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【エッセイ】傘 風まかせ文芸部 

    小杉かほり

    「こちらで日傘をさしていると、変な女だと思われるんですよ」

    カナダのバンクーバーを旅したとき、日傘をさした日本人ガイドさんのその言葉に興味を惹かれた。
    向こうの方から現地の男性が、どこかニヤニヤしながらこちらを見ている気がしたからだ。

    日本の夏には欠かせない日傘が、海を渡った途端に「奇異の目」に晒される。このカルチャーショックが、私の傘に対する見方を変えた。

    後で調べてみると、現代の欧米やオーストラリアでは日傘を常用する文化はほとんどないらしい。
    太陽の光を浴びることこそが健康やステータスの証であり、せっせと日陰を作るのはアジア圏、特に日本ならではの光景なのだという。

    日本ではお洒落だけでなく実用的な「晴雨兼用」まで進化しているのに、世界は広いものだと思った。

    しかし、歴史を巻き戻してみると、かつての西洋でも日傘は特別な存在だったはずだ。

    クロード・モネが描いた『散歩、日傘をさす女性』。あのキャンバスの中の女性は、今では見られないほどエレガントに日傘をまとっている。

    映画『マイ・フェア・レディ』でオードリー・ヘップバーンが演じたイライザも、気品あふれるパラソルを手にしていた。

    空から舞い降りた『メリー・ポピンズ』の相棒も日傘だった。かつての欧米の女性たちにとって、日傘は美しさと格式の象徴だったのだ。

    かつて西洋の貴婦人たちが愛したエレガンスが消え、今では日本の街角で「晴雨兼用」として独自の進化を遂げている。

    傘という一本の骨組みをとおして見える、時代と場所による「美しさ」や「価値観」の移り変わり。
    バンクーバーの青空の下で感じたあの気恥ずかしい視線は、私に世界の多様性と、ファッションが持つおもしろさを教えてくれる忘れられない記憶となった。


    ※iさま、どうぞよろしくお願いします。


    #傘
    #風まかせ文芸部

     
     
     
    多趣味。読書、マンガ、国内・海外旅行、ゲーム・ガーデニングなど。 動物だったら犬派。 2025年春からnoteで書く事を始めました。 悲しいことやら何やらいろいろあって、何かをやってないと乗り越えられないと感じたからです。 noteではいろんなテーマの記事を書く予定です。

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