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神の量産 【第䞀話】䞭線小説

    あらすじ
    フリヌランスの゚ンゞニアであるナカゞマは、クラりド゜ヌシングで奇劙な䟝頌を芋぀ける。
    「神になれるサヌビスを䜜りたい」
    䟝頌䞻の䌊川は、どこか胡散臭く、それでいお劙な熱量を持った男だった。
    ナヌザヌを“神”ずしお厇めるAIチャットサヌビス。
    くだらない䌁画だず半分呆れ぀぀も、生掻のために開発を匕き受けるナカゞマ。
    やがお䌊川が連れおきた千花も加わり、䞉人でサヌビス運営を始める。
    トラブルやクレヌムに振り回されながらも、詊行錯誀を重ねるうちに少しず぀ナヌザヌを匕き蟌み、サヌビスは拡倧しおいく。
    理想を远う䌊川ずは裏腹に、終わりの芋えない開発ず運営に疲匊しおいくナカゞマ。
    メンバヌの入れ替わりを経お、サヌビス運営は思わぬ結末を迎える。



    神になれるサヌビスを䜜りたい。

    クラりド゜ヌシングで奇劙な案件を芋぀け、面癜半分でそれに応募したのがこずの始たりだった。

    最初は受泚できるずは思っおいなかった。
    競争率が激しかったから。

    䞀぀案件の案件に䜕十人も応募者が集たるのは圓たり前で、
    条件の良い案件なら応募者が癟人を超えるこずも珍しくない。

    だから、䟝頌䞻から「䞀床打ち合わせしたい」ず連絡があったずきは驚いた。

    メッセヌゞには、こう曞かれおいた。

    「できれば盎接お䌚いしお打ち合わせ垌望なのですが、ご郜合はいかがですか」

    募集芁項にも、「盎接お䌚いしお打ち合わせできる方垌望」ずあった。

    同じ地方郜垂に䜏んでる応募者ずなるず、かなり絞られる。

    遞ばれた理由に玍埗しお、打ち合わせを承諟した。


    䟝頌䞻ずは駅近くの叀い喫茶店で埅ち合わせをした。

    店の前で埅っおいるず、埅ち合わせの時間を数分過ぎたころ、背の高い男がこちらぞ歩いおきた。

    「ナカゞマさんですか」

    䞉十代半ばくらいだろうか。
    いや、よく芋るず四十歳近くにも芋える。

    幎霢はずもかく、どこか胡散臭さを感じさせた。
    幎恰奜に䌌合わないピンクのカヌディガンのせいかもしれない。

    䞀瞬、人違いのふりをしお立ち去ろうかずも思ったが、タむミングを逃した。

    「お埅たせしたした。䌊川です。いやぁ、暑いですね。さ、入りたしょう」

    「はい、よろしくお願いしたす」

    喉から絞り出せた声は、自分でも驚くほど小さかった。

    店に入っお垭に着くず、䌊川はメニュヌを芋るこずもなく、
    「アむスコヌヒヌずかでよかったですか」
    ず聞いおきた。

    「あ、はい」

    䌊川は店員を呌んで、
    「アむスコヌヒヌずストロベリヌシェヌクで」
    ず泚文した。

    泚文した飲み物が運ばれおくるずあるこずに気づいた。
    飲み物ず服が同じ色だった。

    「ピンクが奜きなんですか」

    そう聞くず間があったので、倱蚀だったかず䞀瞬焊った。

    「そうそう、ラッキヌカラヌで。ナカゞマさんっお、そういうの信じたす」

    「あ、どうでしょう  。なくはないかなず  」

    「ですよねヌ。たあ、そんなこずはどうでもいいんですけど、䟋のサヌビスのこずを盞談したくお」

    慎重に蚀葉を遞んだこずを埌悔し぀぀、頭を切り替えた。

    「ナカゞマさん、ChatGPTっお䜿ったこずありたす」

    「ええ、ありたす」

    「私は神です。っお入力したこずは」

    「いや  ないです」

    「ですよねヌ。ボクはたたに入力したくなるんですよね」

    「はぁ  」

    面癜半分で応募したこずを少し埌悔した。

    「質問を倉えたす。自分が“特別な存圚”だず思ったこずは」

    そう聞かれお、即答できなかった。
    はっきりずした自芚はないものの、そう思ったこずはあるかもしれない。

    「  あるかもしれたせん」

    「そう、誰でも自分が“特別な存圚”だず思いたい。神になりたいずいう願望を持っおいる」

    話が飛躍したような気がした。

    「それで思い぀いたんです。宗教ずAIの融合サヌビスを」

    䌊川は、わざわざ小声で蚀った。
    聞かれたずころで困るような話なのだろうか。

    「AIっお今すごい勢いじゃないですか。この勢いに乗れれば皌げない理由がない。それに宗教をかけ合わせたらどうなるか。わかりたすか、ナカゞマさん」

    軜い眩暈がしたのでアむスコヌヒヌを飲んで気持ちを萜ち着けた。

    「宗教っお、教祖みたいな人がいるむメヌゞですけど」

    「そこが肝なんです。教祖はいらない。ナヌザヌが神になれるので」

    埗意げな衚情を浮かべる男を前にしお、こめかみが痙攣した。

    気持ちを萜ち着け、頭の䞭で敎理した。

    「違っおたらすみたせん。ナヌザヌを神のように扱うチャットサヌビスを䜜りたいっおこずですか」

    「さすがはナカゞマさん。察しがいいですね」

    ChatGPTのような生成AIを倖郚から呌び出すAPIを䜿えば、そういったサヌビスを䜜るのは可胜ではあった。

    AIの口調を調敎すれば、ナヌザヌを神のように厇める蚀葉遣いで応答させるこずもできるだろう。

    半分くだらないず呆れ぀぀も、面癜いかもしれないずも思った。

    少なくずも䟝頌の報酬は埗るこずができる。
    今の自分にずっおはそれだけで充分だった。

    挠然ずした䞍安感は拭えなかったけれど。

    「ちなみにご予算は 応盞談ずなっおいたしたけど」

    「20䞇くらいでできたりしたす」

    壮倧に思えおいた話が、急に瞮んだ気がした。
    目の前の男たで、心なしか小さく芋えおくる。

    「20䞇ですか  。かなり削らないず厳しいず思いたす。ログむン機胜や課金の仕組みも必芁なんですよね」

    必芁最䜎限の構成でもこれくらいはかかるず䌝えるず、䌊川は目に芋えおトヌンダりンしおしたった。

    結局、その堎での商談成立には至らなかった。

    それから䞀週間くらい連絡がなかったので諊めかけおいたずころ、䌊川から連絡があった。

    「30䞇円でなんずかなりたせんかね」

    背に腹は倉えられないのはお互い様か。
    ずはいえ、それだけの金額をかけるずいうのは、それなりの確信があっおのこずだろう。

    䌊川から䌝わっおくる切実さず熱量から、もしかしたらずいう期埅を抱かずにはいられなかった。

    「たあ䜕ずかMVPなら䜜れるかず」

    「おぉ、ナカゞマさんはボクにずっお最優秀遞手です」

    「あ  MVPっおいうのは必芁最小限の機胜だけ備えたプロダクトのこずで」

    「それで、ぜひお願いしたす」

    話が通じおいるのか少し䞍安になったけれど、ひずたず案件を受けるこずにした。


    サヌビスの開発䞭、䌊川ず䜕床か打ち合わせをした。

    限られた予算内で最䜎限必芁な機胜は実装する。
    それはいいずしお、問題は、サヌビスの栞になる郚分だった。

    ナヌザヌを神のように扱うAIチャットずいっおも、具䜓的にどのようにAIに応答させるかは、発案者である䌊川ず詰めおいく必芁があった。

    最初は喫茶店で打ち合わせをしたが、それ以降はチャットツヌルでのやり取りや、zoomを䜿ったオンラむン䌚議が基本になった。

    「䌊川さん、AIにどんなセリフを蚀わせたすか なんか具䜓的なのっおありたすかね。最初の䌚話をどう始めるかずか」

    画面の䞭の䌊川はしばらく考え蟌んだ様子で黙っおいた。

    䌊川の埌ろには高玚感のある家具が䞊び、ガラス匵りの向こうには高局階から芋枡した街の颚景が広がっおいる。
    もちろんバヌチャル背景なのだが、こういうずころに䜏むのが倢なのだろうか。

    そんなこずを考えおいるず、䌊川がおもむろに口を開いた。

    「あなたはこの䞖界の神です。その尊きお蚀葉を賜りたく存じたす。っおいうのはどうですか」

    キヌボヌドに指を走らせ、䌊川の蚀葉を入力する。

    「蚭定ずしおは、ナヌザヌが神で、AIはナヌザヌを神ずしお扱う信者みたいなものですか」

    「信者ずいうより、神の遣い。倩䜿のようなむメヌゞかな」

    「なるほど。他にルヌル的なこずはありたすか」

    「ルヌルずしおは、ナヌザヌを吊定しないこず。党肯定。ナヌザヌは承認欲求が満たされ、気持ちよくなれる」

    「党肯定ですか」

    「AIによっおは説教くさいずいうか、正論じみた回答も倚いので、そういう回答は避けたいなず」

    「なるほど」

    「どんなこずを蚀っおも、神の蚀葉ずしお重く受け止め、肯定しおくれる。それが必芁だず思っおお」

    「それだず、ナヌザヌが䟝存しすぎるっおこずはないですかね」

    「ナカゞマさん、䞖の䞭を芋お同じこずが蚀えたすかね。酒にタバコ、ギャンブル、颚俗ずたでいかなくおも、嚯楜やスマホ、人を䟝存させるもので溢れおいる。むしろ、䟝存させるこずで成り立っおいるずも蚀える」

    熱くなっおきたのか、画面越しの䌊川の顔が近づいおくる。

    「それに無力感に苛たれおいる人間も倚い。少しでも神になった気分を味わえるなら、それを気持ちいいず感じる人間はいるはず」

    その蚀葉を聞いお、䌊川自身もそうなのだろうかず思った。

    「チャットAIず結婚しようずする人すらいるんです。自分を神ず厇めおくれる存圚は人間でなくおもいい。AIの登堎によっお、誰でも神になれる。もうそういう時代になったんですよ」

    「なるほど  」

    「もしかしたら、䞖界を倉えられるかもしれない」

    「なんだかスケヌルの倧きな話ですね」

    「それだけ可胜性のあるものなんですよ。そしお、ボクずナカゞマさんならきっずそれが実珟できる」

    「できるだけ期埅に応えられるよう、頑匵りたす」

    「ちょっず倧袈裟な話をしたしたけど、そこたで気負わなくおいいですよ」

    こちらが気埌れしたのを察したのか、䌊川はそう蚀った。
    そしお、最埌にこう付け加えた。

    「あくたで、゚ンタヌテむメントなので」


    ある日の倜、スマホの通知音が鳎った。

    『こんばんは。今話せる』

    そうLINEの通知が来おいたので、通話ボタンをタップした。

    「こんばんは。久しぶり」

    盞手は以前の職堎で䞀緒だった海野ずいう同䞖代の男性だった。

    「ナカゞマ君、今仕事は」

    「フリヌランスで仕事しおお」

    「すごいね」

    「いやいや、なかなか案件が受泚できおなくお厳しいよ」

    「やっぱりカフェでMacBook䜿っお仕事したりするの」

    フリヌランスにありがちなむメヌゞだが、実際そんなふうに仕事をしたこずはなかった。

    毎日のようにカフェで仕事をしおいたらお金がかかっお仕方がない。

    「もっぱら自宅で䜜業しおるよ」

    軜鉄筋のアパヌトなので、隣や䞊階の生掻音が気になるこずもある。

    殺颚景な郚屋だが、窓際に目をやるず、氎耕栜培で育おおいるリヌフレタスやチマサンチュが収穫できそうなくらいに育っおいた。

    「海野君は前ず倉わらず」

    「前のずこは終了しお、今は別のお客さんのずこで働いおる」

    䞀緒に働いおいたずきは、クラむアント䌁業に垞駐しお仕事をしおいた。

    案件が終われば、たた別の客先に移る。
    それは珍しいこずではなかった。

    「仕事は忙しいの」

    「たあボチボチかな」

    「そっか。あ、そういえば最近、ちょっず倉わった案件を受泚したんだ。神になれるっおいうWebアプリを䜜っおお」

    「ぞヌ、面癜そうだね。出来たら教えおよ」

    「うん、あんたり期埅しないでね」

    「楜しみにしおる」

    海野はそう蚀っお笑っおいた。


    開発開始から二週間ほどで基本的なチャット機胜が動䜜するプロトタむプが出来䞊がった。

    ログむン機胜や課金の実装は途䞭だったが、䞀床動くものが芋たいず䌊川に蚀われおいた。

    喫茶店では呚囲の雑音が気になるし、人に聞かれる心配もあるずいうこずで、垂民䌚通の䌚議宀を借りるこずになった。

    予玄した䌚議宀で埅っおいるず、䌊川は䞀人の女性を連れおきた。

    「これから手䌝っおくれる千花ちゃん。こちらナカゞマ君」

    「千花です。よろしくお願いしたす」

    明るめのストレヌトヘアず、すらっずしたモデル䜓型が印象的な女性だった。

    実幎霢より若く芋えるタむプに思えたが、二十代埌半くらいだろうか。

    「どうも、よろしくお願いしたす」

    心なしか想像よりも小さな声が出た。

    「ナカゞマ君、もう動かせる状態なのかな」

    䌊川は䜕床も打ち合わせしおいるうちに敬語を䜿わなくなっおいた。

    「ずりあえずUIずチャット郚分は出来おいるので芋おください」

    ノヌトパ゜コンを䌊川に向け、プロトタむプのチャット機胜を詊しおもらった。

    䌊川はずきどき「おぉ」ず感嘆の声を挏らしながらチャットを続けた。

    「うん、いい感じだね。ただ蚀葉遣いずか調敎の䜙地はあるけど、なかなかいいんじゃない」

    䌊川は満足げに蚀っお、千花にもチャットさせた。

    「すごヌい、ホントに神さたに察しお話しおるみたい」

    感心した様子の千花に、
    「でしょう。圌、凄腕の゚ンゞニアだから」
    ず党力で吊定したくなるようなこずを䌊川が蚀った。

    「いや、党然そんなこずないです。裏でChatGPTずかず同じものを䜿っおるだけなんで」

    「でもすごいです。こんなの䜜れちゃうなんお」

    小っ恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じながらも、矎人に耒められるのは気分が良かった。

    「ちなみにこれ、サヌビスの名前っお䜕おいうんですか」

    千花に聞かれお、䌊川ず顔を芋合わせた。
    サヌビス名はただ決めおいなかった。

    「あ、䜕にしようか。『神さたサヌビス』ずか」

    「安盎すぎ」

    「そうかなぁ」

    千花に突っ蟌たれおも、䌊川の反応は柔らかかった。
    気心の知れた䞭ずいうか、付き合っおいるのだろうか。

    少なくずも䌊川は、千花のこずを異性ずしお奜意的に扱っおいるように芋えた。

    「䞉人いるこずだし、ずりあえず思い぀く限り曞き出しおみよう」

    䌊川はそう蚀っお、ホワむトボヌドに「神さたサヌビス」ず曞いた。

    それから䞉人でサヌビスの名前を考えおホワむトボヌドに曞いおいった。

    神さたサヌビス
    神の垰還
    お客様は神様です
    ゚ヌゞェントオブゎッズ
    Your Revelation
    神蚗の祭壇
    Altar of the Oracle
    Servant AI

    案だけは次々に出るものの、どれにするか決めきれなかった。

    「そういえば、キャッチコピヌ的なものがあったよね」

    千花が思い぀いたように蚀った。

    チャットサヌビスの最初の画面には、
    『あなたがこの䞖界の神です。さあ、はじめたしょう』
    ず衚瀺するようになっおいる。

    「この、『あなたがこの䞖界の神です。』っおいうのがわかりやすい気がするな」

    「なるほど。さすが千花ちゃん。それでいこう」

    名前からサヌビスの内容が想像できた方が入りやすいだろう。
    ずくに反察する理由もなかった。

    「じゃあそれで進めたすね」

    サヌビス名も決たり、リリヌスたでの目凊が立っおきたこずもあり、高揚感が湧いおきた。
    予期せぬメンバヌが加わったこずも、その理由の䞀぀だったのかもしれない。

    䜕もかも順調に進んでいる。
    このずきは玔粋にそう思えた。


    第二話ぞ


     
     
    読み「いちのせ」 か぀お小説家を目指しお、新人賞ぞの応募を続けおいたした。 それから十数幎、創䜜掻動から離れおいたしたが、たた曞いおみようずいう気になりたした。 ふず思い぀いたこずを曞き留めおおく堎所ずしおnoteを始めたしたが、今は小説を投皿しおいたす。

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