無人島でバレーボールに話しかけるように、僕はコードに話しかける。
お疲れ様です、ダンちゃんです。
今夜は、独り言の話をします。
深夜3時の独り言
誰もいないオフィスで、呟く
深夜3時。
誰もいないオフィスで、僕は独り言を言っていました。
「なあ、お前はどうしてそこで止まるんだ?」
相手は、モニターの隅に貼った付箋でした。 あるいは、ターミナルの点滅するカーソルでした。
40年エンジニアをやっていると、誰にも相談できない迷宮に放り込まれることがあります。
自分が書いたコードのはずなのに、全く別の生物が書いたように見える夜。 一行ずつ読んでも、なぜ動かないのかが分からない夜。 ドキュメントはなく、書いた人間は退職していて、世界中で自分一人だけがこのバグを知っている夜。
そういう夜に、僕は話しかけていました。
コードに。 カーソルに。 誰もいない空気に。
俯瞰して見れば、滑稽な光景です。 でも、正気を保つためには必要でした。
有料エリアでは、映画『キャスト・アウェイ』のウィルソンと、この独り言の関係を書きます。そして孤独を「欠落」ではなく「必要な設定」として使いこなす方法を書いています。
チャックとウィルソン
映画『キャスト・アウェイ』で、チャックは無人島に漂着します。
荷物の中にあったバレーボールに、顔を描きました。 「ウィルソン」と名付けました。 話しかけ続けました。
狂わないためです。
無人島で一人でいると、自分の思考が正しいのか間違っているのか、確認する方法がありません。誰かに話すことで、初めて自分の思考を外に出して見ることができます。
ウィルソンは答えませんでした。 でも、チャックは話し続けました。
深夜のオフィスで独り言を言っていた僕も、同じでした。
コードは答えませんでした。 でも、話しかけることで、自分の思考が見えました。
ラバーダックの本当の意味
エンジニアに「ラバーダック・デバッグ」という手法があります。
ゴム製のアヒルを机に置いて、コードの動作を一行ずつ説明する。 説明しているうちに、自分のミスに気づく。
なぜ効くのか。
相手に「説明する」という行為が、思考を強制的に整理するからです。
自分の頭の中だけで考えているとき、人間は「分かっているつもり」の状態で止まれます。 でも、誰かに説明しようとすると、「分かっているつもり」が崩れます。
「あ、今俺、矛盾したことを言った」
その瞬間に、バグが見えます。
脳内リソースの客観的デプロイ
エンジニアとして整理します。
独り言は、脳内のリソースを客観的視点へデプロイする作業です。
問題を頭の中だけで処理しているとき、思考は「主観モード」で動いています。 自分の思い込みや前提が、見えていません。
声に出すと、思考が「客観モード」に切り替わります。 自分の言葉を、自分の耳で聞く。 外から見た自分の思考が、見えてきます。
ウィルソンは、チャックの思考を映す鏡でした。 カーソルは、僕の思考を映す鏡でした。
ウィルソンを失った瞬間
映画で最も切ないシーンがあります。
ウィルソンが、波に流されるシーンです。
チャックは海に飛び込もうとします。 でも、届きません。
「ウィルソン!」
あの叫びは、バレーボールへの叫びではありませんでした。 4年間、無人島で唯一の「対話の相手」を失う叫びでした。
僕も似た経験があります。
長年使い続けたエディタが、あるバージョンアップで動作が変わった夜。 40年分の設定ファイルが、マシン移行で消えた朝。
「相棒」を失う感覚は、道具を失う感覚ではありませんでした。
孤独は設定である
若い頃、この孤独が怖かった。
誰かに助けてほしかった。 誰かと一緒に問題を解きたかった。
でも今は違います。
深夜のオフィスで、一人でコードに話しかけている時間が、最も純粋にシステムと向き合える時間だと知っています。
邪魔が入らない。 余計な会話がない。 自分の思考だけが、静かに動いている。
孤独は、欠落ではありませんでした。
創造のための、必要な設定でした。
チャックが無人島を離れた後、誰よりも強く生きていたように。
孤独の中で磨かれたものは、消えません。
深夜、誰もいない場所で独り言を言っているあなたへ。
それは正気を保つための、正しい方法です。
ウィルソンに話しかけ続けてください。
おやすみなさい。
ダンちゃん|思考と映画
noteで3年間0円だった失敗の全記録はこちらです。 →
完璧主義を手放せないエンジニアへはこちらです。 →
いいなと思ったら応援しよう!
難解作品の謎をPythonでデータ解析して、誰も答えを出せなかった問いに答え続けています😭 それでも有料記事は売れてない。次の食事の事はわからない。目の前の一食分のもやし(一袋30円)ください🙇