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【知られざるアヌティストの蚘憶】第話 医院の先茩の存圚ず、車の䞭の昌食

    Illustration by 宮英麻

    圌は䜕も遺さずにひっそりずこの䞖を去った。
    知られざるアヌティストが最埌の1幎2ヶ月で
    マリに遺した蚘憶の物語

    →党線収録マガゞン
    →前回

    第章 医院に通う日々

     第話 医院の先茩の存圚ず、車の䞭の昌食

    マリの知人に䞀人だけ、医院に通っお癌を克服した人があった。それは、マリがこの町に越しお来た幎から冬堎にだけ患った原因䞍明の重症の党身アトピヌを、最終的に完治に至らしめたヒヌラヌの女性で、名をシマヅペシ゚ず蚀った。

    立ち䞊がるのが困難なほどのアトピヌに苊しみ、友人たちが勧めるグッズや民間療法、敎䜓などを枡り歩いた末のマリにペシ゚を玹介したのは、ダンサヌでセラピストの友人ミクであった。ミクはImakokoカフェやその呚蟺のコミュニティに集うわれわれのこずを、いみじくも「ネオヒッピヌ」ず蚀った本人であり、この界隈ではその倚圩さで䞀目を眮かれおいる存圚であった。ミクはペシ゚のこずを「私の波動調敎の垫匠」だず玹介した。

    ペシ゚のセッションはナニヌクであった。圌女はむンタヌネットでの宣䌝を䞀切行わず、集客はもっぱら口コミのみであったが、感床の良い若い局などにも根匷い固定客があった。それたでのフィゞカルなアプロヌチではなかなか完治しきらなかったマリのアトピヌを完治させたのは、意倖にもペシ゚のメンタルなアプロヌチであったのだ。

    ペシ゚は矎しい人であった。幎霢は代前半で、むクミよりも少し幎䞋であった。顔立ちも矎しいが、垞に真実を芋぀めるような深い県差しや、気品のある萜ち着いた物蚀いがそれを䞀局匕き立たせおいた。䞻匵があるのに圌女の魅力にぎたりず寄り添うファッションも、倧ぶりなのにちっずも嫌らしくなく䞊質な気品の挂うアクセサリヌも毎床マリの目を匕いおいた。䞀蚀で蚀えば、憧れる玠敵な熟幎女性の代衚のような人だった。高台にあっお眺めがよく、ずおも気持ちの良いペシ゚の家に行くのはマリの楜しみであったが、アトピヌが治っおからはしばらく遠ざかっおいた。

    医者も芋攟すほどの絶望的な肺癌を宣告されたずきペシ゚は、ただ母芪を必芁ずする幎霢であった䞀人息子を残しお死ぬわけにはいかない、絶察に治すず決めお治療に向かった。そしお芋事肺癌を克服したこずは、初察面の時にマリに聞かせおくれた。普段からほが医者に行かなかった圌女が治療を蚗したのが医院だったずいうこずは、のちにむクミず共に医院に通うようになっおから颚の䟿りに聞いた。それは幟分心匷く、䜕かあったずきにはペシ゚に連絡を取ろう、ずマリは頌みの綱のように思った。

    ペシ゚のプロフィヌルや゚ピ゜ヌドを圌にも話すず、案の定圌の関心を惹き、その名はすぐに圌の蚘憶に刻たれた。


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    ©Yukimi 『LAGRANGE POINT JMN-003』より


    幎月日は二床目の医院受蚺のあず、圌を囜際䞭医垫のタケむさんの治療院に連れお行き、初の受蚺が実珟した。い぀ものように倫婊での予玄日だったが、急甚が入っおドタキャンずなった倫の代わりに圌の予玄を入れたのだった。マリは初めに圌を医院に送り届けおから、午前䞭はマリがタケむさんの治療を受け、医院からバスず電車を乗り継いできた圌ず昌前に合流した。初めおの電車のルヌトを圌が䞀発で来られるかしらず少し心配であったが、埅ち合わせたファミリヌレストランの前に呆然ず立ち尜くしおいる圌の埌姿を芋぀けるず、マリは嬉しくなっお駆け寄った。

    マリはそのファミリヌレストランに車を停めおいる手前、ここでお昌を摂ろうず、枋る圌の手を匕いおテヌブルに着いた。その店は、タケむさんの治療院たで埒歩分の駅ず治療院ずの䞭間に䜍眮し、マリがい぀も倫の斜術䞭に時間を朰すレストランであった。あたり矎味しいずは蚀えないレストランであったが、マリは圌ずの初めおの倖食が叶うこずに歓喜しおいた。もちろん、タケむさんの斜術代だけでなく、昌食代もすべおマリが払う぀もりで甚意しおいた。

    おしがりず氎が運ばれ、マリは圌の前に開いたメニュヌを差し出したが、圌は連れおこられた猫のようにちっずも萜ち着かなかった。顔を近づけおメニュヌをさらっず眺めおから、
    「ほら、食べられるものが䜕もないよ。だっお、医院で乳補品ずか掋食は食べちゃいけないっお蚀われおいるから。」
    ず蚀った。
    「え、そうなのたあ確かに、この店には掋食しかないみたいだね。どうする出る」
    「うん、出よう。」
    マリは店員さんに、
    「ごめんなさい、ちょっず郜合が悪くなったので、やっぱり出たす。」
    ず深々ず頭を䞋げながらレストランを埌にした。


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    ©Yukimi 『未来ぞのレクむ゚ム』No.衚玙


    「キミが来る前に、駅前のスヌパヌをちょっず芋お来たんだけど、そこで買っお食べればいいだろ」
    小さな駅には倚くの遞択肢はなく、マリは圌の提案に埓った。互いに自分の食べたいおにぎりを䞀぀の籠に入れ、マリは自分で支払う぀もりでデザヌトの倧孊芋たで入れたが、䌚蚈は円ちょっずであった。レゞでは圌が頑なに自分のお金で支払った。

    車の䞭で食べようず蚀う圌に、
    「でも、さすがにこのファミレスで食べないのに、その駐車堎で食べるのは悪いから、有料のパヌキングに車を移動するよ。」
    ずマリが蚀うず、
    「ここでいいだろう。」
    ず意倖にも圌は図々しいのであった。マリにはその頭はなかったが、圌に蚀われるず「たあいっか」ず安心しおしたい、二人で車のシヌトに買っお来たものを広げた。圌もちゃんず半分の倧孊芋を食べた。先ほどのレストランのずきずは打っお倉わっお、マリの車の䞭での圌が家にいるずきのようにく぀ろいでいるこずが䜕より嬉しかった。暖かな車の䞭での思わぬ幞せな時間が、途䞭で目に入った店の人からの芖線をも気にならなくさせおいた。

    突然マリの倫ず入れ替わった圌のこずを、タケむさんは特にいぶかしがらなかっただろう。なぜなら、「近所の癜血病を患っおいるワダさん」の予玄を取るのはこれで䞉床目であったから。䞀床目は圌の匟の入院日ず、二床目は圌自身の入院日ず重なっおキャンセルずなり、タケむさんず圌ずはご瞁がないのかもしれないず思った矢先、ひょんなタむミングで叶った「䞉床目の正盎」であった。おそらくタケむさんから芋れば、マリは少々お節介の過ぎる隣人ずしお映っおいたに違いなかった。しかしマリの倫は、
    「タケむさんだっお鈍感じゃないんだから、芋ればわかるだろう。そういう目で芋られるのは嫌だから、俺はもう行かない。」
    ず、タケむさんの受蚺をすっぱりずやめおしたった。

    ぀づく

    ★この物語は著者の䜓隓したノンフィクションですが、登堎人物の名前はすべお仮名です。

     
     
    2022幎7月2日に死別したパヌトナヌずの思い出を綎りたす。二人の過ごした時間はたったの1幎ず2ヶ月間でした。 圌のたぐいたれな生き方ず、圌が遺しおくれたあたたかくたっすぐな愛のかたちを曞き残したいず思いたす。 続きものですが、どうぞどこからでもお手に取り、觊れおいっおください。

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