
AIで自分の強みを探してみた|進路選択を控えた生徒と取り組んだ自己分析
夏休み前、3年生の政治・経済の時間に、自己分析をやってみた。就職試験が近い。自分の長所や強みを言葉にする練習を、そろそろさせておきたかった。
でも、いざ「自己PRを書いてごらん」と言うと、多くの生徒の手が止まる。「特にない」「大したことしてないし」。毎年のことだ。
だから最初に、こう伝えた。部活の実績とか、表彰とか、そういう特別な話じゃなくていい。毎日の掃除、実習、バイト、係の仕事、失敗してやり直したこと。そういうものが全部、自己PRの材料になる、と。

まずは紙に書かせた
いきなりChromebookは開かせなかった。紙のワークシートを配って、手書きで書くところから始めた。
項目は、好きなこと、得意なこと、自分の強み、疲れる場面や苦手な環境、逆に元気が出る場面、自分で思う長所と短所、そして強みが表れた具体的なエピソード。きれいな文章じゃなくていい、箇条書きでいい、と念を押した。
AIを使う前に、自分の材料を自分で出しておく。ここは外したくなかった。


ワークシートには「AI活用3箇条」も載せた。個人情報は入力しない。丸写しはしない。最終決定は自分でする。この3つ。

Geminiには「候補」を出してもらう
紙に書いた内容をGoogle Docsに打ち込んで、そこからGeminiに渡す。

指示文はこちらで用意。入力内容を読んで、本人の良さや頑張りを温かく伝えること。魅力を400字くらいの文章にすること。長所と短所を示すこと。成長のヒントを出すこと。難しい言葉は避けて、等身大で誠実に。読んだ本人が、少し前向きになれるように。

AIに性格診断をさせたいわけじゃない。生徒が自分の良さを考えるきっかけになればいい。それくらいの気持ちだった。
止まったのは、AIじゃなかった
ここまでは、どのクラスも最初のAI出力を得るところまでは進んだ。ただ、思っていたより時間も手間もかかった。
複数のアプリや画面をまたいだ瞬間に、「今どこにいるのか」「何を開いているのか」「どのファイルなのか」が分からなくなる生徒が、思っていた以上に多かった。
AIをどう使うか以前に、ファイルを扱う力、複数のアプリを行き来する力に、大きな差がある。これは前に「AIカフェ」の授業をやったときも、まったく同じだった。今回も、結局そこで引っかかった。
全員が出力は得た。でも、その先まで行けなかった
本当は、AIの出力を読んだあと、内容を自分で確かめて、文章を直して、自己PRとして仕上げるところまで進めたかった。そこまでやって初めて意味がある、と思っていた。
でも実際には、全員が最初の出力を得た時点で、もう時間をかなり使い切っていた。AIの文章を読み直して、自分の言葉に戻す。その、一番やりたかった部分まで、予定どおりには進められなかった。
授業のあと、「ツッコミを入れる」流れに作り直した
ここからは、実際にやったことではなくて、授業のあとに考えた改善案の話だ。
うまくいかなかったところを見直して、ワークシートと流れを作り直した。次は8つの段階で進めるつもりでいる。棚卸し、Docsへの入力、プロンプトの準備、Geminiで生成、自分の予想とAIの回答の照合、AIの言葉へのツッコミと具体化、自分の言葉で自己PRを再構築、声に出して面接練習。
作り直して見えてきたのは、この授業の中心はAIに文章を書かせることじゃない、ということだ。中心は、AIの文章を疑わせるほうにある。
だから、AIの回答に印をつけさせる。○は、自分らしい、納得できるところ。×は、自分とは違うところ。?は、意味が分からない、言い方が難しいところ。!は、AIが勝手に付け足したんじゃないか、と疑うところ。

そのうえで、AIが使った「自分なら普段言わない言葉」を探して、自分で説明できる言葉に直させる。
きれいな自己PRより、自分で説明できる自己PR
生徒には一言注意を。
AIの文章を丸写しすると、面接で深く聞かれたときに答えられなくなる。だから最後は必ず、自分の言葉に戻す。
AIは、生徒の性格を見抜いているわけじゃない。入力された言葉から、それらしい長所や文章の候補を返しているだけだ。だから、その答えを正解として受け取らせないように。

きれいな自己PRをAIに作らせるより、多少不格好でも、自分で意味を説明できる言葉に直すほうが大事。
面接で深く聞かれたとき、自分の経験として話せなければ、どんなに整った文章でも意味がない。
AIを使わせるだけでは、授業にはならない
AI活用というと、プロンプトの書き方とか、便利な機能とかに目が向きやすい。でも、AIの前には、自分の経験を思い出して、材料を出す作業がある。AIを使っている途中には、ファイルや画面を扱う力がいる。そしてAIの後には、出てきた答えを疑って、自分の言葉に直す作業がある。
真ん中にあるAIだけを使わせても、それだけでは授業にならない。今回は、その前後まで十分に手が回らなかった。だからこそ、AIの出力を得ることをゴールにしないで、そこから何をするかを、授業として組み直す必要があると感じている。
