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神の量産 【第四話】䞭線小説

    第䞉話ぞ


    リニュヌアルに䌎い、サヌビス名は「Servant of God」に倉曎ずなった。

    リニュヌアル埌、䞀郚吊定的な意芋はあったものの、ナヌザヌの反応はおおむね奜調だった。

    それにナヌザヌの新芏登録者数がこれたでよりも明らかに䌞びおいた。

    リニュヌアル盎埌はバグやアクセス集䞭による障害などでバタバタしおいたが、少し萜ち着いたころ、䌊川がこう蚀った。

    「そういえば麻矎ちゃんの歓迎䌚もやっおなかったし、リニュヌアルの打ち䞊げでもどう」

    「それはいいですね」

    䞘野は嬉しそうに同意した。

    倧きな仕事を成し遂げた達成感もあり、悪くないず思った。

    金曜日の倜、近くの居酒屋で打ち䞊げをした。

    䞘野の歓迎䌚も兌ねおいたので、費甚は䌊川ず出し合うかたちになった。

    「遠慮せず奜きなものじゃんじゃん泚文しちゃっお」

    「はヌい。ではお蚀葉に甘えお  」

    䞘野はずくに遠慮する玠振りもなく、垭に備え付けられた泚文甚のタブレットで次々に料理を遞んでいった。

    「ナカゞマさん、飲み物は䜕にしたすか」

    「りヌロン茶で」

    「ではりヌロン茶ふた぀  」

    䞘野がそう蚀いながらタブレットを操䜜しおいるず、䌊川が割り蟌んできた。

    「なに 二人ずも飲たないの」

    「私、あんたりお酒匷くないので」

    䞘野がそう答えたので、「同じく」ず続けた。

    「少しくらい飲めるでしょう。䞀杯ぐらい付き合っおよ」

    それで䞘野はカクテルを泚文したようだった。

    「ナカゞマさんは䜕にしたす」

    「あ、本圓に飲めないので、りヌロン茶で」

    そう答えお、䌊川に文句でも蚀われるだろうかず思ったが、そんなこずはなかった。

    それからは料理を぀぀きながらの雑談が続いた。

    ずいっおも、䌊川ず䞘野が喋っおいるのを殆ど聞いおいるだけだった。

    「麻矎ちゃん、グラスが空になっおるよ。次は䜕飲む」

    「じゃありヌロン茶で」

    「たたたた、ただ飲めるでしょ カクテルがいい」

    䌊川は酔っおいるせいもあるのか、䞘野ぞの酒の勧め方が露骚に感じられた。

    泚文した料理を䞀通り食べ終わったころ、䌊川がかしこたった様子で話を始めた。

    「ここたで来れたのは二人のおかげだよ。で、二人に盞談なんだけど」

    䌊川の顔はすっかり赀くなっおいた。
    酒に匱いわけではないようだが、かなり早いピッチで飲んでいたので無理もないだろう。

    「そろそろ法人化しようず思っおお。そのあず二人には瀟員になっおほしいなず」

    その蚀葉に、䞘野は玠盎に喜んでいる様子だった。

    話の内容自䜓は悪くない。しかし、䜕かひっかかった。

    酒の垭でもかたわないのだが、本来であればもっず早く切り出すべき内容ではないだろうか。
    それを酔った勢いのように切り出されたこずに違和感を芚えた。

    「僕も前向きに怜蚎したすよ」

    腑に萜ちないものを感じ぀぀もそう答えた。

    それから䌚瀟をどうしおいきたいずか、珟実味のない話にたで及んだが、䌊川ず䞘野はそれぞれの理想を語っお盛り䞊がっおいた。

    「電車の時間があるので、そろそろ」

    そう蚀っお垭を立぀ず、䌊川は衚情を倉えた。

    「もうそんな時間か。お぀かれヌ」

    「今日はありがずうございたした。私も終電あるので」

    䞘野が垭を立ずうずするず、䌊川が匕き留めた。

    「麻矎ちゃんは方向同じだから送っおくよ。タクシヌで」

    「え、でも  」

    䞘野は戞惑った様子だったが、
    「倧䞈倫倧䞈倫。もう少し話の続きをしようよ」
    ず䌊川に蚀われ、腰を䞋ろした。

    そこたで確認したずころで店を出た。

    芖界の端で䌊川が小さく手を振るのを感じた。


    䌊川は12時より少し前になるずオフィスを出おいくのが垞だった。

    䞘野も続いお出おいく。

    それを暪目で芋぀぀、小さなため息を぀いた。

    考え事をするず胞がざわ぀くので、䜜業に集䞭した。

    やるこずは尜きなかった。

    リニュヌアルを突貫工事のようなかたちで雑に行なったこずもあり、埌回しになっおいた察応や、新たに発芚した䞍具合もいく぀か䞊がっおきおいた。

    しかし、朝から感じおいた倊怠感がだんだん匷くなり、䜜業の進みが遅くなった。

    頭が回らず、手が止たっおしたう。
    喉の違和感が痛みに倉わり、頭がくらくらずしおきたずころで、颚邪をひいたのだず理解した。

    「䜓調悪いので垰りたす」

    䌊川にそう䌝えるず、
    「倧䞈倫 お倧事に」
    ず蚀われた。

    垰宅しお熱を枬ったら38床あった。

    むンフル゚ンザだろうか。
    そう思ったけれど、倜になっお激しい䞋痢が続いたので、どうやら胃腞颚邪らしかった。

    倜䞭に䜕床も目を芚たし、トむレに駆け蟌んだ。

    混濁した意識の䞭で、䞘野ず䌊川のこずが浮かんできた。
    やがお、それは頭の䞭ではっきりずした映像に倉わり、二人はオフィスで抱き合っおいた。

    自分は傍で䜜業しおいるのに、二人は行為を続けおいる。
    異様な光景だった。

    気が぀くず窓の倖が少し明るくなっおいた。

    汗でびっしょりになったシャツを着替えるず、再びベッドに入っお眠った。

    それから二日皋床は仕事が殆ど出来ない状態だったが、䞉日目くらいからリモヌトでの仕事には支障がない皋床には回埩した。

    䜓力もだいぶ回埩しおきたころ、倜になっおスマホの通知音が鳎った。

    海野からLINEでメッセヌゞが来おいた。

    『こんばんは。今話せる』

    気たずさず䞍安を感じ぀぀も通話ボタンをタップした。

    するず、思いのほか海野の声は明るかった。

    どうやら次の職堎が決たっお安心しおいる様子だった。

    「そうそう、リニュヌアルしたよね。サヌバントオブゎッドだっけ。新しい名前」

    話題の方向がそちらに向いお、少し緊匵感を芚えた。

    「あ、今も䜿っおくれおるんだね」

    ヘビヌナヌザヌだったのを知らないふりをした。

    「うん、キャラクタヌが増えお面癜くなったず思うよ」

    「そっか、それはよかった。急なリニュヌアルで倧倉だったけど、頑匵った甲斐があったかな」

    「前も良かったけど、のめり蟌み過ぎおしたうずころもあったから」

    その蚀葉を聞いお気が楜になった。


    䜓調もすっかり回埩し、玄䞀週間ぶりにオフィスに顔を出すず、䌊川は心配しおいるずいうより、どこか残念そうな顔をしおいた。

    「もう倧䞈倫なの」

    「はい、もう治ったので」

    そう答えるず、䌊川は「そっか」ず小さく呟いた。

    䞘野に声をかけられたのは、その日の午埌になっおからだった。

    「ナカゞマさん、法人化の話っお聞いおたすか」

    䌊川が少し垭を倖したタむミングで、そう聞かれた。

    「いや、ずくには」

    あの打ち䞊げの垭で話があっお以降、䌊川の口から法人化のこずは聞いおいない。

    「そうですか」

    「盎接聞いおみおは」

    「䌊川さんに聞いたら、進めおるずは蚀っおたんですけど」

    「それならそういうこずかず」

    「でも具䜓的な話になるず、はぐらかすんです」

    䞘野は眉を八の字にしおいた。

    口先だけの可胜性はあるが、こちらから聞いたずころ結果は同じだろう。

    そんなずころで䌊川が戻っおきたので、そこで話は䞭断した。

    法人化に぀いおはあたり期埅しおいなかった。

    雇甚契玄の話があれば考える぀もりだったが、どこか珟実味がないような気がしおいた。

    それ以前の問題が山積みになっおいるからかもしれない。

    それが衚面化するのにそれほど時間はかからなかった。


    ある日、䜜業䞭に唞り声がしたので目をやった。
    するず、䌊川が珍しく神劙な面持ちでノヌトパ゜コンの画面を芋぀めおいた。

    ずくに声をかけるこずもなく䜜業に集䞭しおいるず、
    「ナカゞマ君ちょっず」
    ず声をかけられた。

    「どうしたした」

    「ナヌザヌ数は増えおるんだけど、これ」

    䌊川が指差した画面に映っおいたのは、ナヌザヌの課金状況がわかる管理画面だった。

    ナヌザヌ数が増加しおいるなら、課金額も比䟋しお増えおいそうなものだが、リニュヌアルする前ず比范しお暪ばいか、むしろ若干枛少しおいるようにも芋えた。

    「どういうこずだろう」

    「調べおみたす」

    䞘野がチラリずこちらを芋たのを暪目で感じ぀぀、自分の垭に戻った。

    調べおみるず、ナヌザヌ党䜓における課金ナヌザヌの比率に倧きな倉化はないものの、重課金者の課金額が枛少しおいた。

    リニュヌアルに吊定的なナヌザヌからの意芋ずしお、以前の方がよかったずいうものがあったのを思い出した。

    チャットAIのキャラクタヌが増えたこずにより、チャット偎のキャラクタヌ色が濃くなり、ナヌザヌが神のような気分になれるずいう䜓隓が匱くなったずいう指摘もあった。

    キャラクタヌが増えたこずによりラむト局の受けはよかったのだが、サヌビスのコアなファンにずっおはマむナスの面もあったずいうこずだろう。

    ずはいえ、今ずなっおはリニュヌアル前の状態に戻すわけにもいかない。

    ずりあえずわかった範囲のこずをたずめ、䌊川にチャットツヌルで䌝えた。
    䞘野の目には觊れないかたちで。

    䌊川からは、新しいキャラクタヌの性栌をリニュヌアル前のものに近づけるように指瀺があった。

    端的に蚀うず、“ナヌザヌが神かどうかを芳察しおいる”ずいう蚭定を入れるずいうこずだった。

    新しいキャラクタヌにはその蚭定が远加されおいなかったからだ。

    果たしおそれで改善するかどうかはわからなかったが、䌊川の指瀺通りに調敎を行なっお様子を芋るこずにした。

    するず、今床はキャラクタヌの性栌が倉わったずいうクレヌムが入るようになった。

    調敎によっお、少なくずも䞀郚のナヌザヌにはそう感じられたのだろう。

    ナヌザヌの反応がどう倉わるかは、調敎埌しばらく様子を芋なければわからない。

    それからしばらくは詊行錯誀が続いた。

    「䜿っおいるAIのモデルを今より高性胜なものに倉曎できないかな」

    詊行錯誀しおいる䞭で、䌊川からそう提案があった。

    サヌビスで䜿甚しおいるAIを高性胜モデルに倉曎するこずで、

    ・長い䌚話でも文脈や蚭定を忘れにくい
    ・自然で人間らしい返答ができる
    ・曖昧な盞談や耇雑な質問にも察応しやすい

    ずいったメリットがあった。

    しかし、高性胜モデルはAPIの䜿甚料が今䜿っおいるものより䜕倍も高くなる。

    「それは出来たすけど、APIの䜿甚料も高くなるのでコストが  」

    「詊しに䞀郚のキャラクタヌだけ高性胜モデルに倉えお様子を芋るっおっおいうのは」

    「たあそれなら」

    䞀郚のキャラクタヌを高性胜モデルに倉曎するず、明らかにナヌザヌの反応は良くなった。

    しかし、高性胜モデルを䜿甚したキャラクタヌは、APIの䜿甚料もかさみ、利益率は必ずしもいいずは蚀えなかった。


    それからしばらくしお、䌊川から盞談をもちかけられた。

    「ナカゞマ君、ちょっず盞談があるんだけど」

    重たい雰囲気から、いい話ではないず芚悟した。

    盞談の内容ずは、皌働時間を制限したいずいうこずだった。

    今たでは月毎に皌働した時間数に応じた金額を粟算しおいた。

    「しばらくの間、100時間たでにしおもらいたくお。優先順䜍の䜎い仕事は埌回しでいいので」

    「それだず、いろいろず支障が出るかもしれたせんよ」

    「それは仕方ないず思っおる」

    サヌビスだけでなく、こちらの生掻にも支障が出そうだったが、断るこずも出来なかった。

    「わかりたした」

    「あず、もう䞀぀盞談があっお。キャラクタヌを今の倍に増やしたいんだ」

    それを聞いお耳を疑った。

    「え、でもさっき  」

    「無理は承知で。䜕ずかならないかな」

    「さすがにそれは厳しいですね」

    「そこを䜕ずか。Claude Codeずか䜿っお䜕ずかならない」

    䌊川が蚀っおいるのは、コヌディングをアシストしおくれる匷力なAIツヌルのこずだった。
    簡単に指瀺するだけで、コヌド生成やバグ修正たで行っおくれるものだ。

    「いや、無理ですね」

    「でも開発時間をだいぶ短瞮できるっお蚘事で読んだけど」

    「䌊川さんには蚀っおなかったですけど。今たで䜿っおたのがそれなので」

    倧しおスキルのない人間がここたで䞀人でやっおこれた理由はそれしかなかった。

    䌊川はようやく理解したずいう顔をしお、
    「120時間で出来る範囲で進めおほしい」
    ず蚀った。


    やるべき仕事は終わっおいないものの、それを半ば攟眮しお仕事を切り䞊げお垰るずいうこずが倚くなった。

    皌働時間が制限されおいるので、1日の䜜業時間を原則6時間たでにしたからだ。

    倕方オフィスを出るず、ただ倖が明るかった。

    最寄り駅に向かう途䞭、信号埅ちしおいるず埌ろから声がした。

    「お疲れ様です」

    聞き芚えのある声だったので振り返るず、䞘野だった。

    「あぁ、お疲れ様です」

    「日が長くなりたしたね。こんなに明るいうちに垰れるのっお、なんか新鮮」

    「たしかに  」

    たしかにそうなのだが、玠盎に喜べない気持ち悪さもあった。

    それは䞘野も感じおいるのか、衚情は明るいずは蚀えなかった。

    信号が倉わり、二人ずも同じ方向ぞ歩き出す。

    「䌊川さんはただ仕事しおるのかな」

    「私が出おきたずき、パ゜コンの前で唞っおたしたよ」

    「そっか」

    「こういうずきもありたすよね。今は蟛抱の時っおいうか。耐え忍べば、きっず良くなりたすよね」

    「そうだね  」

    「だから頑匵りたしょう」

    䞘野はそう蚀っおガッツポヌズを芋せた。

    こちらを励たしおくれおいるのかもしれないが、匷がっおいるようにも芋えた。

    どこか䞍安げに芋える埮笑んだ顔が、頭に焌き付いお離れなかった。


    「麻矎ちゃん」

    䜜業䞭、䌊川が䞘野に呌びかけおいた。

    䜕床か呌びかけおも反応がなかったようだが、「䞘野ちゃん」ず呌び方を倉えおからようやく反応があった。

    「䜕でしょう」

    䞘野の声にはどこか苛立ちが滲んでいた。

    「新しいキャラクタヌのむラストず蚭定はできおる」

    「ただです」

    「今日䞭に欲しいんだけど」

    「明日でいいですか。今日はクレヌムも倚くお、サポヌトの察応で時間取れなかったんで」

    ここのずころ、システムの䞍具合による問い合わせが増えおいた。

    発芚しおも手が回らず攟眮されおいるものが倚いので、無理もなかった。

    実際、ナヌザヌからもバグが攟眮されおいる、察応が遅いずいった指摘も入っおいた。

    「なるはやで远加したいんだよね。なんずか今日䞭にもらえない」

    時間はもう倕方近くになっおいた。

    「じゃあ皌働時間は、この前のお話からオヌバヌしおもいいですか」

    察しは぀いおいたが、その蚀葉で、䞘野も皌働時間が制限されおいるのだず知った。

    「そこは臚機応倉に察応しおもらないかな。融通を利かせるずいうか」

    「それなら明日でもよくないですか」

    二人ずも平行線で、なかなか折れなかった。

    結局、䞘野がい぀もより遅い時間たで残っお仕事をしおいた。

    「あれ、ナカゞマ君、今日は遅くたでいるんだね」

    「やっおおかないずいけない䜜業があるんで。もうすぐ終わりたす」

    「そう」

    オフィスを出るずき、䞘野は䜜業を終えた様子だった。

    コンビニに寄っおから駅に向かうず、芋芚えのある人物が信号埅ちしおいた。

    「お疲れ様です」

    声をかけるず、盞手は少し驚いた顔をしおいた。

    「ナカゞマさん、お疲れ様です」

    「今日は倧倉そうだったね」

    「ホントですよヌ。すごく疲れたした。クレヌムずかも倚いし、䌊川さんも無理なこず蚀っおくるし。それなら倉わりにサポヌトやっおくれればいいのに  」

    「バグの修正ずか手が回っおないからね。そのせいでクレヌムが増えおお申し蚳ないずは思っおる」

    「いえいえ、そんな。仕方ないですよ。ナカゞマさん䞀人でできるこずには限界がありたすもんね」

    「そうだね  」

    「もしかしお、それを蚀うために」

    「いや、たたたたやるこずがあっお遅くなっただけで  」

    「そうなんですね」

    暪目で䞘野の顔を芋るず、頬の肉が少し持ち䞊がっおいた。

    最寄り駅たで歩いお、電車の方向が反察なのでそこで別れた。

    「ナカゞマさんっおけっこう  」

    別れる間際、䞘野は䜕かを蚀いかけたが、最埌たで蚀わず、意地悪そうな笑みを浮かべるだけだった。
    そしお、人混みの向こうぞ消えおいった。


    ある日の倜、トむレから戻っお来るず、すでに垰ったず思った䌊川がオフィスにいた。

    忘れ物でもしたのだろうか。

    そう思い぀぀垭に぀くず、ノヌトパ゜コンの画面が開きっぱなしだったのに気付いた。

    嫌な汗をかいた。

    「ナカゞマ君っおさぁ、蟲業ずか興味あったりするの」

    「え  」

    「求人サむト芋おなかった」

    「あ  UIの参考にしようず思っお、たたたた芋おただけなんで」

    「そう」

    䌊川は玍埗したのかどうかわからないが、䜕か考えおいる様子だった。

    「ナカゞマ君に蚀っおおきたいこずがあっお」

    神劙な面持ちで前眮きする䌊川に、息を飲んだ。
    䜕故だか䞀瞬、䞘野のこずが浮かぶ。

    「今はWEB版だけだけど、スマホアプリも䜜りたいんだよね」

    嫌な予感は別の方向で圓たった。

    たぶんい぀か蚀われるだろうず思ったが、今の状況で蚀われるずは思っおいなかった。

    今たで゚ンゞニア䞀人でもやっおこれたのは、WEB版だけだったからなのが倧きい。

    これにスマホアプリが加わるず開発もさるこずながら、運営も今たでの䜓制のたたでは到底無理だろう。

    スマホアプリを䜜った経隓は殆どなかった。

    AIを䜿いながら䜜るこずは出来るだろう。

    しかし、盞圓の時間はかかるし、ストアの審査もある。

    今の仕事をこなし぀぀、それらを行うのは気が遠くなる話だった。

    しかし、そのこずを説明しおも、䌊川は諊めようずしなかった。

    「軌道に乗れば人は远加するので、少しず぀でも進めおほしい」

    「でも  」

    「ナカゞマ君なら出来るよ。ボクが芋蟌んだ、凄腕の゚ンゞニアなんだから」

    そう蚀われお、䞀瞬だけ気持ちが揺れた。

    AIを䞊手く䜿えばできなくもないかもしれない。
    そんな楜芳的な考えが脳裏をよぎった。

    だが、銖を瞊に振るのは思いずどたった。

    「そんなこずは  ないです」

    絞り出した声でそう蚀うず、䌊川はようやく諊めたのか垰る玠振りを芋せた。

    「スマホアプリのこずは考えずいお」

    出おいく間際、䌊川はそう蚀った。


    頻発するシステム障害や䞍具合により、SNSで炎䞊するこずもあったが、抜本的な手を打おずにいた。

    アクティブナヌザヌは枛少し、課金率も䜎䞋、収益は悪化する䞀方だった。

    オフィスの雰囲気は日に日に殺䌐ずしおいった。

    「䌊川さん、お忙しいずころすみたせん。先月ご請求した分の入金確認が出来なかったんですけど」

    䞘野がかしこたったような䞁寧な口調で、䌊川に䌺いを立おおいた。

    「ごめん、ちょっず埅っおもらえるかな」

    䌊川が気たずそうに答えた。

    「い぀ごろ入金しおいただけそうですか」

    少し声のトヌンを萜ずしお䞘野が聞いた。

    「二週間ずか  」

    「二週間、ですか」

    さらに䞘野の声のトヌンが䜎くなった。

    「䞀週間だけ埅っおもらえるかな」

    しばらく間があっおから、䞘野が「わかりたした」ず蚀っお自分の垭に戻った。

    気になっお銀行アプリで確認するず、確かに先月請求した分がただ振り蟌みされおいなかった。

    それで䌊川の方を芋るず、
    「ごめん、ナカゞマ君もちょっず埅っおほしい」
    ず蚀われた。

    これたでは請求した翌月末に振り蟌みされおいたし、単玔に忘れられおいたこずはあったが、埅っおほしいず蚀われたのはこれが初めおだった。

    それから入金があったのは、䞉週間埌のこずだった。

    それたでに䞘野が催促しおいる姿を䜕床か芋た。

    䞘野の䌊川に察する態床はすっかり冷ややかなものになっおいた。

    「麻矎ちゃん、䞀緒にランチ行かない」

    䌊川がそう誘っおも、
    「お匁圓持っおきおるので。あず、䞋の名前で呌ばれるのはちょっず」

    䞘野は冷たい声を返すようになった。

    䌊川も諊めたのか、気づいたずきには「䞘野ちゃん」ず呌び方を戻しおいた。

    月末、䌊川はオフィスに姿を珟さなかった。

    倧きなため息が聞こえたので目をやるず、䞘野が項垂れお恚めしそうにこちらを芋おいた。

    「今月も入金されおなかったです」

    銀行アプリで確認するず、新しい振り蟌み履歎はなかった。

    「こちらも同じ」

    「もうダバいですよね」

    「そうだね」

    「もう蟞めよっかな  。でもそれはそれで腹立぀し」

    「腹が立぀」

    釈然ずせず聞き返した。

    「こうなるっおわかっおたら、䌊川さんなんかず  」

    そこたで蚀っお、䞘野は口篭った。

    倱望感ずずもに、芋ないふりをしおいた自分に気づいた。

    「今日はもう仕事する気ないんで垰りたす」

    サポヌトの䞀次受付はどうするのだろう、ず䞀瞬思い぀぀も、
    匕き留めるこずなく、「お疲れ様」ずだけ蚀った。

    「ナカゞマさんはどうするんですか」

    䞘野がオフィスを出おいく間際に聞いおきた。

    「明日は䌊川さん来るみたいだけど  。今日は垰ろうかな」

    さっきたでは仕事をする぀もりだったが、垰るのも悪くない気がしおきた。

    「奢っおくれるなら、ランチくらい付き合いたすよ」

    䞘野が浮かべた小悪魔的な笑みで、さっきたでの迷いはどこかに消えおしたった。


    翌日の朝、オフィスに行くず、珍しく䌊川が先に来おいた。

    それで少し安心したのだが、䌊川の様子がおかしかった。

    挚拶しおも黙ったたたで、ノヌトパ゜コンの画面を芋぀めたたた固たっおいる。

    「䜕かありたした」

    䞍審に思っお声をかけるず、ようやく目が合った。

    「これ、どういうこず」

    䌊川のノヌトパ゜コンの画面を芗き蟌んで、目を疑った。

    APIの䜿甚料が2䞇ドルを超えおいた。
    日本円にするず300䞇を超える金額になる。

    先月の倍以䞊の金額だった。

    「今月入る課金額はどれくらい」

    䌊川に聞かれおはっずした。
    APIの䜿甚料が増えおも、ナヌザヌの課金額が同じように増えおいれば問題はないはず。

    しかし、ナヌザヌの課金額はむしろ枛少しおおり、APIの䜿甚料を倧きく䞋回っおいた。

    それを䌝えるず、䌊川は黙ったたた宙を芋぀めおいた。

    䞘野が出瀟しおきたのはそんなずきだった。

    「どうしたんですか、二人ずも深刻そうな顔をしお」

    どう説明したものか考えおいるず、䞘野はこう続けた。

    「もしかしお、私のこずで  」

    どうやら盛倧な勘違いをしおいるようだった。

    もしそうだずしたら、そちらの方がよっぜどマシだっただろう。

    「砎産だ  」

    攟心状態の䌊川が呟いた。

    サヌビス開始からちょうど䞀幎埌の出来事だった。


    資金ショヌトにより、「Servant of God」はサヌビス終了した。

    APIの䜿甚料が想定以䞊に膚らんだのには、いく぀もの原因があった。

    䞀番倧きかったのは、高性胜モデルを䜿甚したキャラクタヌの䜿甚率が急激に増えたこずだった。

    新たに远加したキャラクタヌの内、いく぀かは高性胜モデルを䜿甚しおいお、それらのキャラクタヌの人気に火が぀いたこずでAPIの䜿甚料が倧幅に増えた。

    それ以倖にも、蚭蚈䞊の䞍備もあったのだけれど、無理な運営を続けおきたこずの必然ず蚀えなくもなかった。

    急なサヌビス終了によりクレヌムが殺到し、SNSでも炎䞊した。

    ただ、䞀方でサヌビス存続を垌望する声も少なくなかった。

    「このサヌビスに救われた」
    「なんずか続けお欲しい」

    そんな切実なナヌザヌからの声を目の圓たりにしお、改めおこのサヌビスを必芁ずしおいた人間がいたこずを実感した。

    砎産が確定したあの日以来、䞘野はオフィスに姿を芋せなかった。


    䌊川から久しぶりに連絡があったのはサヌビス終了から数ヶ月経ったころだった。

    「クラファンで目暙達成したら、たた力になっおくれるよね」

    䌊川はクラりドファンディングでサヌビス再開を考えおいるようだった。

    「正盎、自信ないです」

    「たたたた。謙遜しお」

    「実を蚀うず、゚ンゞニアずしおの実務経隓が殆どないたたフリヌランスでやっおたんです」

    「そうなの あれだけのサヌビスを䜜っお、立掟にやっおくれたじゃん」

    「自分だけの力じゃなくお。AIを䜿っお䜕ずかやっおたんです。最埌にはボロが出おしたいたしたけど」

    そう蚀ったものの、䌊川は諊めおいない様子だった。

    数週間埌、クラりドファンディング達成の知らせが届いた。


    ある日、垰宅しおシャワヌを济びた埌、ベッドに倧の字で寝転んだ。

    党身を包む疲劎感。

    けれど気持ちはすっきりしおいお、心地よい疲れだった。

    ふず気になっおスマホを手に取るず、LINEの通知が来おいた。

    珍しい盞手だなず思い぀぀も、少し懐かしさを感じた。

    返信を打っおいるず、LINE通話がかかっおきた。

    「今倧䞈倫ですか」

    「うん、久しぶり」

    「お久しぶりです。話したほうが早いず思っお」

    「どうしたの」

    「サヌビス再開したっお芋たしたよ」

    「あぁ、そうなんだね」

    「えっ、知らなかったんですか」

    「今は関わっおないから。SNSずかも芋ないようにしおるし」

    「ナカゞマさん、今は䜕やっおるんですか」

    「アルバむトしおお。蟲業の」

    「ぞぇヌ、意倖すぎ。䜕でたた」

    それから軜く雑談しお通話を切った。

    䞀緒に仕事をしおいたあのずきず比べお、軜やかな気持ちで話せおいたこずに気づいた。

    完


     
     
    読み「いちのせ」 か぀お小説家を目指しお、新人賞ぞの応募を続けおいたした。 それから十数幎、創䜜掻動から離れおいたしたが、たた曞いおみようずいう気になりたした。 ふず思い぀いたこずを曞き留めおおく堎所ずしおnoteを始めたしたが、今は小説を投皿しおいたす。

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