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社長の生産性がAIで5倍になるワケ。手放したのは“作業”の8割でした

    「社長の生産性がAIで5倍になる」。そう言うと、たいてい少し疑わしそうな顔をされます。でも中身は単純です。社長が5倍速く動けるようになるのではありません。社長がやらなくていい仕事を、8割手放すだけの話です。生成AI活用顧問として277社の経営者とご一緒してきて、いちばん効いたのはツールの導入ではありませんでした。社長の1日の中身を「作業」と「判断」に仕分けること。それだけで、時間の使い道が変わります。今日はその手順を、隠さず全部お話しします。

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    なぜ「社長こそAI」なのか

    AI導入のご相談をいただくとき、最初に出てくる言葉はだいたい決まっています。「まず現場から入れたい」。気持ちはよく分かります。人手が足りないのは現場ですし、社長ご自身は「自分は最後でいい」と思っていらっしゃる。

    ただ、私が277社を回ってきて分かったのは、現場から入れた会社ほど半年で止まる、ということでした。理由は三つあります。

    一つ目は、社長がAIの手ざわりを知らないと、投資の判断がぶれることです。使ったことのないものに、いくら払うか、どこまで任せるかは決められません。稟議が上がってきても、良し悪しの基準が自分の中にないので、判断が「他社もやっているらしい」に寄っていきます。現場は社長の迷いを敏感に読み取ります。

    二つ目は、時間単価です。同じ1時間を空けるにしても、社長の1時間と、事務の方の1時間では、その後の使い道がまるで違います。社長の1時間は、そのまま商談や意思決定に振り替えられる。だから同じ削減でも、返ってくるものが桁で変わります。

    三つ目が、いちばん実務的です。社長の仕事には「自分一人で完結する作業」が異様に多い。メールを打つ、資料の骨子を考える、会議の議題を並べる、数字を突き合わせる。どれも稟議も引き継ぎも要りません。つまり、明日の朝から一人で変えられるのです。現場の業務改善は関係者の合意が要りますが、社長の机の上は社長の裁量です。いちばん速く動かせる場所が、いちばん後回しにされている。

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    夜9時を過ぎた社長室で、会議のメモを打ち直している経営者の背中を、私は何度も見てきました。日中は人と会い、夜は書類に埋もれる。それを「経営者だから仕方がない」と呼んでしまうと、そこで話が終わります。仕方がないのではなく、仕分けをしていないだけでした。

    ある製造業の社長の、ふつうの一日

    ここからお話しするのは、私が支援してきた複数の会社で起きた出来事を、1社のモデルケースとして再構成したものです。特定の1社の記録ではありません。ただ、細部はどれも実際に見聞きした光景です。

    舞台は、山あいの町にある金属部品の製造業。従業員80名ほど、二代目の50代の社長です。ここではT社長とお呼びします。

    T社長の一日は6時20分に始まります。7時10分には会社に着いて、誰もいない事務所で前日の夜に届いたメールを開く。ここが唯一の静かな時間だと、ご本人がおっしゃっていました。取引先からの見積依頼が二件、材料商社からの値上げ通知が一件、業界団体の案内が三件。返信を書き始めると、すぐ8時の朝礼になります。

    朝礼のあとは現場を一周して、前日の不良の原因を聞く。10時に外注先の社長が来て、来月の生産枠の相談。11時に銀行の担当者から電話が入り、来週の面談の日程が決まる。この時点でT社長の手元には、書きかけのメールが四通と、まだ手をつけていない見積が二件残っています。

    昼は近所の食堂で外注先の社長と一緒。戻ってきて13時半から、見積の数字合わせ。図面を見ながら材料費と工数を積み上げていく作業で、これが一件で40分かかります。15時、経理から月次の試算表が上がってきて、前月との差を突き合わせる。数字そのものは経理が出してくれますが、なぜその差が出たのかは、現場を知っているT社長にしか埋められません。だから毎月、この突き合わせだけは自分でやってきた。16時、幹部会の議題を紙に書き出す。誰が何を報告するのか、順番はどうするのか、前週の宿題のうち何が返ってきていないのか。この紙を書くのに、いつも一時間近くかかっていたそうです。18時、現場が上がったあとの工場を見回り。

    そして19時を過ぎてから、T社長はようやく「自分の仕事」に取りかかろうとします。新規の開拓先をどうするか。息子をいつ現場から外して経営側に付けるか。老朽化した第二工場を建て替えるのか、直して使うのか。どれも会社の先を決める話です。

    けれど、その時間には、たいてい力が残っていません。気がつくと、昼間の会議で走り書きしたメモを清書している。21時半、電気を消しながら、T社長がぽつりと言いました。

    「うちで、いちばん作業をしている人間が、私なんですよ」

    冗談めかした言い方でしたが、あとで伺うと、その一週間前に息子さんから「父さんはいつ経営してるの」と言われていたそうです。工場を継がせるつもりで現場に入れた息子から、そう見えていた。堪えたとおっしゃっていました。

    私がT社長と初めてご一緒したのは、その翌週でした。応接室に通されると、机の上に決算書と、手書きのメモが何枚も広げてありました。翌週の銀行面談の準備です。数字はそろっている。けれど、それをどういう順番で、どう説明するか。そこが決まらない。「これ、いつも二日がかりなんです」とおっしゃいました。

    私は、パソコンを開いてもらって、こう申し上げました。「資料を作らなくていいので、いま私に説明するつもりで、そのまま話してみてください」。

    T社長は少し戸惑っていました。「話すだけでいいんですか」と二度聞かれました。キーボードで打つのが仕事だと思っていた方に、しゃべってくださいと言うのは、案外ハードルが高いのです。マイクのボタンを押して、T社長は三分ほど話しました。売上は横ばいだが受注の中身が変わってきていること、大口が一社細って、代わりに小ロットが増えたこと、そのぶん段取り替えが増えて粗利が落ちたこと。話し言葉のまま、「えー」も「あれですね」も混じったまま、順番もばらばらでした。

    それをAIに渡して、面談で話す骨子に組み直してもらいました。返ってきたのは、冒頭で何を伝えるか、数字の増減を外部要因と自社の打ち手にどう分けて説明するか、担当者から何を聞かれそうか、そこにどう答えるか。七分後のことです。しかも、手元のメモに入っていなかった項目には【要確認】と印が付いていました。設備の稼働率と、来期の受注見込みの二つです。どちらも、これまでの面談で必ず聞かれていた数字でした。

    T社長は、しばらく黙って画面を見ていました。それから、こう言いました。

    「これ、私が二日かけてやってたやつです」

    正確には、二日ぶんの夜です。日曜の夜に決算書を開いて、月曜の夜に書き直す。それを四半期ごとに、十年以上続けてきたとおっしゃいました。奥様には「また日曜に机に向かってる」と言われ続けていたそうです。

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    このとき、T社長が驚いたのは「AIが賢い」ことではありませんでした。ご本人の言葉を借りると、驚いたのは「自分がやっていた仕事の正体」だったそうです。二日かけていたのは、考える作業ではなかった。頭の中にすでにあるものを、伝わる順番に並べ替える作業だった。それを、決算書とにらめっこする時間だと思い込んでいた。

    「じゃあ、他にもあるかもしれませんね」

    T社長がそう言って、机の上の書類の山を見回したところから、私たちの棚卸しが始まりました。

    社長の仕事を棚卸ししたら、8割が“作業”でした

    翌週、私はT社長に「一週間、やったことを全部メモしてください」とお願いしました。きれいに書く必要はなく、スマホの音声メモで構いません。溜まったものを二人で並べ替えたのが、その次の訪問日です。

    仕分けの基準は一つだけにしました。「これは、手順を一度書き出せば、自分以外でも同じ結果が出せるか」。出せるなら作業、出せないなら判断です。値決め、人の配置、投資の可否、どの案件を優先するか。ここは社長にしか決められません。逆に、メールの下書き、議事録の清書、資料の骨子づくり、数字の突き合わせ、会議の段取り。これらは全部、手順の問題でした。

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    一週間で拾えた項目は47件。そのうち作業に分類されたのが38件でした。割合にして約8割です。この8割という数字は会社によって振れます。営業主体の会社ならもう少し低く、管理業務を社長が抱えている会社ならもっと高い。私が見てきた範囲では、だいたい7割から8割のあいだに収まります。

    この仕分け、実は一人でもできます。T社長が最初に使ったのが、次のプロンプトです。夜、車の中や帰り道で、その日やったことを思い出すまま三分ほど話しかけるだけ。文章にしようとしないのがコツで、順番も言葉づかいもばらばらのままで構いません。

    あなたは、中小企業の経営者に伴走する経営コンサルタントです。
    私は従業員【約80名】の【金属部品製造業】の社長です。
    これから、私が今日一日でやったことを、思い出した順にそのまま話します。
    順番も言葉づかいもばらばらですが、整理せずに聞き取ってください。
    
    【ここに今日やったことを、そのまま話す/貼る】
    
    上記を、次の手順で仕分けてください。
    1. 私がやったことを、粒度をそろえて1行ずつの項目に分解する
    2. 各項目を「判断」「作業」のどちらかに分類する
       判断=私が決めなければ前に進まないもの(採否・金額・人事・優先順位)
       作業=手順を一度書き出せば、他の人やAIでも同じ結果を出せるもの
    3. 「作業」に分類したものを、さらに
       「AIに任せられる/人に任せられる/今はどちらも難しい」に分ける
    
    出力は、次の表1つにしてください。
    | 項目 | 判断/作業 | 所要時間の推定 | 任せ先の候補 | そう判断した理由 |
    
    表のあとに「明日から手放せる上位3つ」を、理由を1行ずつ添えて挙げてください。

    三日も続けると、同じ項目が何度も出てきます。毎日出てくる作業が、いちばん手放す価値のあるものです。T社長の場合、それが「メールの下書き」と「会議の段取り」でした。

    AIに任せる5つのレーン

    棚卸しが済んだら、次は行き先を決めます。手放す先を毎回考えていると続かないので、私はいつも五つのレーンに分けてお渡ししています。

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    レーン1 メール返信のドラフト

    社長のメールは、量ではなく重さで疲れます。値上げの通知にどう返すか、断りをどう書くか、取引先の担当者交代にどこまで踏み込むか。一通あたり十分でも、判断が挟まるぶん頭が消耗します。

    ここでAIに任せるのは「文章を書くこと」ではありません。任せるのは、返信の選択肢を並べさせることです。届いたメールを貼って、「この相手に対して取りうる返し方を三通り、それぞれのトーンと、相手がどう受け取るかを添えて」と頼む。強め、中立、含みを持たせる。三つ並ぶと、自分がどれを選びたいかは五秒で分かります。あとは選んだものを自分の言葉に直すだけです。

    T社長は、この使い方を覚えてから、朝の返信時間が四十分から十分になったとおっしゃっていました。速くなった理由は、タイピングではありません。「どう返すか迷っている時間」が消えたからです。社長のメールが遅れるのは、書くのが遅いからではなく、決めかねているからでした。

    もう一つ、思わぬ効果がありました。返信が速くなったことで、取引先から「相談しやすくなった」と言われるようになった。値上げの打診も、以前は正式な文書で来ていたのが、その前の段階でメールが入るようになったそうです。社長の返信が二日遅れると、相手はそのぶん早く別の手を打ちます。返信速度は、思っているより営業に直結しています。

    なお、送る前に自分の言葉に直す工程は省かないでください。そのまま出すと、読んだ相手にはすぐ分かります。AIに作らせるのは選択肢であって、社長の声ではありません。

    レーン2 議事録・記録と、その手前の段取り

    議事録が重いのは、書く作業そのものより、その会議が散らかっているからです。散らかった会議からは、散らかった記録しか出てきません。だから私は、記録の自動化より先に、会議の設計をAIに手伝わせることをおすすめしています。

    T社長の幹部会は毎週月曜の90分でしたが、実際には報告が七割を占めていて、決まらないまま次週送りになる議題が毎回ありました。次のプロンプトを日曜の夜に一度通すようになってから、月曜の会議は60分で終わるようになりました。

    あなたは、経営会議のファシリテーターです。
    私は【金属部品製造業・従業員約80名】の社長で、
    【毎週月曜9時/90分/出席者6名(製造・営業・管理・購買の責任者+総務+私)】
    の幹部会を主催しています。
    今回の議題候補は次の通りです。順番も重要度もばらばらのまま書いています。
    
    【ここに議題の羅列を貼る/話す】
    
    次の3つを作ってください。
    1. 時間配分付きのアジェンダ
       各議題に「報告/議論/決定」のラベルと、担当者、想定時間を付ける
    2. この会議で「決めること」だけを抜き出したリスト
       決めないものは次回送りと明記する
    3. 出席者へ事前に配る300字以内のメモ
       何を読んで、何を考えてきてほしいかを書く
    
    制約:
    - 90分に収まらない場合は、収まるように議題を削り、削った理由を書いてください
    - 報告だけで終わる議題は、会議ではなく文書で済ませる候補として分けてください

    事前メモが配られると、会議の入り口の空気が変わります。全員が同じ前提で座っているので、説明から始めなくていい。議事録も、決まったことだけを書けば済むようになります。

    最初にこれを回したとき、T社長がいちばん驚いたのは「削られた議題」だったそうです。毎週入れていた在庫状況の報告が、文書で済ませる候補として外に出された。理由は「決定事項が発生しない議題だから」。言われてみればその通りで、ただ長年やっていたので誰も疑わなかった。会議の議題は、増えることはあっても減ることがありません。外から一度見てもらうだけで、削れるものが出てきます。

    記録そのものについては、録音した会議の書き起こしから決定事項だけを抜き出させる使い方もありますが、順番としては後です。散らかった会議を丁寧に記録しても、読み返さない紙が増えるだけでした。

    レーン3 資料の下ごしらえ

    社長がつくる資料は、外向きのものがほとんどです。銀行、取引先、株主、幹部。共通しているのは、数字そのものより「その数字をどう読ませるか」で時間が溶けることです。

    T社長が最初に手放したのが、まさにこれでした。決算と足元の数字をメモにして渡すと、面談で話す順番が返ってくる。二日が三十分になりました。ここで大事なのは、AIに数字を作らせないことです。手元にない数字を推測で埋められると、面談の場で崩れます。だからプロンプトの中で、はっきり禁じておきます。

    あなたは、中小企業の資金調達に詳しい財務担当役員です。
    私は【金属部品製造業・従業員約80名】の社長で、来週、取引銀行の担当者と面談します。
    以下は、直近の決算と足元の数字についての私のメモです。
    数字の抜けや、言葉の不正確さがあります。
    
    【ここに決算の要点・足元の売上/受注/資金繰りのメモを貼る】
    
    このメモから、面談で話す説明ストーリーを作ってください。
    1. 冒頭2分で話す要約(何が起きていて、何をしようとしているか)
    2. 数字の説明(増減の理由を、外部要因と自社の打ち手に分けて)
    3. 想定される懸念と、それに対する現時点での答え
    4. 次の四半期に約束できること/まだ約束できないこと
    
    制約:
    - メモにない数字は、推測で埋めずに【要確認】と明記してください
    - 前向きに見せるための言い換えはしないでください
    - 最後に、面談前に私が手元に用意すべき資料を箇条書きで挙げてください

    【要確認】が並んだ紙は、そのまま経理への依頼書になります。資料づくりが、資料集めの指示に変わる。ここが地味に効きます。

    同じ形は、取引先への値上げ交渉の説明にも、幹部への方針共有にも使えます。変えるのは冒頭の役割設定と、相手が何を心配しているかの部分だけです。銀行は返済の確実性を、取引先は供給の安定を、幹部は自分の部署がどうなるかを気にしている。相手の関心事を一行入れ替えると、同じ数字から違うストーリーが出てきます。

    一度うまくいったプロンプトは、メモ帳に貼って残しておいてください。T社長は今、四つを使い回しています。毎回考え直すのをやめた時点で、これは仕組みになります。

    レーン4 調査・下調べと、判断の壁打ち

    新しい設備を入れるか、値上げをどこまで通すか、人をどう配置するか。社長の判断は、材料が足りないまま下されがちです。周りに相談できる相手がいない、というより、相談すると話が漏れる。だから一人で抱えることになります。

    ここでAIに任せるのは、答えを出すことではありません。見落としを突かせることです。同意してくる相手はいくらでもいますが、社長に足りないのは反対意見のほうでした。

    あなたは、私の社外取締役です。
    私に同意することではなく、私が見落としている点を指摘することが仕事です。
    私は従業員【約80名】の【金属部品製造業】の社長で、いま次の意思決定で迷っています。
    
    【ここに迷っている意思決定の内容と、現時点で分かっている数字・背景を貼る/話す】
    
    次の順番で返してください。
    1. 私の説明から読み取れる「前提」を箇条書きにする
       (私が無意識に置いている仮定も含める)
    2. 取りうる選択肢を3つ以上挙げ、それぞれの
       「最良の結果」「最悪の結果」「撤退の判断基準」を書く
    3. 私の説明に出てこなかったが、この判断に効くはずの論点を挙げる
    4. 最後に、私に確認したい質問を5つ、重要な順に並べる
    
    結論を私の代わりに出さないでください。
    私が決めるための材料を整えることに徹してください。

    T社長は、第二工場の建て替えでこれを使いました。返ってきた質問の五番目が「その設備は、いまの受注構成が三年続く前提で選んでいませんか」で、そこで手が止まったそうです。大口が細って小ロットが増えている最中に、大量生産向けの設備を選ぼうとしていた。数字は全部見ていたのに、設備の話と受注の話が頭の中でつながっていなかったのです。結果として建て替えは一年見送り、まず段取り替えの時間を測ることから始めました。判断が変わったのではなく、判断の順番が変わりました。

    この使い方には、一つ約束事があります。AIの答えを結論として採用しないこと。あくまで、決める前に自分の穴を探すために使います。返ってきた選択肢の中から選ぼうとし始めたら、それは判断を渡してしまっている合図です。そのときは画面を閉じて、幹部か、社外の誰かと話してください。

    レーン5 数字の整理

    最後が数字です。月次を待ってから動くと、打ち手が一か月遅れます。かといって、社長が毎週エクセルを開いて突き合わせるのは、いちばん割に合わない使い方です。

    T社長は、週末に売上と粗利と入金のメモを箇条書きで残して、それを月曜の朝に一度通すようにしました。書式はそろっていなくて構いません。そろえる作業ごと渡してしまいます。

    あなたは、私の会社の管理部長です。
    数字を良く見せる必要はありません。危ない兆候を先に教えてください。
    私は【金属部品製造業・従業員約80名】の社長です。
    以下は今週の売上・粗利・入金についての私のメモです。書式はそろっていません。
    
    【ここに今週の売上・粗利・入金・受注のメモを貼る】
    
    次の形式で返してください。
    1. 今週の要点を3行
    2. 表: | 項目 | 今週 | 前週 | 増減 | ひと言コメント |
    3. 「要注意」— 数字そのものより、その動き方が気になる点を3つまで(理由付き)
    4. 「来週、私が誰に何を聞くべきか」— 相手と質問文をセットで5つ
    
    制約:
    - メモにない数字は作らず、【データなし】と書いてください
    - 良い数字と悪い数字を、同じ熱量で書いてください

    「誰に何を聞くべきか」が出てくるのが、このプロンプトの肝です。数字を眺めて終わらず、月曜の午前中の行動が決まります。T社長の場合、ここから「入金の遅れている一社に、月末を待たずに電話する」が出てきた月がありました。結果として、その取引先の資金繰りが厳しくなっていることを一か月早く知った。早く知れば、取れる手が増えます。

    もう一つ、【データなし】と書かせる指定を外さないでください。数字を埋めてくれるAIは親切に見えますが、経営で怖いのは、間違った数字ではなく、間違っていることに気づかない数字です。空欄のまま返ってくるほうが、社長にとっては役に立ちます。

    五つのレーンは、全部を同時に始める必要はありません。棚卸しで毎日出てきた作業に近いレーンから、一つだけ手を付ける。T社長も、最初の三週間はレーン1しか使っていませんでした。一度に五つ始めた会社より、一つずつ増やした会社のほうが、半年後に残っています。

    週50時間の雑務が、週10時間になりました

    半年後、T社長と時間の使い方をもう一度測りました。一例としてご紹介します。

    T社長の一週間は、休日出勤も入れておよそ60時間です。そのうち、机に向かっている時間が以前は50時間ほどありました。メール、資料づくり、議事録、数字の突き合わせ、会議の段取り。それが10時間前後まで減りました。作業がなくなったわけではなく、下ごしらえをAIに渡して、社長は仕上げと決定だけを担うようになった結果です。

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    浮いた40時間がどこに行ったか。ほとんどが、人と会う時間になりました。訪問件数は月8件前後から、月20件を超えるようになった。既存のお客様のところにも、用がなくても顔を出せるようになった。息子さんと二人で工場を歩く時間も、週に一度は取れるようになったそうです。

    「生産性が5倍」と申し上げているのは、ここを指しています。T社長が5倍速く働いているのではありません。社長にしかできない仕事に使える時間が、10時間から50時間に増えた。同じ一日の中で、価値を生む時間の比率が変わったということです。

    この数字は、会社の規模と業種で当然変わります。営業を幹部に任せている会社なら伸び方が違いますし、社長がすでに作業を手放している会社なら、そもそも50時間もありません。真似をしても同じ結果にはなりません。ただ、仕分けをすれば必ず何かは出てきます。出てこなかった会社を、私はまだ見たことがありません。

    社長に残す仕事は、3つでいい

    私が経営者の方にお伝えしているのは、社長の手元に残すのは三つだけでいい、ということです。

    会う。決める。売る。

    この三つに共通しているのは、責任がついて回ることです。誰と組むかを決める、値段を決める、人を配置する、頭を下げる。どれも、間違えたときに引き受けるのが社長だから、社長がやる意味があります。逆に言えば、責任のついていない仕事は、社長が抱えている必然性がありません。

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    いまT社長は、朝7時10分に会社に着くところまでは以前と同じだそうです。違うのは、その時間にメールを開かなくなったこと。かわりに、湯を沸かして、工場の窓を開けて、その日会う相手のことを考えている。

    「この時間が戻ってきたのが、いちばん大きかった」

    そうおっしゃったとき、私は、社長の生産性というのは結局これなのだと思いました。処理量ではなく、朝いちばんに何を考えているか。それが会社の向かう先を決めています。

    明日の朝、最初の30分だけ

    全部を変える必要はありません。仕組みを整えるのも、後でいい。

    明日の朝、最初の30分だけAIに任せてみてください。おすすめは、この記事の前半でご紹介した棚卸しのプロンプトです。昨日一日やったことを、思い出す順に三分だけ話す。文章にしようとせず、話し言葉のままで構いません。返ってきた表を眺めて、「作業」の欄に何が並んでいるかを見る。

    たぶん、自分でも意外なものが並んでいます。そして、そのうちの一つか二つは、明日から手放せます。

    そこから先は、一つずつでいい。一つ手放すと、次に手放せるものが見えてきます。半年たったころ、朝の30分が自分のものに戻っているはずです。

    社長の生産性は、頑張りでは上がりません。何を手放したかで決まります。

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    株式会社コミクス 代表取締役

    鈴木章裕


     
     
    AI活用のご相談→ https://www.comix.co.jp/contact/ 株式会社コミクス代表取締役。生成AI活用支援実績304社(2026年9月末現在)。営業・資料作成の効率化、AIエージェント導入を支援。何から始めるか迷っている段階でもご相談ください。

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