
     
    45歳で脳幹梗塞になり、重度の両麻痺を負うという超激レア症例。現在はリハビリにゲーム感覚で挑戦し、悪戦苦闘中 闘病の中で試される、自身の覚悟、夫婦の愛、そして家族の絆・・ 実際にリハビリをしながら描く、ほぼ実話、涙あり笑いありの小説風闘病記をご覧下さい

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