メインコンテンツへスキップ
見出し画像

『あなたのように』

    向日葵の植物としての性質を知ったとき、
    なぜか胸に残った感覚をもとに書いたお話です。

    ⸻

    子どもの頃、向日葵はずっと太陽を追いかけていると思っていた。
    けれど、それは“若い頃だけ”だと知ったのは、大人になってからだ。

    成長を終えると、向日葵はもう追いかけない。
    ただひたすら、東の空を向いたまま、じっと咲き続ける。

    その話が、なぜかずっと胸に残っている。
    追うことをやめた花が、なんだか少し、自分と似ている気がして。

    私も昔は、いろんなものを追いかけていた。
    夢とか、誰かの背中とか、あれが欲しい、ここへ行きたい――
    そんな衝動に突き動かされていた。

    大きな喪失があったわけじゃない。
    ただ、日々が流れる中、追うことより立ち止まる方が楽だと、知ってしまっただけ。

    ベランダに咲いた向日葵の花びらが、ぽとりと散っている。
    太陽を追うでもなく、終わりが近い姿で、ただ風に揺れていた。

    私はそっと、その横にしゃがみ込み、しばらく空を見上げる。
    沈みかけた夕陽が、まぶしかった。

    「……もう一回、頑張ってみようかな」

    誰にともなくこぼれた声は、花びらと一緒に風にさらわれていった。
    どうせすぐに、また立ち止まるかもしれない。
    それでも、いい。

    私もただ、東を向いて、光を待ってみよう。
    日の出を待ち侘びて咲く
    この、向日葵のように。

    完


    あとがき

    この物語は、片桐みかんさんの書かれた「向日葵が泣いた日」のお話に心を動かされ、
    自分も描いてみたくなって生まれました。
    みかんさん、ありがとうございました。


    そして、初めて風まかせ文芸部のことば遊びに参加させてもらいました。
    ありがとうございました。

     
     
     
    日々の中にふと浮かぶ気持ちや、言葉にならなかった感情を、物語として綴っています。 ちょっぴりファンタジー、少しリアル。 静かな読後感のある短編、実体験をベースにしたお話も書いていく予定です。 まだまだ執筆は始めたばかり。 ここでの出会いが、誰かの記憶の端に残りますように。

    あなたへのおすすめ