メインコンテンツへスキップ
見出し画像

あの首の角度で。


    初夏の鎌倉へ出かけた。

    朝から大仏にあいさつをした。

    私は昔から、この鎌倉大仏が好きだ。

    理由はうまく説明できない。
    だけど会いに来るたび、
    心の向きが少し変わる。


    思えば、何度訪れたことだろう。

    境内に入り、
    どでかい大仏様が目に入ってきたとたん、
    テンションが爆上がりする。

    どれだけたくさんの観光客が
    押し寄せていたとしても、
    大仏様はいつも優しく見下ろしている。


    大仏様のすぐ近くまで近づいて、
    まっすぐに上を見上げてみる。

    どれだけまわりが混雑していても、
    目に入るのは大仏様のお顔だけ。

    私が見るべき場所は、その一点だ。



    上を向く。

    そんな簡単なことが
    できなくなったときは、
    大仏様を見に行くといいのかもしれない。



    その後は、
    長谷寺で早咲きの紫陽花を愛でた。

    山腹の散策路「あじさい路」を歩きながら、
    ふと振り返る。

    紫陽花たちの向こうには、
    鎌倉の街が広がり、
    その先には由比ヶ浜の海が見える。

    最高の景色だ。


    そのまま由比ヶ浜へ向かった。

    たくさんの人が浜に出ている。

    思わず裸足になって、
    海水に足をつけた。

    まだ5月だけど、
    海水は思ったよりあたたかい。

    波が足元を行ったり来たりするたび、
    心も体も、
    一時期よりずいぶん元気になってきたことを
    思い出した。



    つばの広い帽子に、
    しっかり遮光してくれるサングラス。

    すぐに目が痛くなってしまうので、
    目のガードは欠かせない。

    まぶしい日ほど、
    視界は真っ白になる。


    やっぱり視覚障害は
    進行しているなあと感じる。

    「くっきりと見えていたあの頃は、
    もう戻ってこないのか」

    そんな喪失感が、
    時々チクリと胸を刺す。


    それでも、

    今日のこの瞬間、私は
    鮮やかな初夏の色合いを
    感じることができている。


    私の目は、
    今でも私を楽しませてくれている。



    失ったものばかりを数え始めると、
    つい視線は下を向く。

    そんなときは、
    また上を向こう。

    目の前に
    どれだけたくさんの問題が
    並んでいても、

    全く気にならなくなるほど
    大きくて、あたたかくて、
    大切なものを
    まっすぐに見つめよう。


    大仏様を眺める、
    あの首の角度で。



    ****



    今日も読んでくださって
    ありがとうございます♡

    スキ、フォローいただけたら
    とってもうれしいです♡

    私はこんな人です↓





    #創作大賞2026

    この記事が参加している募集

     
     
    進行性の難病(網膜色素変性症)とともに生きています。47歳。 目の進行とともに、見える景色は変わっていく。 できなくなることが増えていく日々のなかで、 失っていくものの裏側に、 豊かになるものはあるのかと、問い続けています。 心理カウンセラー/公認心理師。

    あなたへのおすすめ