
貴方の死を後押しします。 12
「Sはどうしました?」
引き取りに来た男性にモモは尋ねた。
『亡くなりましたよ。知っているでしょう』
情報としてはインプットしている。
けれど、モモにはそれが理解出来なかった。
「悲しいです」
男性は驚いた。
『感情が芽生えている…?』
「感情か?と聞かれたら分かりません」
Sはベビーカーの男の子を守り切り、命を落とした。
事故現場には献花台が用意され、新聞やニュースで報道を知った人も
駆けつけ、涙を流した。
やがて、お地蔵様が立てられた。
熱心に手を合わせる親子の姿がある。
花も、お供えも途切れることはない。
時には、お寿司と天ぷらも見受けられる。
モモの記録が役立った。
「おじいちゃん」の事は、町の英雄として
人々の記憶に残り続けるだろう。
施設に戻された後。
試験的ではありながら
Sのデータはモモから消去されなかった。
「とても勇敢な最期でしたが、生きていて欲しかったです」
『…間違いないよ…』
「奥さまのところに行ったんでしょうか」
『分からない』
今日も、安楽死の相談電話は後を絶たない。
みんな事情を抱えている。
「生きたい」ゆえに「死にたい」人もいる。
疲れてしまった人もいる。
怯えている人も。
抱えきれない後悔も。
悲しみも。
誰にもその気持ちを責めることは出来ない。
ここは、そんな施設なのだから……。
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