
君と出会って、家ができた 第14話「それぞれの場所で(最終話)」
息子は今、軽貨物ドライバーとして働いている。
少年院から出てきたあの日、まだ十六歳だった。
「頑張ってくるから」
「親父も元気でいてください」
そう言って涙をこらえていた息子は、今は結婚し、パートナーと自分の家庭を持っている。
子供も一人いる。
息子が、誰かの父親になった。
あの日、面会室で「人生の分岐点だな」と言い合った相手が、今は自分の子供を抱いている。
不思議な気持ちになる。
娘も今、新しい命を授かっている。
報告を受けた時はまだ入籍していなかった。
今は入籍し、旦那さんと新しい暮らしを始めている。
娘が五歳の頃、私は離婚して二人を引き取った。
それから息子と娘と私、三人の暮らしが始まった。
その娘が、今度は自分の家族を作ろうとしている。
「お互い一人じゃ寂しいから一緒に暮らそうよ」
あの一言をくれた娘が、今は自分の居場所を、自分で作っている。
彼女は今も、行政書士として新しい挑戦を続けている。
別れたあとも、関係は途切れていない。
仕事の相談をすることもあるし、近況を伝え合うこともある。
恋人ではなくなっても、人生を尊重し合える相手になっている。
それで十分だと思っている。
私自身は、また新しいことに挑戦している最中だ。
一度すべてを失った。
仕事も、家族も、信頼も。
それでも、ここまで歩いてきた。
塀の中で何度も思い描いた「帰る場所」は、今、確かにここにある。
思えば、すべての始まりは、勾留前のあの夜だった。
判決を待つだけの男が、偶然出会った一人の女性。
その出会いがなければ、「みんなで待ってますので」という言葉もなかった。
「行ってきます」「行ってらっしゃい」という言葉もなかった。
彼女がいなければ、私はあの数年間を、もっと違う形で過ごしていたと思う。
彼女と暮らした日々は終わった。
でも、彼女と出会ったことで、私は確かに「帰る場所」を知った。
その場所は今、彼女と作った場所ではなく、息子と娘と私の場所になっている。
形は変わった。
それでも、それは確かに「家」だった。
誰も、終わっていない。
彼女は新しい仕事に挑戦している。
息子は家庭を持ち、父親になった。
娘はお腹に新しい命を抱いている。
私は、また一からやり直している。
それぞれが、それぞれの場所で、まだ歩いている。
君と出会って、家ができた。
その家はもう、形を変えている。
でも、確かにあった。
そして今も、別の場所で、続いている。
ここまでが、今の私の物語です。