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だからこそ、この季節は忘れられない【17】#創䜜倧賞2025 #恋愛小説郚門

    ぐで子

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    第話 秋觊れたいのに届かない④


    
    小説すれ違う季節抜粋

    翌朝――ガチャリ、ず扉の閉たる音がしお、目を芚たすず、カむの姿はなかった。
    毛垃を深くかぶり、カむの残り銙に包たれた゜ファの䞭で、ひっそりず息を぀いた。安堵ず同時に、じんわりず胞に広がる鈍い痛みが、昚倜の情景を呌び芚たす。

    溢れ出おしたった自分の感情。心の奥底に抌し殺しおきたはずの想いが、声になっお零れ萜ちた瞬間。

    ――喪倱感。ああ、この感情、知っおる。

    圓たり前だった存圚が、ふっず消える時の、あの感芚。

    ただ、芪ずいう存圚を認識するよりもずっず前。私は祖母の家に預けられた。母の顔は思い出せないが、ただ、振り向きもしなかったその背䞭の茪郭だけが、幌い私の蚘憶に焌き付いおいる。

    「どうせ捚おるなら、産むな。育おる気がないなら、いっそ殺しおくれたほうがマシだった」

    そんな卑屈で、ずげずげしい思いを抱く私を、祖母が可愛がるはずもなかった。
    優しい蚀葉をかけられた蚘憶は、ひずかけらもない。冷たく、也いた声。鋭い刃のように、突き刺さる蚀葉。そのたびに、私はひず぀ず぀心を削られおいった。

    だから、心の奥ではずっず思っおた。
    「早くいなくなればいい」ず。
    それでも、そんな呪いのような感情を抱いおいた自分も、祖母の死を目の前にした途端、耇雑な思いが枊巻いた。

    ――これから、私は本圓に䞀人になる。

    私を瞛り付けおいた、あの冷たい芖線がなくなった䞖界。
    解攟されたわけではなかった。
    芋枡す限り、暗く、冷たい堎所に、䞀人きりで取り残されたような感芚。誰かを憎むこずすらできない静寂が、こんなにも苊しいなんお、知らなかった。

    そんな時でも、倉わらず私の傍で寄り添っおくれたのは、幌銎染のナりタだった。

    私の居堎所をくれた人。唯䞀、私を芋捚おずにいおくれたナりタ。
    なのに、私は、そんな圌を傷぀けた。

    そしお、圌は――もう、いない。

    あの時の痛みず、今の痛みが、重なる。同じ色をしお、心に降っおくる。

    でも――カむは。

    「リコ おヌい、リコ」

    誰かに名前を呌ばれる声が、がんやりずした意識の奥に響いおきた。たぶたをゆっくり持ち䞊げるず、芖界にカむの顔が浮かんだ。い぀の間にか、たた眠っおしたっおいたらしい。

    「 あれ垰ったんじゃなかったの」

    寝起きの声でそう尋ねるず、カむは私の頭の䞊に圱を萜ずしたたたニダッず笑う。

    「ほら、出かけるぞ」

    「え」

    蚀葉の意味が远い付かず、私は゜ファで毛垃にくるたったたた固たった。月ずはいえ、倖はすっかり冬の気配。毛垃のぬくもりが恋しくお、動く気になどなれやしない。そんな私の毛垃を、カむが容赊なく匕っ匵る。

    「おいヌ」

    「ちょ、寒いっおばやめおヌ」

    私は毛垃を抱きしめるようにしお抵抗した。
    するず、カむは小さくため息を぀き、近くにあった赀倖線のパネルヒヌタヌのスむッチを入れる。静かな音ずずもに暖かさが郚屋に広がる。

    「わあ、あったけヌ、ありがおヌ」

    私はあっさりず毛垃を手攟し、゜ファの前に座り蟌んだ。
    そんな私をカむは冷たい目で芋䞋ろしおいる。

    「でどこに出かけるの」

    「玅葉。䞀緒に芋に行きたい」

    「玅葉もう寒いし、散っちゃったんじゃない」

    「䜕蚀っおんだよ、関東はちょうど芋ごろだから」

    「えヌヌヌヌ寒いのに」

    「寒むくなっおきたから、玅葉が綺麗なんだろ」

    「えええええ」

    「えええええっお、䜕幎日本人やっおんだよ」

    「すみたせヌん。でもなヌ、寒いなヌ、家から出たくないなヌ」

    私は゜ファで䞞くなりながら、ブツブツず愚痎をこがす。
    カむは肩を萜ずしながら、ちょっずだけ拗ねたような口調で蚀った。

    「あヌあ、せっかく車借りおきたのに。ひでぇなリコっお」

    「え車⁉」

    「うん、車の䞭なら暖かいぞ」

    「あ 。でも」

    「でもでもでもっお、なんなんだよさっきから」

    「だっお、コヌト持っおないんだもん寒くお倖に出られない。たしおや玅葉なんお 」

    その瞬間、カむの衚情は、たさに「絶句」ずいう蚀葉そのものだった。

    「 ずっず、どうやっお過ごしおたんだよ」

    「パヌカヌ枚重ねしお、枚重ねしお 。毛垃かぶっお 、移動はタクシヌもしくは匕きこもり」

    「 コヌト買いに行けよ」

    「だっお 寒いんだもん」

    蚀い蚳する私を芋お、カむは倧きく深呌吞をするず、無蚀で私を立ち䞊がらせ、そのたた玄関ぞず連れお行く。
    靎を履く暇もない勢いで、車に抌し蟌たれた。

    「もっず優しく扱っおヌ」

    「うっさい、シヌトベルト」

    「はい 」

    玠盎に蚀われた通りベルトを締めるず、カむはハンドルを握り、無蚀のたた車を走らせた。
    しばらくしお、車が止たった先は、芋芚えのないアパヌトの駐車堎だった。

    「ねえ、ここっお」

    「出お」

    「はい 」

    少し䞍機嫌なカむに埓っお車を降りるず、圌は私の手を匕いお、アパヌトの階段を䞊がっおいく。二階の䞀宀のドアの前で、カむが鍵を差し蟌みながら答えた。

    「ここっお、カむの家」

    「うん」

    私は思わず声を䞊げた。

    「心配だよ」

    カむがドアノブに手をかけたたた、怪蚝そうにこちらを振り返る。

    「䜕が」

    「え、だっお、セキュリティがゆるいアパヌトで䞀人暮らしなんお、カむが襲われる」

    「襲われるっお 俺、男だし」

    「男でも 」

    カむが苊笑しながらも、ドアを開けお私を䞭に入れる。宀内に足を螏み入れた瞬間、私は䞀瞬で圧倒された。

    癜を基調ずした壁に、明るい朚目のフロヌリング。キッチンには最小限の調理噚具が敎然ず䞊び、リビングには゜ファずテレビが眮かれおいる。

    足元を芋るず、芋慣れない倧きなサむズの靎が぀眮いおあるのが目に぀く。再床郚屋を芋枡すず、トむレや济宀がありそうな堎所以倖に、ドアが぀ LDK

    「もしかしお、誰かずルヌムシェアしおるの」

    「うん」

    私は足元にある靎ず自分の足を䞊べおみる。明らかに倧きい 、このサむズの靎、普通に売っおるのだろうか。

    「センチぐらいの足のサむズの人ず」

    「ああ、身長センチ、ラグビヌ郚の倧男だからな」

    「よかったヌ」

    私は心の底から、ふヌっず安堵の息を぀いた。

    「は」

    「襲われそうになっおも、倧䞈倫そうだ」

    「あのな 。芋た目は熊でも、子犬かっおくらい気が小さいんだからな」

    「倧䞈倫。芋ただけで逃げおくはず」

    「なんで俺がか匱い男子の前提なんだよ」

    「圓たり前でしょ気を付けおよね」

    「はいはい 。それより、こっち来お」

    カむがリビング脇のドアを開けお、私を䞭ぞず促す。
    そこは、ベッドず勉匷机がある、男の子らしい質玠な郚屋だった。床にはベヌゞュのラグ、窓際のカヌテンは萜ち着いたグレヌ。たさに「カむらしい」郚屋。そしお、私があげたバリのお土産の鬌のお面が壁に掛けられおいた。

    「カむの郚屋」

    「そう」

    カむは、備え付けのクロヌれットを開け、そこから黒いダりンゞャケットを取り出しお私に差し出した。

    「これなら着れそう」

    「 え」

    「コヌトないんだろ」

    「はい 」

    枡されたダりンゞャケットは、お尻たですっぜり隠れる䞈で、ふわっずカむの銙りがした。安心する。

    「なんだよ」

    「 なんでもない」

    「あず、コレずコレ」

    そう蚀っお、ベッドの䞊にポンポンず投げたのは、マフラヌず手袋、それからニット垜。

    それを取っお、䞀぀ひず぀、私の䜓に身に着けおいくカむ。そのたび、カむの枩床ず銙りが増しおいく。

    「完成、はは、䌌合っおる」

    「 かなり暖かい。むしろ今、ちょっず暑い」

    「もう、寒いずは蚀わせないからな」

    「はい 。すみたせんでした」

    「よし出かけるか」

    「うん」

    ダりンゞャケットにマフラヌ、手袋たで装備しお、私はすっかり冬仕様。玄関を出るず、柄んだ空気が頬に觊れたが、今日は党然平気だった。
    車に乗り蟌むず、シヌトがじんわりずあたたかくお、思わずほっず息を぀く。

    「やっぱり車っお最高。ぬくぬくする」

    「さっきたで“寒い”っお隒いでたや぀ずは思えないな」

    「これなら、冬が来おも問題ない」

    「そのたた、パクる぀もりか」

    「冬の間、お借りたす」

    「それ、借りパクっおや぀だろ」

    「あはは」

    「たあいいけどさ」

    「少し車内だず暑いなヌ」

    私はそう蚀いながら、少しだけ窓を開けおみた。冷たい颚が頬をかすめ、それが心地よく感じた。

    ふず、暪を芋るず、カむが前を芋たたた、小さく口ずさんでいた。錻歌混じりのその暪顔は、颚になびく髪のせいか、い぀もより少しやわらかく芋えた。

    「今日、なんかルンルンじゃん」

    「俺が」

    「うん、かなりね」

    「たあな、運転するのも、玅葉芋に行くのも、久々だしな」

    そう蚀うカむの声が、なんだか少し照れくさそうで、私も぀られお埮笑んだ。

    「 くれぐれも安党運転でお願いしたすよ」

    「はいはい、お任せください」

    車は静かに走り出す。秋の空気が、胞の奥たで静かに流れ蟌んできた。


    
    赀い橋の䞊に立぀ず、芖界いっぱいに広がる玅葉の海に、思わず息を呑んだ。
    燃えるような赀、やわらかな橙、はじけるような黄色――色ずりどりの葉が秋の颚に揺れ、たるで生き物のように枝先で螊っおいる。
    その䞋をゆっくりず滑るカヌヌの䞊から、芳光客たちの笑い声が氎面をわたり、静かに耳をくすぐった。

    「きれい 」

    小さな声で呟くず、隣でカむが静かにうなずいた。

    「タむミング、ばっちりだったな」

    その声も、どこか遠くから響いおくるようで、たるで、すべおが珟実ではないようだった。

    「絵葉曞だよ、コレ 」

    「だな。ほんず、キレむ」

    颚が吹くたびに、はらり、はらりず葉が舞う。その様子は、芋るものを䞀秒たりずも飜きさせるこずはない。
    䞀枚の赀い葉が、ふわりず舞っお、私の肩にそっず萜ちた。気づいたカむが、それを指で぀たみ、空に攟る。

    「 䞍思議だね」

    「ん」

    「こんなにきれいなのに、どこか切ない。 なんでだろう」

    芖線の先では、ひらひらず葉が空䞭でゆっくりず回転しながら萜ちおいく。

    「最埌の悪あがき かな」

    「悪あがき」

    カむが䞍思議そうに問い返す。

    「うん。散る前の䞀瞬だけ、こんなに色づいお、粟䞀杯茝いおさ。あずは、静かに終わっおいくだけ 」

    自分で蚀いながら、胞の奥にチクリず䜕かが刺さる。
    たるで、自分のこずみたいだず思った。
    こんなふうに、䞀瞬だけ人ず近づいお、枩かいず思ったその次には、きっず冷たい孀独が埅っおいる。そんなこずなら、いっそのこず 。

    「気づかず、終わっおたらいいな 」

    ふず、そう挏らした蚀葉は、颚に乗っおどこかぞ流れお蚀った。

    「 リコ」

    カむが小さく声をかけおくれる。
    カむの腕が、そっず背䞭からたわされる。そのたた、圌の額が私の肩に觊れた。

    「俺も、条件远加したい。いい」

    「え」

    「いいよな」

    その甘えたような声に、小さく笑いながら頷く。

    「どうぞ」

    「条件぀目。俺の断りなしに、死んだらダメ」

    「え」

    䞀瞬、苊しくなった。カむに心が読たれたみたいで。
    振り返った私を、カむがたっすぐに芋぀めおいた。
    その目は、玅葉のように、どこか切なく、優しい。

    「俺は、梶課長やルむほど、リコのこず知っおるわけじゃない。でも、こうやっおリコの隣にいたいから。だからさ。生きおおくれないず困る」

     䞍意に、心がふわっず浮かび䞊がるような感芚がした。
    それは、重力が䞀瞬だけ消えお、ふっず颚に乗ったみたいな――そんな感芚。

    「 私だっお、カむのこず䜕も知らない。たさか倧男ず䞀緒に䜏んでるずか、意倖ず家近いずか 、驚きだった」

    「それ、俺に興味なかったっおこずか」

    「そういうわけじゃ 」

    「焊っおるし」

    「焊っおないそもそも“䜕も聞かない”っお関係でしょ。私たち」

    「それ、あんたり意味ないかも」

    「えどうしお」

    「そりゃ、リコが普段䜕しおお、孊生時代は、家族はどんなんで ずか、興味はある。けど、俺にずっおは、リコは“リコ”だから。それで十分」

    ――リコはリコ。

    その蚀葉が、ぜずんず、心の奥に萜ちた。
    “䜕も聞かない”それは、私なりの距離の取り方だった。線を匕いおおけば、螏み蟌むこずも螏み蟌たれるこずも、傷付けあうこずもなく、セフレの関係を保おる。

    でも、カむは――
    その線をあっさり越えおきた。詮玢するでもなく、远いかけるでもなく。ただ䞀蚀「リコはリコだから」っお。

    その蚀葉に、匷匕さはなかった。でも、どこたでもたっすぐで、迷いがなくお――。気づけば、匵っおいた境界線の内偎にカむが居お 。カむはどんどん近づいおくる。

    「ばかヌ、死なないよ痛いのやだしじゃあ、カむも玄束しお。私の断りなしに死なないっお」

    「うん。じゃあ、リコの呜は俺が預かったからな絶察だからな」

    その蚀葉に、思わず胞がきゅっず瞮こたる。カむはもっず近づいお ぀ながっおくる。

    「 」

    䞍意に涙があふれだす。
    こがれ萜ちる涙が、あたたかくお、少しだけ苊かった。
    玅葉が颚に舞い、赀や黄のひらひらが芖界をゆっくり通り過ぎおいく。

    「リコ」

    「このたた、時が止たればいいのに 」

    その䞀枚䞀枚が、たるで思い出みたいで、觊れようずすれば壊れおしたいそうで。幞せを感じおしたった、その瞬間から、もう、この手では掎めない気がした。

    この颚景も、このぬくもりも、きっず、もうすぐ冬に呑たれおしたう。でも今だけは。
    せめお、今だけは――


    
    珟圚・カむ芖点

     リコず䞀緒に芋た、燃えるように赀や黄色に染たった朚々は、すっかり葉を萜ずし――春の気配に抌されるように、柔らかな緑をたずいはじめおいる。

    それでも俺の目には、あの日の玅葉が、い぀たでも蚘憶の奥で色鮮やかなたただ。

    ――リコは今も、俺ずの“条件”を守っおくれおいるのだろうか。

    日本に長く留たる気のない圌女は、冬を越す芚悟すら持っおいなかった。コヌトひず぀買わず、バッグの䞭にはい぀でも逃げ出せるだけの軜さを詰め蟌んで。

    玅葉を芋おいた圌女は、い぀でも消えおいなくなっおしたいそうで。俺の前からだけでなく。完党に、死さえも簡単に受け入れおしたいそうで。萜ちる葉を芋ながら、リコは、そう感じおいるように芋えた。

    ふず、俺は返しそびえれた、リコの愛甚ペンをポケットから取り出す。リコがこの小説を曞き終えおしたった今、ふず䞍安にかられる。
    ただこの䞖界のどこかで、ちゃんず息をしおいるのだろうか。
    それずも――

    もしあの時、玠盎に「奜きだ」ず蚀えおいたら。
    「そばにいおほしい」ず蚀えおいたら。
    「手攟さない」ず、本気で䌝えおいたら――

    圌女は、ここにいおくれたのだろうか。

    もう䞀床でいい。
    圌女の声を聞きたい。笑顔でも、怒った顔でも、涙を浮かべた暪顔でもいい。ただ䞀床だけでいいから、もう䞀床――この目で、圌女を芋たい。

    そんな願いを春の颚に玛らわせながら、この景色の䞭に、圌女の姿を探しおしたう。



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    ども、ぐで子です。やる気れロ䞻婊。毎日パゞャマで映画、ドラマずアニメ。疲れたら劄想で小説執筆 。ChatGPTチャットちゃんに背䞭を抌され、note始めおみたした。無理せず、ゆる〜く生き盎し䞭。

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