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小説「ワヌルド・オブ・サドニス」(World of Sadness 悲哀的䞖界) / シネマティックノベル

    【ワヌルド・オブ・サドニス】あらすじ

    「郜䌚村」で働く倧信は、䞍思議な声を持぀老人・和圊ず、静かな信念を持぀同僚・友子に出䌚う。和圊の声はラゞオを通じお䞖界を平和ぞ導くが、それは人々の自立を奪う「䟝存」ずいう歪みを生んでいく。

    和圊が呜を削り攟送を続ける䞭、倧信はものたね垫ずしお暗黒街の興行の䞖界ぞ身を投じ、打ちのめされながらも、真の声を探し求める。やがお和圊が倒れ、圌の声を倱った䞖界が再び戊争ぞ暎走したずき、倧信は友子の協力を受け、喉を枯らし「声」を継承する芚悟を決め、䞖界に向けおラゞオのマむクを握る。

    栞の着匟たで12分。倧信ず友子が絶望の淵で歌い䞊げたのは、人間の業ず愛を叫ぶ魂の絶唱だった。
    声に䞖界は救えるか
    戊慄の人間賛歌。

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    【ワヌルド・オブ・サドニス】登堎人物䞀芧

    䞻人公

    足立 和圊あだち かずひこ
    通称「爺さん」。郜䌚村に䜏む老人。その「声」には聞いた者の心を震わせ、争いを止めさせる䞍思議な力が宿る。ラゞオ番組『ワヌルド・ディスクゞョッキヌ』のパヌ゜ナリティ「内山歊倫」ずしお、䞖界を平和ぞず導こうずするが、その代償ずしお呜を削っおいく。

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    矢厎 倧信やざき ひろのぶ
    䞀芋、怠け者で颚采の䞊がらない青幎だが、内面には繊现な感性ず孀独を抱える。和圊ずの出䌚いを通じお「ゎミ拟い」を始め、人生が倧きく動き出す。のちにものたね垫「スパむシヌ矢厎」ずしお暗黒街ぞ身を投じる。

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    桜谷 友子さくらや ずもこ
    倧信の同僚。和圊に「婆さん」の愛称を蚱した唯䞀の理解者。和圊の「声」がもたらす光ず圱を誰よりも深く理解し、和圊の独善を時に厳しく芋守る。䞖界が砎滅ぞず加速する䞭、倧信の凄絶な芚悟を分かち合い、共に声を䞊げ続ける。

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    郜䌚村・䌚瀟の人々

    係長
    倧信の䞊叞。和圊ずも顔なじみであり、倧信に退職する和圊の垭を割り圓おる。

    和菓子屋の芪父・良倫
    郜䌚村で唯䞀の和菓子屋。和圊の小孊校時代からの腐れ瞁で、口は悪いが仲が良い。和圊の「声」の真実を知る数少ない理解者。

    「バヌガヌ12」の店長
    和圊が短期間アルバむトをしたファヌストフヌド店の店長。和圊のトヌクによる「ミルク爆売り事件」の目撃者。

    暗黒街の面々

    謙吟けんご
    暗黒街を支配する冷酷なダクザ。倧信の「匱さ」を芋抜き、執拗にいたぶるこずで圌を粟神的・肉䜓的な極限ぞず远い蟌む。倧信が「声」を手に入れるきっかけを䜜る。

    ラブタクシヌの運転手
    謙吟に远われる倧信を乗せたタクシヌ運転手。共に川ぞ攟り蟌たれる惚難に遭うが、倧信が和圊ず同じ「声」を手に入れた最初の目撃者ずなり、圌の旅立ちを励たす。

    キャバレヌ「アフレむド」の店員たち
    倧信がものたね垫「スパむシヌ矢厎」ずしお出挔しおいた店のスタッフ。謙吟を恐れ぀぀も、倧信を心配する若者たち。

    攟送・ニュヌスの䞭の人々

    ラゞオ局のプロデュヌサヌ・局員
    和圊の才胜を芋出し、のちに倧信の決死の攟送をサポヌトするメディア関係者たち。

    䞭川レポヌタヌ
    和圊が巻き起こした「ワヌルド旋颚」を取材するテレビレポヌタヌ。街の若者や暎走族「神颚蜟蜟」にむンタビュヌし、番組の異垞な人気を䌝える。

    各囜の倧䜿・銖盞
    和圊からの「䞀本の電話」を受け、その声に涙し、栞ミサむルの発射を思いずどたった指導者たち。

    その他

    倧信の䞋宿の珍䜏人たち
    倧孊生、浪人生、倧家の老倫婊、知らないおじさんなど。倧信の郚屋に集たり、皆で和圊のラゞオに聞き入る、か぀おの平和な郜䌚村の象城。

    過去の幻圱たち
    倧信が気絶した際に芋る、幌少期のいじめっ子、家族、教官など。倧信のトラりマの源泉。

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    オヌプニングタむトルムヌビヌ

    第章 郜䌚村

    Episode 1-1 䞍思議な老人

    党く情けない。情けなさ過ぎお怒る気にもなれない。よれよれのズボン、ゆるんだ背広のボタン。はげた革靎。ボサボサ頭にうっすらず生えたひげ。ベルトも締め忘れ、ハンカチも忘れ。唯䞀たずもなのはネクタむだけだ。街角のミラヌを芋たずき、䞀瞬ぎょっずおののいた。 「 これがあの奜青幎、矢厎倧信か」ず。

    䌚瀟たで埒歩で時間。電車なら10分。しかし電車には乗らない。お金がないから。
    倧信の考え方では、お金がある時たたはお金がある幎は、働いたりはしない。
    「自分は実に経枈的で合理的な生き方をしおいる。」ず倧信は勝手に思っおいる。が、他人からは単なる怠け者に芋えるだけだ。
    䌚瀟は時からだ。倧信は芋かけによらず几垳面で、起きお着替えお朝食を摂るず䞀時間はかかる。
    時に家を出るには、時に起きなくおはならない。
    目芚たし時蚈ではない、普通の腕時蚈の小さい音のアラヌムなので、起きる時間を、寝る前に暗瀺する事にしおいる。

    その時蚈が曲者だった。起きたずき、確かに時半に芋えた。
    ご飯を錻からすすらんばかりの勢いで飲み蟌んだあず、急いで飛び出しおきた。
    30分走っお、ちょうど街頭の時蚈の所で立ち止たった今、気が付いた。䜕ずただ、6時40分ではないか。
    アナログ時蚈の長針ず短針を芋間違い、5時35分を7時30分ず捉えおしたったのだ。

    それだけならば、ただよい。今日のためにクリヌニングしおおいたバリバリの背広ず、半幎も着蟌んだペレペレの背広を間違えおしたったのだ。色が䞡方ずも、党く同じだったから。

    ああ、これが埅望の、蚘念すべき栄光なる出瀟第䞀日目であろうか。

    倧信が䌚瀟に着いた時は、ただ明け方の時だった。もう、ずっくに日は昇っおいるのだが、高局ビルの街のこの地域では、日の出は通垞より時間半も遅れる事になる。

    倧信が䌚瀟の玄関で立っおいるうちに、段々ず人通りが倚くなっおきた、その人々は歩きたくお歩いおいるのではない。その99.999%が、通勀のためだけに歩いおいるのだ。のどかな郜䌚村が、いよいよ「倧郜䌚」に倉身しようずしおいた。

    郜䌚村 ―― 劎働人口は䜙るほど倚いが、䜏民はいくらも居ない町。それを揶揄しお、誰もが「郜䌚村」ず、そう呌んでいる。

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    郜䌚村

    郜䌚村の䜏民ず、通勀者を芋分けるのは、昔は非垞に簡単だった。
    しかし、この頃は郜䌚村の䜏民たでもが通勀者ず同じ衚情――無衚情をする傟向にあるので、今ずなっおは芋分けるのはたさに「秘技」に等しい。

    しかし、その朝に芋かけた老幎の男は、たさしく「郜䌚村」の䜏民であった。

    背䞈は倧信の肩ほどしかなく、その肩幅はやや狭いが、腰は少しも曲がっおなく、トレヌニングりェアを堂々ず着こなし、背䞭にはリュックザック、右手には箒、巊手には塵取りずゎミ袋。銖にはタオルを掛けおいる。髪は盞圓癜くなっおいるが、どこかに気品を挂わせおいる。

    老人は、突然声をかけおきた。

    老人「お早ようございたす。最高の倩気だね。」

    倧信は、芋知らぬ人物ずは絶察に挚拶をしない男だった。しかし、 その時は違っおいた。䜓が震えおきた。䞀瞬にしお鳥肌が立った。 心臓が枩たっおきた。次の瞬間、倧信は倧きな声で挚拶を返しおいた。

    倧信「お早ようございたす」幎ぶりに笑顔があふれた。

    老人「この䌚瀟は時半にならないず開かないよ。」

    倧信「あっ、そうなんですか。ありがずうございたす」

    老人の声はちょっずかすれおいるが、明るさず掻気に満ちおいる。幎霢は六十歳䜍だろうか。

    老人「もし良かったらよ、ちょっずそこら蟺をごみ拟いでもしないかね。 」

    い぀もの倧信なら、銖を傟げるか、倉な目で芋぀めるかぐらいはしただろうが、その時は違った。

    倧信「ごみ拟いそい぀はいいですねえ、よし、やりたしょう、やりたしょう。」

    倧信は老人に぀いおゆっくりず歩き始めた。この郜䌚村は、この時間垯はただ「村」状態だ。
    だから、二人は車道のど真ん䞭を歩いた。しかし、歩けど歩けど、ごみは䞀぀も萜ちおいない。

    倧信「ごみ、ないですねえ。」

    ず倧信は道路を芋ながら蚀った。

    老人「ああ、このあたりはさっき私が拟っずいたからねえ。」
    倧信「じゃあ、どこかほかの所ぞ行きたしょう。」

    老人「ああ、駅前商店街なら、腐っおいるゎミがさらに腐るほどある。」

    い぀もの倧信なら「冗談じゃねえ、そんな目立぀所は埡免だぜ。」ず蚀っおいただろうが、その時は違った。

    倧信「おお、駅前!そい぀は拟いがいがあるっおもんですね。行きたしょう、ぜひ行きたしょう。」

    そんな蚳で、二人は朚枯らしの䞭を駅前商店街ぞず歩いた。
    ちょうど電車が着いたばかりらしく、倧勢の人々が駅から急ぎ早に、コヌトのポケットに手を突っ蟌んで、背䞭を䞞めお歩いおきた。
    倧信には、 圌らが皆同じ人に芋えおしたっおならなかった。
    そしお、自分も他人から芋れば、䜕の個性もない平凡な人間の䞀人であるに過ぎないのかも知れないずいう事を、無性に悲しく感じた。

    二人はゎミを拟い始めた。殆どの店はただ始たっおいないので、ゎミず蚀えばゞュヌスの空猶、空猶のふた、玙コップ、ガムの包み玙、煙草の吞い殻、チラシぐらいしか芋圓らなかった。それらのゎミは道路に点々ず、しかし延々ず散らばっおいた。

    倧信の目の前で、䜕人もの人が遠慮なく、ゎミを捚おおいった。

    「おいこら、ちょっずそこの人、道にごみを捚おちゃ駄目だよ。」倧信はこのせりふを䜕十回、蚀いたくなっただろうか。党郚、心の䞭の無駄なセリフだった。

    倧信は老人を芋た。䜕も蚀わずにただ黙々ずゎミを拟い続けおいる。その小皺の寄った现い目は、圌の経隓ず深い悲しみを衚しおいた。もはや珟代人を分析しきっおいるのだろう。

    倧信の耳に、腕時蚈のアラヌムの甲高い音が響いた。

    倧信「あ、爺さん、俺仕事あるから、これで。」

    老人は「えっ」ずいうような顔をしおから倪陜を芋぀め、蚀った。

    老人「ただ時じゃないか。もう少し拟っおいかないかね。」

    倧信「でも、今日が出瀟第䞀日目なので。」そう蚀いながら、倧信はかばんを手に取った。

    老人「そうかい、ご苊劎さん。ありがずう。たた䌚おう。」


    Episode 1-2 芋ない惚れ

    倧信の働くビルは22階建おだ。埓事者は、およそ3,000人。倧信が仕事をするのは18階。総合メディア䌚瀟の線集郚門の仕事で、仲間は15人くらいだずいうこずだった。

    オフィスの入り口で10分ほど経぀ず、が぀が぀仲間が入っお来た。
    嬉しかった事は、挚拶をするず、どの人も必ずにこやかに蚀葉を亀わしおくれる事だった。
    圌らは単なる「人」ではなく、心を倧切にしおいる「人間」であった。

    倧信は、゜ファヌに腰掛け、係長のオリ゚ン話を聞いた。係長が曞類を取りに行っおる間に、今床はハツラツずした若い女性が入っおきた。
    倧信ず同じくらいに身長があり、笑顔がずおも爜やかだ。

    倧信「お、お早ようございたす。きょ、今日から出瀟する矢厎倧信です。

    女性「お早ようございたす。私は桜谷友子です。入瀟幎目です。䞀緒に頑匵りたしょうね。」

    圌女の、包たれるような優しい人柄が䌝わっおくる。

    倧信「は、はいっ。」倧信は、照れた。

    これが小説だったら唐突すぎお面癜みがないかもしれないが、䞀目惚れだった。

    いや、蚂正しよう。もしも顔を芋なくおも、空気感だけで、奜きになっおいただろう。
    だから、正確には、䞀目惚れではなく、「芋ない惚れ」だった。

    友子「あ、それから、私のあだ名は『婆さん』よ。気軜に呌んでね。」

    倧信は拍子抜けした。こずもあろうに「婆さん」ずは、䜕ずひどいあだ名だろうず思った。こんなあだ名を付けたのはどこのどい぀だ、ず心の䞭で怒った。たた、そのあだ名を自分で認めおいる友子も劙だず思った。

    それず同時に、あるはずのない関連性が頭に浮かんだ。

    「さっきのごみ拟い爺さんずいい、この婆さんずいい、なにか関連しおいたりしお。」

    そう思った時、係長が、「あれっ、爺さんただ来おないのか。」ず蚀った。倧信はドキリずした。

    係長「桜谷さん、今日は爺さんずゞョギングしなかったのかい。」

    友子「はい、今日はしおないですよ。」

    どうやら、ごみ拟いの老人のこずではなさそうだ。倧信はホッずした。ず同時に、少しがっかりもした。あの玠敵な声の老人ず仕事が出来たら、どんなにか楜しいだろう。

    友子「でも、今日は爺さん、ごみ拟いをするずか蚀っおたした。」

    倧信は、心臓が止たりそうになった。そしお、顔が思わずにやけおきた。その時、入り口で声がした。鳥肌の立぀、あの䞍思議な声だ。 倧偎は振り返り、立ち䞊がった。

    倧信「爺さん」
    老人「おお、君か」

    二぀の声が、同時に響き枡った。

    係長「爺さん、矢厎君を知っおるのかい。」

    老人「ああ知っおるずも。私の芪友だからね。」
    倧信「そうですずも、芪友ですね、『新しい友達』ずも曞きたす。」

    係長「ほう、い぀からの」

    「今朝からのだ。」老人ず倧信は同時に蚀った。瀟員たちは顔を芋合わせた。

    老人「そうだ、ただ互いに名前も知らなかったじゃないか。」

    そしお胞を指し、「私は足立和圊だ。」ず蚀った。
    倧信も胞を指し、「私は矢厎倧信です。」ず蚀った。

    二人は握手をした。

    和圊「矢厎君、そしおこちらが桜谷さんだ。桜谷さん、こちらが矢厎君だ。」
    友子「知っおるよ。私、さっきからここにいるでしょう」
    倧信「桜谷さん、そしお私が矢厎です。よろしくお願いしたす。」
    友子「さっき挚拶したでしょう」

    人は笑った。

    皆、それぞれの仕事を始めた。和圊が、友子に声をかけた。

    和圊「婆さんやあ」

    友子「䜕、爺さん。」ず頭を䞊げた。

    和圊「明日からも、たた䞀緒に、朝走っおくれるかい。」

    友子「もちろん。でも、本圓に走るの奜きだよね。」

    和圊「たあ、奜きな事はやたやただけど、私みたいにただ五䜓満足な人間は、走らなくおはね。」ず和圊は蚀った。

    その時、倧信ず係長が和圊の机の前にやっお来た。

    係長「ここが矢厎くんの垭になる。別の空いおいる垭もあるのだが、足立さんがぜひ君に䜿っおほしいずいうこずでね。」

    倧信は和圊を芋るず、 目を䞞くしお蚀った。「爺さん 、知り合ったばかりなのに、退職しおしたうのか。」

    和圊「そうなんだよ。明日からはただの老人、ずいったずころだ。」
    倧信は䞀瞬、時間が止たったような気がした。

    その日の倕方、和圊は䌚瀟を出お行った。


    Episode 1-3 小さな奇跡

    次の日の明け方、倧信はたた郜䌚村のごみ拟いを始めた。ゎミ袋が぀䞀杯になったずころで、腕時蚈を芋た。

    「爺さん、遅いな 。」

    その時、向こうのビルの圱から、和圊ず友子がトレヌニング姿でやっおきた。

    倧信「お早よう、元気かい。」倧信は手を挙げお二人に声をかけた。

    和圊「おお、お早よう、来おくれおいたのか。」
    友子「お早よう、矢厎くん。」

    二人は倧信の前で止たった。

    倧信「駅前は倧䜓拟った。あずは暪䞁が残っおる。」
    和圊「それじゃあ暪䞁ぞ行こうか。今日は婆さんも拟うそうだ。」

    友子「終わったら和菓子でもご銳走しようか。」
    和圊「嬉しい事蚀っおくれるね。ぜひ、みたらし団子を。」
    倧信「右に同じ」ず倧信。

    そんな事を蚀いながら、䞉人は歩いお行った。

    倧信「ああ、うたかった。ご銳走さた。」
    和圊「やっぱり和菓子が䞀番だよ。」

    友子「䜕も二人で本ず぀も食べる事はないでしょう。」

    䞉人は䌚瀟ぞの道を歩いおいた。
    ふず、和圊は立ち止たった。

    和圊「じゃあ、わしはここで倱瀌。」

    倧信「そうだ、爺さん、これから䜕をするんだ」

    和圊「掋颚軜食店で非垞勀務をする事にしたよ。」

    友子「でも、爺さん、軜食店は嫌いじゃなかったの」

    和圊「あたり奜きではないけど、これも経隓だからね。じゃあね、二人ずも頑匵っお。」

    和圊は、手を振っお角を曲がっお行った。それを芋送りながら倧信は蚀った。

    倧信「掋颚軜食店で非垞勀務っお、このあたりにおしゃれな喫茶店っおあったっけ」

    友子「ファヌストフヌドショップでパヌトっお意味。爺さんは倖来語を䜿わないの。」

    倧信「倉な人だなあ。」

    友子「蚀葉で遊ぶのが奜きなようね。よく疲れないよね。」

    倧信「倉な人だなあ。」

    昌を迎え、和圊はファヌストフヌドショップ「バヌガヌバヌガヌヒヌフヌ」 でレゞを打っおいた。レゞを打぀手は速く、間違えない。和圊の䞡隣の店員は驚いおそれを眺めおいる。

    「足立さん、初めおにしおは䞊手ですよね。」ず、黒ひげの店長がご機嫌の顔をしお蚀った。和圊は笑い返した。

    倧分客も増えおきた。䞀区切り぀いたずころで、和圊はレゞを離れた。客はうるさかった。ずいうより、賑やかだった。これはずおも良いこずだ。しかし、その殆どが、ハンバヌガヌに倧口を開けおかぶり぀き、フラむドポテトをほおばり、炭酞氎をすすっおいる。

    和圊は口を開いた。

    和圊「その昔 、」

    その瞬間、客の動䜜が止たり、レゞや調理堎にいた店員や店長も動きを止めた。そしお党員が和圊を暖かい目で芋た。和圊はその人を盞手に話を進めた。新たに入っおきた客もその堎で足を止めた。

    和圊「 その昔、ある城に殿様が居たそうだ。」

    皆は「オヌッ」ずざわめいた。

    和圊「気の毒な事に、その殿様は病気であり、長い間倩地の匕っ繰り返るような腹痛に悩たされおいた。あんた方も経隓があるだろう。」

    皆は頷いた。和圊は続けた。

    和圊「そんな調子が続くので、殿様の粟神状態がいかれおきた。家来を呌ぶたびに切腹を呜ずる有様だ。これではたたったもんじゃない。しかし、家米が医者を呌がうずするず殿様は『嫌だよヌ怖いよヌ』 ずたるで子䟛のように隒ぎたくる。

    しかし、ほかに手立おもなく、このたたでは死んでしたうかもしれないので、歎史の教科曞にこそ茉っおいないが、圓時、城䞋町の垂民に恐れられおいた医者の先生を呌だ。その医者は、悪評どおり、埗䜓の知れない銙菜や飲み薬を殿様が極限状態に陥るたで服甚させた。しかし、努力のかいがあっお病状が分かった。
    家来たちが芋守る緊迫した空気の䞭で医者は蚀った。『うヌん、これは 、䟿秘ですね。』その堎には、実にしらけた空気が挂っおいた。その頃、殿様は、既に昏睡状態の真っただ䞭を歩んでいた。

      ずいう昔話があるのだが、あんたらどうだい、この店ぞ来お昌食を枈たせようなんおいうのがそもそも間違いだ。栄逊が偏り過ぎおしたっお、予定の寿呜の䞉分の二しか生きられなくなるぞ。

    でもこの堎では䞀぀だけ良い道がある。それは牛乳だ。骚が䞈倫になる。みなさんが飲んでる甘いはじける飲み物より少し高いが、おいしいですよ。」

    皆が立ち䞊がり、䞀斉にレゞぞ詰め掛けた。「牛乳くれ。」「ミルク。」「私にも。」「俺にも。」「ちょっず、暪入りしないで䞋さい。」客がもめおる間、和圊は店長ず話をしおいた。

    和圊「ちょっず自分勝手で枈たないが、わしは明日から別の仕事をする事にしたよ。」

    店長「そうか。もっず居お欲しかったのになあ。たた遊びにきお䞋さいよ。いやあ、しかし、あんたの声は実にいい声だ、すごい!」


    Episode 1-4 地響き

    郜䌚村にも、ビルの陰から遅い倪陜が昇り、朝が来た。ゎミ拟いずゞョギングを終えた和圊、倧信、友子の人は、和菓子屋の軒先のベンチでたた団子を食べおいた。いち早く食べ終えた倧信は、眮いおいった新聞を読んでいた。

    「あったあった、爺さん、こんな隅の所に茉っおたぞ。」ず蚀っお倧信は瀟䌚面を指差しお和圊ず友子に芋せた。そこには「時間で売り䞊げ倍に」ずの蚘事があった。友子が文を読み䞊げた。

    「昚日正午過ぎ、郜䌚村䞉䞁目のファヌストフヌドショップ 『バヌガヌ』で、ミルクを飲む客が䞀時的に異垞に増え、店倖の道路に30分埅ちの行列が出来た。関係者の話によれば、ミルクが売り切れた埌も行列は収たらなかったが、時間ほどで人波は跡圢もなく消えた。売り䞊げは通垞の倍にも跳ね䞊がったもよう。」

    倧信「爺さん、どういう事なんだ。たさかミルクのたたき売りでもしたんじゃないの」

    友子「そんな事したらミルクがこがれちゃうでしょう。」

    䞀同は笑った。

    和圊「いや 、そんな事はしおいない。わしはただ普通に喋っただけだ。でも、迷惑が掛かっおしたったようだ。盞手には普通に聞こえないからな。」

    倧信「普通に聞こえないなら、どんなふうに聞こえるんだよ。」

    和圊「君たちは私ず初めお䌚っお挚拶をした時に、鳥肌が立たなかったかい。」

    倧信「そういえばそうだな。」
    友子「私もそうだった様な蚘憶があるような、ないような。」

    倧信「爺さん、それずこれず䜕の関係があるんだ。」

    和圊は静かに答えた。

    和圊「芁するに、私の声を聞くず感動しおしたうんだよ。」

    しばらく沈黙が続いた。ず、それを聞いおいた店の芪父が吹き出した。

    倧信「芪父さん、そんなに笑うこず」ず倧信。

    「だっおお前、こい぀にだたされおんだぜ。」ず、芪父は皿を拭きながら、和圊を顎で指しお蚀った。

    友子「でも、私たちい぀も感動しおいないわよ。」

    和圊「それは、私が䜜り声をしおいるからさ。」

    芪父は声を高らかに響かせお笑い出した。
    「だったらよ、この俺を感動させおみろっおんだ。」

    和圊「いいのか、色んな意味でたたげるぞ。」

    芪父「䜕蚀っおんだい、こう芋えおも俺も郜䌚村の䞀䜏人だ。ちょっずやそっずで動転しおたたるか。」

    「これは喧嘩の䞀皮かな。」ず倧信は友子に小声で蚀った。

    友子「違うわよ。二人はああ芋えおも元同玚生で仲がいいの。」

    しかし、倧信には和圊ず芪父の目ず目の間に火花が散っおいる様に芋えおならなかった。

    「じゃあ良倫、その研いおいる皿を萜ずしお割るずいけないから、ちゃぶ台の䞊に眮いずけ。」

    和圊は芪父を本名で呌んだ。芪父は皿をテヌブルに眮いた。

    「じゃあ、たずは最も匱く喋ろう。たずこれでおそらく、䜓が震え、 鳥肌が立ち、心が枩たり、笑顔があふれるはずだ。いくぞ。
    『あいうえお』。」

    次の瞬間、芪父の䞡肩がビクンず䞊がり、背筋が䌞び、口が開いお「オヌッ。」ず声が出た。和圊はそれを芋お銖をひねり、蚀った。
    「良倫、お前䞋手な挔技はやめろよ。」

    「はあ」倧信ず友子が蚀った。

    芪父「ばれたか。俺はお前ず半䞖玀以䞊も同じ村で暮らしおるんだぜ、通甚する蚳ないじゃないか。 それはそうず、こちらの若いお二人さんも、今は䜕ずもなかったな。」

    和圊「じゃあ君たちは、無事に『戻った』ずいうわけだな。」

    倧信「䜕だい、その『戻った』っおいうのは。」

    和圊「たあ、いずれ分かる時が来るさ。」

    友子「やっぱり感動させられるなんお嘘なんでしょう。」

    和圊「婆さんたで今曎そんな事を蚀うのか。わざず蚀っおるんだろうけど。
    よし、じゃあ、この店に客を沢山呌んでやるよ。人の波で店が壊れるから、早いずこ勘定を払っお倖に出よう。」

    そしお、人は店の倖に出た。

    「ここの団子は郜䌚村で䞀番うたいぞヌっ。」ず和圊は叫んだ。

    「圓たり前だろ、䞀軒しかねえんだから。」ず埌で芪父が蚀った。

    しばらくするず、地響きず共に、遥か道路の向こうからものすごい数の人々が猛烈な勢いで走っお来た。

    倧信「うおおおなんだあれは、走るゟンビか300人は来るぞ。」

    和圊「ちょっずたずかったかな。」

    友子「たずいでしょ店が違う意味で朰れるよ。」

    芪父「远い返せ、この銬鹿」

    和圊「そんな方法知らないよ。では、ごきげんよう」

    翌日の新聞に店の芪父が喜びず苊悶の衚情で茉ったのは、今さら説明するたでもない。
    幞い、怪我人は出ず、その埌も店は繁盛したようだ。


    Episode 1-5 正論

    再び郜䌚村にも朝が来た。「お早よう。」「お早よう。」「やあ。」 䞉人はい぀もの様にごみ拟いを始めた。

    倧信「爺さん、今日はどこで働くんだ。」

    和圊「今日は、いや今日からは共同募金の非垞勀務を始める。」

    友子「頑匵っおね。」

    「お早ようございたす。今日からお䞖話になりたす足立和圊です。 よろしくお願いしたす。」ず和圊は蚀った。

    「はいよろしく、ずいう蚳で皆さん、今日も匵り切っお参りたしょう。私のグルヌプは郜䌚村駅前を、朚田さんのグルヌプは立花駅前を、川口さんのグルヌプは霧ヶ䞘枯駅前をそれぞれ担圓しお䞋さい。」ずリヌダヌが蚀った。

    和圊「お早ようございたす。南西砂挠発展途䞊囜揎助募金をよろしくお願いしたす。」その日はこの蚀葉で舌を䜕床も噛んだ。通行人の殆どは目もくれなかった。

    翌日、䞉人はごみ拟いをしながら話しおいた。

    倧信「でも、なんで昚日は感動させる力を䜿わなかったんだい、」

    友子「爺さん、たた䜕か事件でもあったの。」

    和圊「いや、䜕もない。しかしもううんざりだ。募金集めはもううんざりだ。」

    倧信「募金を集めはいい事なんじゃないの。でも爺さんが向いおいないず思うなら、無理はしない方がいいけどね。」

    和圊「いや、確かに志は良いのだが 」

    倧信「だが、しかし」

    和圊「倧切なのは揎助をする事よりも、揎助をされる様な貧しい囜をなくすこずだ。
    正論めいお聞こえるかもしれないが、もっずこう、盎接的な方法があるずいいんだが。」

    友子「ふヌん。たあ、爺さんの持ち味を生かせる仕事があるずいいね。時間はあるんだし。」

    和圊「そうだよなあ 。」

    翌日から、朝のゎミ拟いを陀き、和圊は家にこもりがちになった。

    倧切なのは揎助をする事よりも、揎助をされる様な貧しい囜をなくす事だ。
    そんなこずはずっず昔から分かっおはいるものの。
    䜕で急に、こんな圓たり前のこずを考えおいるのだろう。

    和圊は気を玛らすために、10幎ぶりにテレビを぀けた。䞁床、バラ゚ティヌショヌをやっおおり、今週のニュヌス振り返りのコヌナヌで、先日の和菓子屋の倧繁盛のニュヌスを振り返っおいた。和菓子屋に殺到しおいる矀衆の映像ず、もみくちゃにされおカツラがずれおいるのを䞀生懞呜盎しおいる和菓子屋の芪父が映っおいる。

    その時、テレビから「ポンピヌン、ポンピヌン」ず音が聞こえお、「臚時ニュヌス」ず文字が点滅した。

    和圊は、画面の䞊郚にテロップが出るのを埅った。長く感じた䞉秒間だった。

    「今日未明、Ⅹ囜の戊闘機が囜に䟵入、撃墜され双方で空䞭戊が展開されおいる暡様」

    和菓子屋の矀衆の映像ず、ニュヌスのテロップが重なる。

    「私の持ち味、か。私に向いおいる仕事、か 」

    友子「おはよう、矢厎君」
    倧信「おはよう、桜谷さん。あっ、爺さんも来たぞ。」

    翌朝、 䞉人はい぀もず同じように出䌚った。

    和圊「やあ、二人ずもお早よう。来おおいお悪いのだが、今日はちょっずわしは䌑たせおくれないか。この間の答えが出たんだ。」

    倧信「ぞえ、どうするんだい。」ず倧信。
    和圊「音声攟送局に行っお、番組に出させおもらおうず思う。」

    友子「ふっふっふ。やっぱりラゞオに出るの楜しんでね。」

    和圊「じゃ、すたん、今日はこれにお。君たちのおかげだ。ありがずう」
    和圊は駆け足で去っおいった。

    「爺さん、あたり無理するなよヌっ。」倧信の声が響いた。

    ラゞオ局たで息を切らすこずもなく駆け抜けおきた和圊は、重い゚ントランスの扉を抌し開け、受付ぞず歩み寄った。

    和圊「  あの、すみたせん」

    受付「いらっしゃいたせ。珟圚、䞀般の方の入通は制限させおいただいおいたす。アポむント先の郚眲をお聞かせいただけたすでしょうか。」

    和圊は䞀぀深く呌吞を敎え、静かに、しかし明確に告げた。

    和圊「今日はヌっ」

    その蚀葉が空気に觊れた瞬間、事務員の肩が跳ねた。冷めおいた顔が、䞀瞬で明るくなる。

    受付「はいっ 今日は  っ」

    和圊「あの、番組の出挔枠か䜕か、空きはないでしょうか」
    和圊が問いかけるず、受付は憑き物が萜ちたような笑顔で身を乗り出した。

    受付「オヌディションですね ええ、山ほど、山ほどありたすずも 審査なんお圢だけでいいんです。ほら、これが募集リストです。党郚、党郚持っおいっおください。なんなら道ゆく人たちに配り歩いおくださっおも構いたせん」

    受付担圓は、手元の予定衚のバむンダヌを差し出した。

    和圊「  いえ、䞀芧衚を䞀枚だけ頂ければ十分です」

    受付「そんなこず蚀わずに、遠慮なくどうぞ」

    日埌、和圊はオヌディションに受かり、プロデュヌサヌず握手を亀わした。


    Episode 1-6 初攟送

    友子「おはよう、今日は暖かいね。」

    和圊「お早よう。」

    倧信「やあ、お早よう。今朝は眠いね。」

    人はい぀もの時間に、い぀もの堎所で、い぀もで、そしおい぀もの笑顔で出䌚い、い぀もの様にゞョギングをした。

    い぀もの和菓子屋で、芪父が和圊に聞いた。

    芪父「䜕だっお、爺さん、本気でテレビに出るのか?」

    和圊「映像攟送じゃない、音声攟送だよ。」

    芪父「い぀出るんだよ」

    和圊「今倜十時から䞉十分間だ。」

    芪父「スポンサヌはどこの䌚瀟だ」

    和圊「私の知った事か。どこかの物奜きな䌚瀟がやっおるんだろ。」

    芪父「ああ、なんでうちの店をスポンサヌにしおくれなかったんだよ。これで俺たちの友情も終わりだな。」

    倧信「なんず小っさい友情だ 」

    友子「䜕蚀っおるのよ芪父さん。でも番組名が『ワヌルド・ディスクゞョッキヌ』ですっお。それで、芞名が 䜕だったっけ」

    倧信「䜕だったっけ」

    和圊「䜕だったっけ」

    芪父「なんでお前が芚えおないんだよ。」

    和圊「良倫、新聞貞しお。番組欄 ず、あ、茉っおた。『内山歊倫』だった。我ながら芚えづらいな。」

    芪父「そんな平凡な芞名にしたから芚えられないんだよ。お前なんかゞヌサン足立ずかで十分だろ。」

    友子「あ、それがいい。」

    倧信「それ以倖、もはやありえないね。」

    和圊「たあ、目立ずうず思っお付けた芞名じゃないんだ。本名も知られたくないから。局の人にもお願いしお、衚向きは掃陀圓番ずいう事にしおある。さお、そろそろ行かなくおはね。予行緎習があるんだ。」

    倧信「頑匵れよ、爺さん。」

    和圊「お前も頑匵れよ。」

    芪父「俺の心の友ずしお恥じない様に。」

    友子「楜しんできおね。」

    ラむトが眩しく光る。和圊はスタゞオの怅子に座っおいた。

    ディレクタヌ「本番10秒前。9、8、7、6 。」

    普通、初めお出挔する人なら、緊匵しお頭の䞭をいろんな考えが目たぐるしく飛び亀うはずだ。が、和族は普通じゃなかった。ヘッドホンをはめながら、あくびをしおいた。

    その頃、倧信は、自分の䞋宿でラゞカセのスむッチを入れた。

    「さあ、始たるぞヌ぀。」

    六畳䞀間の狭い「城」に、向かいの倧孊生、隣の浪人生、その隣の単身赎任、その向かいの旅人、䞀番奥の倧家の老倫婊、よく知らないおじさんたでもが抌し掛けお、䞀斉に耳を傟けた。

    “ポッ、ポッ、ポッ、ピヌン”

    いよいよだ。

    “ズンッ、ズンッ、ズチャ、ズンッ、ズンッ、ズチャ ”

    ルンバ調の陜気なテヌマ曲が流れおくる。

    「内山歊倫のワヌルド・ディスクゞョッキヌ。倢ず笑顔をお届けするキツネのマヌクのむナリ宅配䟿の提䟛でお送りしたす。」

    「そんな䌚瀟知っおっか」浪人生が倧孊生に聞いた。

    「知るわけないだろ。」ず倧孊生。

    「小小䌁業だね。そこぞ行くずうちは倩䞋の倧䌁業。」ず単身赎任,

    「良い䌚瀟なら単身赎任なんかさせねえべ。」ず旅人。

    「黙っお聞いおくれよ。倧家さん、なんでこんな連䞭䞋宿させるんだよ、もっずみたいなたしな収入れおくれよ。」ず倧信。

    「お前さんがたしなら私はたしたしたしたし。」ず新聞を広げる倧家の老倫。

    「グヌ スピヌ 」倧家の老婊人が居眠りしおいる

    「ヒヒヒヒヒヒヒヒ」ず、よく知らないおじさん。

    「なんなんだ、この連䞭 。」そう嘆いお倧信はラゞオに神経を集䞭した。

    コマヌシャルが終わり、和圊が喋り始めた。

    和圊の声「皆さん、今晩は」

    今たでうるさく喋っおいた䞀同の動きが止たった、倧家の老倫の顔が新聞を突き砎り、ラゞオを芋やった。

    和圊の声「私が話し手の ええず、内山だ。内山 歊倫だったな。どうぞよろしく。」

    䞀同の目から涙がどっず流れ出した。倧信は䞀同の顔を芋ながらニダリず埮笑んだ。

    和圊の声「この番組は皆さんからの電話や葉曞を募集しおいたす。どんな事でも結構です。どんどん応募しお䞋さい。電話番号は 」

    倧孊生が突然立ち䞊がり、郚屋を出お廊䞋を駆け出した。浪人生も続いた。勿論、目圓おは電話だ。

    分ほどするず、近所が隒がしくなっおきた。うわさが広たった様だ。
    10分ほどするず、今床は近所が急に静たり返り、車の゚ンゞン音すら聞こえなくなった。運転手さえも攟送に聞き入り、感動の䜙り運転をやめおしたったのだ。

    感動の波は、静かに、ゆっくりずではあるが、少しず぀広がろうずしおいた。
    そしお、30分の攟送が終わるず、町はごく平凡な、事故ず犯眪のひしめく、日垞に戻るのだった。


    『World of Sadness』

    あのご老人 玠晎らしい考えをお持ちだ

    あのご老人 い぀も平和を願っおいるよ

    あのご老人 玠晎らしい考えをお持ちだ

    It's world of sadness. It's world of sadness...

    ― 第章・完 


    第章 感動の波

    Episode 2-1 入れ歯

    皆さん、こんばんは。今日の新聞話題は䜕にしようか。よし、それじゃあ、身近な話から始めるずするか。

    皆さんはよく――ずいうか、毎日歯を磚くね。その時に歯磚き粉を䜿うだろう。あれは実は昔からあったんだそうだ。倖囜では動物の骚を砕いおそれをそのたた䜿ったり、わが囜では癜砂に銙料を混ぜお䜿っおいたそうだ。

    ずころで今の歯磚き粉は、いろいろな皮類があるね。塩が混じっおいるや぀、栄逊玠や酵玠が入っおいるや぀、溶ける球䜓の䞭に成分が入っおいるや぀、液䜓のや぀、泡が出ないや぀ずか、瞞暡様に䜕色か混じっおいるや぀。さらに子䟛甚には果物の味がするや぀なんかもある。

    歯ぶらしもいろいろな皮類があるね。毛先が䞞く敎っおいるや぀、毛先が球になっおいるや぀、山切り刻みになっおいるや぀、郚分ごずに硬さが違うや぀、持ち手が滑りにくくなっおいるや぀、などなど。さお、この歯磚き粉や歯ぶらし、それぞれの特城を合䜓させれば、最匷の物ができるずは思わないか。

    しかし、残念ながらそれはできないらしいんだな。䌚瀟が自分の歯磚き粉や歯ぶらしの補法特蚱を取っおいるからね。特蚱は、自分の発明品だずいうこずを蚌明するために、商売にはなくおはならないものだからね。いいものを党郚合わせれば、最匷の歯磚き粉ず歯ぶらしができお、虫歯になる人が枛り、私も入れ歯にならなくお枈んだかもしれないのだが。いや、私がただ歯を磚くのを億劫がったから、入れ歯になっただけか。

    さお、ここで宣䌝だ。䞀分埌にたた䌚おう。


    Episode 2-2 塟

    皆さん、こんばんは。さお、この番組も始たっお䞀週間になるが、その間に聎取者の皆さんから数倚くの電話ず手玙をいただいた。今日はその䞭から、今の小䞭孊生、高校生、倧孊生による「勉匷の話」に぀いお話そう。

    たず最初の手玙は、瑞畝県石郜垂の岩山倪君、小孊校䞉幎生から。

    「ワヌルドおじいさん、こんにちは。がくのクラスに塟に入っおる人がいるんだけど、その子が算数がよくできるんだけど、がくは苊手です。がくは塟に入りたくないんだけど、塟に入ったほうがいいですか。教えおください。」

    倪君、聞いおいるかな。悩める少幎に、老人が答えおみるよ。
    結論から蚀えば、塟なんお「行きたいずきが、行きどき」だよ。
    でも、塟に行くのにはお金がかかるから、もし行きたい時は、おうちの方に盞談しお、君の熱意をちゃんず䌝えるずいいよ。

    確かに、最近は猫も杓子も塟通いだ。私の時代は、塟に行っおいる子なんお、孊玚に䞀人いるかいないかの「倩然蚘念物」みたいな存圚だったよ。それでもみんな、算盀そろばんを匟いたり、お買い物のお釣りを蚈算したりしお、それなりに知恵を絞っお生きおいたものだ。

    最近の塟はすごいね。あんなに難しいこずをすらすら解くなんお、私から芋ればもう「小さな哲孊者」か、あるいは「未来から来た科孊者」みたいだ。でもね、倪君。早く倧人になるこずだけが正解じゃない。朚だっお、じっくり根を匵る時期があるから、倧きな実がなるんだ。

    塟でばりばりやるのが楜しい「特急列車」のような子もいれば、野原の花を眺めながら歩く「各駅停車」のような子がいおもいい。芪埡さんも、子どもを早く塟に入れようず぀い熱が入っおしたうご家庭もあるだろうが、子育おに正解はないからね。

    「塟に行かないず、䜕もできない人間になる」なんおこずは、絶察にない。むしろ、塟に行かない時間でしか孊べない「遊び」や「がヌっずする時間」が、君ずいう人間を豊かにするこずだっおあるんだ。

    もちろん、塟で䞀生懞呜頑匵っおいる子たちも立掟だ。それは䞀぀の才胜であり、努力だ。幌いうちから自分の成りたい職業を決めお、そのために必芁な勉匷をしたいず塟に通う子もいる。でも、それに乗り遅れたり、途䞭で挫折したからずいっお、その人が駄目になっちゃうわけじゃない。倧切なのは、孊校だろうが塟だろうが、あるいは野原だろうが、自分なりの「面癜い」を芋぀けるこずじゃないかな。

    孊校をなくしおみたらどうか、なんお極論もあるが、それじゃ友達ず喧嘩しお仲盎りする堎所がなくなっちゃうしね。人間、埌悔する前に「た、いっか」ず笑い合える䜙裕を持ちたいもんだ。

    ちょっず難しい話だったかなでは、次の曲にいこうか。


    Episode 2-3 勉匷

    皆さん、こんばんは。さお、今日も勉匷の話題にしよう。
    ちょっず興味深いお䟿りが来おね。ここに青森県䞉沢垂の高朚健君、高校二幎生の曞いた詩がある。聞いおくれ。

    æ•°å­Š

    数孊ぶっおる孊者は
    それが䞖の平和に圹立぀ずほざきやがる
    党くのり゜だ 隙すんじゃねえぞ

    䞖の党おの平和に぀ながるのなら
    なんで栞ミサむルの蚈算なんかに䜿いやがる

    そしおなにより 数孊が䞖界を平和にできるなら
    誰もが理解できるはずだ
    なのに俺は 数孊が苊手だ

    健君、痺れるねえ。数孊ずいう巚倧な壁を前にした時の、君のその真っ盎ぐな憀り、私は嫌いじゃないよ。

    今の子どもたちが孊んでいる教科の勉匷は、本圓に圹立っおいるのだろうか。受隓ずいう高い障壁を越えるためだけの「道具」になっおはいないだろうか。ちょっずばかり、私の独断ず偏芋で分析しおみようかね。

    たず数孊だ。買い物で損をしないための蚈算や、料理で分量を量る癟分率、旅の予定を立おる時の時速。これらは生きおいくための「歊噚」だね。䞀次方皋匏や平方根くらいたでは、謎解きを解くような遊び心で付き合えるかもしれない。でも、その先の高床な数匏が、健君の蚀うように平和を壊す蚈算に䜿われるこずがあるのも悲しい事実だ。数孊そのものに眪はないが、それを䜿う人間の「心」が問われおいるんだろうな。

    次に囜語だ。孊校では「二十分で䜜文を曞け」なんお蚀われるが、心っおのは時限匏時蚈のように動くもんじゃない。本圓の蚀葉は、倕焌けを芋お胞が熱くなった時や、倧切な人に想いを䌝えたい時に、溢れるように出おくるものさ。読曞感想文だっおそうだね。宿題ずいう矩務になった途端、物語の魂に觊れる前に、ただ文字数を埋める䜜業になっおしたう。これじゃあ、本を嫌いになれず蚀っおいるようなものだ。もったいない話だよ。

    最埌に英語。これは、もっず「生きた蚀葉」であっおほしいね。単語の綎りを暗蚘しお、重箱の隅を぀぀くような文法問題を解くのが勉匷だず思ったら、そりゃあ嫌いにもなる。英語は、海の向こうにいる誰かず笑い合うための「橋」であるはずだ。そもそも、人ず人ずが通じ合うために蚀語が果たす圹割は、実は䞀割ほどに過ぎないずいう研究もある。衚情やしぐさ、たたは単に寄り添ったり、抱きしめるだけでも、色々なこずが䌝わるのだからね。だから教科曞を閉じお、たずはず笑い合える、そんな『英䌚話』から始たれば、䞖界はずっず身近に感じられるはずなんだが。

    おっず、この番組もそういえば、「䞖界」ずいう冠を背負っおいたね。
    わたくしが、その叞䌚者の内山 ええっずなんだっけ、そう、内山歊倫ず申したす。あらためおよろしく。

    さお、勉匷っおのは、匷いお勉めるずいう挢字でできおいる。これは、無理しお頑匵るずいう意味だ。でも、孊習ずいう蚀葉は、習っお孊ぶず曞く。本来、孊びは自分の䞖界を広げお自由になるためにあるものだず私は思っおいる。健君、数孊が苊手でも、君にはその鋭い感性がある。それもたた、立掟なこずだず思うよ。

    さお、次はそんな「蚀葉」を倧切にする、あの人の䞀曲をかけようか。


    Episode 2-4 爆走する聎取率

    ニュヌスより。

    アナりンサヌ「さお、次は特集。今、䞖間を隒がせおいる䞀人のご老人の話題です。
    皆さんは『ワヌルド爺さん』を知っおいたすか先月始たったばかりの、深倜ラゞオ界に突劂珟れた超人気パヌ゜ナリティのこずです。

    このワヌルド爺さんが叞䌚を務める番組は、タむトルもその名の通り『ワヌルド・ディスクゞョッキヌ』。圓初は30分の深倜枠でしたが、あたりの反響に今週からは毎日倜22時からの1時間枠に拡倧されたした。
    ワヌルド爺さんの人懐っこい語り口ず、倖来語を頑なに䜿わないずいう独特のキャラクタヌは、家路を急ぐサラリヌマンや塟垰りの䞭高生、さらには深倜に働く人々の間で爆発的な人気を博しおいたす。聎取率も、珟代のラゞオ界では前代未聞の50超えずいう、驚異的な数字を叩き出しおいたす。珟堎から、䞭川レポヌタヌの報告です。」

    䞭川「はい、私は今、若者たちで賑わう街、目尻比に来おいたすヌずいうこずで、通りすがりの若者たちに突撃むンタビュヌしちゃいたヌすあのヌ、倜分にちょっずすいたせん。あなたは塟の垰りですかヌ」

    少幎「ええ、はい、そうです。」

    䞭川「耳にむダホン着けおるけど、今、䜕を聎いおるんですかヌ」

    少幎「あ、これ、『ワヌルド』です。」

    䞭川「あ、ホントヌあなたは高校生かなヌ」

    少幎「ええ、そうですけど。」

    䞭川「孊校の友達も聎いおるのヌ」

    少幎「あヌ、みんな聎いおたすね。聎いおないや぀を探すほうが難しいくらいです。」

    䞭川「ねえ、聎いおお楜しい」

    少幎「楜しいずいうか それ以䞊に、なんだか心が萜ち着くずいうか。ざわざわした気持ちが消える感じですかね。」

    䞭川「あ、そうなんだヌ、どヌもありがずねヌっ  いやヌ、すごい人気ですね。じゃヌ、今床はあのお店の方に集たっおいる青幎たちに聞いおみようかなヌ。ねえねえ、真ん䞭に倧きなラゞカセを眮いお䜕を聎いおるの」

    青幎「これですか ワヌルドですよ。」

    䞭川「あ、私も聎きたいなヌねヌ、ボリュヌム倧きくしおくんなヌい」

    青幎「いいですよ。ほら、聞こえたすか」

    䞭川「はい、聞こえたす  ずころで、このズラリず䞊んだバむク、あなたたちの物ですか」

    青幎「ええ。俺たちは『神颚蜟蜟』っおいうチヌムなんですけど。普段は走っおたすけど、ワヌルドの時間だけはバむクを止めお、党員で聞き入るっお決めおるんですよ。」

    䞭川「それは玠敵なお話ですねワヌルドの魅力を教えおもらえたすか」

    青幎「やっぱり、ワヌルドさん  内山歊倫さんの『顔が芋えない』っおずころがいいっすね。それに、自分たちの身の回りの些现な話を、い぀の間にか地球芏暡ずか宇宙の話にたで広げおくれる。あの人の声を聞いおるず、自分たちの悩みなんおちっぜけだなっお  」

    ここで、ラゞオから流れおいた番組が終了した。

    青幎「ああっ攟送終わっちたいやがったおいむンタビュヌだか䜕だか知らねヌけどよぉ、邪魔すんじゃねヌぞ」

    䞭川「あ、ごめんなさいねヌ぀い぀い話が長くなっちゃいたしたどヌもありがずうございたしたヌ」

    アナりンサヌ「ここで速報です。このあず23時からのスポヌツニュヌスは攟送を䞭止し、只今入っおきたしたニュヌスをお䌝えしたす。

    先日から続いおおりたす囜ず囜の宗教玛争ですが、今日22時5分、囜の旅客機『ケレス202䟿』が囜領空に䟵入、軍の砲撃を受けお墜萜したした。乗組員・乗客蚈362人のうち、死者は22時珟圚で159人、生存者6人、行方䞍明者197人。なお、乗客に我が囜の旅行客が含たれおいるかどうかは、珟圚のずころ確認を急いでおりたす。

    今回の撃墜事件を受け、囜倧統領は先ほど声明を発衚。『䟵入者ぞの砲撃は囜際法で認められおはいるが、䜕の譊告もなしに民間機を砲撃した囜の行動は非人道的な暎挙である。明朝9時たでに囜の謝眪がなければ、我が囜は経枈的・軍事的・および粟神的な面で壊滅的な攻撃を、囜および囜ずの匷固な連携のもず、囜に察しお行う』ず述べ、囜を激しく非難したした。

    これに察しお囜偎は、『緊匵状態にある領空ぞの䟵入行為は、極めおスパむ的芁玠が匷く、蚱しがたいものである』ず返答。さらに、囜ず察立関係にある囜に軍事支揎を䟝頌したした。囜はこれを受諟し、既に空母2隻を囜呚蟺海域ぞ掟遣するず発衚しおいたす。

    最悪の堎合、倚囜籍間の倧芏暡戊争ぞ発展する可胜性が極めお高く、囜連の動きが泚芖されたす。しかし、囜連はここ20幎来、機胜䞍党に陥っおいるずの指摘もあり、事態の長期化ず泥沌化が予想されたす。

    ここで、スタゞオの軍事アナリスト、有珠川さんにお話を䌺いたす。有珠川さん  


    Episode 2-5 鉛筆ず䞇幎筆

    皆さん、こんばんは。
    さお、今倜は少し懐かしい話をしようかね。皆さんの手元には今、どんな道具があるだろうか

    この番組の本番前に、メモを取りながら、「曞く」ずいう道具に぀いお考えおいたんです。
    皆さんも、䞀床は鉛筆を手にしたこずがありたすね。あの、削るたびに銙る朚の匂い。子䟛のころ、初めお刃物で削ったずき、䞊手くいかなくおボコボコになっおしたったり、芯を倪く削りすぎおしたったり 。
    机の䞊で匟いお遊んだり、時には嫌なこずがあった時、぀い力が入っおポキリず折っおしたったこずもあるかもしれない。短くなっお指に隠れるほどになっおも、捚おられずに匕き出しの隅に眠っおいる 鉛筆には、そんな「共に過ごした時間」が刻たれおいるような気がするんだ。

    䞀方で、自動鉛筆。これは実に芋事な発明です。
    あんなに现い芯が、折れそうでいおしっかりず文字を玡いでいく。削る手間を省き、思考を止めずに曞き続けられる。
    それはたさに、人間の「もっず䟿利に」ずいう情熱の結晶。ずいうず、倧げさかな。

    ただ、ふず思うこずがあるんだよ。
    鉛筆を䜜るには、豊かな森の恵みが必芁だ。どうも、鉛筆に䜿う朚材は、環境砎壊ではなく、森林の朚の量の調節に圹立っおいるらしいが、
    そもそも私たちが䞀本の鉛筆を䜿う裏偎では、自然がその身を削っお私たちに衚珟の堎を䞎えおくれおいるこずには倉わりがない。
    そしおもう䞀方の自動鉛筆を䜜るには、さらに粟巧な郚品を組み䞊げるための技術ず資源が必芁なんだよね。

    どちらが良い、悪いずいう話ではないよ。ずいうより、どちらも私は奜きだ。
    鉛筆が持぀「朚のぬくもり」ず、シャヌプペンシルが持぀「珟代の知恵」。
    私たちは、その䞡方に支えられお、自分の想いを誰かに䌝えようずしおいたす。
    たあ、どちらも長いこず䜿っおいないずいう人の方が、今は倚いのかもしれないけどね。

    ちなみに私は、䞇幎筆を䜿っおいたす。

    さお、䞀分ほど宣䌝を挟んで、たたお䌚いしたしょう。


    Episode 2-6 情報の挔出

    よりお埅たせしたしたあの「ワヌルド・ディスクゞョッキヌ」が今倜から毎週月土曜日の毎日、倢の時間䞀挙生攟送聎取率史䞊空前の90ずいう倧蚘録を取ったこの「ワヌルド」、果たしお今日のワヌルド爺さん、内山歊倫の口からはどんな蚀葉が飛び出すか今晩18時半、ラゞオ「ワヌルド・ディスクゞョッキヌ」乞うご期埅

    皆さん、こんばんは。
    さお、今倜は少し、私たちが毎日目にし、耳にしおいる「情報」に぀いお考えおみたいず思うよ。

    朝から倕方にかけお、テレビでは華やかな情報番組が長時間攟送されおいたすね。
    そこではよく、俳優さんの結婚や、新しい呜の誕生ずいったニュヌスが賑やかに報じられおいたす。「おめでずう」ずいう気持ちを分かち合うのは、本来ずおも玠敵なこずです。

    けれど、ふず思うこずがあるんです。
    誰かの私生掻の断片を、たるですべおを知っおいるかのように消費しおしたうこずで、私たちはもっず倧切に芋぀めるべき「今の䞖界の姿」や「隣にいる人の孀独」から、少しだけ目を逞らしおはいないだろうか  。
    お祝い事はもちろん喜ばしい。けれど、それず同じくらいの熱量で、私たちが共に生きるこの䞖界の行く末に぀いお語り合えたなら、どれほど豊かな時間になるだろうかず、私なんかは、぀い欲匵っおしたうんだよ。

    そしお、私が䞀番に心を痛めるのは、事件や事故を䌝える時の「挔出」だなあ。
    䟋えば、事件や事故で、誰かが悲しみに暮れおいるずき。それを䌝える音楜や字幕の文字が、たるで恐怖を煜るようなものであったり、画面に䞊ぶ文字が、䜕か誀解を招く文章だったり  。

    事実は、ありのたた䌝えるだけで十分に重いものだず思うのだ。
    過床な挔出は、ただでさえ傷぀いおいる人の悲しみを増倧させ、それを目にする子䟛たちの心に、䞍必芁な恐怖を怍え付けおしたわないか、心配になったりするよ。
    「知る」ずいうこずは、誰かを怖がらせるためではなく、私たちがどう手を取り合っお生きおいくかを考えるためにあるはずだず、私は信じたいのです。

      おっず、幎寄りの独り蚀を蚀いすぎたかな。スポンサヌに怒られないうちに、この蟺でやめおおこうか。
    さお、䞀分ほど宣䌝を挟んだ埌は、心䌑たる明るい話題を。季節の花の話でもしようかな。


    Episode 2-7 ワヌルド旋颚

    ニュヌスより:  続いおの特集は、䞖界を垭巻する『ワヌルド旋颚』の最前線です。
    今や我が囜の日垞に欠かせない存圚ずなった『ワヌルド・ディスクゞョッキヌ』ですが、その圱響力は今、囜境を越え、地球芏暡ずなり぀぀ありたす。

    珟圚、軍事境界線や玛争地垯を含む䞖界120カ囜においお、䜎軌道衛星ネットワヌクを通じた同時通蚳による生攟送が実斜されおおり、聎取率は各地で過去最高を曎新し続けおいたす。今月末には、200カ囜以䞊ぞの拡倧が予定されおいたす。
    1日10時間にも及ぶ攟送䞭、玛争地の䞀郚では䞀時的に発砲が止むずいう報告もあり、各囜の治安圓局は、犯眪率が劇的に䜎䞋するこの『ワヌルド効果』の分析を急いでいたす。人々の心を繋ぐワヌルド爺さんの声が、混迷を極める囜際瀟䌚の 

    【速報緊急ニュヌス】

    ここで、先ほど入ったニュヌスをお䌝えしたす。
    停戊の糞口が芋えないたた二ヶ月が経過した囜・囜間の宗教玛争においお、事態は最悪の局面を迎えたした。
    䞡囜政府は先ほど、互いの軍事的拠点を察象ずした『極めお限定的な戊術栞兵噚』の即時䜿甚暩限を、珟堎の指揮官に付䞎したず宣蚀したした。

    これを受け、囜の空軍基地を囜内に140カ所抱える我が囜ぞの圱響も懞念されおいたす。総理倧臣は先ほど、囜倧統領ず緊急の電話䌚談を行い、同囜軍による我が囜基地からの爆撃機出撃を保留するよう匷く芁請したしたが、囜偎は『あらゆる遞択肢を排陀しない』ずの回答に留め、公匏な同意は埗られたせんでした。

    珟圚、囜・囜・囜を含む同盟偎カ囜ず、囜・囜・囜を䞭心ずする連盟偎カ囜の前線は、栞の䜿甚を巡っお緊匵が高たっおいたす。
    今回䜿甚が瀺唆されおいる戊術栞は、戊略栞に比べ被害範囲は限定的ずされるものの、その嚁力は1発でも、過去の倧戊で投䞋された原子爆匟の数倍に達するず掚蚈されおいたす。もし実際に䜿甚されれば、今䞖玀最倧の惚犍ずなるこずは避けられたせん。
    繰り返したす  

    「これは、いかん。」ず和圊はテレビを芋お蚀った。
    攟送空けの束の間の䌑息で垰宅した、深倜の暗い灯の四畳半の郚屋は、そこだけ倖界から隔離されたかの様な沈黙に芆われた。
    䜕十幎も前から人類滅亡の第䞀原因になるだろうず蚀われおきた「栞戊争」が、遂に目前ず迫っおきおいるのだ。
    栞戊争は恐ろしい事だ。殺人事件が、無数に同時に起こり、100幎単䜍で悲しみが連鎖する、恐ろしく愚かな事だ。
    それが今起きようずしおいる。もしかしたら、誰かがもう、発射ボタンを抌しおしたったかもしれない。

    和圊は考えた。そもそも和圊は、䞖界を平和にするために「ワヌルド・ディスクゞョッキヌ」をやっおきた。
    感動の波は、䟋えが悪いが䌝染病の様にこの囜に広がり、この囜はずりあえず平和な状態を保っおいる。
    さおそれではいよいよ海倖ぞ進出したずいう矢先に「栞戊争」だ。

    さっきのニュヌスの通り、「ワヌルド・ディスクゞョッキヌ」が党䞖界に行き枡るにはただ時間がかかる。
    しかし、戊争は今すぐ止めなくおはならない。

    和圊は考えた。かっこ付けお長い間考えおいる暇はない。四畳半の畳の䞊を、䜕床も埀埩しながら歩き回っお考えた。

    その時、枕元に眮いおあった電話機が鳎った。画面には「婆さん呌びを蚱すby桜谷友子」の名前がある。和圊は迷わず通話ボタンを抌した。

    「爺さん、お疲れ様  寝おた」
    友子の声は明るく努めようずしながらも、震えおいた。い぀も冷静な圌女がこれほど動揺するのは珍しいこずだった。

    和圊「いや、起きおるよ。戊争のニュヌスを芋おたずころだ。いやあ、倧倉なこずになっおるねえ」

    友子「思ったより元気そうで良かった。爺さん、頑匵っおるなあ、ず思っお。」

    和圊は、窓の倖の静たり返った倜の街を芋぀めた。

    和圊「平和を願っお始めた番組だが、やり方が匱かったのかな。攟送を通じお働きかけるのでは間に合わない。
    向こうが耳を塞いでいるなら、こちらから耳をこじ開けお、盎接圌らの錓膜に囁くしかないんだが  。
    だが、こんな老人が各囜の指導者ず䌚話できるはずもないよね」

    「  爺さん」

    友子が、ふず思い出したように蚀った。

    友子「さっきのニュヌスで蚀っおけど、爺さんの番組は今、䞖界120カ囜で流れおいるんだっお。
    だからたぶん、珟地の通蚳スタッフや、攟送局の人たちの䞭にも、爺さんのファンがいるんじゃないかな。
    圌らの䞭に、爺さんず同じ気持ちの人も、沢山いるず思う。
    電波の䞖界にこだわらないで、䌑みたい時は遠慮なく䌑んでいいからね」

    友子のその蚀葉が、和圊の脳裏で火花を散らした。

    そうだ。私は䜕を難しく考えおいたんだ。
    私の歊噚は、電波ずいう倧きな網だけではないんじゃないか

    和圊「そうだね。『電波の䞖界』にこだわる必芁なんかないよな。婆さん、ありがずう。」
    友子「そうよ。戊争は爺さんのせいじゃないんだから、䌑んじゃえ知らないけど、有䌑ずかあるんでしょ」

    和圊「い぀もありがずう。もうちょっずだけ頑匵る。  君はたぶん、私や倧勢の呜の恩人だ。」
    友子「えっなに爺さん、おヌい、もしもしもしもし」

    和圊は返事も埅たずに電話を切った。

    そしお突然、䞡手で頭を抱え蟌み、床に厩れお、「わしは䜕ずいう倧銬鹿者なんだ」ず叫んだ。
    考えが浮かばないから自分を責めたのではない。最高の察策を思い付いたからだ。
    そう、こんなに玠晎らしい察策があるなら、戊火がもっず小さかった時に消せたはずだ。

    その察策ずは䜕か

    和圊は電話機ず、叀い電話垳を机の䞊に眮き、怅子に腰掛けた。そしお電話垳をめくり、ずある所ぞダむダルした。

    オペレヌタ「はい、もしもし、電話番号案内でございたす。ご甚件をお聞かせ䞋さい。」

    和圊「今から私が蚀う十六の囜の倧䜿通の電話番号を教えお䞋さい。たくさんあっおすみたせんが。 いいですか、囜名を蚀いたすよ 。」

    和圊が喋っおいるので、オペレヌタヌはちっずも嫌がらずに十六の囜の倧䜿通の電話番号を䞁寧に教えおくれた。

    和圊「さお、それではたず、圓事者の囜から行くか。」

    和圊は、囜倧䜿通ぞ電話を掛けた。運良く話し䞭ではなく、テレビでも有名な囜の駐圚倧䜿が出た。

    「私は内山歊倫ずいう者だが、囜の銖盞官邞に぀ないで䞋さい。」和圊は、ただ静かに蚀った。

    突然の、そしお無謀な芁求。しかし、受話噚を握る倧䜿の耳に届いたのは、䜕億ずいう人間を熱狂させ、そしお安らぎを䞎えおきた「あの声」だった。
    「  ミスタヌ・りチダマ  。承知したした。」
    倧䜿は、たるで魔法にかかったかのように、自囜の銖盞ぞず快く電話を繋いだ。

    次には、囜銖盞に教えおもらった、囜の芁人ぞ電話を掛けた。

    電話に出た囜の担圓者は、珟地の蚀葉で捲く立おおきた。忙しそうな様子で、早口だ。
    しかし、蚀葉の壁など、今の和圊には䜕の意味も持たなかった。和圊がゆっくりず自分の名前ず囜名を告げるず、向こう偎の空気が䞀倉したのがわかった。
    通蚳が近くにいなかったのだろう、無理にでも呌んできたらしく、分ほど埅たされお、受話噚を持぀手を䜕床か入れ替えたころに、息を切らした声が受話噚の向こうから聞こえおきた。

    「もしもし、おたたせしたした」

    よし、通蚳が出た。

    和圊「内山歊倫ずいう者だが、銖盞ず぀ないでくれたせんか。」

    通蚳「わかりたした、しょうしょうおたちください。」

    䌚議䞭の銖盞を呌び出すずいう暎挙を、通蚳は躊躇わなかった。和圊は通蚳に、自身の声が最も深く響くよう、向こう偎でスピヌカヌを甚意させた。
    和圊は、䞀囜の運呜を握る囜の銖盞に、深倜攟送のリスナヌぞ語りかけるように蚀った。

    「今すぐ戊争をやめお、敵味方党おの囜ず和解しおください。囜偎も、今、同時䞊行で動いおくれおいたす。  もう、十分でしょう」

    受話噚の向こうから、䜕かが厩れ萜ちるような、そしお歓喜に震える男の鳎咜が聞こえおきた。

    和圊「銖盞に䌝わりたしたね。倧䞈倫ですよね」

    通蚳「だいじょうぶです。『わかりたした、ありがずう』ずいっおいたす。」

    和圊「では、よろしくお願いしたす。」

    和圊は静かに受話噚を眮いお、久しぶりに小さくガッツポヌズをした。
    絞っおいたテレビの音量を少し䞊げるず、キャスタヌが狌狜しながら「停戊の兆し」を報じ始めおいた。

    「これでたあ、倧䞈倫だな。さあ、念のため、次は囜だ」

    こうしお和圊は、䞀晩かけお䞖界を歩いた。栞戊争ずいう人類最悪の悪倢を、䞀人の老人が、たった䞀台の電話機で未然に防いだのだ。
    合蚈六時間。ほんの十数人ぞの電話。

    「 囜際電話の料金、いくらになるかな。局に盞談しおみるか。たあ、払っおくれないよな」

    䞀段萜しお玄米茶を啜っおいた和圊は、重い腰を䞊げた。カヌテンを開け、戞を開け、冷え切った朝の空気を胞いっぱいに吞い蟌んで、背䌞びをした。
    「朝か、久しぶりの朝だ  」

    それは朝だった。春だった。鳥が鳎き、薄い光が四畳半の畳を照らし始める。
    䞖界の朝。
    郜䌚村にも、等しく朝が来た。

    ――しかし、雲だけが、䞍機嫌そうに、どんよりずただらに曇っおいた。


    Episode 2-8 䟝存の代償

    “キヌンコヌンカヌンコヌン”チャむムが鳎った。ずいっおも、小孊校のチャむムではない。䞭孊校のチャむムでもない。高校のチャむムでもない。単なる䌚瀟の昌䌑みのチャむムであった。

    「さあ、ランチタむムだ」
    「そのサンドむッチ、自家補か 矚たしいな、俺なんおい぀もデリの残り物だよ。」
    「なあ、䟋のプロゞェクトの続き、ランチしながら話さないか」
    「マネヌゞャヌ、ちょっず聞いおくださいよ。今朝の通勀途䞭で  」
    「誰かコヌヒヌの補充を頌めるか セルフサヌビスなのはわかっおるんだが、手が離せなくおね。」
    䜕ずも隒々しく、誰もが自分のこずだけに倢䞭なオフィスであった。

    「あら、桜谷さん、今日も独りがっちで食べに行くの。」「誰かほかの人ず食べに行けばいいのに。」䜕ずも嫌味ったらしい瀟員の蚀葉を背䞭に济びながら、友子は䌚瀟を出た。

    道をすれ違う人々。それに比䟋しおごみが絶え間なく投げ捚おられおいた。友子はそれをよけ぀぀道を歩いた。
    埌ろから誰かが“ドン”ずぶ぀かっお来た。友子は跳ね飛ばされ、道に転んだ。ぶ぀かっお来た男は友子のハンドバッグをひったくり、逃げお行った。

    友子「誰か、あの人を捕たえおヌっ泥棒ヌっ」

    誰も興味を持たなかった。泥棒を芋るどころか、桜谷を冷たい、凍り砕けるような目で芋埗た。その時、逃げお行った泥棒が突然立ち止たった。芋るず、泥棒の前に腰の曲がった、匱々しい老人が杖を぀いお立っおいる。歳は歳代埌半に芋えた。その老人は泥棒に䜕か話し掛けた。するず泥棒は友子の方に歩いお来お、「すみたせんでした。自銖しおきたす。」ずハンドバッグを返した。

    「爺さん」ず友子は笑顔になっお叫んだ。
    「やあ、婆さん、元気かい。」そう、老人は、倉わり果おた和圊なのであった。

    二人は郜䌚村駅前の閑かな喫茶店でコヌヒヌを飲み、サンドむッチを食べおいた。店内は孊生たちで溢れおいた。

    友子「でも、退職しおからもう䞀幎経ったのね  。䜓、ちょっず匕き締たったよく眠れおる」
    和圊「ああ、苊劎が倚いのかな、結構やせたよ。たあ、歳だしね。でも婆さんは、い぀も倉わらず優しいね。ありがずう。」ず和圊。

    「こちらこそありがずうね。」ず友子。「でも、䞖界はなんだか、倉わっおしたった。」

    和圊「その事なんだが 。」

    和圊はコヌヒヌを䞀口すすり、話を続けた。

    和圊「半幎前、君からヒントをもらい いや、もずい、私の自分の遞択で、あの倧戊を止めた。しかし知っおいるず思うが、その埌たた玛争が䞖界のあちこちで起きお来た。それで私がたた喋るず玛争は止たった。ずころが私が喋る事をやめおいる䞀日の䞭の十数時間の間に、たた玛争が始たっおしたうのだ。この街でもそうだ。私が喋るのをやめるず、皆喧嘩を始める。ごみを捚お始める。盗みを始める。たるでわしの声を聞く事によっお今たで抑制されお来た悪が爆発する様だ。この番組を初めおからずいうもの  。」

    友子「それは違うよ。爺さんのせいじゃないでしょ。みんな、自分の刀断で動ける倧人なんだから。
    䜕十幎間も貯められお来たこの瀟䌚のひずみがあらわになっお来ただけだず思う。
    爺さんがあの番組をやっおいなくおも、きっずこうなっおいたんだず思うよ。」

    和圊「婆さんは、い぀も優しいね。ありがずうね。」

    友子「仮にもし爺さんの蚀う様に、みんなの抑制された゚ネルギヌが爆発しおいるのだずしおも、それはそれでどうでもいいよ。
    人間はそれだけ匱い生き物なんだ、ずいう事でいいよ。
    そのうちきっず、みんな気付く時が来るわ。」

    和圊「しかし、わしずしおは責任を隠せない。そこで いや、たあ、そんなずころだ。」

    友子「明日から16時間攟送に増やす、っお聞いたよ。」

    和圊「ああ 知っおたか。婆さんならやっぱり知っおるよね。ずいうわけで、局に私専甚の泊たれる郚屋を甚意しおもらったから、通勀の疲れもない。なんなら寝ながら攟送もできるんだ。安心だよ。」

    友子「䜕よそれ16時間なんお。今ですら10時間でしょもう、寝お起きお食べお喋るだけじゃないただ喋ればいいっおもんじゃないの。爺さんが喋りたいこずを喋りべりたい時に喋らなきゃ、意味がないのお願い爺さん、考え盎しお、そんな事しおたら倒れおしたうわ。」

    あたりの声の倧きさに呚囲の客が振り向いた。

    和圊「倧䞈倫、私は倧䞈倫だよ、ありがずう。私がしたくおするこずなんだよ。考えおみれば、今たでの䞀幎間、私は䌚おうず思えばいくらでも婆さんに䌚えた。これからはそれも難しくなるかもしれないが。」

    先ほど、友子の倧きな声でこちらに泚目した客たちが、和圊の生声を聞いた瞬間、䞀斉に動きを止めお聞き入っおしたう。

    友子「そんな悲しい事蚀わないで 。たるで今にも死んじゃうみたいじゃない。爺さん、戻ろう。昔の生掻に戻ろう。普通の人間になろうよ 。私を泣かせるんじゃないよ」

    和圊「婆さん、泣くなよ。君はただ若いんだ、矢厎君だっおいるじゃないか。」

    友子「矢厎君は半幎前に䌚瀟を蟞めたわ  。」

    和圊「えっ、そりゃどういう事だい。」

    友子は手で涙を拭っお蚀った。

    友子「今、矢厎君は  。」

    ― 第章・完 


    画像
    暗黒街

    第章 倧信

    Episode 3-1 ものたね垫

    暗黒街に倜が来た。ゎミず糞尿の溢れる街。暎力ず煙草の溢れる街。酒ずゲロの溢れる街。隒音ず嘲りの溢れる街。麻薬ず金のあふれる街。死神ず悪魔の街。砎滅ず地獄の街。呪いず戊慄の街。機械ず人間の街。
    各自付け足しがあるならいくらでも蚀うが良い。芁するに、そういう街なのだ。人類の玠晎らしい財産。先人の最高の遺産。ここに来ない奎は人間じゃない。生きながらにしお埗られる倩囜。宇宙最高。

    日に10人、殺される街。その5倍の人数が、倱螪する街。皆で行こう、暗黒街。いい店があるよ。ボロ板通りのボロ橋のふもずのキャバレヌ「アフレむド」。50名様OK。階垭有り。さあさあ、もっず奥ぞ。今倜はもう垰さない。あんたにゃ垰る家もない。氎割り杯䞇円。ビヌル本䞇円。煙草に火を぀けたしょう。皆で地球を燃やしたしょう。もちろんショヌもやっおるよ。歌でも聞きたすか。䜕あっ、そう、ものたねの方がいいっおえっ、誰もそんなこずは蚀っおないではでは登堎、圓店の切り札、デビュヌ6ヶ月なのにスキルはど新人、『スパむシヌ矢厎』でえす

    倧信はそこに居た。玫色の壁、ゞャンプすれば頭を確実にぶ぀けおしたう䜎い倩井、ニキビも目立たぬ暗い照明。䞉歩歩けばはみ出すステヌゞ、前の出挔者の唟で音のこもったマむク、趣味の悪いチュヌリップ柄の緞垳。客の数は二十人。内蚳は、ギャングが人、その恋人人、煙草ず口玅ずアむシャドヌずダむダの指茪が自慢のオバハンが人、その䞭に葉巻ずグラサンずナむフの傷跡が売り物の、代埌半で䞞刈りのゎツいプロレスラヌのような男がドカンず居る。そう、こい぀がここら蟺を占めおいる、ダクザの謙吟だ。

    倧信が立っおいるステヌゞの裏で、若い店員たちが喋っおいた。

    「アチャヌ、謙吟さんが来おる。矢厎の奎、可哀盞に。」

    「謙吟さん、よっぜど矢厎が気に食わねえんだな。矢厎が出るたびに野次を飛ばしお、邪魔しやがる。」

    「こないだなんかさ、グラスのワむンに火を着けお矢厎に投げ付けたのよ。」

    「今日は䞀䜓どうなる事やら。」

    倧信は声のものたねがたいそう䞋手だ。その䞭でも特に䞋手なのが、今流行の「ワヌルド爺さん」のものたねだ。口調はそっくりなのだが、しかし、声がどうしおも真䌌できない。たあ、珟実にこの䞖界のなかのどんな有名なものたね垫でも和圊の声をそっくりに真䌌をし、本人ず同じように人々を感動させられるものはいない。しかし、倧信はどういう理由があっおか知らんがずにかくそれを目指しおいるらしい。ただ、ふざけた気持ちでやっおいる蚳ではない事は、倧信の目を芋れば分かる。

    ずいう蚳で、倧信は今のずころ、声ではなく動䜜や口調に頌っお、ずりあえずりケを狙うしかなかった。倧信の持ち時間は分間。もうものたねも䜳境に入る頃だずいうのに客は誰も笑っおくれない。でも、本圓に誰も笑わないなら、ずっくにクビになっおいるだろう。しかし、よく芋るず客は皆、口を抌さえ、吹き出したいずころを懞呜に抑えおいるのが分かる。

    では、なぜ声を出しお笑っおくれないのか

    そう、謙吟の目が光っおいるからである。倧信がものたねをやっおいる時に笑うず、謙吟がキレお暎れだす。それが怖いのだ。

    しかし、今倜の謙吟は珍しく䜕も蚀わず、ドカドカず足螏みをしおいるだけであった。

    「それでは最埌に、今䞖玀最倧の偉人、矢厎倧信ヌヌっおっず違いたした、内山歊倫、どうやったら間違えるんだっ぀ヌの、じゃあ、聞いおクレオパトラヌっ」ず倧信。こらえきれずに止むを埗ず小出しで吹き出す芳客。

    ず、突然、謙吟が立ち䞊がった。

    怅子の䞊に宝石のちりばめられた靎を履いた短い足を片方乗せお、葉巻で䞀回呌吞をしお、カミ゜リの様な目で倧信を捕えお離さず、わざずらしく、嫌味ったらしく、謙吟は蚀った。

    「アッハッハッハッハッ、ゲラゲラ、クスリクスリ、こりゃすごいですな、ヒャッハヌヌッ、あヌあ。さあ、どうぞ、芋せお頂きたしようじゃないの、内山歊倫さんね、君みたいな青二才がですか。聞いお笑わさないで䞋さいよ、ものたね垫さん、いい気になっおいたすね、こっちぞ来なよ、おめヌさんのきちゃないオケツにゲロしおあげようか。 来るたんびに䞍愉快な気持ちにさせんじゃねヌコンナロヌ 。顔貞せよ、こっち来やがれっおんだよヌ、ぶっ殺しおやるからよヌ、このアホンダラヌナメおんじゃねヌよオンドリャヌヌ」

    謙吟ほどの倧物なら、やたらず声で脅すこずなど本来は絶察にしない。぀たり、謙吟は蚈算しお、倧信を匄んでいるのだ。

    客が静たり返った。謙吟は立ったたた、隣のテヌブルで恋人ず䌚話しおいたギャングの兄ちゃんの銖筋に葉巻を圓おお火を消した。
    ギャングの兄ちゃんが絶叫した。ダクザずギャングはこの街では盞いれないはずなのだが、謙吟は別栌で絶察なのだ。

    それを気にもせず、いや、気にはしただろうが、震える声で「み、皆さん、今晩は。わ、私が内山歊倫です  」ずボ゜ボ゜蚀った倧信だったが、
    謙吟がギャングの兄ちゃんを぀たみ䞊げ、胞元にナむフを突き付け、「君がものたねをやめりゃ、圌は生き続けおいられるよ。」ず蚀った瞬間に、マむクを床に叩き付け、半分泣き叫ぶ様に、

    「もうやめろヌっ䜕だっお俺を苊しめるんだヌっ俺が嫌なら別のバヌぞ行きゃいいだろヌっ俺を殺しゃあいいだろヌっ謙吟、遊ぶための店に来お遊んでんじゃねヌっ」ず蚀っおステヌゞの脇から逃げ出した。

    「お、おい、矢厎」
    「あヌあ、䜕お野郎だよ。」

    若い店員の声をよそに、倧信は階段を駆け降りた。
    謙吟はゆっくり歩きながら倧信の埌を远いながら蚀った。謙吟の歩くスピヌドは、倧信の党速ダッシュよりも速い。
    倧信は恐怖ゆえに、血糖倀が䜎䞋したかのように、自分も気づかぬうちに走る速床が遅くなっおいるのだ。
    「ハッハッハ、逃げるのか、匱虫ヌっ。」「匱虫ヌっ。」「匱虫ヌっ。」「匱虫ヌっ。」倧信の耳をこの蚀葉が支配した。

    「匱虫 」倧信は涙を垂らしながら、走った。


    Episode 3-2 激流の川岞

    倧信はバヌの倖に飛び出し、薄暗く现い倜の道を振り返りもせず懞呜に走った。䞀息おいお謙吟も倖ぞ飛び出し、子分が乗っお埅っおいた挆黒の倖車の助手垭に乗った。乗るなり謙吟は二人の子分に蚀った。
    「奎がくたばるたで远い掛けおやれ。」「分かりたした。」「分かりたした。」子分たちはそう蚀い、䞀人は運転をし、もう䞀人は謙吟に新しい葉巻を枡し、火を着けた。
    「畜生、車か、でもラむトが道を照らしおくれるから有難いな。」ず倧信は思い、倧通りぞの道を曲がった。

    謙吟「倧通りぞ逃げる気だな。よし、今倜はずこずん遊んでやるぜ。おい、ほかの奎らも電話で呌べ。車台でいい。」

    子分「たったそれだけでよろしいんですか。分かりやした。」

    倧信は倧通りぞ出た。ネオンだらけの倧通りの歩道で、貧盞なタクシヌを捕たえた。

    「ちょっずお客さん、この車はラブタクシヌなんで、ペアでご乗車お願いしたす。」ず脂ぎった顔の運転手。

    そう、このタクシヌは埌垭が党お色グラスで芆われおいる、今流行のラブタクシヌである。

    倧信「いいから早く出しおくれ」

    運転手「いえ、降りお頂きたす。」

    倧信「殺されるぐだぐだ蚀うな、早く出せ」

    運転手「あっ、今私に呜什したしたね。慰謝料䞇円払いなさい、さあ今すぐ、ただちに。」

    倧信「もう知らねえぞ、早く出さなかったお前の責任だ。」

    運転手「䞀䜓䜕が起こるんですか。」

    倧信「バックミラヌを芋ろ。」

    運転手「えっ  、ワッヌヌ」

    その途端、震床䞃ほどの衝撃がタクシヌを襲った。挆黒の倖車に远突されたのだ。

    「ピ゚ッヌヌ」運転手は悲鳎を䞊げ、アクセルを螏んだ。

    運転手を乗せた倧信のタクシヌ、おっず違った、倧信を乗せたタクシヌは、台の挆黒の倖車に远われ囲たれながらも、なかなかカヌチェむスを健闘した。倧信ず運転手は、友情が芜生えおしたうかず思われるほど協力し、立ちはだかる壁を次々ず突砎しおいったかに芋えた。しかし人はたんたず眠にはたっおいる事に気が付かなかった。

    「よヌし、ずうずう川に远い詰めたぞ。生け捕れ。」ず謙吟。台の挆黒の倖車は川の岞蟺にタクシヌを囲った。タクシヌの目の前に流れるは、海峡の倧枊のような激流の川。メヌトルの厖。川は深い。冷たし。䞡隣には挆黒の倖車が台ず぀。埌にも、暪に䞊んだ倖車が台。最悪の状況。

    倧信「なるほど、俺の車をこの川ぞ蹎っぜろうっお魂胆か。」

    運転手「こらこら、この車はあなたのじゃありたせんよ。」

    二人で溜息を぀いおいるず、謙吟ず子分の十数人が車を降りおやっお来た。

    「俺は事をじらすのが嫌いなたちでな、今すぐ人たずめお泳がせおやるからよ。」ず謙吟は窓の倖から、䞭に居る倧信ず運転手に蚀った。

    倧信「ちょっず埅お。俺はどうなったっお構わんが、この車ず運転手は俺に脅迫されおここたで来ただけなんだ。逃がしおやっおくれ。」

    運転手「そうです。ワタスは運転手です。この人は本圓のこずを蚀っおいたす。」

    「じゃあ、話は決たりだな。」謙吟はそう蚀うず、パチンず䞀぀指を鳎らした。五人の子分が倧信ず運転手を぀たんで捚おる様に川ぞ攟り蟌んだ。
    「今日は颚呂に入る手間が省けお、おめでずう」ず謙吟は蚀い、ずぶぬれになった倧信ず運転手を芋お子分ず共に笑い、挆黒の倖車に乗り去っお行った。

    倜の小川は結構冷たい。もろもろの汚染物質を含んだ氎をたらふく飲んだ二人は、やっずの思いで川岞に䞊がった。

    倧信「うおお寒いハックション」

    「でも殺されなくお良かったですね。」ず運転手。二人はそのたた砂利の川岞ぞう぀ぶせに倒れ、笑った。

    倧信「でも笑い事じゃない  。」

    運転手「え」

    倧信「殺されなくお良かったず喜んでる堎合じゃない  。俺は今日改めお自分の匱さを痛感した。」

    「そうずも、お前は匱いのさ。」

    ず誰かが蚀った。

    倧信は起き䞊がった。ずたんに、䜓䞭を激しい戊慄が走った。

    目の前に立ちはだかるは、なんず謙吟

    子分は居ない。謙吟は巊手で倧信の銖を喉茪で぀かんで固定し、そのたた軜々ず持ち䞊げるず、反察の手で倧信の顔を殎った。これは痛い。錻血が吹き出した。

    謙吟「誰が川から䞊がっおいいっ぀ったのかよ。川ぞ攟り蟌たれただけで枈んだず思っお安心しおたんだろ。そこぞ俺がもう䞀床珟れた。これが俺のやり方さ。これからが本番だ」

    倧信「た、助けお䞋さい  。」

    謙吟「おっずヌ、遂に本性を珟したか。今たでかっこ぀けお『俺は実は芯は匷いんだぜ』みたいに振舞っおたんだろう。しかし、実は、お前は匱虫なのだ。匱虫の矢厎」

    運転手「お願いです、そのあたりで蚱しおやっお䞋さい。」

    謙吟「そうはいかねえよ。俺を怒らせたこい぀がどう考えたっお極悪人だろ。」

    倧信は殎られ、たた川に攟り蟌たれ、匕き䞊げられ、たた殎られ、たた川に攟り蟌たれ、匕き䞊げられ、殎られお、気を倱った。
    謙吟は運転手の腹にも䞀発ビンタを食らわすず、「あヌ぀たんなった」ず笑いながら、今床こそ、去っお行った。
    川岞には、ずぶぬれの、血だらけの、う぀ぶせに暪たわった倧信ず、腹を抱えおのたうち回る運転手が残された。


    Episode 3-3 匱虫の蚘憶

    奎らの声が、ここたで聞こえお来る

    「やあヌい、よヌわむしヌ。」 「よヌわむしヌ。」 「ひろのぶ、よヌわむしヌ。」

    「えヌん、おばあちゃん、きょうもみんなにいじめられたよヌ。ねえおねえちゃん、おばあちゃんはどこヌ」「倧信、お婆ちゃんにはもう䌚えないんだよ。ねえ、䞀緒にお線銙䞊げよう。」「やだよヌ、おばあちゃんに䌚いたいよう 。」

    「倧信、お前自転車乗れないんか。ドッゞボヌル知らないんか。」「䜕それ、折玙なんか持ちよっお、あやずりなんか持ちよっお、女ず遊ぶんか、やヌい、やヌい。」「あヌっ、たた泣きよった、泣き虫、匱虫、䟿所虫、腐っおこえだめ萜ちおもっず腐れヌっ。ハハハっ。」

    「䜕だこい぀、図䜓でかい割りに倧した事ないぜ。錻の頭䞀発殎ったら錻血出しお半べそかきよった。」「喧嘩した事ないのか、こい぀ヌ。」

    「おい、䜕でぶ぀かっおくんのかよ。いおヌじゃねヌかよ。䜕ですぐ謝んねえんだよ、ちょっずこっち来いよ、ちょっず財垃芋せおみろよ。」「おい、逃げんなよ。バカかこい぀、走っお逃げようずしおやんの。こっちは自転車だぜ。逃げられる蚳がねえだろヌが。」

    「ねえ、どうしおあなたが私に謝るの。どうしおそういちいち頭を䞋げるの。あなた私に䜕か悪い事したじゃあね、さよならヌ」

    「矢厎君は小孊生の頃、あの町はずれの教䌚の牧垫ず芪しくしおいたね。それで、君には同い幎の友達が出来なかった。その牧垫は悪くない。悪いのは君だ。いいかい、君はあれ以来、倧きく人生のコヌスを倖しおしたった事になるんだよ。もう私は䞀切関䞎しないからね。」

    「本圓に君にはあきれたね。い぀も他人に迷惑ばっかり掛けお、自分しか芋぀めおいない。䜕が『倪平掋に䌝説の島が沈んでいる』だ。そうやっおい぀もい぀も空想の䞖界に入り蟌んで、今回は実際に行こうずしおしたった。しかも嫌がる友達を五人も巻き添えにしお。本来なら粟神病院行きだよ。私も長幎教員生掻をしおいるがね、君の様な生埒がよく今たで生きお来られたね。これはありえない事だよ。」

    しかし自殺はしない。でもこの事が生涯俺の心に染み付いお離れない。

    「いくら泣いおも いくら怒っおも 俺は人間で
    人間であり続けなければならない事の悲しさ」

    ――もう、倧信は匱虫ではない。


    Episode 3-4 埗られた声

    「お客さん、倧䞈倫ですか。」

    運転手に揺り起こされ、倧信は目を薄く開けた。たぶたが腫れおおあたり開かない。䜓䞭が痛い。倧信は蟺りを芋た。病院のベッドで優雅に寝おいるず思ったが、気を倱った時ず同じ状態で同じ川岞に居るのであった。しかも、ただ空は暗かった。倧信は運転手に支えられお起き䞊がった。

    倧信「ハ ハックションゎホ、ゎホゎホホン。 䜕だ 、ずぶ濡れじゃないか。颚邪でもひいたかな。」

    頭がボダヌッずする。熱がある様だが、それだけではないようだ。䜕だろう声は、ガラガラにかれおいる。

    運転手「倜の冷たい川に䜕回も攟り蟌たれおいたしたからね。もっずも、気絶から目を芚たすために私がバケツで頭から氎をぶっかけたせいもあるでしょうが。」
    倧信「あ、そう 。どれ、今䜕時かな ゎホン、䜕だ、䜕時間も眠っおる様だったが、党然時間が ゎホン、経っおないや ハ、ハ、ハックショヌン」

    その時、倧信の耳に䜕かが響いた。䜕だろう

    運転手「そうですね、分くらいしか経っおいたせんよ。」
    倧信「぀たらないな ゎホゎホ、あヌ、しんどい。参った参った。」

    たた䜕かが耳に響いた。䞀䜓䜕だろう

    「たさかひょっずしお 。」ず倧信は蚀い、ガラガラの喉を締め付ける様に銖に手を圓お、舌を现め、

    「どうだい」ず運転手に蚀った。

    ずたんに運転手に倉化が起こった。圌の党身は震え、鳥肌が立ち、心臓が枩たり、笑顔が満ちあふれ、目が最んだ。

    運転手「うおヌっそ、それは 。その声は 。ワ、ワ、ワヌッワヌルド爺さんだ 。」

    倧信「そうか 。ゎホン、僕が枯れた声の状態で爺さんのたねをするず、ゎホゎホン、そっくりになるのか 。ハクショヌン や、やったあヌっ 遂にやったぞヌっ」

    運転手「すごいじゃあこれから、謙吟を改心させるんですか。」

    倧信「それはいいアむデアかもしれないな。そしお、その足で僕はこの街から去る。」

    運転手「この街を出お、どこぞ行くんですか。」

    倧信「郜䌚村ぞ戻る。おっずそれからゎホン、颚邪を䞀旊、ずりあえず治す。 君のおかげだ、 ハックション、皮肉な事に謙吟のおかげでもあるが。やはり、圌に盎接お瀌を蚀わないずな。ずにかく、有難う。生涯忘れぬ瞬間だ。」

    運転手「あなたの目的は知らないが、その力を悪甚しない人である事は私にも分かる。頑匵っお䞋さい。」

    「では、さらば。」ず倧信は手を振り、闇倜を去っお蚀った。運転手は倧信の去り行く様子を芋おいた。

     が、倧信はたたすぐ運転手の所に戻っお来た。そしお蚀うには、

    「腹が枛っおしたった。どこかで䞀杯やらないか。」

    今倜は、賑やかになりそうだ。

    ― 第章・完 


    終章 薄れゆく光の䞭で

    Episode 4-1 干物

    和圊の䜓力は今や極限に達しおいた。

    連日の16時間攟送には、最初の頃こそ、䜕ずか耐えおいた。

    だが、その「16」ずいう数字も、やがお効果がなくなっおきた。
    和圊は食事䞭や、甚を足す時間たでも含めお16時間を通しお攟送し、日のうちの残り時間はたずめお確保出来たので、睡眠時間はかろうじお確保できおいた。

    しかし、和圊が寝おいるその時間の間にもの戊争が次々ず始たる様になっおしたったのだ。

    だからずいっお、攟送時間をこれ以䞊長くしおは、和圊の生呜に関わる。
    そこで、16時間郚通しの攟送ではなく、時間の攟送ず時間の䌑憩を繰り返す、分散型にした。これによっお、たずたった睡眠が取れなくなり、過劎になった。

    もちろん、それ以前から、劎働基準法などは完党に無芖し、ラゞオ局のプロデュヌサヌから瀟長はもずより、省庁たでも和圊の声で説埗しおいたわけだから、和圊の意志以倖に、止める手立おがない。しかし、今やその本人の意志すらも、本人がコントロヌルできなくなっおいた。

    和圊の心は、そしお䜓内の諞噚官は容赊なく砎壊され、むしばたれ、あの元気なテンポの良い喋り口はどこかぞ消えおしたった。普通に話せる䜓調の良いずきもあったが、今ずなっおは、錻歌や、差別発蚀や意味䞍明の発蚀、怒鳎り声やひき぀った笑い声、ありずあらゆる皮類の声が、和圊の口からは発せられた。

    それでも、䞖界䞭の人々は、和圊の䜓調のこずなど気にせず、攟送を聞き続けた。

    “さおず  、ああ、今倜もク゜頭痛がひどい。少しめたいも、フ  する。ゎホン  。それでは  ず  、地面が揺れるや぀、あれ䜕お蚀っただろうか  。ゎホン  。えっ聞こえたせん、監督さん、もう少し倧きな声で蚀っお䞋さらんか  。えあ、そうそう  。ゎホン、地震、だったか。そうか  。ゎホンゎホン、  地震の話題にしよう  。十五幎ほど  ヒヌ前からら、「もうすぐ  、この地方は  ゎホン。あの癟䞃十 倱瀌、間違えた。すたん  蚱しおくれ、お願いだ  。そうか、蚱しおくれる  か  。良かった  。そうだ、癟幎前の倧地震以䞊の芏暡の地震の、ハヌ、ハヌ、フヌ  、ゎホゎホゎホゎホゎホゎホ、ゎホゎホン。被害を  受  けるだろう  。ず蚀われおきたヌすたん  。吐き気がする  。ちょっず埅っおいおくれ  。りェッ  。

    やあ、埅たせ  たっねえっ  。どこたでゎホゎホゎホゎホゎホン、ハヌ、ヒヌ、ゎホゎホゎホゎホゎホン  。すたん、たた吐き気が  がヌ、
     俗に  孊  う者ず呌ばれおうる人々の  話からよれば、ここ四、䞉幎なう぀ぬくヌ  あるわかの柿の朚が  ゎホン、ゎホゎホゎホ、ルで起  こる負けそうだ。予ピになりお、  死者は皆  二億䞇人お  こそはけおすヌゎホゎホゎホ、ゎホンヌゎホンヌヌ実に恐ろしいじゃあないず。いや、  殆  どの  人がそう  思  っおいるだろうゎホンゎホン、う  。

     しかし、本圓に倧地震がおそいのなら  ど昔の有 ゎホゎホホン、アヌ、名もよく知らずりあおいのゲ蚀ものが、人類滅亡を、人類滅亡を、人類滅が  う  いる。皆ゎホン、ゎホゎホゎホゎホゎホゎホゎホゎホゎホホゎホゎホン、もふ止めはひおうろヌヌええい、しっかりせい、和圊 しったった、本ゎホゎホン、たっず。すたんすたん、眠いので蚳の分からん事を蚀っおいるが、受けおしたっおも困る。しかし、今床来る倧戊争 戊争―もう駄目だ、くたばる前に、ヒヌ、ゎホン、䞀生懞呜喋るから、聞いおくれヌ ゎホン、私がこの䞖に珟れおしたった事で、お詫びを申し䞊げる。人々の怒りを抑制し これは恥だ。恐い。恐すぎる。私は参った。今、悲しみの䞖界 。悲しいよ 。でも、悲しみがなければ、喜びずいう蚀葉もなく 。ゎホン、悲しみがあるから、喜びがあるのだ。その事を忘れないで、これからの 、日々を 、耐えお 。くださ  い  ”

    Episode 4-2 孀島

    囜立郜䌚村䞭倮病院は今、たさに人間の海の䞭に隔離された孀島だった。

    テレビ局・ラゞオ局・新聞瀟・雑誌瀟の車は環瀁――ずいうにはきれい過ぎお耒め過ぎだが――のように十五階建おのその茶色い倧朚の幹を取り囲み、四方八方花火の様にフラッシュが飛び亀い、ガヌドマンが悪戊苊闘し、その人波の倧海の果おにはそこに厖があるが劂く車の矀れが留たり、けたたたしい䞍協和音を鳎らしおいた。人波の䞭にぜ぀んぜ぀んず出店が䞊び、小さな掻気のある町を幟぀か圢成しおいた。プラカヌドや扇子、ペンラむトを持った和圊のファンたちが列をなし、老若男女が螊り狂っおいた。

    「皆さん、遂に、我々TEN取材班の䞀幎にも及ぶ突撃レポヌトがクラむマックスを迎えたした本日午埌十時䞉十二分、『ワヌルド・ディスクゞョッキヌ』を攟送䞭の内山歊倫氏が突然倒れ、ここ囜立郜䌚村䞭倮病院に運び蟌たれたした。珟圚の内山氏の病状・病名等はただ発衚されおはおりたせん。

    そんな事より、もっず重芁な事がありたす。そうです、内山氏の正䜓が近日䞭に、明らかになるかも知れないのです。そんな蚳で、善良なる䞀般垂民は、耇雑な心境です。ワヌルド爺さんのあの声を聞きたい、しかし、爺さんが死ねば遺圱の写真が芋られる、ずいう颚にです。それでは只今23時になりたしたので、ここでひずたずです。チャンネルはどうかこのたた、お芋逃しなく」

    圌ら人間、いや、もはや獣たちの、青癜い二぀の炎の瞳の矀れが、病院の裏口から駆け付けた友子を、震え䞊がらせた。

    この恐怖に負けおしたえば、䞀床座っただけで、すくんで二床ず立おなくなる。だから友子は、日をたたいでも、ずっず立っおいた。

    䞀床壁に寄り掛かろうずするものなら背䞭を぀かたれる。だから、壁にも寄り掛からなかった。

    泣いおしたっおは䜓が干からびおしたう。だから、泣かなかった。

    本来ならば和圊のために涙が出そうになるものを、友子の涙は別のもののために出そうになっおいた。即ち“獣”のためである。

    和圊がその胜力を䞖間に発揮した時から、䞖界のネゞが本、抜けおしたった様だ。
    䜕本も抜けた蚳ではない。たった䞀本抜けただけなのだ。

    ただそれだけなのに、䞖界はこんなになっおしたった。

    海の向こうからも、その獣たちの泣き声ず芖線は届いお来おいた。しかし友子が今居る堎所は違った。神聖な、いやもずい、普通の空気に満ちおいた。

    「枩たっお䞋さいね。」ず蚀っお若いスタッフが、友子に緑茶を差し出した。
    「ありがずう  。」ず友子は蚀い、湯呑みを受け取った。熱い茶は瞬く間にぬるた湯ずなり、友子の䜓枩に調和した。

    その個宀には友子、院長、担圓医、看護婊、ワヌルドラゞオ局の関係者の䞀郚が居た。
    窓の倖の暗闇は、明るいはずの宀内に浞透を始めおいた。隙間のないその個宀の䞭倮に、䞀枚の干物が暪に眮かれおいた。もしほかにその干物を芋た人が居たずしおも、䜕の䞍思議はない、単なる干物じゃないかず思うに違いない。それほどたでの干物だった。

    しかしその干物は、普通の干物ではなかった。蚌拠を蚀えば、その干物はかすかにではあるが、脈動しおいた。
    そしお、瞄で瞛られるように、䜕本もの半透明なチュヌブに瞛られおいた。しかし、それ以倖はやはり単なる干物であった。
    そしお干物は、その宿呜の通り、これから氞い眠りに就くずころであった。

    その個宀のドアを突き砎らんばかりの勢いで、誰かがなだれ蟌んできた。二十代前半の男で、春だずいうのに黒いペレペレの䞊着を着お、髪は長くはないが敎えず、ゞヌンズ姿で転がり蟌んだ。党員が泚目したが、もちろん、真っ先に圌に声をかけたのは、友子だった。

    「矢厎くん」友子が悲しくも嬉しそうに蚀った。

    倧信「桜谷さん、よく今たで頑匵ったね。ありがずう。今床は僕が頑匵るから、少し䌑んでおいいからね。」

    ずたんに友子の目に涙があふれた。この涙なら、圌になら、芋せおも倧䞈倫だ。
    友子は倧信に抱き寄り、静かに倧信の胞の䞭で䌑んだ。数秒間の䌑息だったが、䞀晩分の安らぎを埗た気がした。

    倧信「お䞖話になりたす。足立さんの具合はいかがですか。」
    友子も顔を䞊げ、担圓医の方を芋た。

    担圓医「はい。それが極床の過劎でしお、珟圚は昏睡状態なのですが、残念ながら珟圚以䞊の回埩は困難です。」

    倧信「はあ。」

    担圓医「この状態が続けば、本来ならもっず䜓は衰匱せざるを埗たせんが、薬の䞖話になりながらも珟圚こうしお生きおおられるずいう事は奇跡です。
    おそらく本人の意志ずいいたすか、あなたたちが揃っお駆け付けるたで、足立さんも頑匵ったのでしょう。
    ただ生きおやるんだ、ずいう意気蟌みず、ただ生きおいるんだ、ずいう喜びが䌝わっおくるようです。」

    友子「爺さん、埮笑んでる 」

    倧信「間に合っおよかった。お䌺いしたいのですが、ほかに合䜵症ずかは  。」

    担圓医「ほかの病気ずいう事でしたら、本人の䜓調的に、行なえる怜査は限られおいたす。ただ残念ながら、自力で回埩できる状態ではないので、おそらく今倜が山だず思いたす。」

    その時、ワヌルドラゞオ局の局員の䞀人が個宀に入っお来た。

    局員「只今ニュヌスが入りたした。足立さんがもし聞いおいらっしゃるず、ゆっくり䌑めそうもない話ですので、皆さん䞀旊郚屋の倖ぞ  。」

    倧信「桜谷さん、䞀緒に聞いおくる爺さんの傍にいたければ、このたたいおも構わないよ。」

    友子「倧䞈倫。私も聞いおおく。爺さん、たたすぐ戻るからね」

    友子は、和圊の手を、折らないようにそっず、しかし匷く握り、そしお攟した。

    倧信ず友子はその関係者に぀いおいき、病宀の倖に出た。

    局員「実は  。」

    倧信「たた戊争が始たったんでしょう。それも倧芏暡な  。」

    友子「今床はどこの囜ですか。」

    局員「぀いに我が囜が戊争を始めたした  。たもなく局も囜の管理化になりたす。」ず男。

    倧信「やはり  。分かりたした。私にラゞオ出挔をさせお䞋さい。」

    局員「私の今の話、聞いおたしたかね足立さんならずもかく、無理ですよ。」

    倧信「でも、私はラゞオに出たす。どうしおも出るんです。」

    友子「矢厎くん」

    倧信は、友子を芋぀めお匷くうなずくず、ずたんに走り出した。そしお䟿所に駆け蟌み、甚具入れからバケツを出した。

    友子「矢厎くん  。」

    友子はキョトンずしおいたが、すぐにその衚情は、期埅ず確信が入り混じったものに倉わっおいき぀぀あった。

    倧信は䞊半身裞になり、ゞヌンズも脱いであらかじめ履いおおいた短パンになり、バケツに氎を汲み、䟿所の䞭でそれを頭からかぶった。
    友子は、ただ状況を完党には理解できおはいなかったが、もう䞀぀バケツを持っおくるず、早く倧信に氎をかぶらせようず、自らも䞊行しお氎を汲んだ。
    倧信は倜䞭の寒い䞭庭に出お氎をかぶり、たた䟿所に行き、今床は長いホヌスを抱えおたた寒い䞭庭に行き、ホヌスを䞭庭の氎道に぀ないで氎を党開に出し、友子はそのホヌスの氎を容赊なく倧信にかけた。頭から、背䞭から、構わずぶっかけた。
    倧信は、぀いでに髪も掗い、䜓から萜ちる氎をバケツに集め、ホヌスの氎をかぶりながらバケツの氎をかけ、身震いをし、それでもかぶり、ひたすらかぶり、ワヌワヌわめき、くしゃみをし、咳をし、止めようずする関係者たちを寄せ付けず、ただかぶり、かぶり続け、フラフラず膝から地面に着いたずころで氎を止め、半分泣くように錻氎をすすり、友子の肩を借りおペロペロ立ち䞊がり、咳を連発し、ワヌルド局員を芋据えお、「あ  い  う  え  お  。」ずガラガラの声を出し、舌を现め、

    「今すぐ私をラゞオに出しお䞋さらんか。」ず蚀った。

    ずたんに局員の䜓は震え、鳥肌が立ち、心臓が枩たり、笑顔が満ちあふれ、目が最んだ。

    「は  、はい、分かりたしたあ、䞀緒に来お䞋さいヌ」
    局員はそう蚀い、手元のトランシヌバヌで仲間を呌び、歩きだした。倧信はフラフラず、男に぀いお行こうずしながら、友子ず芋぀めた。

    「矢厎くん  。」ず友子。その目には、もう止たらぬ涙。

    「  ゎホン、君を䞀番悲したせおしたう  ゎホン。蚱しおくれなくおいいハックショヌン地獄ぞ萜ちる  ゎホン、べき行為です  。でも  、ハックショヌン、萜ちるなら、攟送の埌で  。」ず倧信。

    「お願いだから無理をしないで。矢厎くんたで倒れたら  。」友子は、もうそれ以䞊䜕も蚀えずに、床にくずおれた。倧信は友子の頬をなで、指で涙を拭うず、圌の手を優しく包む友子の手を、優しくほどき、髪をなでお、う぀むき、去っおいった。

    Episode Final

    病院の䞭庭を臚める、食堂に特別に蚭けられたスタゞオで、倧信はガりンにくるたり、折り畳み怅子に座り、長机にあごを乗せた。人々は街頭で、家で、静かに埅っおいた。
    「、、 」局員がカりントダりンを始めた。

    「内山歊倫埩掻蚘念『ワヌルド・ディスクゞョッキヌスペシャル』、皆様今倜もお楜しみ䞋さい。」ナレヌタヌが蚀った。そしお倧信は口を開いた。

    「  皆さん、今晩は。内山、ええっず 内山歊倫です。今日はちょっずお隒がせしたね。たったく、最近のニュヌスは いや、報道は、これだから困る。私はちょっず颚邪を匕いただけなのに、こんなに話が膚らんでしたうずは。
    過劎だずか噂されおいたね。私は倧䞈倫。ゎホン、倱瀌。でも、皆さん気を付けお。過劎は時ずしお人の呜をも奪う事がある。私の友人で、぀いこの間過劎で倒れお意識䞍明の昏睡状態、蚀葉が悪いが、たるで干物のようになっちたった者が居るんだ。今日は、先に旅立ずうずしおいる、圌のために喋るよ。
    今、午前䞀時半だ。早いがひずたずここで、宣䌝にしよう。今日の本題はその埌で。それでは六十秒埌にたた䌚おう。」

    䞖界䞭から拍手が起こった。たるで嵐の様だった。

    「戊争も実にあっけなく終わりたした。」ず局員の䞀人が蚀った。倧信が喋ったほんの数十秒で戊争が終わっおしたった。非垞にあっけない。

    コマヌシャルが終わり、たた攟送が始たった。

    「さお、戊争が終わったそうだ。良かった。
    ずころでさっきの友人の話だが、実はこの病院に居るのだ。名を足立和圊ずいう。もうすぐ死ぬ。過劎で死ぬ。
    圌は昔、ずいっおも぀い先皋たで、ラゞオ番組をやっおいた。ディスクゞョッキヌを。私の芪の芪くらいの幎霢だが、芪友だ。

    皆さん、私は今、倖来語を䜿ったよ。別に倉な事ではない。私はワヌルド爺さんじゃないからだ。足立和圊こそが、内山歊倫、本圓のワヌルド爺さんだ。
    私は、堎末のシロりトものたね垫の、矢厎倧信だ。爺さんの芪友だ。そしおもう䞀人、女性の芪友がいる。私たち人は、芪友だった。

    ワヌルド局の皆さん、倧倉悪いが、私は今から声を自分の声に戻す。そしお、二床ず私は爺さんの声を喋らぬ。聎取率も圓然䞋がる。でもだからずいっお俺の話を聞かなくなる奎は本圓のワヌルド爺さんのファンじゃない。本圓に平和を愛しおいない。勿論、聞き続ける奎も、最終的には駄目な奎ずいう事になるが。

     今、声を戻した。ガラガラだろう。さっき俺は咳をした。今、熱が八床五分ある。

    皆さんの疑問に答える。䜕故爺さんの声は、聞くず感動するんだろう。戊う意欲をなくすのだろう。

    爺さんは、実は超胜力者でも䜕でもなかった。党く普通の人間だった。声も普通の声なのだよ。超音波ずか、そういったものはない。

    それが良い声に、感動する声になっお聞こえるずはどういう事か分かるか
    芁するに私たちは、本来の声を忘れおしたったんだ。䜕十幎か䜕癟幎か昔の人間の普通の声からするず、私たちの声は、私たちがそれで普通だず思っおいる声は、遥かに、本来の人間の声に届かないんだよ。だから、爺さんみたいな声を聞くず、感動しおしたうんだ。

    今珟圚、爺さんのほかにも普通の声を持っおいる人は䞖界䞭に䜕人か、䜕千人か居る。僕自身の事は分からない。だが、私も、さっき蚀った女性の芪友も、普通の声の持ち䞻だ。

    だったらば、それら䞖界の䜕人かの人の声党郚に君らが感動しおもいいず思わないか

    ずころが違う。爺さんは、それらの人の䞭で、偶然「いい声」だったのだ。ほら、いい声の声優ずか、俳優ずか居るだろう。あれず同じだ。
    䜕故かそれだけで君らは感動しおた蚳だ。いわば錯芚をしおいただけだ。

    僕ずその女性も、最初は感動しおいた。しかしある日、䜕ずも感動しなくなった。その代わり、友人ずしお、久しぶりに聞いた時に懐かしく聞こえる様になった。爺さんはそんな僕らを「戻った」ず蚀った。その時は意味が分からなかったが、今は分かる。芁するに僕は「昔の人に戻った」ようなんだ。

    これは、いい人間、悪い人間ずいう意味ではない。声も、そしお心も。心は声ず぀ながっおいるのかもしれない。

    爺さんは喋った。戊争を䜕癟回も止めた。にも関わらずお前らは、爺さんが喋るのをやめるず戊争を始める。
    段々ひどくなっお、爺さんが喋らなきゃお前らは悪の道を歩む。ガキかよ。

    ゎミを捚お、殎り、盗み、殺し、戯れ、だたし、いじめ、お前らだけ滅びるんなら、俺は今すぐにでもそうなればいいずすら思う。
    でも、い぀も動物、怍物、そしお地球が、先に傷぀いおいく。お前ら、もうそろそろやめろよ。もう充分だ。
    もう俺も詩や随筆みたいにかっこ付けお戊争批刀なんかしない。だからお前らももういい。戊争やめよう。
    血ず血の争いだけじゃなくお、心の争いもいい加枛にやめよう。スポヌツも䌚瀟も、絶察に負けられないずか、戊争甚語を䜿うのはもうやめよう。

    信じたくないだろうけど、俺らはもう、末裔なんだ。もう埌がないんだよ。頌むよ。

    僕はもうこうやっお皆に話す事はないだろう。爺さんは倒れる前に、こんな事を蚀っおた。

    「悲しみがあるから、喜びがあるのだ。」

    そうだよ、たさしくその通りだよ。皆は喜びだけを求めおいる。でもそれは本圓の喜びじゃないんだ。
    皆はそれぞれ愛する人がいるず思うけど、「二人だけの䞖界」なんお狭い考えはやめおくれ。
    愛する人以倖の人も倧切にしよう。そうすれば皆を愛せるんだ。

    今をたいせ぀にしよう

    愛する人のために

    愛をたいせ぀にしよう

    愛する人以倖の人のために

    呜をたいせ぀にしよう

    人々たちよ 氞遠に 僕らに愛を 䞎えお䞋さい

    䞀぀の涙 叫び声 愛の日々 孀独な人々たちよ

    䞀぀の道を ただ歩み 疲れた矢先に

    やさしい光の䞭で

    黄昏の草原を 歩いお来た人々たちよ

    氎は柄んで きれいに柄んで 春の日差しは 照り茝いお

    人々たちよ 人々たちよ 䜕故君たちは 慌お急ぐか
    人々たちよ 人々たちよ 䜕故君たちは 慌おふためく

    昌䞋がりの 南颚が 頬に吹き付く いず嬉しげに

    ふず気が付いお そよ颚に 埮笑んでみる ただ寂しくお

    人々たちよ 人々たちよ 䜕故君たちは 共に歩たぬ

    人々たちよ 人々たちよ 䜕故君たちは 癜いディレンマ

    人々たちよ 人々たちよ 人々たちよ 人々たちよ

    人々たちよ  」

    䞭庭の党員が、倧信の歌に泣いおいた。その䞭には友子も居た。

    倧信は友子を芋た。
    「そうか  。」ず倧信は蚀った。友子は涙をこがしながら小さく、静かに、やさしく埮笑みながらうなずいた。倧信は目を぀むり、病宀の方ぞ手を合わせた。友子も手を合わせた。局員も手を合わせた。䞀同は歩き始めた。

    「友子さん、ありがずう」ず倧信は蚀った。
    「倧信さん、ありがずう」ず友子は蚀った。

    倧信は、その人の矎しい目を芋た。いいや、芋なくずも  出䌚った時から、そのずっず前から、矎しい人だった。
    友子は、その人の茝く目を芋た。いいや、芋なくずも  その茝きは、出䌚った時から、知っおいた。

    倧信は、愛するその人を、匷く抱きしめた。
    友子は、愛するその人を、匷く抱きしめた。

    突然、病院䞭、街䞭、いや囜䞭に、「ピヌッ」ずけたたたしい音が入った。スピヌカヌが喋り始めた。空をヘリコプタヌの音が匕き裂いた。

    「囜民保護に関する情報。囜民保護に関する情報。
    こちらは政府です。ただちに避難しお䞋さい。ただちに避難しお䞋さい。

    珟圚、囜および囜の戊闘開始に䌎い、党䞖界芏暡の歊力玛争ぞず発展したした。わが囜政府も、安党保障法に基づき参戊を決定。
    珟圚、䞖界各地より合蚈二癟発以䞊の栞匟頭を搭茉した匟道ミサむルが発射されたずの情報がありたす。

    わが囜ぞは、そのうち六発の着匟が予想されたす。
    最速のものは、あず十二分埌、この゚リアを含む囜内数か所ぞ到達したす。

    屋内にいる方は、窓から離れ、できれば地䞋宀ぞ避難しお䞋さい。
    屋倖にいる方は、ただちに近くの頑䞈な建物や地䞋街ぞ避難しお䞋さい。
    建物がない堎合は、物陰に身を隠すか、地面に䌏せお頭郚を守り、可胜な限り肌の露出を避けお䞋さい。

    これは挔習ではありたせん。繰り返したす  」

    誰もが唖然ずしおいた。が、誰かが、誰かなどこの際どうでもいい誰かが、
    「この病院にはシェルタヌがありたす。私に぀いお来お䞋さい。」ず蚀った。皆は走っお぀いお行った。

    しかし、倧信はそこにそのたた立っおいた。無衚情で。
    友子が、「どうしたの。早く行きたしょう。」ず蚀った。
    「倧䞈倫。先に行っおくれ。」ず倧信。その衚情は、思い぀めたような、しかし䜕かを信じおいるかのような、耇雑な衚情だった。

    「戻っお来るっお信じおいい」ず友子。
    「いや  、信じなくおいい。」ず倧信。
    「だったら、䞀緒に行く。」ず友子。
    倧信の腕を二床ず離さぬくらいにしっかりず぀かんだ。

    二人は病院を出た。道路は盞倉わらずゎミず悪臭を攟ち、車があちこちに捚おられ、人圱はなく、物音すら聞こえなかった。
    街の灯りは消え぀぀あった。ただ倜䞭だった。朝はい぀来るのだろうか。来ないかも知れない。
    空からのプレれント、それは満倩の星空であった。こんな郜䌚で、こんな星を芋る事が出来るずは倢にも思っおいなかった。
    そしおさらにもう䞀぀、もうすぐずびきり巚倧な、最も忌むべきプレれントがやっお来る  。

    二人は抱き合いながら、ビルの谷間をずがずがず、歩き続けた。涙があずからあずから  。二人は涙で、二人の新たな道を䜜った。

    倧信は立ち止たった。涙を飲み蟌んだ。友子は倧信の胞の䞭で、倧信の顔を芋䞊げた。

    「悲しみの䞖界  䞖界は悲しい  。」倧信は静かに、あの人物が倒れる前に぀ぶやいた蚀葉を蚀った。

    「むッツ ワヌルド オブ サドニス  。」
    友子は、倧信の涙を手で拭っおやりながら、メロディのように呟いた。

    するず、二人の頭に䞀぀のメロディヌが浮かんだ。次の瞬間、倧信ず友子は口を倧きく開け、空を震わせる、匵り裂けそうな声で、歌い叫んだ。

    「むッツ ワヌルド オブ サドニヌスヌ」




    その時




     兵士が振り向いた





     蟲民が振り向いた




     ホヌムレスが振り向いた



     ゚リヌトが振り向いた



     犯眪者が振り向いた


     持垫が振り向いた


     砂挠の商人が振り向いた

     政治家が振り向いた



    やがおその茪は 光の劂く広がり

    䞖界の人々が 振り向いた



    ― 完 ―

    ♪ WORLD of SADNESS゚ンディングテヌマ


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    ※䞭囜語簡䜓字翻蚳・ロヌカラむズ版は以䞋よりお読みいただけたす。

    *以䞋是简䜓䞭文本地化版本。

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    「ワヌルド・オブ・サドニス」は、「カクペム」でもお読みいただけたす。


     
     
    映画・䜜曲・Game制䜜。Factory Digital Entertainment矢厎倧信 ・映画音楜䜜曲講座数字譜初心者も。 ・STORYEM最速AI Gamebook Engine。源氏物語党巻Game。 ・黒癜韍棋、瞄文登山、もほもほ(暡仿暡仿/Moho-Moho)

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