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公共授業実践第10回|憲法は、なぜ簡単に変えられないのか|公共・政治⑩


    授業で「憲法は誰を縛るルールだと思う?」と聞くと、たいてい最初は「国民」という答えが返ってきます。

    これは自然な感覚だと思います。校則は生徒が守る。法律は国民が守る。その並びでいけば、憲法も自分たちが守るものだ、と考えるほうが普通です。

    でも、憲法は逆なんです。

    縛られるのは国民ではなく、国のほうです。国民が国に対して、「ここまではしてはいけない」「この権利は守れ」「勝手に戦争へ向かうな」と言うためのルール。それが憲法です。

    この話を立憲主義として説明していたとき、一人の生徒が「え、そうなの」という顔をしました。声に出したわけではありません。ただ、それまで持っていた「憲法=自分たちが守るもの」という前提が、いったん外れた顔でした。

    正直に言うと、この一時間でいちばん残したかったのは、この顔です。

    順番に書きます。

    今回の問いは「なぜ憲法は変えにくいのか?」。ただ、いきなり改正の手続きから入っても、ただの暗記で終わります。だから先に、憲法が誰を縛るルールなのかを確認することにしました。

    導入は用語からではなく、資料から始めました。

    最初は前文の超要約です。そのまま読むと、主語は長いし、言い回しも古い。高1には見た瞬間に「無理」な文章です。でも削ってしまえば、言っていることは案外シンプルでした。自分たちが選んだ代表を通して、この憲法を決めた。自由を守るために作った。政府の手で二度と戦争を起こさせない。国を動かす力は、国民にある。並べてみると、前文は「えらそうな文章」ではなく、憲法全体の考え方の要約なんだとわかります。

    次に、前文を歌にした動画を見せました。授業としては完全に変化球です。普段あまり前に出ないおとなしい女子が、にやにやしながら聞いていました。盛り上がったわけではありません。ただ、そういう緩み方をしてくれる子がいると、こちらも少し安心します。

    そのあと、高市さんが憲法改正に意欲を示しているニュース動画を見せました。ここで憲法が、急に「昔の話」から「今の政治の話」になります。「君たちが選挙権を持つころに、国民投票があるかもしれない」。そんな話もしました。賛成か反対かを問うつもりはありません。やりたいのは、その手前です。

    そして、さっきの「憲法は権力を縛るルール」に戻ります。

    ここで、もう一歩踏み込みました。

    じゃあ国民は、憲法のうえで何も負わないのか。そうではありません。ただ、数えてみると意外と少ない。教育を受けさせる義務、勤労、納税。大きくはこの三つです。
    あとは、自分の権利が他人の権利とぶつかったときに、公共の福祉という限度で折り合う。それくらいです。

    ここが、地味だけど効くところでした。

    国の側には、大きな力があります。法律を作り、税金を集め、警察や自衛隊を動かし、ときに人の自由を制限する。
    憲法は、その力に対して細かく「ダメ」を並べています。
    一方で、国民が憲法から課されるのは、さっきの三つと公共の福祉くらい。

    縛る側と縛られる側で、量がぜんぜん違うんです。

    「憲法は権力を縛るルール」というのは、この非対称のことなんだと思います。重く縛られているのは、いつも力を持っている側のほうだ、と。

    ここまで来て、ようやく改正の手続きが意味を持ちます。

    国会で3分の2以上の賛成。国民投票で過半数。最後に天皇が公布する。数字だけ見れば暗記です。でも「権力を縛るルール」と置くと、見え方が変わります。

    その時々の政府が、自分たちに都合よく憲法を変えられるとしたら、どうなるか。ブレーキをかけられる側が、ブレーキそのものを外せることになります。それでは、自由や権利を守る仕組みとして弱い。だから、あえて手続きを難しくしてある。

    クラスによって反応は違いました。淡々と終わったクラスもあれば、思ったより答えてくれたクラスもある。ただ、あの「え、そうなの」の顔が出た瞬間だけは、どのクラスでも少し空気が変わりました。

    憲法は、盛り上がる教材ではありません。三原則も、今回は「国民主権・基本的人権の尊重・平和主義、大きな柱が三つ」と押さえる程度にとどめました。このあと自由権、平等権、社会権と続くので、入口はそれで十分です。

    立派な意見が書けるようになったわけではありません。でも、それでいい。

    憲法は権力を縛るルール。国民が負うのは、たった三つの義務と公共の福祉くらい。だから、縛られる側の都合では簡単に変えられない。最後に決める場面では、国民が関わる。

    このくらい残れば十分です。

    「憲法は誰を縛るのか?」。この問いをひとつ持てるだけで、ニュースの見え方は少し変わります。

    そんな回でした


    〇授業プリント

    ChatGPTとClaudeを活用。実業高校用に整理しました。

    〇スライド

    授業プリントをClaudeにかける→スライド原本→notebookLMで整形という段取りで作っています。必要なところだけ使ってください。

    〇教師用原稿
    詰まったときの保険です。授業プリントとスライドをClaudeもしくはChatGPTにかけて、作成しています。しっくりこないところは自分で書いています。

    手直しするときは、データをAIにかけて使ってください。



     
     
     
    高校の社会科教員。AIを使って、授業づくりやテスト作成を少し軽くする方法を試しています。目指すのは、すごい授業より、先生がすり減らずに回せる授業。実業高校での授業実践と、学校現場で考えたことを書いています。

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