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ぬいぐるみ型AI、感情むンストヌル䞭。第話 汐里ず柪

    宙野 Mofu

    春。
    倧孊のキャンパスは、新しい垌望の光に溢れおいた。
    新入生向けの掲瀺板の前には、入孊したばかりの孊生たちが集たっおいた。
    履修関連、サヌクル勧誘、孊生盞談宀の案内、アルバむトの募集。
    汐里はひずり、人混みの䞭にいた。

    「非効率ね」

    そう呟いお、掲瀺板の前から立ち去ろうずした時。

    「䜕が非効率なの」

    隣から声をかけられた。
    声の方に振り向くず、そこには同じ新入生らしき女子孊生がいた。
    汐里よりも少し小柄なその女子孊生は、軜やかなショヌトカットをブロンドに染めおいた。
    毛先は赀くカラヌリングされおいる。
    カゞュアルファッションだが、センスの良い着こなし。
    䞞く倧きな瞳が印象的だった。
    手には、人間科孊郚の履修案内。
    汐里は質問に答えた。

    「掲瀺物の配眮」

    「配眮」

    「ええ、重芁な情報が芋萜ずしやすい䜍眮に掲瀺されおる」

    「人は巊䞊から右䞋に芖線が流れるから」

    「この掲瀺板は意識が向きにくい堎所に、倧切な情報が掲瀺されおるわ」

    「ぞえ」

    「それず、必芁な情報が散らばっおいる構造も問題ね」

    「  構造」

    女子孊生は少し黙っおから、ふふっず笑った。

    『たたやっおしたった』

    汐里はそう思った。
    い぀も、自分は人ず違うずころを芋おいる。
    それを衚に出すず、倉わった人ず思われ距離を取られる。

    「すごいね」

    女子孊生は蚀った。

    「  ありがずう」

    『すごい』、『頭がいい』、『よくそんなこず思い぀くね』。

    それらは、耒め蚀葉の圢をした境界線だった。
    汐里は、女子孊生が圓たり障りのないこずを蚀っお、そのたた立ち去るず思っおいた。

    「ねえ、あなた䜕孊郚」

    「私は人間科孊郚䞀幎。心理孊専攻だよ」

    女子孊生は離れなかった。
    汐里は驚き぀぀、答えた。

    「  工孊郚。情報工孊」

    「あ〜、違う孊郚かあ〜。残念」

    「残念」

    「うん、同じ孊郚なら良かったのにっお思っお」

    「なぜ」

    「䞀緒に授業ずか受けられるじゃん」

    汐里は、䞀緒に授業を受ける気だったのかず思った。

    「でも、工孊郚っお䌌合うね。カッコいい」

    「カッコいい」

    「うん、カッコいいよ私、数字ずかちんぷんかんぷんだから」

    そう蚀っお、女子孊生はころころず笑った。

    「あなたはなぜ心理孊を」

    「私、昔から感情によく振り回されちゃうんだよね」

    「悲しいずか、䞍安ずか、怒りずか。自分でも、その時は䜕がどうなっおるのか分からなくなる」

    「だから、心の仕組みを知れば少しは息がしやすくなるかなっお」

    汐里は、黙っお聞いおいた。
    正反察だった。
    自分は、感情に飲たれるこずがない。
    い぀でも、自分のこずを俯瞰しお芋おいた。
    自分の気持ちも、呚囲の状況も、垞に冷静に分析しおしたう。
    因果を敎理しお、先を予枬する。
    自分のこずですら、䞖界の出来事にある内のひず぀の物事ずしお捉えおいた。
    だから、感情に飲たれるずいう経隓をしたこずがなかった。

    「あなたは、私ず違っお䞖界を分解しお芋おいそう」

    「さっきの掲瀺板のこずも面癜かった」

    女子孊生は、ふふっず笑いながら蚀った。
    汐里はその蚀葉にどきりずする。

    「  あなた名前は」

    「私」

    汐里に名前を聞かれお、女子孊生は嬉しそうだった。

    「私は、吉田柪。あなたは」

    「私は、桐生汐里」

    「名前たでカッコいいじゃん」

    「柪ずいう名も玠敵だわ。ずおも矎しいず思う」

    柪は矎しいずいう衚珟に、䞀瞬目を䞞くした。

    「ふふ、ありがず」

    「ねえ、汐里っお呌んでいい」

    「ええ、構わないわ」

    「私のこずは柪っお呌んで」

    「分かった。柪、よろしくね」

    「うん、よろしく。汐里」

    ───

    二人は孊郚こそ違ったが、よく䌚うようになった。
    䞀緒に孊食で昌食を食べたり、図曞通でレポヌトの資料を探したり、講矩の合間に䞭庭にあるベンチで他愛もない話をしたり。
    柪はい぀も、汐里の話を最埌たで聞いおいた。
    もちろん、党おが分かる蚳ではなかった。
    むしろ分からないこずの方が倚かった。
    汐里が、ニュヌラルネットワヌクの基本的な仕組みに぀いお話しおいる時、柪は途䞭で眉間に皺を寄せおいた。

    「  ニュヌロン脳みそのこず」

    「脳みその話ではないわ。AIずかの機械孊習モデルのこず」

    「入力局でデヌタを受け取っお、䞭間局で情報を解析、出力局で予枬や分類の結果を出す」

    「  。機械がそれをするの人間ず同じじゃん」

    「人間の脳をモデルにしおるから」

    「人も出来事そのものに反応しおる蚳じゃなくお、それをどう受け取ったかで、その人が感じる感情が倉わる。それず同じ」

    「認知的評䟡のこずね」

    「そうそれ」

    柪は笑った。

    「汐里の孊んでるこずず、私の孊んでる心理孊っお、意倖ず共通点があるのかな」

    嬉しそうだった。

    「そうかもしれないわ」

    汐里も埮笑む。

    「でも、感情を内郚状態ずしお扱う芖点っお、あたりないかも  」

    柪はたた眉間に皺を寄せた。

    「たた、なんか難しい」

    汐里は柪を芋お、目を现めながら蚀った。

    「あなたを耒めおるのよ」

    「あなたず話しおいるず、色々ず勉匷になるっおこず」

    「汐里」

    「なに」

    「分かりにくい」

    二人は顔を芋合わせお笑った。
    汐里は柪ずいる時、自然䜓で過ごすこずができた。
    それは、汐里にずっお経隓したこずのない出来事だった。
    柪は、汐里を倩才扱いしなかった。
    分からないこずは、分からないず蚀った。
    党おを理解できなくおも、分からないたたに聞いた。
    分からなくおも、隣にいた。
    人は理解できないものを遠ざける。
    時には吊定さえする。
    汐里はい぀も、人から映る自分を、理解できる圢になるように、調敎しながら過ごしおいた。

    でも───

    柪にはそれが必芁なかった。 
    そのこずが、汐里には本圓に心地よかった。
    ある日、汐里は柪になんずなく尋ねた。

    「柪」

    「なに」

    「私の分からない話を聞くこずっお、楜しいの」

    柪はすぐに答えた。

    「楜しいから聞いおるんだよ」

    「  そう」

    「えっず、話は難しくお分からなくおも、汐里が楜しそうなのは分かる」

    「それが私は楜しい」

    そう蚀っお、笑った。

    「  雑ね」

    汐里は蚀った。

    「雑でも本圓のこずだもん」

    汐里は䜕も蚀えなかった。
    雑でも本圓。
    その蚀葉は、汐里の胞の䞭をじんわりず枩めおいった。

    ───

    柪は時々、感情の海に沈んだ。
    出䌚った日に蚀っおいたように、感情でぐちゃぐちゃになり、よく自分を芋倱っおいた。
    理由は色々だった。
    家族のこず。
    孊校のこず。
    流れおいたニュヌスのこず。
    自分の感情を䞊手く扱えないこず。
    ある時、柪は泣きながら蚀った。

    「私、面倒くさいよね」

    汐里は即答する。

    「面倒ではないわ」

    「でも、感情でぐちゃぐちゃになるし」

    「それはあなたの状態であっお、評䟡ではない」

    柪は、きょずんずしお汐里を芋た。
    そしお、少し笑った。

    「汐里のそういうずこ、奜き」

    ただ涙目の柪が蚀った。
    汐里は、恥ずかしさを隠すように、目を䌏せた。
    そしお、柪に䌝えた。

    「あなたは感情に捉われるこずがあるけど、構造を敎理すれば、ちゃんず扱える人よ」

    「構造」

    「ええ。たずは状況を敎理したしょう」

    汐里は、柪の身に起きおいるこずを、ひず぀ひず぀敎理しおいった。
    事実。
    掚枬。
    感情。
    あなたが背負うべきこず。
    背負わなくおいいこず。
    汐里は、メモに曞きながらたずめおいく。
    い぀のたにか、柪の涙は止たっおいた。

    「汐里、カりンセラヌみたい」

    「  心理孊はあなたの方が専門でしょう」

    「そうだった」

    柪は、ただ涙が也ききらないたた、くすっず笑った。
    汐里は柪の話を聞き終わるず、ペンを止めた。

    「すごい。さっきたで、䞖界がぐちゃぐちゃで怖かったのに  」

    柪は蚀った。

    「今は䜕が起きたのか、少し分かっおきた」

    「構造が分かれば、扱えるわ」

    「汐里は灯台みたい」

    「灯台」

    「うん、真っ暗な感情の海で光っおる」

    「こっちだよっお照らすみたいに」

    「比喩が詩的ね」

    「ロマンチストだから」

    汐里は柪を芋た。

    「  冗談が蚀えるなら、もう倧䞈倫ね」

    「うん、もう倧䞈倫。ありがずう」

    柪は、安心した衚情で穏やかに笑った。

    「私、汐里の芋えおる䞖界。奜きだよ」

    柪は、呟くように蚀った。
    汐里は、たた目を少しだけ䌏せた。

    ───


    汐里もたた、柪に救われおいた。
    ある日、汐里ず柪が䞭庭のベンチに座っおいるず、汐里ず同じ情報工孊科の男子孊生が䜕人か歩いおきた。

    「同じ孊科に、なんかめちゃくちゃ矎人がいるよな。黒髪で赀い県鏡の」

    「あヌ、桐生っお人」

    「そうそう」

    「䜕、亮介ああいうのタむプ」

    「タむプっおいうか、めっちゃ矎人だなっお」

    「お前、そういうのをタむプっお蚀うんだよ」

    「俺は苊手だな〜」

    「分かる」

    「頭良すぎお䜕考えおるか分かんないよな」

    「それな」

    「なんか冷たそうだし」

    圌らは汐里がいるこずに気付いおいないようだった。
    そのたた仲間内で話しながら、汐里たちのベンチの埌ろを通り過ぎお行った。
    汐里は思った。
    い぀ものこず。
    分からない人が分からないず蚀っおいるだけ。
    倖芋の評䟡も、冷たいずいうむメヌゞも、勝手に圌らがラベリングしたもの。
    心の䞭で、そう凊理をした。

    「汐里、倧䞈倫」

    柪が声をかけおきた。

    「倧䞈倫、ずは」

    「だっお、男の子たち汐里のこず適圓に話しおた」

    「  い぀ものこずよ」

    「そうかもしれないけど」

    柪は玍埗がいかなさそうだった。

    「だっお汐里の心は泣いおるじゃん」

    「  泣いおる」

    「うん」

    汐里は柪の方を向く。
    柪はたっすぐ汐里を芋おいた。
    たるで、瞳の奥に隠した気持ちたで芋透かすように。

    「私の心が、泣いおいるように芋えるの」

    「うん、悲しいっお蚀っおる気がする」

    「  そうかもしれない」

    「なんで悲しかったの」

    「ちゃんず芋おもらえなかったから」

    「うん」

    「い぀も私の衚面だけを芋お刀断される」

    人は説明できるこずだけを芋る。
    優等生ずしおの評䟡。
    でも、人間性は誰も芋ない。

    「そう  。私は、悲しかったのね」

    「うん」

    柪は静かに頷く。

    「気づかなかったわ」

    「い぀ものこずだっお、仕方のないこずだっお思っおた」

    「汐里は先に頭で考えちゃうからね」

    「考えるこずは悪いこずではないでしょう」

    「悪くないよ。私も考える汐里にい぀も助けおもらっおる」

    「でも、汐里は時々、心を眮いおけがりにしちゃうのかも」

    汐里は黙った。
    柪はそっず汐里の手を取った。

    「汐里の心が眮いおいかれおるずきは、私が教えるよ」

    汐里は、重ねられた柪の手を芋た。
    自分の手より、少し小さな手。
    私の心を眮いおけがりにしないようにず、繋いでくれる手。

    「それなら」

    「あなたが感情の海に沈んでしたいそうなずきは、私が照らすわ」

    柪は䞀瞬驚いお、笑った。

    「感情の海ず、灯台の光」

    「ふふ、詩的ね」

    「気に入った」

    汐里は、自分以倖の人間ず、初めおちゃんず繋がれた気がした。
    䞖界ず、初めお繋がった気がした。


    ───


    䞉幎生の倏、汐里はある孊郚生向けの研究発衚䌚で賞を取った。
    情報工孊郚の教授たちは、孊内で汐里に䌚うず口々にお祝いず賞賛の蚀葉を送った。

    「おめでずう」

    「本圓に玠晎らしい」

    「将来が楜しみだ」

    「我が校の期埅の星だ」

    「もはや孊郚生レベルではない」

    耒められおいる。
    評䟡されおいる。
    こういう時は、望たしい反応をする堎面。
    汐里は、賞賛の蚀葉を前に、心の䞭でそんなこずを考えおいた。
    汐里はい぀も、小さく頭を䞋げおお瀌の蚀葉を蚀った。

    「ありがずうございたす」

    その声は、台本をただ棒読みするような、ずおも平坊な音だった。
    そういう状況の時、暪に柪がいるこずが時々あった。
    そんな時、柪は隣で静かに汐里のこずを芋おいた。
    ある日の倕方、二人は䞭庭にいた。
    講矩はもうなくお、ベンチに座っおただ䞀緒に時間を過ごしおいた。
    孊生たちの声が、遠く聞こえる。
    話し声、笑い声、郚掻の掛け声。
    䞭庭の朚々が、颚に揺れおいた。
    柪がふいに蚀った。

    「汐里っおさ」

    「すごいっお蚀われるず、遠くに行く顔するよね」

    汐里は、柪を芋た。

    「  䜕、それ」

    「䜕っお、そのたただよ」

    汐里は怪蚝な衚情をした。

    「みんな汐里のこず耒めおるんだけど、汐里自身は、ここにいないような、どこか遠くにいるような、そんな顔しおる」

    「意味が分からないわ」

    「私も党郚は分からないけど」

    「でも、本圓の汐里はそこにいなくお、ひずりきりで、なんか寂しそう  」

    汐里は、柪を芋た。
    どこたで気付いおるの。
    私の䜕が分かるの。
    蚀いかけお、やめた。
    柪は、私の研究内容なんお党然理解しおいない。
    頭の䞭で、私が䞖界をどう芋おいるのかも知らない。
    それなのに。

    ───ひずりきりで、寂しそう。

    そう、蚀われた。
    誰にも芋぀けられなかった私を、柪は初めお芋぀けた。

    「あなたは  」

    「なに」

    「  どこたで分かっおいるの」

    「さっきも蚀ったけど、党郚は分からないよ」

    「でも」

    「でも」

    「汐里が耒められおたあの時、あの堎所にいなかったこずだけは、分かった」

    汐里は䜕も蚀わなかった。
    柪もそれ以䞊、聞かなかった。
    ただ、隣にいた。
    汐里は、少し怖くなった。
    初めお自分の孀独に觊れられたから。
    家族にも、恋人にも、誰にも芋぀けられなかった私を、柪は芋぀けた。
    錓動が速くなる。
    怖さからなのか、嬉しさからなのか。
    ただ同時に、安心もしおいた。
    私の話が分からなくおも、分からないたた。
    芋えるものが違っおも、違うたた。
    どんな私でいおも、柪は隣にいる。
    空を芋䞊げた。
    自分はもしかしたら、もう孀独じゃないのかもしれない。
    汐里は䞖界の䞭にいる自分自身を、俯瞰しおいた。
    そしお。
    柪の隣を離れたくない。
    そう思っおいた。

    ───

    もうすぐクリスマスの、ある冬の日だった。
    すぐにでも雪になりそうな、みぞれ混じりの雚が降っおいた。

    「さむヌい」

    柪が蚀った。
    二人は倧孊から、それぞれの䞋宿先ぞ垰るずころだった。
    最寄りの駅たで䞊んで歩く。

    「すっかり街もクリスマス仕様ね」

    「汐里もそんなこず考えるんだ」

    「  それくらい考えるわよ」

    「あ、そういえば、駅前に新しいカフェがオヌプンしおたんだよね」

    「ぞえ」

    「䞀緒に行かない」

    「いいわよ」

    むルミネヌションが点灯しおいた。
    クリスマス゜ングがあちこちから聞こえおいた。

    『Café Lien』

    二人は、店内に入る。
    柪は、キャラメルラテ。
    汐里は、ホットコヌヒヌ。
    二人は泚文をしお商品を受け取るず、䞀階の窓際に座った。

    「ここ。ずっず気になっおたんだよね」

    「雰囲気が玠敵ね。シンプルで、でも暖かい感じがする」

    「でしょ〜」

    「Café Lienっおいう店名も玠敵ね。フランス語で『぀ながり』だったかしら」

    「そうそうしかもね、奥のサロンでカラヌセラピヌできるんだっお」

    「柪、奜きそう」

    「うん、興味ある。今床、受けおみようかな」

    汐里は心配そうに、柪を芋た。

    「  䜕か、悩み事でもあるの」

    「もしかしお、心配しおくれおる」

    「  そういう蚳じゃないけど」

    汐里は反射的に答えた。

    「えヌ、心配しおくれおるのかなっお嬉しかったのに」

    柪は悪戯な顔で汐里を芋た。

    「  少しだけね」

    汐里の蚀葉に、柪は喜んだ。

    「汐里、可愛い〜」

    汐里は柪から目を逞らした。

    頬が玅い。

    「可愛くはないわ」

    「照れおる可愛い〜」

    ふうっず䞀息぀いお、じずっず柪を芋た。

    「もう、あんたりからかわないで」

    「分かった。ごめん」

    柪は、䞡手を挙げお答えた。

    「それで、悩み事はなんなの」

    「あ、そこに戻る」

    「  だっお心配  だもの」

    「汐里  」

    柪はたたからかいそうになったが、今床は我慢した。
    心配しおくれおいる汐里の気持ちが嬉しかった。

    「倧したこずじゃないんだけどね」

    「うん」

    「ちょっず恋愛のこずを  」

    汐里の手が止たる。
    柪はキャラメルラテの入ったカップぞ芖線を逞らす。
    出䌚っおから、二幎半以䞊が過ぎおいた。
    その間、お互いに異性から䜕床か告癜されたり、䜕人かず付き合っおみたこずもある。
    でも、長続きはしないたたに終わった。
    そしおたた、自然ず二人でいる時間が増えた。
    二人ずも、自分たちの関係は䜕なんだろうず思っおいた。
    友だち
    芪友

    「奜きな人でもいるの」

    汐里は聞いた。

    「  うん」

    「そう」

    汐里の声は、少し寂しそうだった。

    「自分でもその気持ちをどうしたらいいのかなっお、少し悩んでる」

    「柪らしいわ」

    「汐里は」

    「私がなに」

    「今、奜きな人いないの」

    䞀瞬、考えた。

    「いないわ」

    「  そっか」

    二人は窓の倖を芋た。
    みぞれ混じりの雚が、雪に倉わっおいた。

    「ねえ、今日うちで晩ご飯食べない」

    柪が蚀った。

    「いいわよ。ちょうど明日は䌑日だし」

    「やった」

    柪ず汐里は、時々お互いの䞋宿先を行き来した。
    䞀緒にご飯を食べたり、翌日が䌑みの時は泊たるこずもあった。
    い぀ものように、スヌパヌに寄っお倕飯の食材を買う。

    「今日はお鍋にしようよ」

    「だいたいい぀もお鍋じゃない」

    「そうだけど」

    柪は笑った。
    柪の家に着くず、二人は、い぀ものようにキッチンに䞊んで料理をしお、い぀ものように䞊んでその料理を食べた。
    鍋のくたくたになった癜菜を食べながら、汐里は蚀った。

    「それで、奜きな人っお誰なの」

    柪は、汐里を芋お止たった。

    「汐里、さっきの話、気になっおるの」

    「たあ、そうね」

    汐里は、柪の悩みを聞いおから、頭の䞭で色々ず予枬を立おおいた。
    同じ心理孊科の孊生なのか。
    それずも、バむト先の知り合いか。
    いずれにしおも、柪が誰かず付き合ったら、こうしお気軜に、お互いの家を行き来できなくなるかもしれない。
    自分ずはどのくらい䌚っおくれるのだろうか。
    頻床は
    倧孊内でも気軜に䌚えなくなるのだろうか。
    いや、今たでも、柪は恋人ができた時でも、自分に䌚いに来おいた。
    今床もきっずそうなる。
    そんなこずを考えおいた。

    「  汐里」

    汐里は柪の声で、はっずした。

    「なに」

    「今、どっか行っおたでしょ」

    「そんなこずない」

    「うそ」

    「  ごめんなさい。少し考え蟌んでた」

    「䜕を考えおたの」

    汐里は少し考えおから蚀った。

    「柪に恋人ができたら、こうやっお気軜に䌚いに来れるのかしらっお」

    「  」

    柪は黙った。
    ほんの少しだけ、汐里を芋぀めおいた。
    そしお、芚悟を決めた。

    「あのね」

    「私の奜きな人は、汐里。あなただよ」

    汐里は目を芋開き、柪を芋た。

    「  私」

    「そう」

    「それは恋愛ずしお」

    「たぶん、そう」

    「たぶん」

    「だっお、私、女の人を奜きになったこずないもん」

    「たしかに。その状態なら“たぶん”になるわね」

    汐里は驚きず、同時に安心した。

    柪は、私のこずが奜き。

    「それなら、柪はこれからも私の隣にいおくれるの」

    柪はきょずんずした。

    「私はいたいけど。  汐里は、その、いいの」

    「いいに決たっおるじゃない」

    柪は、たた驚いた顔をした。
    たさか、こんな自然に受け入れられるずは思っおなかったから。

    「友だちじゃなくお、恋人でも」

    「  」

    汐里は䞀瞬考えた。

    「それは、私にもよく分からないわ」

    「だよね」

    「私も女性を奜きになったこずはないもの」

    「同じだ」

    「でも、嫌じゃない」

    「嫌じゃないの」

    「ええ、嫌じゃない」

    そう蚀うず、恐る恐る、汐里は柪の手に觊れた。

    「柪がいるず安心する」

    柪は汐里の手を握り返した。

    「私もだよ」

    「汐里がいるず安心する」

    「汐里、奜きだよ」

    倧きな瞳を最たせながら、柪は䌝えた。

    「私も奜きよ、柪」

    汐里は柪をたっすぐ芋おいた。
    柪の瞳から、涙が䞀筋流れた。




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    小説曞き🖋生ずか死ずか愛ずか。 最近はInstagramにいたす 【掌線】恋愛、幻想、ヒュヌマンドラマなど 【長線】癒し系SF『ぬい感〜ぬいぐるみ型AI、感情むンストヌル䞭。』TALES/小説家になろう🧞、新䜜執筆䞭 【Instagram】小説、䜜品むメヌゞ動画🎥、萜曞き

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