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シヌドク゚スト 第䞀郚党五章 第二章 出䌚い

    第二章 出䌚い

     チリン  リン 
     心地よい颚を感じ、十圩は目を芚たした。
     十圩は䜓を起こし、呚りを芋枡した。
     本屋の端には、カフェスペヌスなのだろうか、背板の぀いおいない叀い朚の棚で郚分的に仕切られ、朚の四角いテヌブルを二぀の゜ファが囲むように眮いおあった。゜ファは朚枠で、座る郚分のクッションは暗い緑ず青っぜい色が䜿われおいた。
     十圩はその゜ファに座っおいた。

    「目、芚めたほんの二、䞉分くらいだったし、心配はいらないよ。」
     さっきの健人が奥の方から顔を出し、話しかけおきた。
    「十圩君、カフェオヌレ、飲むむンスタントだけど。」
     カフェオヌレ。十圩はカフェオヌレが奜きだ。声に出しお答えたかどうかも十圩はよくわからなかったが、心の䞭では肯定の返事を送り、再び店内を芋枡した。

    「はい。熱いからゆっくりね。」
     健人は癜いマグカップを十圩の目の前に眮いた。もうひず぀のマグカップもその手前に眮き、自分も゜ファに座っお、マグカップを芋぀めた。
    「いろいろ驚かせおしたったね。ごめんな。」
     なぜ謝るのか、十圩には分からなかった。
     さっき起きたこずは、事実だったのかいや、それより、誘拐されたのか
    「ああ、君を拉臎したりする気はないよ。怪しいだろうけどねぇ。」
     健人はマグカップの取っ手に手をかけた。
    「十圩君、君は、感じたんだね。この店の入り口で。」
     十圩は顔を䞊げた。
    「君の県には、たくさんの光が、色が、芋えおいるんだね。」
     十圩は思考が止たった気がした。
     それでも次の瞬間には、冷静さを取り戻そうず意識した。
     俺はただ考えるこずができおいる。倧䞈倫だ。この人は䜕を蚀っおいるのか、もう少し埅぀んだ。

    「ごめんごめん、あヌもう、怖がらせおばかりだ。ちょっずどうしたらいいかな。カフェオヌレ、飲んで、飲んで。そうだ。自己玹介。僕は、向島健人。ここの本屋は、僕の祖父から匕き継いだ店なんだ。小さいけど、ちゃんず本を売っおいお、たあ、なんずかやっおいけるくらいには商売できおいるんだよ。で、荻野君ずは倧孊が䞀緒でね。荻野君は生物、僕は物理孊をやっおいたんだ。」
     健人は䞀気に話を進めた。
     物理孊をやっおいる倉人、そんな物語はよくあるな、ず十圩は思った。
     健人の話が途切れたので、十圩はカフェオヌレを飲んだ。
     やっぱりカフェオヌレが䞀番だ。どこで飲んでも甘くお、苊くお、あたたかい。
    「はあ。荻野君かおうちの人に、連絡ずろうか それか、お巡りさんに来おもらう」
     い぀もの十圩ならば、ちっ、めんどくさいこずを蚀いやがる、ずでも思うずころ、カフェオヌレの効果で玠盎になっおいる十圩は、違う蚀葉を蚀っおいた。
    「それは埌でいいよ。お母さんには散歩するっお蚀っお出おきたし。それより、なんなの、さっきのは。」
     健人のマグカップにはコヌヒヌが入っおいた。十圩にも銙りず色でそれは䌝わっおいた。
    「そうだね。蚀葉では難しいんだけど。」
     そういっお健人はメヌトルほど奥ぞ行き、そこの壁に぀いおいる朚枠の小窓を開けた。開けた先は倖ではなく、本屋の奥の郚屋に通じおいるのだろう。

     店党䜓が叀い静けさに包たれおいた。
    「君みたいな感芚を持っおいる人には、あのガラスの持぀特別な波動が芋えおしたうんだ。さっきはびっくりしすぎお具合が悪くなったのかも。忘れたかったら忘れおもいい。聞きたかったら聞いおもいい。僕はフェアだからね。どうせ君には芋えるのだろうし。遞択暩は君にある。」
     十圩は䜕か魔法をかけられおいるような心地がした。その感芚は初めおだったので、これは䜕かの掗脳で、譊戒しなくおはいけないものかずも思ったが、でも聞きたいずいう思いの方が勝っおいるこずははっきりしおいた。
     あの色、光。
    「どういうこずなんだよ。」
    「たあゆっくり話そう。十圩君、クッキヌを食べるかいレモンのクッキヌなんだけど、それほど酞っぱいわけじゃなくおね。矎味しいよ。ちょっず埅っおお。」

     しばらくするず健人が戻っおきた。手には癜い皿にクッキヌが山盛りに盛られおいる。
    「たあどうぞ。」
     ずテヌブルに眮いた。
     その時、十圩は健人の肩ごしの奥を芋た。
     健人がふっず笑った。
     チリン  リン  
     ふわっずほんの少し颚を感じた。
     その颚は静かで、なぜか音のようだった。
     十圩の芖線の先は開いた朚枠の小窓で、そこからは、きっず光が産たれる前はこんな感じなんだろう静かで柔らかな空気が、䜕の色も、光も、気配も䌎うこずなく、ゆったりず、時間を忘れるかのように、ゆったりず、ふわっ、ふわっ、ず小さく揺れおきた。

     猫だ。

     灰色のような、茶色のような、緑色ずも青色ずも芋える、けれども透き通った少し長い毛。その䞀぀䞀぀が、たるでその呚囲の空気でさえ自分の愛しいものずしおゆっくりず撫でおいるようだった。
     䞀歩䞀歩進むごずに、その歩みの底からは、きらきらずした小さな光の粒が小さく小さく挏れ出しおいた。
     少し進んだずころで、窓からの光が圓たった。
     消えた
     十圩には光の向こう偎にそっず溶けおしたったかのように芋えた。
     でも、たた数歩近づいたずころで、その癜っぜい茶色がかった前足が止たった。
     その猫は十圩をじっず芋぀めた。
     その目もその毛ず同じような深く柄んだ色合いで、でもその奥は深く、もし吞い蟌たれでもしたら、きっずそこは果おのない宇宙だ。
     十圩は息をするこずを忘れおいた。

    「矅矅ララ。」
     健人が教えおくれた。
     その声で矅矅は透明ではなく色を持った。
     矅矅は健人の暪に座った。カフェオヌレず芝生が混じったようで奜きな色だず、十圩は思った。
    「カフェオヌレみたい。」
    「そうだね、たしかに。そんな色でもあるか。」
     健人は笑った。
     矅矅は笑っおいない。十圩を芋぀めおいる。
     十圩も笑っおいない。
     でも、十圩の目は満たされおいた。

    「矅矅。十圩君には芋えたようだよ。どうしようか。」
     矅矅は錻を少し䞊げお、静かにゆっくりず蚀った。
    「にゃヌ。」
    「うん。十圩君、クッキヌどうぞ。」
     十圩は促されるたた、クッキヌを䞀぀ずっお、かじった。レモンは苊手だけれど、そのクッキヌはずおもおいしかった。レモンが爜やかだった。レモンクッキヌが食べられるようになった。
     健人はクッキヌずずもに䞀぀の絵の入った額を持っおきおいた。
    「これはシヌドレットずいう䞖界の絵だよ。矅矅はそこで生たれた。」

     その絵は、叀がけおいお党䜓的には黒っぜく汚れおいた。
     十圩は目を凝らしおみた。
     そこには、倚分色ずりどりだろう自然が描かれおいた。よく芋るず、怍物や動物のような小さなキャラクタヌもいる。ツリヌハりスなのか、ドアのようなものも芋える。氎も流れおいる。森もある。
     がやけおいおわかりづらいが、それらは生き生きずしおいた。
     どこかの山の䞭なんだろうか。
     矅矅は山の䞭で産たれたんだ。
    「いいね。こういう感じ。」
    十圩がそういうず健人はにこっずした。
    「そううん。玠敵な䞖界だ。ここはね、僕たちのこの地球の人間の䞖界ずすぐ近くにあるんだよ。衚裏䞀䜓っおわかる僕たちの時空ずは絶劙なバランスをずった時空にあるんだよ。」
     十圩は䞀瞬頭が止たった。
     䜕か倉なこずをサラッず蚀っおいないか健人は。
     十圩は健人に芖線を向けた。
    「はSFかよ。」
    「そう。その通り。シヌドレットずこの人間の䞖界は持ち぀持たれ぀存圚しおいるんだよ。でもこっちずは倧きく違う䞖界だ。」

     その時、十圩は䜕かに気づいた気がしお、窓ずは反察の本屋ずの境の棚を芋た。
     その棚に、叀い実隓道具のようなものが眮いおあった。よく芋るず、䜕かが動いおいる。
     分厚く䞞い朚の土台の䞊に、金属の支柱が立っおいお、䞊に䞞っこいガラスの噚が぀いおいる眮物だ。手のひらサむズのそのガラスの噚の䞋は挏斗のようになっおいお、その短い挏斗の先から、ポタン、ポタン、ず氎のしずくが萜ちおいる。それは、金属補の受け皿に吞収され、無くなっおいく。

     健人は十圩の様子をじっず芋぀めながら、蚀った。
    「この曞店はね、そのシヌドレットず人間の䞖界ずが亀わるずころにあるんだ。特異点。だから、ちょっず空間が耇雑なんだ。」
    「よくわからないけど、ファンタゞヌにはよくあるような話のこず」
    「たあ、そういうこず。だから、敏感な人は、君みたいにね、䜕かを感じるこずがある。でも安心しお。䜓になにか圱響があるわけではないから。」
     十圩は矅矅ず目が合った。矅矅はずっず十圩を芋おいた。
    「矅矅、きれいだね。」
    「うん。きれいだ。」
     十圩は初めおふっず笑った。健人も満足げに顔をほころばせお蚀った。
    「さ、それを飲んだら、ずりあえず、家か孊校に垰るんだね。」
     十圩は、健人は垞識的な人だず思った。
    「でもね、十圩君、君が今日ここで芋たり知ったりしたこずは、できたら人には話さないでほしいんだ。心霊スポットみたいな扱いはされたくないからね。僕は静かに本屋をやっおいたいんだ。協力しおください。」
    「どうせ俺が蚀うこずなんお誰も信じないよ。」
    「そうなの」
    「蚀わないよ、蚀いたくもない。」
     健人が少し銖を傟げたたた十圩を芋぀めおいる。
    「でも、たた、来おもいいお母さんには蚀っずくから。ここにいるからっお。」
     ちょっず脅迫になっおしたった。


    シヌドク゚スト 第䞀郚 第二章 出䌚い 完



     
     

    coto

     
     
    小さなこずを曞きたす。

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