
【第四章】 6歳の壁と限界
秋が深まる頃、長女の小学校入学に向けた準備が始まっていきました。
だけど、その時に、私たちの前に大きな壁が立ちはだかりました。
今で言う「6歳の壁」でした。
私たちは朝7時には家を出なければ職場に間に合いません。一方、小学校の集団登校は7時40分頃でした。小学校1年生になる長女を家に一人残して仕事へ行くことはもちろんできません。
その40分が埋められませんでした。
たった40分。
でも私たちにとっては、どうしても越えられない40分でした。
主人は役所へ相談に行って、何とか登校前の時間帯に預かってもらえないか掛け合ってくれました。しかし、最近ニュースで取り上げられていましたが、当時は早朝から小学生を預かってくれる場所はありませんでした。
主人はよく言っていました。
「幼稚園では朝7時から預かってもらえるのに、どうして小学校に上がった途端に預かってもらえなくなるんだろう。」
何度も役所へ相談しましたが、返ってくる答えはいつも同じでした。
親と同居しない核家族が増えていた時代でしたが、この問題は私たちにとってあまりにも大きな壁でした。
私はその頃には、もう薄々気づいていました。
そして何より、疲れていました。
二人の幼い娘を育てながら正社員として働き続ける毎日に、私は限界を感じていました。
ママ友からもよく言われていました。
「小学校に入ると、行事も増えるし、勉強も見てあげないといけない。幼稚園の頃より、むしろ大変になるよ。」
その言葉を聞くたびに、私は不安になっていました。
長女の異変も、6歳の壁も、私が仕事を辞めることで解決できるのなら、それは仕方ないのではないかと思うようになっていました。
職場には、私と同じように小さな子どもを育てながら病棟や外来で働く看護師さんがたくさんいました。だけど、その多くは親と同居していました。
一方で、私たちと同じように夫婦だけで子育てをしていた同期は、さまざまな理由で次々と職場を離れていったり、パートへと切り替えたりしていました。
「お互いできる限り頑張ろうね。」
そう励まし合っていた仲のいい同期も、気づけば職場からいなくなっていました。
その頃にはもう、自分も同じ道を選ぶ日が近いことを、どこかで感じていたのかもしれません。
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